以前にも書きましたがワルツとスローフォックストロット
(以後スロー)の踊り方の違いが理解できていない踊り手が
多くいて競技会などを見ていると音楽が無ければどちらの
表現をしているのか全く分からないペアが目立ちます。
特にアマチュアの下位クラスの踊り手の演技に至っては
音楽表現として観戦していると全く音楽が感じられず
ただ与えられたルーティンを間違いなく演ずる事に気持ちが
全て向いている様にも思えます。
極端に言えば様々なルーティンで踊っているとは言え
どんな曲で踊ろうと単にバックグラウンドミュージックを
聴きながら自分の記憶の再現をしているに過ぎません。
特にスローの踊り方はどう見てもワルツ表現の様に成って
スウィングの停滞が目立ったり上下動が激しくて滑らかで
緩やかな丘を越えて行く様な表現が見られません。
そもそもワルツとスローは全く音楽表現が違っていて
同じ様なフィガーやアマルガメーションを使ったとしても
音楽表現として踊ると全く違った印象と成るのです。
音楽リズムとしてはワルツが3拍子の曲で有りスローが
4拍子の曲で有ると言うだけでなくその演じ方は全く異なって
踊られるはずなのですが曲を聞かなければどちらの踊りを
演じようとしているのか解らないペアが多くいます。
表現的にはワルツは1スウィングで運動表現を終了する様
スウィングライズの継続を行い両足を閉じる事に因り尖った
波がしらの様な表現に成ります。第一アクセントの勢いで
スウィングライズしたボディがカウント2.3のライズ継続で
勢いを失いトウライズで運動を終息する様に踊ります。
カウント1のダウンアクションで強いダウンを表現した後
スウィングライズを継続する事で急速にスウィングの勢いを
無くし高低差のあるワルツ独特の表現を行います。
両足を揃え高くライズする場面が多いのはこのライズの方法が
意図的なボディコントロールを生み出しワルツの音楽表現を
生み出しているからなのです。
一方スローは4拍子のリズムの前半でダウンライズを行い
後半のリズム3.4でノーフットライズの状態を作りボディを
上昇させると言うより前進後退のウォークを創り出します。
ワルツの様な急激なライズを行わず小節の前半でダウンライズを
行いボディがノーフットライズの高さを感じたらその高さを
維持しながら次の小節のダウンスウィングに継続する様に
踊る事に因ってペアの音楽表現が緩やかな移動性の有る
丘を越える風の様な音楽表現を目指します。
つまりスローの表現としては一曲を通して停滞することなく
常に移動しながらの音楽表現と成ります。
ワルツがボディライズによって重心を上げボディスウィングを
意図的に止めるのに対してスローは小節間の運動表現が常に
繋がりをもって流れる様に演じられる事が重要です。
この事はスローと同じ系列で発達したクイックステップも
その流れを汲んでいてスローと同じ様なライズ&フォールを
行う事で継続性の有るスピーディな踊りを踊っています。
多くの踊り手がタンゴワルツまでは音楽表現を感じられても
スローやクイックステップと成ると突然音楽表現が無くなり
ただルーティンの再現をしているだけの魅力ない踊りと成って
踊り手自身も音楽とマッチしない事で豊かな感情表現が失われ
残念な踊りと成っています。
スタンダード5種目は其々異なった魅力的な音楽表現が有って
初めて心から楽しんで踊る事が出来ます。
難しいフィガーやルーティンを覚える事よりも単純なフィガーで
音楽を如何に演ずるかを学ぶ事がとても重要です。