動体視力と言えば野球やテニスに於いてボールのコースを
しっかりと見極め自分の運動表現を決めるとても大切な
テクニックと言えますが、社交ダンスに於いても動体視力は
目の前のお相手や部屋の対象物に視点を定め自分自身の演ずる
方向やルーティンを踊る方向を決定して行く為にとても大切
と言えます。
音楽をしっかりと聴き取ってパフォーマンスを行う事は
社交ダンスを踊る上で一番大切と言えますが、男女が的確な
リード&フォローを行なう為にも動体視力を高める事はとても
重要と言えます。
如何にしっかりと目標を定めるかは大切ですが、視点の決め方は
踊る種目の音楽表現によって見方が変わります。
ムービングダンスの様にペアの音楽表現が音楽の流れに沿って
動きながら演じられる時は視点も身体の動きに同調する様に
周囲のアイポイントを移動させていきます。
タンゴやラテンアメリカンダンスの様にヘッドの動かし方が
音楽の切れ味を表現する場合はボディが動いている時も
最初のアイポイントを固定してボディ表現を行なった後で
素早く次のアイポイントを定める事が多いです。
ムービングダンスの様にボディ表現と同調してアイポイントが
流れる様な表現をする時は余り問題は無いのですがシャープな
演技が求められるラテンアメリカンダンスの様なアクセントを
ネックで演じ様としてヘッド部分に力を入れて視点を動かして
いる踊り手が多く見られます。
タンゴなどヘッドのシャープな動きが求められる運動表現は
頭を強く振ったり回したりして踊っている方が目立ちます。
見ている側からすると頭を素早く動かしている様に見えるかも
知れませんが頭を首や肩回りの筋肉で強く動かそうとすると
ボディとの重量差で首周りの筋肉に大きな負担がかかります。
頭の向きを素早く変える時はまず首から下のボディが回転をし
その後に反射的に頭がボディに引き戻されます。
けっして頭を直接振ったり回したりしない様にしましょう。
むち打ち症の様な症状で苦しんでいる踊り手もいます。
イメージとしてはクラッシクバレーのヘッドターンを伴った
回転運動を参考にすると良いと思われます。
普段の生活に於いて頭を動かす時は単独に頭だけの方向を
変える事が多い事から踊っている時もその様に演じてしまう
踊り手が少なくありません。
頭の向きを素早く動かすためには視点を首から下のボディが
回転して首周りの筋肉がボディに引っ張られてから動かします。
この時基本的に次の視点をイメージして身体がその方向に向いた
その瞬間に視点を見つけます。
見ている人達は頭の方向を素早く変えて見えますが踊り手自身は
視点が急激に変わる事から回転した感覚が全くなく瞬間的に
見ている景色が変わっている様に感じます。
頭を強く回すと耳の奥の三半規管が素早く次のバランスを
感じる事が出来ず目が回ったり身体の中心がぶれやすく
成ります。
踊り手の能力の1つはいかに回転を理解し目が回らない様
自然なバランス運動が継続できる様にするかがとても大切です。
視点を定めると言っても視力が大切と言うより何を見ているかの
認識がとても重要です。
例え近視であっても視点をしっかりと定めて踊ればバランスが
崩れる事無く美しい音楽表現が得られます。
エキスパートの中には極度の近視の踊り手がいますが
素晴らしい回転運動を見せて周囲を驚かせます。
持っている感覚器官は出来るだけ有効に使える事で様々な美しい
音楽表現が思うが儘に出来る様に成るのです。