ホールドを落とさず如何に美しく見せるか | 社交ダンスはヒップホップよりやさしい

社交ダンスはヒップホップよりやさしい

学校教育におけるダンスと言えば,ヒップホップが主流となっていますが、社交ダンスは二人で助け合って踊ることにより誰でも覚え易く、技術とマナーが自然と身に付きます。
子供からご年配まで、踊ることにより相互理解が得られる、素晴らしい芸術的スポーツです。

スタンダードダンスを踊っている時一曲を通してほぼホールドを

上げ続けているかと思いますがこの行為が社交ダンスの音楽表減

を難しくしている要因の一つと成っています。

様々なスポーツや舞踏に於いて男女がコンタクトしながら互いに

ホールドを落とさない様に演じている運動表現は稀です。

肩を含めた腕の重さは成人で有れば10キロを超えていて常に

一曲を通してペアとして20キロを持ち上げながら音楽表現を

続ける事は至難の業とも言えます。

 

特にまだ社交ダンスを学び始めて間もない方や体力が無かったり

高齢で有ったりとするとこのホールドの高さを保つ事は

ステップを覚える以上に大変で有り様々な運動表現を更に

難しくしています。

この事は初心者はもちろんですが競技選手やプロであっても

この行為は体力を多く消耗させる原因ともなり如何に美しく

ホールドを保ちながら音楽表現を行うかが問題です。

 

多くの踊り手は習い始めた頃この社交ダンス独特の外見を

保ち続けながら習ったフィガーや運動表現を行う事に苦労

されたかと思いますが月日が経ち多くの経験を積み体力も

演ずる事が苦にならない程付いてくると誰しも美しい上体を

作りながら踊る事が出来る様に成って来ます。

音楽を通して演ずるその姿に優雅さや優しさを感じるかも

知れませんが実際の運動は傍目とは大きく違っている事が多く

美しさとは裏腹に上体はまるで石膏で固められたように固く

人の身体とは思えない程の不自然さで驚かされます。

 

社交ダンスを演ずる時の難しさは数々のフィガーや運動表現を

覚えなければならない事も有りますがこの不動の上体を維持

しながら笑顔で踊る事の違和感に耐えなければならない現実を

受け入れなければならない事です。

何も知らず社交ダンスを見て感動していた頃の印象とは遥かに

かけ離れた踊り手達の厳しい現実に多くの方がショックを

覚えたり興味を失ったりしてしまいます。

 

実際に上体の強靭さや頑強さを見せる為にトッププロが

左右の腕に女子をぶら下げて笑顔でいる写真が過去に

有りましたがその事を称賛していた頃とは社交ダンスの

運動表現の作り方は大きく変わっているのです。

唯いまだにこのような踊り方をしていたり教えていたりする

現実も有るのが非常に残念と言えます。

先ず何故一曲を通して美しいホールドを維持出来るかの

正しい理由を知る事が大切です。

 

何も知らないで外見的な姿を真似てホールドを創ると

誰でも1分もしない内に肩に違和感や緊張を覚え更には

痛みとなって形を維持する事が出来なくなります。

増してその形を維持しながらペアとしての音楽表現を

行うと言う事は至難の業と言え一曲を通して崩れない様

演じ続けるには人並外れた上体の筋力と我慢力が強いられ

とても豊かな音楽表現をしている姿とは言い難いです。

 

筋肉は同じ形状を続ける事は非常に苦手で有り常に緊張弛緩

を繰り返しながら全身に酸素と栄養を供給し続けなければ

生命の維持が出来なくなってしまいます。

例え外見的に不動の形をしていても身体の中は常に筋肉の

絶え間ない緊張弛緩によってあらゆる運動機能が維持されて

いるから私達は生きていられます。

 

社交ダンスを踊っている時ペアでコンタクトしながら互いに

音楽表現を同調させる為にコンタクトと言う意思表示の形態

を取っているのですが見たように形を変えないで踊っている

のではなく常にショルダーは変化しているのです。

先ずホールドを持ち上げていると言う感覚では踊れません。

ホールドの重さは2リットルのペットボトル二本よりも重く

肩や首の周囲筋で持ち上げて踊る事は至難の業で有り

どんなに筋力が有っても直ぐに血流が滞り同じ形を維持する

するには強い意志を持って緊張し続けなければならず

音楽を全身で感じ聴き思うが儘に踊る事は不可能と成ります。

 

ショルダーの重さはあばら骨を通して脊髄の中心に向かい

ボディ全体の力で支えます。この際首や肩には持ち上げる為の

緊張は全くありません。

そしてホールドを上げる最大の力はボディスウィングを通して

得られた力が肩甲骨を通して腕の重さを上方に持ち上げます。

この際スウィングする方向の方にショルダーが引きあがり

その運動に対し反射的に下肢の筋肉が重心を持ち上げたり前後に

移動させたりして運動表現を繋いで行きます。

またボディのローテーションによって得られた回転運動が

左右のショルダーをナチュラルとリバースのフィガーを的確に

生み出して行きます。

 

つまりショルダーの美しい形状は男女が同調してボディを使い

上体に力を伝える事で一曲を通して落ちたり崩れたりする事無く

維持できるのです。

特に身体が弱かったり高齢であったりして上体の力が無い方は

ホールドを作ろうとするだけでステップワークが思い通り出来ず

社交ダンスを十分に楽しむ事が出来ません。

キャリアがあり何でも踊れる方は自分の上体の形状を力任せで

作るのではなく自分の身体の運動機能で自然に創る事が大切で

あり上手く踊れない方はその運動表現に上体を委ねるだけで

ホールドを無理なく上げ続ける事が出来ます。

 

社交ダンスの踊りは誰でも踊れる様に進化して来た事も有り

特殊な運動や身体に無理を強いる様な運動表現は有りません。

自分の持っている身体が如何に使われて楽しく踊る事が

出来るかの基本的な知識を学ぶ事が重要です。

外見的な姿に囚われていたり自分の頭の中の知識と相談しながら

踊っている様ではいつまで経っても心から楽しんで踊る事が

出来ずお相手にとっても踊り辛い方に成ってしまいます。