トランスルーセント ―彼女は半透明 (2)

岡本 一広
トランスルーセント 2巻―彼女は半透明 (2)
絵の発想が広がっていて、それがそのままストーリーの広がりになっているのが、読者ながら嬉しくなってきます。ただ、この表紙は「恋風」かと。。可愛いですがっ。
あと話はずれますが、、一巻の二話までは鼻梁を描いていたのに、三話からは省略する絵になってるんですよね。こんな変え方って珍しいと思います、タイムラグがあったのかな。
マモルが無敵なので、しずかの変化を今後も描いていくのでしょうけど、ここでマモルに変化を起こさせるのも面白そう。
大河内さんは当初のポジションからは変わりすぎですが、大変愛しい。
永すぎた春

三島 由紀夫
永すぎた春
大学生宝部郁雄と古書店の娘木田百子は婚約したのだが、一年三ヶ月後の郁雄の卒業までは結婚を待たなければいけなかった。
なんの障害もなく待つばかりというのは、あまりに不安定すぎる、永すぎた春だった…。
三島の青春小説の中では、テーマ性が強く、人間への信頼という点でも色濃く表れてる作品です。
ただ、そのテーマを守るために、後出しジャンケン的に都合のいい心情変化を結構出してきているんですよね。その表現がとてもユーモラスなので気になるほどではないのですが、由紀夫、必死だな、とは思いました。
最初にこの作品を読んだのは小学生の高学年だったと思うのですが、百子がプレイボーイの奸計にはまり唇を奪われてしまうシーンがあるのです。結果的にはどうということはないのですが、当時の私としましては、もう許せなくて許せなくて、何とも云えない気持ちに陥って、のたうち回ったのを覚えています。
まあ、何が云いたいのかといえば、何て純情で可愛い少年だったんだろう、という無意味な懐古(だいた)。
ラッシュライフ

伊坂 幸太郎
ラッシュライフ
真摯な泥棒、神にすがる青年、不倫相手の妻を殺したい女性カウンセラー、犬を拾った無職の中年。
激しく、華麗に、せっかちに、突進するように、4つの人生が仙台を舞台に交錯していく。
伊坂幸太郎のことを私が今更どうこう云う必要もなく、非常に手の込んだプロットを軽やかな筆致で、慎重に私たちを騙しにきています。
人生が一回しかない事への反逆として読書をするような方には、打って付けの一冊なのではないでしょうか。
これほどエンターテイメント性が強い作品においては、珍しく作者の倫理観や思想が文中に強く押し出ているんですよね。
物語はもう少し劇的に、残酷なラストも考えられそうだったのですが、静かに優しく終結していったところも見ますと、ストーリー性の中に作家性を出来るだけ盛り込んでいきたい人なのだなと思います。
正直、文庫版の解説の池上冬樹が完璧に分析なさっているので、云うことがないんですよね。。書評ブログ殺しだよ!
それはさておき、彼も仰っていましたが、未だこの世界に形容の言葉がない小説でした。忙しい日常の中で読む事で、堪らない面白さを感じられるのです。
花子と寓話のテラー (4)

えすの サカエ
花子と寓話のテラー (4)
人々は、いとも簡単に都市伝説(=寓話)に取り憑かれてしまう。そんな彼らを救うのが、「寓話探偵」亜想大介。亜想に取り憑く「トイレの花子さん」、助手の平沼カナエと共に亜想は数々の寓話に立ち向かっていくが…。最終巻。
この巻までずっと続いてきていた世界観や寓話の本当の仕組みなどが、ラストに向かって全て淀みなく収束していくのを目の当たりにして、もう震えるばかりでした。
最後はこの作品自体を寓話にしてしまい、読者をも取り込む、なんてことを仕掛けてくるとは。。そして破綻することなく大団円に持っていくなんて。。ああ、素晴らしいよ、えすのサカエ。
ただ、橘真冬は、寓話の本質だったという解釈で正しいのかどうか、私にはよく分かりませんでした。もう少し明確な提示が欲しかったかも。
「何て愚かなんだ、読者って奴は」
「みんな自分勝手に人の話を歪めやがるっ!」
曲がりなりにも本の感想を書いている身としては、ドキッとする台詞なのですが、ああ、云っちゃったよ…って感じの台詞ですよねえ。まあ、これも作品自体の寓話化への読者に対する仕掛けではあるのですが、明らかに二重の意味合いを感じ取れて、ニヤリとしてしまうのです。
前巻までは私の中では佳作ぐらいだったのですが、この最終巻において傑作に昇華しましたよ。
これは是非読まれて欲しい作品です、次回作が待ちきれないぐらい。
(最後にどうでも良いことですが、コミックの帯、花子の尻が隠れてねー。)
