さんさん録 (1)

こうの 史代
さんさん録 1 (1)
奥野参平(じいさん、たぶん63歳ぐらい)は妻が不慮の死を遂げたあと、息子の家族と同居することになった。
生活のすべてを妻の"おつう"に頼っていた参平は、家のことが何も出来ない。嫁が働くことになって主夫になると言い出す参平に、家族はみんな不安顔。でも参平には秘密兵器があった、おつうが奥田家の生活のすべてを書き残してくれた 「さんさん録」 が…。
参平こと、さんさんがとにかく可愛い。いっけん偏屈に見えて、これがとても柔軟なじいさんで、素直に謝ることが出来るので、それが周りとの関係をやわらかくしますし、通じて作品の雰囲気も優しくしているんですね。
当然さんさんを囲む家族もみな優しいのですけど、特に孫娘の乃菜(のな)のキャラクタが秀逸。虫が好きな無口な子供で、なんと不細工な設定。不細工な孫って、漫画で見たの初めてかも…。でも飄々としたところは芯の強さだということが次第に分かって、そうすると途端に愛くるしくなってくるんですけどね。
亡き妻が残してくれた 「さんさん録」 は、故人とはいつでも思い出のなかで逢えるという優しさであり、またそれは有限の言葉しか残してくれないという切なさでもあるのです。
そしてなにより、こうの史代が描きだす絵が素晴らしすぎます。。特に本編の背景が途轍もなく、ややもすれば扉のカラーページよりも、たった2色で描かれる背景の陰影の方が鮮明に映るくらいなのです。白黒の色彩感覚とでも云えばいいでしょうか、舞台が日本であるということを線のタッチが教えてくれるんです。
作者は山川直人のファンらしいのですが、なるほどなあと思いますねえ。二人とも明らかに日本から生まれた作家で、そして二人とも日本の風土を心から愛しているのですから…。
大阪ハムレット (1)

森下 裕美
大阪ハムレット 1 (1)
私がこのブログで感想を書いている本は基本、全部オススメなのですが、この 「大阪ハムレット」 はちょっと特別な一冊になるかもしれません。
大阪の少年少女の日常、そのオムニバス形式。ハムレットと似た境遇のヤンキーだったり、性同一性障害の男の子だったり、いろいろ複雑だったりするのですが、彼らの言葉、感情、モノローグは、チョーがいくつも付くくらいの素直さで、ぐんぐん胸をいっぱいにしてくれます。最初を読んだときにはストレートに泣かされた感じだったのですが、2回目だと今度はいろんな細かいところの描写に気付きだして、それでまた泣かされてしまった。。
森下裕美の4コマ以外を読むのは初めてでしたけど、いやー凄いな。これが寓話やファンタジーといった甘いものではなく、下を向かない力強さを意図的に描いていっているところにシビれます。
ほんとしみじみしました、私もささやかな夢なら叶うと思っていましたね…。
ミャンマーの柳生一族

高野 秀行
ミャンマーの柳生一族
本屋で題名を見たときには、おお、これは歴史空想ロマン! 松永誠一郎に敗れた柳生義仙がミャンマーで活躍するのかー! などと妄想していましたが、よく見ると作者が高野秀行ということで、やはりミャンマーの危ない旅行記でした。
ミャンマーの現代史を、その閉塞性を江戸時代の鎖国になぞらえて、旅に同行する軍情報部を柳生だと云っているんですね。
アウンサンによるビルマ建国からの現在までの流れは江戸幕府のシステムに酷似しているということを見いだして、スー・チーは千姫、柳生と老中派の対立などなど、とても分かりやすく今のミャンマーの実態を記してくれています。
高野秀行の筆致の軽快さもあって、ミャンマーの人々の真面目さや可笑しさ、微笑ましい駄目さが、ひしひしと伝わってきます。
今回は小説の取材で船戸与一も同行。二人は早稲田の探検部において先輩後輩の仲でして、船戸与一の豪快さやちょっとトホホな一面を忌憚なく描かれていて、いい大人の無邪気さが笑えます。次作の題名をひらめくエピソードなど、船戸与一は作品からのイメージそのまんまの人なんですねえ。フセインに似てるっていうのも…。
ミャンマーの歴史と現状、そしてハチャメチャな旅行記、それらがとてもユーモラスに分かりやすく伝わってきて、興奮させてくれる一冊でした。
ミャンマーの愛すべき人たちがこれからも笑っていられるように願わずにはいられません。江戸時代の鎖国から進んできた私たちが今、笑っているのかどうかは分かりませんが。。
snatch
血液型別の性格判断の信奉率というのは私の周りでももの凄く高くて、特に女性はほとんど確信を持って話しています。
いろんな実体験から確信を持つようになったのでしょうけど、ほとんどの人が当たり前のように信じているのは凄いなあと思いますね。
別にそのことにはなんの文句も問題もないのですが、なーんかA型の私はどことなくバカにされているような気がするのです! そして、AB型の人は、たまにB型の人も、どことなく得意気。ちくしょー。
久しぶりにPainterを起動しましたよ。線画の抽出にも失敗する始末。苦労して作ったカラーセットが壊れていて落ち込んだのですが、頑張って塗りました。
いちおう 「よつばと!」 のつもりです。もっと光り輝くような翼を描きたかったのですけど、「灰羽連盟」 のレキの羽のような色合いに…。
暑くなってきてやだなー、と上着を脱ぎながら思う。帰宅の電車の中で、イタリア人に話しかけられました。晩ご飯は、水菜のパスタ。チャットモンチーの 「恋の煙」 という歌を聴きながら、「夢にまで見た夢に 手が届きそう」 という歌詞に痺れる。風呂で転ぶ。
そんな一日でございました。
QUOJUZ (1)

柏木 ハルコ
QUOJUZ 1 (1)
「花園メリーゴーランド」 「鬼虫」 は文化に組み込まれた性を意欲的に表現していて、価値観の紹介という面で非常に面白い作品でした。
そんな柏木ハルコの最新作ということで、この「QUOJUZ」。小姑の複数形、コジューツということなんですが、とにかくギャグに突き抜けちゃってんですよね。
異母弟・幹生と同居することになった三姉妹は、幹生に彼女ができるのを邪魔しまくり! エロでポップでキュートでクレイジーな、柏木ワールド全開の最新作!!
と出版社の紹介ですが、あるのはエロとクレイジーだけです。読み始めには、今回は近親相姦からの性を描くのかなと思いきや、実際には単なるエロギャグの連発。テーマ性のパワーがギャグに注ぎ込まれているため、その破壊力はすごいです。
特に一番下の姉、すももが飛び道具的なポジションで、とにかく笑かせてくれます。
今のところは頭を空っぽにしてくれるギャグマンガの体裁ですが、柏木ハルコということなので、まだ隠されたテーマがあるのかも。新たな価値観をまた教えてくれるような…。
兎にも角にも、すももの「命の匂いがする…」は、後世に語り継がれるべき名台詞ですよ! これはほんとに笑い転げ廻った。。
