見る対象物をしっかりと自覚して踊る | 社交ダンスはヒップホップよりやさしい

社交ダンスはヒップホップよりやさしい

学校教育におけるダンスと言えば,ヒップホップが主流となっていますが、社交ダンスは二人で助け合って踊ることにより誰でも覚え易く、技術とマナーが自然と身に付きます。
子供からご年配まで、踊ることにより相互理解が得られる、素晴らしい芸術的スポーツです。

社交ダンスは音楽とお相手を感じる事に因って自らの演ずる

パフォーマンスの質が変わって来ますが聴く事の大切さ以上に

見る事の重要性が有ります。

私達は普段から自分の周囲の物を見て如何に考え行動したら

良いかを判断していますが社交ダンスを踊る時は日常生活以上に

シッカリと対象物を認識して演ずる事が大切です。

この事はスポーツの世界に於いても見る力が強い選手は自分が

何をすべきかどうあるべきかの判断が的確であることが多く

自身の持つ知識や運動能力を最大限発揮する為にも重要です。

 

しかしながら多くの踊り手を見て来ると表現としての見方は

していても実際に音楽表現に繋がり難い見方でパフォーマンスに

支障をきたしている踊り手が多く見られます。

ただ顔を上げ遠くを漠然と見ているだけで表情は豊かでも

見る事に因って得られる多くの運動表現を失っています。

特に初心者や上手く踊れていない方を見ると楽しそうに上方を

見上げて踊ってはいても見ている方向に対する意識は少なく

その殆どが頭の中の記憶を再現する作業に充てられています。

 

スポーツの世界で大切な能力に動体視力の有無が言われますが

社交ダンスの世界に於いても見る事の重要性は変わりません。

しかもこの見方はただ対象物や人を見るだけでなく自分自身の

運動表現を決める為その行為の意味する具体的なイメージが

有る事が重要です。

眼は口ほどにものを言うと諺にも有りますが社交ダンスを

踊る上でどの様に見て演じているかはペアとしての音楽表現を

より正確に豊かにするために大切です。

 

お相手であれフロアーの景色であれどの様な気持ちで見ているか

と言う事が踊り手のパフォーマンスの質を決める事になります。

音楽を聴きながら見る事に因って自分の頭の中にイメージを

膨らませお相手や周囲の環境に自分の存在を示す事が必要です。

対象物によって如何に演じたら良いかどの様な表情を見せれば

最も適切な音楽表現と成るかをフィガーや運動表現を間違いなく

演ずる以上に大切です。

どんなに身体を使って大きな演技を見せたとしても見ている

方向や表情が実際の身体の大きさ以上に空間に広がっていく事が

豊かな音楽表現を演ずる方法と言えます。

 

この視点の定め方は表情だけでなく音楽の特性を決めるにも

大きな役割を示す事と成りラテンアメリカンダンスの様に

素早い表情の変化や視点の移動を行う時には見方によって

運動表現は著しい変化を示します。

タンゴのネックの素早い表現も視点を変える事に因って生まれ

首を素早く動かすのではありません。

外見的には力強く瞬間的に動作を行っている様に見えますが

この動きを作っているのは視点を素早く変える事で行う事が

とても大切で首を強く振ったりしていると頚椎を痛めたり

視点が定まらない事からシャープなボディ表現に成りません。

 

クローズドポジションからプロムナードポジションに顔の

向きを変える時も動かす前にプロムナードポジションの

上体のイメージをしっかりと頭に描き瞬時に視点を変える

だけで全身が素早く反応します。

またムービングダンスを演ずる時の緩やかな表情の変化も

視点をゆっくりと変えていく事で全身が反応します。

普段の生活に於いても歳を重ねたり目の酷使によって

見る行為が緩慢と成って動作自体が不自由に成っている方も

多く見受けられます。

 

見ると言う行為は何となく対象物を見るのでは無くしっかりと

意識をしてその存在を確認し考えや動作に繋げる事が重要で

健康で安全な日々を送る為の大切な要因とも言えます。

日常生活に於いても社交ダンスを踊る時であっても

見る力を失わない事がとても重要です。

特に視点を素早く変えて対象物をしっかりと捉える行為は

年齢を重ねるにつれて衰えて来ます。

踊っている時は表情だけでなく自分がどの様にお相手や

対象物を見ているか考えてみる事も必要と思われます。