(タイトルはもちろんスタインベックへのリスペクトです)
30代、知人が誰もいない場所で、お金もなくほぼ寝たきりの生活をしていた。水道以外は止められていた。
週1回ふらふらしながら近くの店に行き、バゲットを1本買う。少しちぎって食べ、週1本のパンで生きていた。なぜバゲットかというと日持ちが良いからだ。水だけは飲めた。
日々ほとんど意識もなく、どれだけの時間が経っているのかわからない。
ある時パンが減っていると思った。前日私がちぎって食べた時の残り量をなんとなく覚えていたから。1日経ってまた減っていた。断面をよく見ると私のちぎり方とは違う。
そしてまた翌日、誰かがパンの袋をカサカサ言わせている。座敷童か何かかな。パンを分け合うのはまあいいかと思った。妖怪でも一緒にこの部屋に暮らしていると思うと少し和む。
さらに翌日、布団をかぶって寝ていた私の胸の位置にわずかな重みを感じる。少し動いてもいる。
そっとめくってみると、布団と毛布の間に小さなネズミが。温かいからもぐったのだろうが、何も私の上でなくても、と思ったが、毛布越しに触ってみると生き物のぬくもりと動きを感じる。
お前がパンを食べていたのか、もう何日も一緒に暮らしていたのか、そう思うととてもかわいく思えた。
小さな生き物の温度と、軽い軽~い重みを感じて一緒に寝ていた。
座敷童でもハツカネズミでも、同居人というべきかペットというべきか、何にしろ一緒に暮らして、パンを分け合って、そういうのはいいなと思った。
後で考えれば、この状態は究極の貧困であり孤独であり、命の危機に瀕していたのだから、ネズミかわいいなと言っている場合ではなかったのだが。
(代表:橋本 裕子)
-------------------------------------------------
まずはお気軽にご相談を。
私たちは共に歩みます。
★ きんつう相談室 ★
電話:080-7354-8259
(平日10時〜16時)
メール:kinntuu@soudannsitu.main.jp
(24時間受信)
ホームページ: https://main-soudannsitu.ssl-lolipop.jp/
------------------------------------------------