学テCのレビューをまだ書けてないのですが、ひとまず都合上先に11月道コンから書きます。
難易度がなぜか妙に高い回が連続している今年の中3道コン、今回はどうだったのでしょうか。
今回は、大問1にボリューム少な目の評論を入れて、後の大問で小説をまるまる1題使うという形式です。
これは2022年8月道コンと同様の形式ですね。
過去からこのレビューを読んでくださっている方には周知のことですが、入試制度が変わった初年度(2022年度)は本番の公立入試が「小説のみ」の出題で、評論が一切出されなかったという経緯があります。
それで、その年の8月にこのような「折衷」スタイルの出題がなされたわけです。
ところが、今年(2023年度)では逆に「評論のみ」が出題されて、小説がまるまるカットされてしまった。
という流れで、さて次年度(2024年度)は連続で「評論のみ」の出題になるのか、それとも隔年現象で再び「小説のみ」に戻るのか、あるいは新しく「折衷」型の出題になるのか。
これが今の時点では誰にもわかっていないので、よって道コンもいろいろな可能性を考慮して回によって出題形式を変えてきている、という話になります。
まぁ受験生にとってはこのへんをあれこれ考えても大して意味はないですからね。
来たボールをバットで打ち返すだけ、ぐらいの気楽なつもりでいたほうがいいのかな、と思っています。
逆に言えば、どの球が来ても打ち返せるようにいろいろなジャンル、いろいろな出題形式に慣れておくべきでしょう。
大問1(漢字、知識、評論)
問1~2
絶妙なレベル感の問題だな、と。
難しいわけではないのですが、「辛辣」「緻密」はボキャブラリーが試されます。
これを書けと言われるとごく一部の生徒しか書けないでしょうが、言葉として知っていれば読むことはできるので。
書きのほうも、特に「旅路」は日常生活ではあまり使わない言葉なので、日常的に読書週間がある生徒とまったくない生徒で差が出そう。
「特に難しくはないけど、差がつく」という意味でいいところを狙った問題だと思います。
問3
熟語の構成も、小学校から勉強してはいるものの盲点となりやすい分野です。
大問構成が変化して、こういう盲点的な知識が問われやすくなりましたよね。
問4
これもいいところを狙ったボキャブラリー問題。
「明るい」を「くわしい」の意味で使う用法は、まず今の中学生の日常語彙には入っていないでしょうから、これが解けるということは、あらかじめ読書などでこの用例を知っていなくてはならない。
(まぁ文脈から推測だけで解けてしまう生徒もそれなりにいるとは思いますが)
なんとなく「普段から本を読めよ」という道コンからのメッセージのような問題にも見えますね。
考えすぎだと思いますが。
問5
出典:中西進「日本語の力」
1929年東京生。『万葉集』ほか日本文化の比較研究、評論活動で知られる。国語審議会委員、文化庁・美しい日本語について語る会座長、国立国語研究所「外来語」委員会副委員長などをつとめる。文化功労者。
大問1にサラッと挟まる評論なのでイージーなやつかと思いきや、ボリュームが短いだけでなかなか骨太な文章です。
ここに使うのもったいないから冬道コンに回しても良かったような気が……。
(1)
句切れは「。」がつくところが句切れ、というのが第1原則です。
どうしても「切れ字」だけで判断しようとする生徒が多いのですが、切れ字のことよりもまず第1原則を理解したほうがいい。
全体を通して「すごく難しい」わけではないのですが、ひとつひとつの問題がそれなりに考えどころがあって、満点近く取るのはなかなかハイレベルな力が要求されると思います。
やっぱり今年の道コン国語は意図的に難易度を上げにかかってると思いますね。
大問1、それなりに厳しくも良い問題だと思います。
大問2(小説)
出典:青山美智子「お探し物は図書館まで」
1970年生まれ、愛知県出身。大学卒業後、シドニーの日系新聞社で記者として勤務。2年間のオーストラリア生活ののち帰国、上京。出版社で雑誌編集者を経て執筆活動に入る。第28回パレットノベル大賞佳作受賞。デビュー作『木曜日にはココアを』が第1回宮崎本大賞を受賞。同作と2作目『猫のお告げは樹の下で』が未来屋小説大賞入賞。
パッと見でなかなかボリューミィですね。
この時点で、「大問2であまり時間を取られすぎると、大問4が最後まで解けないかも」と気持ちを引き締めることがまず重要。
問1~3
「ない」の識別は識別問題の中ではスタンダードですし、ここを掘り下げると品詞全体の理解を深めることも実は可能です。
詳しく知りたい方はぜひFiveSchools「中学国語基礎Lesson(文法編)」をどうぞ。
問2の「物色」というやや中学生にはなじみがないであろうと語を聞き、さらに問3では基本的な表現技法に着目させるという流れで、大問1と同様に細かめの知識をまんべんなく問うていくスタイルなのが良いですね。
問3は、49行目「現実の中で」を答えた生徒が複数名当塾にいました。
なるほど、たしかに「僕を受け入れてくれる」も擬人法と言えば擬人法と言える。
ただ、あくまで設問要求は「店内の様子」の描写なので、やはりこれは模範解答どおりじゃないとダメだと思います。
問4
最初の長い記述ですが、答えが前後2行にまとまっているし、設問の要求も明確なのでここは時間をかけずにサクッと終わらせたいところです。ここで時間かけていると後が厳しい。
問5
空欄の前後が思いっきりヒントになっているので難しくないと思いますが、これはどうせならヒントなして問うてほしい問題でした。そうしていたら「アンティークが好きで自信を持っていたから」と答える生徒が連発していたと思います。
問6
これも問4と同様、すぐ近くに答えがあって設問意図がわかりやすいので、難しくない記述だとは思いますが……
