野の花(4) | 読書セラピー(幸せのページ)

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木に吹いた風が緑色になるように
花に吹いた風が芳香を運ぶように
風に言葉を託して届けます。

※野の花(1)から始まります。

そのうち、新聞を読んでもいい
という男性が現れ、
はるさんは結婚しました。
今のご主人です。

「好きで、好きで」
といったロマンチックな結婚では
ないかもしれませんが、
生き方を受け容れてくれるご主人は、
はるさんをとても愛しているのでしょう。

彼女は、針仕事と読書が
できる幸せをかみしめました。

「子どもには、私が学校へ
行けなかったことがないように、
ただ必死に一生暮らしたようなものです。

お陰さまで三人の子どもは、
私たちとしてはこれ以上
望めないような教育をして、
三人とも高校の先生をしています」

はるさんは、そう話した後、
寝たきりになっているご主人のもとへ
帰っていきました。

あとから、彼女の娘である岡先生が挨拶に。

「いいお母さんですね」

「ええ、立派な母です。
貧乏しても愚痴を言ったこともなく・・・

私たちが女学校へ進むと、
私たちの教科書を自習して、
子どもに遅れないよう努力しました。

母は一生の間、一日も休むことなく、
新聞を精読したようですの。

自分で考えて、わからないと
私たちに質問したり、
最近でも私たちの読むものなら、
何でも読んでおります」

つづく

出典:『心の窓』(芹沢光治良、新潮社、pp14.-16)


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