読んでいて分からなくなった本 | 無駄話。

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鬱病・適応障害持ちが書く与太話です。「下劣な党派心」による「あら探し」が多いので、合わない方はご遠慮願います。

 タワレコで買った「マーラーの姪・アウシュヴィッツの指揮者、アルマ・ロゼの生涯」を原田知世のコンサートが始まる前に読んでみたかった強制収容所のコンサートマスターの個所を、帰りの電車の中で残りを読んだ。何故ファニア・フェヌロンが忌み嫌われるのかが知りたかったが彼女の本を批判した本があるそうだ。ファニア・フェヌロンの本の邦訳あとがきには誰かからクレームが来たらしい事が記されていたが多分、ブレスラウ出身のアニカ・ラスカー-ウォルフィッシュと姉のレナーテだろう。あるいは他の人か。アルマ・ロゼ自身が編曲して他に編曲者がいて「優れた音楽教育を受けたファニアは、楽曲のオーケストレーションの面でもアルマを助けました」と彼女を酷評する「強制収容所のバイオリニスト」ですら書かれているが「彼女はほとんどの場合、フランス語を話すユダヤ人とだけ付き合い、自分は音楽隊において特別の役割を持っているとの信念で生きていました」なのでフランス語が話せるのでフランス人と称してブレスラウから脱出しようとした(「マーラーの姪」は「フランスに入ろうとした時」とある。邦訳の「チェロを持つ少女アニカ」は絶版だからか「不可能だった」そうだ)アニカ・ラスカー-ウォルフィッシュに近づいたのだろう。ファニア・フェヌロンはベルゲン・ベルゼンで、あのイルマ・グレーゼから英軍が来たと知らせてくれたと自分で書いているが実はフランス語が出来るユダヤ人を相手にした密告者じゃないのか?この本はアルマ・ロゼが彼女のコンサート団員を擁護して特権的な待遇を与えたと評するが、他の囚人からすれば自分達だけ娑婆ですら入手出来ないものを食べて娑婆のドイツ人ですら入手が困難な「本物の」コーヒーを飲んで重労働から解放されてSSに媚びへつらう存在だと忌み嫌われた事が分からないようだ。だからファニア・フェヌロンの本が出るまで誰も表に出さなかったのだろう。アプルボームの「グラーグ」に、よりによってヨッフェの娘が詩篇137篇を引用して同じような活動を書いた引用文があるが「収容所群島」に「私が歌うのは人民のためで、チェキストたちのためではありません」と語ったという歌手が出て来るようにアルマ・ロゼから自分の楽団入りを勧められても「ドイツ人(あるいはSS) 相手に演奏出来ない」と拒否してガス室に入ったり重労働を選んだりした人もいるはずだろうに。

 アルマ・ロゼはプロテスタントの洗礼を受けていてカトリックに改宗したとあるのでユダヤ教徒共同体には属していないはずだが、それで「ユダヤ人」として強制収容所送りとなったのは敢えてユダヤ教に改宗したのだろうか?フェルキッシャー・ベオバハターが党の機関紙と知らないで、こういう本を書く人もいるものだが、こういう新聞が好意的な音楽評を載せたものだ。アニカ・ラスカー-ウォルフィッシュに取材しているクノップの「ホロコースト全証言」にエウジェーニオ・パチェリとかいうおっさんがベルリン司教宛にカトリックに帰依したユダヤ人の実情を知りながら「だが現在の状況では、遺憾ながらわれわれには彼らを効果的に助力することはできない。ただ祈りを捧げるのみである」という書簡が引用されているので、このおっさんには問題を起こした神父様を他の司教区や外国に移すように南米や中東に逃がしたSS隊員などと違ってカトリック信者のアルマ・ロゼなどどうでもいい存在なのだろう。あんた、コンクラーベで聖ペトロの座に就いたんじゃないのか?