GUNSLINGER GIRL (5)

著者: 相田 裕
タイトル: GUNSLINGER GIRL 5 (5)
洗脳と義体化された年端もいかない少女たちが、政府の暗殺要員として生きていく物語。
前巻あたりから少女たちの対抗勢力であるテロリスト側の話を広げ始め、今巻ではその殺し屋であるピノッキオのクライマックス。この争いを描きながら終焉に向かっていきそうな雰囲気です。
洗脳による教官への少女たちの盲愛がこの作品の異常さであったり魅力であったりしていたので、このまま人知れずに内部崩壊していくのが相応しい結末かなあとも思っていたのですが。ここまで話を広げたとしても、結末は悲しいものでしょうけど…。
誰にも救いは無いとわかっていてそれを描くことはない漫画、痛みの中毒になってしまいそう。
青春ピカソ

著者: 岡本 太郎
タイトル: 青春ピカソ
18歳のタローがルーブル美術館でセザンヌを見たとき、雨の中泣きながら下宿に帰った。その後ピカソを見たタローは、泣くまでに2年間かかった。そこから始まる岡本太郎のピカソに対する果たし状であり恋文である本作です。
「ピカソのみ輝いている。周りは全部闇である」
創世と破壊の繰り返しであったピカソを詳しく紐解きながら、ピカソと自分の位置というものを探っていきます。最後にピカソとの対話を経て、あれほどアバンギャルドであったピカソも老成していき、次の世代に突きつけるテーマもない現状を見て、岡本太郎は日本に向かって呼びかけます。立ち上がろう、と。
最後までアバンギャルドであろうとした岡本太郎、パワーを溢れさせる一冊でした。あともう一つ、変人奇人に高みは目指せない、常識を知るもののみ高さを知る。これも痛感したことでした。
小川未明童話集

著者: 小川 未明
タイトル: 小川未明童話集
小川未明は早稲田大学在学中は坪内逍遙や小泉八雲に師事し、その後文壇デビュー。アナーキズム、人道主義に傾倒していきますが生活は貧窮していきました。「赤い鳥」に童話を発表する機会を得てからはその評価を高めていき、「童話作家宣言」をしてからは純然な童話作家として数々の作品を残していきました。
ちなみに未明は「みめい」と読まれていますが、本人は「びめい」と云って欲しかったそうです。
「赤い蝋燭と人魚」「野ばら」などが有名ですし小川未明らしさもよく表れているとは思うのですが、私は「金の輪」を推してみたいです。
病にずっと伏せていた太郎が久しぶりに外を歩いていると、金の輪を回しながら走る少年に出会います。その少年はまるでずっと仲良しだったかのように微笑みかけました。嬉しい気持ちで家に帰った太郎はその少年と一緒に金の輪を回す夢を見ます。そのあと太郎はまた熱を出し、数日後に七つにして死んでしまいました。
あまりに唐突なラストに読んだ直後はキョトンとなるのですが、わずか4ページのこの短編にはずっと靄(もや)がかかったような不思議な雰囲気で続いていきます。それは太郎が熱を出しながら見ているような幻想を思わせるものであり、死というものを優しく包み込んでいるようでもありました。
小川未明自身も貧困時代に子供を栄養失調で亡くしていて、その思いを以て書かれたと云われています。私も子供時分にとても体が弱く、大人になれるとは思っていませんでした。成長というものが靄に隠されているんですよね。幸い私は無事に大人になれましたが、太郎は金の輪の少年によって連れて行かれてしまった。金の輪を回す少年が、死そのものの象徴であるのでなく、死の意味であったのかな、と。漠然とした作品で、読み手の数の解釈がありそうですが、私にとってはこんな感じでした。
この雰囲気はどうしても言葉で解いていくのは難しいのですが、読み進めている時に静かな音楽が頭の中で流れているような、とても荘厳だったように思いました。
エマ (5)

著者: 森 薫
タイトル: エマ (5)
テレビアニメから入って一気に集めましたが、もう見事としか云えないですねえ。隙が全くなく、小川と急流を流されているように、物語に翻弄されっぱなしでした。
まだ読み終えたばかりの興奮状態で作品世界に囚われているのですが、心情の移り変わりは多くのコマを使って丁寧に描き出し、動きのある場面ではいろんな視線を入れながら劇的に見せたりと、初連載らしいですけど凄まじいですねえ。エンターブレインには桜玉吉や福島聡は勿体ない、なんて思ってましたよ。。すいませんでした…。
19世紀末の英国でのメイドのエマと上流階級の青年ウィリアムとの恋物語なのですが、5巻に入るとほのかだった二人の気持ちが爆発していく感じですね。1話まるまる使ってエマの雰囲気の変化を表し、次話の冒頭でのウィリアムとの手紙でその原因をほのめかすところは、ニヤリでした。
二人の恋愛の障害はウィリアムの父親を含む上流社会なのですが、最後にとっておきの毒が出てきて終わりましたね。きっかけが出てきた感じですが、これがどう繋がるのか楽しみです。
6巻は今年中に出てくれるのかどうか。。待ちきれましぇん。
のだめカンタービレ (12)
- 著者: 二ノ宮 知子
- タイトル: のだめカンタービレ #12 (12)
時間軸で未来を前、過去を後ろとして、それを指針としていくことがいわゆる普通であり、ある意味で正しい。で、自分の向いている方角が未来、過去、右、左、どこだろうが向いている方角が前なんだと信じ込み突き進んでいく。これが通称オタク。その歩んだ軌跡も含めてオタクといえるかもしれません。未来を前だと思い進んでいる大多数には、それが異端に見えていろいろ云われてしまうわけですが、信じ切っている人には些細な雑音にしか聞こえないですし、それはかっこよく見えるわけで。私なんかは、自分の信じる前に進みたがっているのに時間軸にも影響を受けてどちらでもないフィールドで右往左往してしまうという、非常にかっこわるいわけですが…。
そこで、のだめなのですが、彼女はずっと千秋に思いを寄せていて、今巻でついに千秋も変態の森に入り込んだわけですが、のだめはそこで浮かれることはないんですよね。すべてを突き進むための糧にしていくというのは、オタクの鏡といえそうです。そこには、二ノ宮知子の哲学も見えてくるようで、この先の千秋の扱いに若干の不安も覚えたりしてますが、どうなるのか楽しみです。
巻末の講談社のサイトで「のだめカンタービレ」の携帯の壁紙をゲットして喜んで眺めていたところ、、周りから「なにあれ~」みたいな声が聞こえたような気がして、すぐ普通のに替えてしまう私。オタク失格以前に、人間の器の問題のような気が。。