貧乏姉妹物語 (1)

かずと いずみ
貧乏姉妹物語 1 (1)
最近はテレビで子犬を見ているだけでなぜか涙ぐんでしまうぐらい疲れ切っているのですが、この「貧乏姉妹物語」も効きましたねえ。
母親とは死別、父親は借金を作って出奔。中三の姉"きょう"と小三の妹"あす"は、貧しいながらもお互いを支えあう、二人だけの生活を送っている。
お金無いなあ、あはは、そうだね、お姉ちゃん、うふふ、というテンションで終始進んでいくので悲壮感はなく、焦点はあくまで姉妹の愛情なので安心品質で心暖まれます。
そしてこの姉妹は、超絶に可愛く、超絶に素直で、超絶に愛し合いすぎ。まったくもう、たまらないですよ…。
シビアさを消す仕掛けとして、姉の労働シーンはほとんど出さないんですね。生産と消費を描かず、悪人も出さないので視点が妹(子供)寄りになって、世界観がそれほど厳しいものにはならずに済んでいるのです。
シビアな設定の中の優しい世界。これは物語、強いては漫画の本来のあるべき道の真ん中なんですね。不可視な広がりを見せる漫画の中でも、正当進化の上にある作品だと思います。
まあ、最初は百合目的で買ったんですけどね。
愛をひっかけるための釘

中島 らも
愛をひっかけるための釘
私の読書は、最高で10冊ぐらいを並行しながら同時に読んでいくスタイルなのですが、その合間を埋める本として昔の中島らものエッセイは最適なんですよね。
過去も現在も未来も、すべて軽快に眺め、軽快に振り返っているので、言葉がススッと入ってきて心地がいいのです。
このエッセイはバブル期の前か、その最中に書かれているので、軽快さとは別にどこかしら浮遊感があるんですよね。その辺に若干の違和感を感じたりもするのですが、らも独特の感覚によっていろんな事を読者に気付かせてくれる一冊です。
いろんなテーマのエッセイがあるのですが、その一つに光のスピードに関するものがあります。
それは、光にスピードがあるならば、我々が目にする森羅万象、そのすべての過去を見ているということではないか、というもの。そしてエッセイの結びには、目の前の愛する人の微笑も所詮は過去の微笑。ならば、肝心なのは想う相手をいつでもその腕の中で抱きしめていることだ、というなかなか洒脱な言葉が。
実は私もその昔、これとほとんど同じ言葉を女性に云ったことがあるんですよね。はじゅかちー。ほとんど死刑ものですが、相手の女性の、は?何云ってんの、気持ち悪い、という言葉で本当に死刑にされましたよ。
その死刑宣告によって、私は立派な変態に生まれ変われたのでした。
アイシールド21 (16)

稲垣 理一郎, 村田 雄介
アイシールド21 16 (16)
結構引っ張ってきていた西部ワイルドガンマンズ戦だけあって、アイデアを盛り込んだ密度濃い試合展開でしたねえ。
あと、敵の実力者に認められるというのは、そうだよ、大変だったんだよ、って感じで嬉しく、燃えますね。いいキャラだぞ、キッド。
それから毎巻思うのは、村田雄介は絵描くの好きすぎ。これだけの絵をこの密度で詰め込まれているだけで、買い続けられちゃうのです。
武装錬金 (9)

和月 伸宏
武装錬金 9 (9)
てっきり最終巻だと思っていたら、まだ続くんですね。次巻は何ページ分描かなくてはいけないんでしょうかね。。
視点が散漫なので、私的にはギャグパートと斗貴子の生真面目さが全面に押し出してきていれば、ラストのカズキにもう少し泣けたかも。
主人公の周りのキャラクタがいい感じに膨らんできて明らかに乗ってきたなと感じていると、勝ち抜け式の敵がわんさか出てくる…。
いろんな事情に振り回されている和月伸宏を想像するだに、そこが「武装錬金」の一番の泣き所なのではと思ってしまいます…。
三島由紀夫レター教室

三島 由紀夫
三島由紀夫レター教室
二十歳から45歳までの男女5人による、手紙のやりとりだけで明かされる本音と虚飾の数々。
憎み合い、愛し合い、金を無心し、恋のスパイを依頼する。極上のユーモアで綴られる書簡文例集。
この本の存在を知ったのが三島を読み始めてからでも少しあとのことで、「仮面の告白」や「美徳のよろめき」に唸っていたところでしたのでその幅の広さに大変驚いたのを覚えています。
手紙というのは基本的には過去からやって来るもの。本音を書いているように見えてもどこか飾ってあったりするものなんですね。
誰かしら文面上の人格というものが出来てしまって、しかもそれが顔見知りの間で交わされる手紙であるものですから、虚々実々ないまぜになってそこに人間の本質が一瞬垣間見えるのです。
まず人物の性格を設定して、その設定から手紙上の性格を想像し、その二つの性格を見せたり隠したりしながら、書簡上だけで物語を転がしていく。三島由紀夫の力量がまざまざと示されている一冊といえるのではないでしょうか。
作品中の面白かった文面を。
ともすると、恋愛というものは「若さ」と「バカさ」をあわせもった年齢の特技で、「若さ」も「バカさ」も失った時に、恋愛の資格を失うのかもしれませんわ。
かれらはただ、告白したり主張したりすることの露出狂的な喜びだけでそうするのです。手紙を出してしまえば七割方満足しているのです。
それは彼女にやさしさと自信との平和な結合がないからです。女の真の魅力は、その二つのものの平和で自然な結合以外にないのですからね。
たいていの女は、年をとり、魅力を失えば失うほど相手への思いやりや賛美を忘れ、しゃにむに自分を売りこもうとして失敗するものです。もうカスになった自分をね。
バカバカバカ。ハヤクケッコンシテ。