注意:この話は自分のオリキャラに「陽気なギャングが地球を回す」に出てくるメンバーを当てはめて書いている部分があります。
キャラを当てはめてるだけなのでネタバレとかはないですが、読む際はご留意ください。
読んでない人でも読めると思います。多分。
それではどうぞ。
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「やめておけ。断言するが、お前には無理だ」
「何でだよ!?俺にならできる!絶対に!!」
「その根拠のない自信が怖いんだよ青也はー!!」
啓がいつものように尚也の家に入ると、先に来ていた2人とこの家の主がなにやら揉めていた。
「あれー?みんなどうしたのー?」
「あ、啓!!聞いてくれよ!!青也がまた変なことを…」
「何だよっ!?なぁ啓、俺にだって喫茶店くらい運営できると思うよな!?」
カチャーン。
絶妙のタイミングで、啓のズボンのポケットから携帯電話が滑り落ちた。
「…青也ぁ~、今何て言った~?」
「だからっ!俺にだって喫茶店くらい運営できるよなって聞いてるんだよっ!!」
携帯を拾い上げると、啓はすぐさま青也の前に行き、その場にひれ伏した。
…正確には土下座、と言うべきだろう。
「…お願い、青也。大量殺人はやめて」
「はぁ!?お前までそんなこと言うのかよっ!?」
「青也ぁ~、前作った鍋料理のことを忘れたわけじゃないよねぇ~?」
「う゛っ……」
前作った鍋料理、というのは、年末にやはり尚也の家で開かれた年越しパーティーの時、
青也が腕によりをかけて作った(自称)もののことを指す。
…が、これが酷かった。まず、内容物が食べ物の色をしていなかったのだ。
当然のことながら、匂いは危険物そのもの。
食べ物の形はぐずぐずに崩れ、もはや液体に近かった。
そんな明らかな有害物質が、おいしいわけもなく。
それを最初に毒見…もとい、味見した尚也は血を吐いて倒れ、
その次に食べた啓(寝起きで事態を把握していなかった)も卒倒し、
作った本人も食べた瞬間魂をどこかに飛ばしてしまった。
…が、3人が元旦の朝目覚めると、その鍋は見事なまでに空になっていた。ついでに酒瓶も。
なぜなら……
「あれは青也が作ったにしては傑作だったがな。なかなかうまかったぞ。
酒とも良くあったしな。思わず、1人で全部食べてしまった」
「「「……」」」
そう、残りの1人、潤也がぺろりと平らげてしまったのだ。
本人はドッキリでもやったのかと思ったらしいが、
尚也はその一言に対し「血を吐いてまでドッキリやるわけねーだろ!!」と反論している。
この件以来、いったいこの男の胃袋と舌はどうなっているのかと、3人の間でもっぱら恐怖の対象となっている。
「だが、喫茶店は無理だ。喫茶店であの鍋でも出すつもりか?」
「あ、あれは…二度と作れないと思う」
青也に先程までの覇気がなくなっている。年末のことを思い出してしまったのだろう。
…しかし、それは一瞬のうちに消し飛んでしまうこととなる。
「そうだろうな。あんなおいしいものは、お前には二度と作れまい。
…そもそも、お前にコーヒーなど入れられないだろう?」
「な、何言ってんだよ!!俺の入れるコーヒーはマジでうまいんだぜ!?」
「ほう、じゃあ作ってみるがいい。そのうまいコーヒーとやらをな」
「おう、望むところよ!!尚、ちょっと台所借りるぜ」
「お、おいちょっと待てよ青也!!」
潤也に触発された青也は、まっすぐに台所へ向かっていく。
それを必死に押しとどめようと、尚也が後を追っていった。
「ふん、どれだけのものができるのか楽しみだな」
「…潤、なんか楽しそうだね……
そもそもなんで、喫茶店やろうとか言い出したわけ?」
「ああ、『陽気なギャング』シリーズに出てくる響野とか言うやつがいるだろ?
あいつが自分に似てるとかで、じゃあ俺も喫茶店できるんじゃないかと思ったらしい」
「あー、あのシリーズかぁ~」
「陽気なギャング」シリーズは、潤也達も一通り目を通している。
もともとは「お前達に似たやつらが小説に出てるぜ」と、他の友人に勧められたのだが、
実際読んでみるとそのまま当てはまる点があまりにも多くて驚いた。
「…で、青也は響野さんが当てはまった、と。
青也はどっちかって言うと説教するよりされる側だけどね~」
啓が苦笑混じりに言った。
「お前はどう考えても久遠だよな。あの餓鬼っぽさといったら他にない」
「餓鬼とは失礼なっ!潤だって年代は同じくらいのはずだよっ!?
