神と謳われた父の味に
近づこうとしても
納得いくものはできない。
追えば追うほど
大きな壁となって
立ちはだかる。
料理人としても
一人の人間としても
どうすればいいか
分からない。
そんな陳さんを
救ったのは
奥様の言葉でした。
「お父さんの真似じゃなく
自分の料理のファンを
増やすよう努力したら」
(う~ん。
確かにそうかもしれない。
周りをよく見たら自分より
キャリアの長い兄弟子が
作った料理だって
父の料理とは違う)
「なんだ、簡単なことじゃん。
おやじの味が出せるわけない。
自分が思うものを
一生懸命やればいいんだ。
おやじがまとっていた存在感
オーラとかカリスマ性だって
それまでやってきた
仕事の積み重ねであって
オレは同じ道を
歩んではいけない。
父と自分は違うんだから」
陳さんはお父さんの呪縛から
解き放たれ、3年後
中華の鉄人として
活躍するようになりました。
おわり
出典:『わたしの失敗』(産経新聞社、pp.160-161)