採点基準Aで、2点しかない部分点のうち「とても」のような強調語句がないだけでマイナス1点するのはどうなんでしょう。ちょっとバランス悪くないですか。
あと、この採点基準だとAとBを満たしていなくても、Cだけあれば2点ついてしまうのでは。
Aに3点、Bに3点で、Cがないと全体からマイナス1、ぐらいが適切な基準ではないかと思います。
(わたしも昔自分で問題作ってこういう採点基準作って「失敗したな」と思ったことが何度かあります)
問7
これも、採点基準に疑問が。
A「訪れた人を受け入れる」
B「日常の煩雑さを忘れさせてくれる」
C「幻想的な世界」
で、AとCが「どちらか一方でOK」という基準になっているのですが、これは「BとCがどちらか一方でOK」にしないとダメだと思う。
Bは、言い換えると「非日常的」ということですよね。
Cも「幻想的=非日常的」と言い換えられる。
よって、BとCは意味的に類似しているので、どちらか一方あればOKと言ってもいいでしょう。
(Bのほうが内容として詳しいので、本当はCしか書いてなければ減点すべきだと思いますが)
ただA「自分を受け入れてくれるかどうか」は「日常性、非日常性」とは別の話なので、これは独立した基準として配点すべきだと思います。
いくら非日常的な世界がそこにあっても、自分を受け入れてくれるような種類の世界でなければ彼は店主を尊敬していなかったでしょうし、アンティークショップを開こうとも思わなかったはずです。
ということは、要素Aと要素BCは独立した別個のポイントとして扱うことが自然だとわたしは考えます。
問題はシンプルで難易度高くも低くもない、決して悪くない問題だと思うのですが、採点基準が全体的に?と思う部分が多かったです。
大問3(漢文)
出典:松原朗「漢詩の流儀 その真髄を味わう」
1955年東京都生まれ。1978年早稲田大学文学部中国文学科卒、83年早稲田大学院文学研究科博士課程満期退学。1987年度に専修大学に着任し、「中国語」などを担当。2004年「中国離別詩の成立」で、博士(文学)(早稲田大学)の学位を取得。
問1~問2はごく基本的な知識で、これを間違った生徒は完全に勉強不足というか、「漢文」の勉強をそもそも受験勉強として日常的にやっていないことが筒抜けです。
問3も字数指定がヒントになっていて容易。
問3までは満点取らないとダメです。
ただ、これを「聊か一枝」と答える生徒が結構いるんですよね。
あのですね、本文から抜き出して空欄を埋める問題では、絶対に「日本語として中途半端な箇所」が答えになることはないです。
「キレイに区切れる、日本語として自然なところ」しか答えにならないので、日本語として中途半端なところを答えようと思った瞬間に「絶対にこれは答えじゃない」と感じ取れるようになってください。
問4は、作者と友人の位置関係を確認すれば(1)は解けます。面白い問題ですね。
(2)はアと答えてしまいそうですが……
アにすると「自分が春を迎えてうれしいので、まだ冬の土地にいる友人に見せびらかしてやる」という意味になるので、作者が非常に性格が悪いことになってしまう。
となると、イを選択すべきという話なのですが、これはなかなか難しいと思います。
大問4(資料と対話)
視力について。
視力0.3ない人って、高校生で全体のうち4割以上もいるんですか。
視力の話は個人的に数回のブログ記事にはできそうなネタがありますね。
そのうち書きましょう。
難易度的には資料の内容もシンプルで、順を追って読んでいくだけで解いていけますし、標準的なものではないでしょうか。
時間にさえ追われて焦っていなければ高得点期待できる内容です。
問2
「田中さん」が最初に「直近の数値」と言っているのを見逃していないかどうか。
問4
「中野さん」が傍線部なのだから、中野さんの発言を理解したうえで解く。
「小学生未満のことについて」
「資料2から」
読みとれることを書く、と意識してしまえば非常に簡単なはずなので、これができなかった人は「何を答えればいいのか」の整理ができていないまま適当に書いた、と言わざるをえません。
まぁ最終問題なので、タイムアップだった人が多いのだと思いますが。
ただし、これも採点基準に大きな問題があります。
何に問題があるかというと、基準Bです。
この問題は「二重傍線部の直前に付け足す」という条件が付与されていますよね。
ということは「初めてスマートフォンを所有した」という内容はすでにこの二重傍線部よりも前、つまり問1の答えの部分に書かれているので(問1を正解していれば)、別にまるまる省略してしまっても日本語として何の問題もないのです。
「小学生未満の割合についても、約2倍となっています」
で十分満点をつけないと本来はおかしい。
もちろん、問1の空欄①がきちんと書けていることが大前提ですが。
そう、つまり問1の空欄①の答えによって、この問4をどう評価すべきかが変わってしまうのですよ。
そこまでケアして採点してくれる採点者がいるとは思えないので、「二重傍線部の直前に付け足す」という条件をつけずに別枠で説明させる問題にすべきでしたね。
これ、本来6点~満点ついて然るべき生徒がかなりの数0点にされてしまってると思いますよ。
難易度、どうなんでしょう。
わたしから見ると、簡単とまでは言えないものの8月道コンよりはそれなりに難易度下がるように見えます。
8月道コンが60点台にそれなりにできる生徒が集中したのが、今回だと70点台に集中すると思う。
80点取れる生徒はいるが、90点以上を取るのはなかなか難しい。
バランスは決して悪くない問題だったとは思いますが、それにしても採点基準の不可解なポイントと、最終問題が惜しい。
こんなところではないかと。
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