キハ58系列キハ28回顧録「感謝」 | てっちゃんのまったり通信

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亡くなった父の通夜の席は、これでもかというような土砂降りの雨だった。

親族の席でひたすら続くお経を聴いていた私の耳にも

はっきりと聞こえるような大粒の雨。

ご焼香をして手を合せる人々がどの人もびしょぬれだったのを覚えている。

そして、その翌日、告別式の日は、昨日の雨が嘘のように雲一つなく晴れ上がった。

その抜けるような青空を振り仰ぎながら、

「いったいどこまで登っていくつもりなの。」

と父に問いかけた。

ラストランを迎えたキハ28の最終日、そしてその前日は

その時のことを思い起こさせるような天候。

最終日前日は雷鳴が聞こえる程の土砂降り。

そんな環境に却って、いよいよ最後だという感傷も手伝い

何とも言えない不思議な感情を抱きながら、最後の一枚を飾る場所を探した。

多くの撮影地が頭に浮かぶ。

迷った挙句選んだのが、一連の撮影でお世話になったたけのこ料理店の裏手。

以前この場所を訪れた時は秋桜の美しさに目を奪われたものだ。

しかし、そのおかげでしっかりと列車と向き合う撮影が出来なかった気がする。

最後はあそこで撮ろう。撮り直しだ。

逆光線となる場所なので、厚い雲が日を隠してしまっていることも好都合だ。

「今日は裏を借りますね。あ、それといつものお弁当も・・・。」

「どうぞ、どうぞ!」

店の中から明るく返ってきた声を聞き、安心してセッティングに入る。

やや、雨は小降りにはなってきたが、それでも濡れながら立ち位置を探す。

川の表情を隠していた木々の枝からはすっかり葉が落ち、晩秋というにふさわしい光景。

先日来からの雨で川は茶色く濁ってしまっているが

寂しさが漂う晩秋の風景としては、ひょっとしたらこの色が最もふさわしいのかもしれない。

そんなことを思いながら画角を考えた。

いすみ鉄道を走るキハ28の最後の一枚。

シャッターを切り終えた後の空虚感をまだ忘れることが出来ない。



「これから、大変ですね」

このブログでも時々ご紹介している某鉄道雑誌の関係の方から言われたことがある。

私の指向している国鉄型と言われる列車はその数を大きく減らし

もはや絶滅寸前と言っていいからだ。

列車ごとの撮影を終えるたびに大きな喪失感と後悔が生まれる。

そして、この先どちらを向いていけば良いのか、しばし途方に暮れる。

本稿の写真を撮影したのは昨年の11月。

遠目に見れば元気そうなキハ28も、寄ってみれば満身創痍であったのが分かる。

良くこんな姿で走り続けたものだ。

そんな思いを抱きながらも、まだ未練が残り

キハ28国鉄急行色は昨年の晩秋で、その時間が止まったままだった。

しかし、季節は巡り、秋から冬、そして暖かい春へと移り

季節感の無い街にも、そこらここらに命の息吹を感じるようになってきた。

この記事を書いたら本当にキハ28は終わってしまう、と考え、今まで記事にしてこなかったが、

どうやら、その終焉を現実として受け入れざるを得なくなってきたようだ。

頭が痛くなる程考え、悩みながら向き合ってきた国鉄色。

なかなか思い通りにはいかないことの方が多かったが、共に見た景色を忘れることは無いだろう。

十数年前に改めて美しいと思い、いったんは富山でその歴史を閉じたと思った国鉄急行色。

 

「終着大多喜に・・・到着です・・・。」

 

あの涙の最終アナウンスを思い浮かべながら

ここまでのすべてに感謝してキハ28の稿を終えたいと思う。



ずっとキハ28の相棒としてともに走り続けたキハ52。

 

2人で走り続けたあの季節はもう戻っては来ない。

相棒を失い一人旅するその胸中の寂しさははかりしれない。

 

それでも彼はたった一人でも走り続ける。

しかし、残念ながらこのキハ52も土日の運行が土曜限定となり、

 

この姿を本線上で見ることができるのも

あとわずかかもしれない。

撮影地:いすみ鉄道 西畑⇔総元 大多喜駅
撮影日:2022年11月26日27日