…じゃあ、尚也は雪子さん?」
「それでも間違いないと思うが、あいつはどっちかって言うと響野の嫁じゃないか?ツッコミ役だし。
それにあいつは、高速道路でも制限速度は遵守するチキンだからな」
「あんな運転は僕達の中の誰にもできないでしょ~。
と言う事は、潤は成瀬さんだよね~」
「消去法じゃなくてもそうなるがな。
…ただ、その影響が作者の俺達の書き方にまで影響してて困る。
俺はいつもこんなに堅苦しいしゃべり方じゃないんだが」
「…潤はいつもそんな感じじゃない?」
そんなことを話していると、尚也がしょんぼりしながら戻ってきた。
「…青也はコーヒー作ってるの?」
「ああ…『集中できないからでてってくれ』って、強制的につまみ出された」
「…ここ尚の家なのにね……」
「まぁ、心配は要らないだろう。一応喫茶店のマスターのポジションなんだからな」
「そ、そうだな……」
潤也の一言で、とりあえず安堵した尚也。
しかしその安堵も一瞬で消え去った。
「…潤、ちょっと待って。
確かに響野さんは喫茶店のマスターって設定だけどさ、
響野さんの作るコーヒーって、『何でここまでまずくできるのか』ってくらいまずいんじゃなかったっけ…?」
「「…………」」
…ますます、不安は募っていった。
…2時間後。
青也が4人分のカップを盆に乗せ、戻ってきた。
「お前、コーヒー作るのにどんだけ時間かかってるんだよ……」
「ほんとにうまいコーヒーってのは、じっくり時間をかけるもんなんだよっ!
…さぁ、できたぜ。飲んでびびるんじゃねーぞ!!」
タンタンタン、とリズムよく3人の目の前に置かれたコーヒーカップ。
が、すぐには誰も飲もうとしない。
まるで毒物処理班のような慎重さで、カップの中身をのぞいている。
「…色は一応黒いねー」
「匂いもコーヒーだな」
「ちゃんと液体だしね」
「おい、なんだよその感想はっ!まじめに飲んでくれよ!!
…あ、砂糖は先に入れたからな。ミルクはお好みでどうぞ」
…砂糖を先に入れた?
尚也は何となく嫌な予感がした。
他の2人が飲む前に、毒見…いや味見をしてみなくては。
が、そう思った時には既に遅かった。
「にがじょっぱいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!」
次の瞬間、壁を破るんじゃないかという勢いで啓の絶叫が響き渡った。
四肢をばたつかせて悶絶している。
ソーサーの上にカップを落とし、横になったカップから黒い液体がこぼれていた。
いつもならすぐにそれを拭くところだが、それ以上にコーヒーの味が気になった。
恐る恐る、カップに口を近づけて、一口。
…殺人級のしょっぱさと苦さが、口の中に広がった。
噴出して卒倒しそうになるのを、必死でこらえる。
「青也……これ、何入れた……?」
「は?そりゃ、コーヒーの素に決まってるだろ。
ナスカフェを5杯と、それから蓋の赤い瓶に入ってたちょっとピンクがかった砂糖を適量と……」
…適量って、絶対大量の意味だよな……
しばし青也を見つめた後、尚也はすさまじい勢いで青也に詰め寄った。
「あのなぁっ!インスタントコーヒー5杯も入れるバカがどこにいるんだよっ!
それからっ!そのピンクの奴は砂糖じゃなくて岩塩だー!!」
「な゛っ!?何だよそれ!?
…いや、俺の作ったコーヒーがまずいなんてはずは……」
尚也の言葉が信じられないとばかりに、青也は急いでカップの中のものをがぶりと飲んだ。
…瞬間、即噴出した。当然のことながら、尚也の顔に直撃。
「げほっげほっ!おい、何だよこれ!!どこの誰がこんなまずいもん作ったんだよ!?」
「「お前だーーーーーー!!!!!!」」
啓と尚也が同時に切れた。大乱闘開始。
…するかに、見えたのだが。
「…何をギャーギャー騒いでるんだ。うまいじゃねえか、これ」
3人はその場で文字通り固まった。
声の主は……潤也。
「…え?潤、エイプリルフールはもう少し先だよ?」
「俺が嘘を言う男に見えるか?」
「…青也の話、聞いてたよな?ナスカフェ5杯だよ?」
「いい感じの苦味が出てるじゃないか」
「……間違えて塩入れちまったんだぞ?」
「コーヒーに塩も悪くないな。苦味とぴったりだし、極上のスパイスじゃないか」
青也、これなら喫茶店開けるぞ――一言そう言って、潤也は涼しい顔でコーヒーを飲んだ。
ズズズッ…と、この場にそぐわない優雅なティータイムに流れるような音が聞こえる。
3人は呆然と、潤也を見つめていた。
潤也が彼らの様子を気にする風はない。
「…青也ー…潤専用の喫茶店でも開いたらー?」
「……やめておくぜ」
「………そうだね」
またひとつ、潤也への恐怖心が増えてしまった3人であった。
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以下オリキャラ話全開のあとがき
お題から話を考えたのではなく、話から合うお題を考えたので
どれにしようか大分悩みました…これでもなんかおかしい気がする(汗
陽気なギャング読んでる時からずっと書きたかったんですよね、この4人でこういう話。
響野さんのコーヒーはまずいってのを読んでたら、どうしても昔のネタが出てきてしまって。
(正確にはネタ発案→それを某高校文芸部の友人に書いてもらった と言う流れだったんですが
しかし、潤也=味覚音痴が確立されかかってますね(汗
味覚音痴なわけではないんです。どんなものでもおいしいといって食べられるだけなんです。
…それを味覚音痴って言うのかorz
ちなみにこの4人の中で一番料理がうまいのは尚也です。ステーキ用の塩とか持ってるくらいだしね。
その気になれば料理研究家になれるんじゃなかろうか。
他の家事もうまいと思うので、将来はきっといい主夫になれるはず。
他のメンバーは、青也は見てのとおり、啓はコンビニ頼り、潤也は尚也にたかってる…だと思います(ぇ