土曜日の夜とラジオとラズベリーズ | アナログオーディオと音楽★NetThePopブログ

アナログオーディオと音楽★NetThePopブログ

アナログオーディオと音楽の雑文~自作オーディオと隠れた名盤etc
ヤフブロ移民組

 私が生徒とか学生とか呼ばれる時代は週休二日制ではなかった。土曜日は半ドンといって午前中は授業があって大人も仕事を午前中で終了していた時代だった。

 音楽に夢中になりはじめていた10代の頃、お気に入りの洋楽ラジオ番組は割と週末に放送されていたような気がする。当時の私にとってはウイークデイのラジオのヒットチャート番組も楽しかったが、週末のラジオ番組はもっと楽しかった。そこで出会ったバンドの一つにアメリカのバンド「ラズベリーズ」がある。多分、八木誠さんの全国ネットの番組で彼らの曲を知ったのだと思う。

 ラズベリーズは1972年にシングル「Don't Want to Say Goodbye~邦題:さよならを言わないで」でデビュー。日本ではシングルリリースはされなかった。佳曲ではあるが、ソフトロックな面持ちの地味な曲で、ビルボートチャートでは86位、つまり不発だった。ラズベリーズの日本でのデビューシングルは「ゴー・オール・ザ・ウェイ」だった。この曲は1972年8月19日に米国ビルボードチャートで5位になっている。以上2曲はファーストアルバム「Raspberries」に収録されている。プロデューサーは名匠、ジミー・イエナ―。グランド・ファンク・レイルロードやスリー・ドッグ・ナイトのプロデュースで知られた人物でラズベリーズのすべての作品を手掛けた。当時の東芝音楽工業の売り出しキャッチコピーは「ハードポップ」だった。まだ「パワーポップ」なる言葉が使われる前の話だ。このビートルズ時代のブリティッシュ・インヴェイジョンに影響を受けたバンドに私は夢中になった。

 2ndアルバム「Fresh」からのシングル曲「I wanna be with you~邦題:明日を生きよう」、「Let's pretend」、3rdアルバム「Side3」からシングル曲「Tonight」、「Ecstacy~邦題:君に首ったけ」とレコードは順調にリリース。私の聞いていたラジオ番組では新曲が出る度にオンエアーされていた。彼らは海の向こうでも人気を誇っていると思っていたのだが、世の中そう甘くはなかった。メンバーチェンジもあり、1974年に4thアルバム「Starting over~邦題:素晴らしき再出発」、シングル「Overnight Sensation」をリリースした頃から雲行きが怪しくなっていたようだ。同アルバムから日本では「Party's over」が2枚目のシングルとなった。多分その頃にはグループは崩壊に向かっていたと思われる。つまり彼らの曲は売れなかったのだ。アメリカでトップ40に入ったシングルは4曲。前述したシングルは「Party's over」以外、どれも秀逸な出来だったと感じている。

 僅か3年間の活動歴。4枚のアルバムを残してラズベリーズは解散。個人的には最後のアルバム「スターティング・オーバー」は名作だと思っている。

 

 何故唐突にラズベリーズの事を書き始めたのかと言うと、その中心メンバーだったエリック・カルメンが3月12日に逝ってしまったからである。74歳だった。訃報とともにそのミュージシャンについて書く…ましてや自分が多感な時期に聞いた人であったなら、暫し呆然、脱力した後に文章を綴り出す…結構厳しい作業になる。ここ数年そんなことが繰り返されていると気が重くてキーボードを叩くのも億劫になってしまう。

 

 エリック・カルメンは1975年にソロに転身。ソロデビュー第一弾「オール・バイ・マイ・セルフ」が世界的なヒットとなる。セルゲイ・ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18第二楽章(アダージョ・ソステヌート)を基礎に作られているなどということは、当時15歳のロック少年は知る由もなかった。当時の音楽雑誌では解説される事もなかった。「オール・バイ・マイ・セルフ」のヒットで彼のイメージは一転したかも知れない。まあ、それは私にとってはどうでも良かったりする。ソロになってもオリジナルアルバムは6枚しかない。最後にリリースしたアルバムは1998年「Winter Dreams~邦題:夢の面影」で、今や大昔である。2000年代になってラズベリーズを再結成し、米国のみコンサートを行っていたようだ。ライブアルバムが2種類リリースされているが残念ながら私は持っていない。2007年にリリースされた「Live on Sunset Strip」の映像をYouTubeでまるまる見た記憶がある。今もその映像の断片があるようだ。

 

エリック・カルメンは位置づけが大変難しい。シンガー・ソングライターと言ってしまえばそれまでの話だが、その作品の色合いはと問われたならば答えに窮する。ポップ・ロックとかアメリカン・ポップと称してしまえば、それまでなのだが、それもまた適格ではないような気もする。

訃報を知ってラズベリーズのアルバムから聞き返してみる。ソロ作品はオリジナルアルバム未収録の曲が収められたベスト盤などもある。目の前にあるレコードとCDを前に溜息をつく深夜の一幕だったりする。

 

※ヒット曲、アルバムの詳細な解説やチャートアクションを書くと切りがないので下記のリンクを参照願います。

 

ラズベリーズ wikipedia英語版 

エリック・カルメン Sony Music 

エリック・カルメン wikipedia日本語版