中華の鉄人(2) | 読書セラピー(幸せのページ)

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木に吹いた風が緑色になるように
花に吹いた風が芳香を運ぶように
風に言葉を託して届けます。

神と謳われた父の味に
近づこうとしても
納得いくものはできない。

追えば追うほど
大きな壁となって
立ちはだかる。

料理人としても
一人の人間としても
どうすればいいか
分からない。

そんな陳さんを
救ったのは
奥様の言葉でした。

「お父さんの真似じゃなく
自分の料理のファンを
増やすよう努力したら」

(う~ん。
確かにそうかもしれない。
周りをよく見たら自分より
キャリアの長い兄弟子が
作った料理だって
父の料理とは違う)

「なんだ、簡単なことじゃん。
おやじの味が出せるわけない。
自分が思うものを
一生懸命やればいいんだ。

おやじがまとっていた存在感
オーラとかカリスマ性だって
それまでやってきた
仕事の積み重ねであって
オレは同じ道を
歩んではいけない。
父と自分は違うんだから」

陳さんはお父さんの呪縛から
解き放たれ、3年後
中華の鉄人として
活躍するようになりました。

おわり

出典:『わたしの失敗』(産経新聞社、pp.160-161)