朝焼け夕焼け江ノ電 | てっちゃんのまったり通信

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午前5時50分鎌倉発藤沢行。

春節だ、インバウンドだ。

と言われているこの時期。

1~2時間も経過すると見違えるように人があふれるに違いない。

流石にこの時間ではまだガランとした鎌倉駅を

少しの優越感を持ちながら歩く。

人いきれで充満したこの駅しか見たことが無いので、

多少の物珍しさ、独占感も手伝い嬉しくなった。

空気がうまく感じるのでホームの真ん中で深呼吸などしてみる。

許されるならば大きな声で叫びたくなるような解放感を感じた。

しかし、ふと見るとすでにすでに入線している車両の中に人影が。

ホームで奔放に過ごしているところを見られたかな、と

少し恥ずかしい思いで、乗車。

当然のように外はまだ暗い。

この日のテーマは「赤」。

一日の始まりの「赤」と一日の終わりの「赤」を江ノ電緑と黄色とともに

カメラに収められれば良いなと思い大船に前泊した。

どうか、うまく空が赤く染まりますように。



「なかなかね。思い通りに赤くはならないものだよ」

鎌倉高校前のスラムダンクで有名な例の踏切。

もはや、ファンの間では聖地とまで呼ばれているらしい。

日中にでもなれば、

「誰か有名人でも来ているのか」と事情を知らない乗客に言わしめたほど

この踏切の周りは人だかりになる。

そんな人だかりの風景も面白いかもしれないが、

静かな海沿いのいちローカル線の踏切での一日の始まりを撮影したかった。

気温が思ったより下がらないことと、明け方の雨で残った雲のおかげで

思ったように空が赤くならないし画面もすっきりしない。

冒頭の台詞は撮影に訪れていた地元の趣味人の方のお言葉である。

地元の方が足しげく通ってもなかなか思い通りな朝焼けの風景にはならない。

ましてや・・・。

露出はアンダー気味でわずかな「赤」を捕える。

列車の正面や、周辺の造形物は良い感じの「赤」で染まる。

これが300形でないのが残念。



やがて、この踏切を300形が通る。

ひし形のパンタグラフにゴォォっとしたモーター音が似合う。

その姿を見ているだけでも木の床から立ち上る匂いがしてくるような気がする。

「やっぱり、格好いいなぁ」

思わず感嘆符が口からこぼれる。

先日この地を訪れた際には「305F 無」の運行ネットを見て途方に暮れた。

とりあえず、他の形式でもと思って江ノ電を巡ったが、

天候も良くなく、珍しく一回もシャッターを切らずに帰途についた。

なので、その姿を久しぶりに見れただけで嬉しい。

ザ・エノデン。

若い頃に仲間や、その頃の彼女とやらと乗った江ノ電を思い出す。

せまい線路をガッシャンガッシャンいいながら右へ左へ。

揺れ動く青春。

当時のドラマの効果も重なり、この車両は私の青春そのものと言えるかもしれない。

あの日も夕日がきれいだった。

喜ばしいことに、ついこの間全般検査を行ったばかりとのことで

まだまだ、この車両の活躍は続くらしい。



「赤」は空だけではない。

ここにもあった。

バレンタインデー仕様の行き先掲示板が300形の先端を飾る。

茶色いチョコレートの地に躍る沢山の赤いハート。

これは、今でしか見ることが出来ない。

青春の300形に逢えて、ただでさえ「キュン、キュン」してるのに

そこまでやりますか。

300形様。

藤沢の駅で確かに甘く受け取りました。



江ノ電藤沢駅。

ドーム型のこの駅舎は、旧い洋画で見る鉄道の終着駅を想起させる。

壁面にある数々の広告の間にある窓は

リアルな風景なのに額で飾った絵画が並んでいるようだ。

鎌倉から来た乗客を吐き出し、そして、鎌倉方面へ行く多くの人が乗り込む。

その行き違いだけでも何故かドラマ性を感じる。

もし、そのドラマを映画にするのであれば、言語はフランス語あたりが

お似合いのような気がする。



江ノ電を撮りに沿線をぶらつく。

海沿いの国道にはいつも車がひしめいているが、

一本路地裏に入ると、小洒落た住宅が並ぶ。

足早に目的地へと向かう観光客を横目に、地元の方々は

何かしら余裕を漂わせている。

家の作りとか、停めてある車とかサーフィンボードを抱えた姿だとか。

ただ、犬を連れて散歩している姿にさえも。

同じ古都でも京都や、奈良のそれとは違い、

独特のこだわりと渋みを空気中に感じるのは私だけだろうか。

「あなた方とは流れる時間が違うのだよ。」

いつも、この地に来るたびにそういわれているような気がする。

「ああ、自分はあちらの世界には行けなかったなぁ」

いつも、そんなことを思いながら、その独特の空気のおこぼれを頂き

深く深呼吸をする。



昔々に見たドラマの舞台になった極楽寺の駅。

その駅には何度も訪れたが、考えるに肝心の極楽寺に行ったことが無い。

偶然、NHKのブラタモリでこの極楽寺を取り上げていたので、

一度は、ご挨拶をしなければならないだろうという思いになり参拝。

御朱印を頂いた。

初めての極楽寺。

残存する境内は大きくは無いが、番組から授かった知識を背景に

当時の姿を想像する。

史跡を訪れる際の醍醐味である。

参拝後長谷方面へ下り、覆面饅頭で有名な和菓子屋へ。

ここで力餅を購入。

最後の力を力餅に頂き、鵠沼鉄橋へ。

レールをきしませながら鉄橋の上で大きくカーブを描き迫る300形。

まだ空に赤みはさしてこない。

そして、この鉄橋を横から大きく空を取り入れ空が赤く染まることを祈り

ただ日没時間を待つ。

結果はこの記事のトップの写真。

残念ながら空一杯の赤には遠いが、この日はこれでいっぱいいっぱい。

朝焼け、夕焼け。

文字通り、なかなか一朝一夕にはいかないものである。

撮影日:2024年2月12日
撮影場所 江ノ島電鉄  鎌倉高校前⇔七里ガ浜 藤沢駅構内 長谷⇔極楽寺
                鵠沼⇔湘南海岸公園

                (駅名を並べただけでお洒落感が・・・・。)