陸上スポーツを行う時、下半身の運動機能を掌る
大切な部分にアキレス腱が有ります。
ギリシャ神話に登場する英雄アキレウスの唯一の
弱点として知られていますが、社交ダンスを踊る上で
この部分の果たす役割はとても大きく、パフォーマンスの
安定性、表現力を創り出す大切な要となっています。
社交ダンスを踊る上で、フロアーから、如何に大きな力を
上体に伝えるかが、踊り手の能力を左右する事となり、
この重要な役目がアキレス腱に在ります。
幾ら上半身が強くても、下半身からの力を上手く伝え
られないと、上半身は、スムーズな運動表現が出来ず、
お互いのやり取りもトラブルが生じやすくなります。
陸上のスポーツを行う時、ウォーミングアップの一つとして
足首を伸ばす運動を取り入れています。
この時、前後に開脚しながら、上体を上下させて
アキレス腱を伸ばす運動をするのですが、この運動は、
その後のスポーツを行う上でとても大切で有り、
十分に柔軟性を持たせておかないと、アキレス腱炎を
起こしたり、時には、断裂と言う非常事態となる事もあり
スポーツにとって致命的な怪我になる事も有ります。
しかし、単に柔らかくすれば良いと言うのではなく、
何のためにしているかを知っていないと、運動が
疎かになり、怪我の原因とも成ってしまうのです。
社交ダンスに於いてのアキレス腱並びに腓腹筋と
言ったふくらはぎ周囲の筋肉は、床からの力を
上体に伝える大切な役目があります。
多くの方が、膝を曲げ、下半身を緊張させ、床を押せば
上体が力強く前進する事を知っていますが、何故、
前進するかを知らず、ただ、闇雲に床に力を加え
上体のバランスを失ったり、滑らかな運動表現が
出来なくなっています。
大切な事は、床からの大きな力は、カカトの周囲の
筋肉がアキレスの運動を伴って上体を押し上げる
強い運動を生むと言う事です。
この力は、脊椎のバランスにより、背中側の筋肉と
しっかりと繋がって、踊り手の推進力となります。
つまり、床からの力をしっかりと伝えることが大切です。
しかしながら、アキレス腱がスムーズに伸びないと、
前進する時、カカトがすぐに床から離れてしまい、
強い上昇力を得られなくなります。
つま先側で床を蹴って踊る人や、すでにバランスが
前方に有って、常に踵が床から離れやすい女子に
この欠点が多く見られます。
床に体重を感じた時、出来るだけ長く、カカトが床に在り
十分にアキレス腱が伸び、柔らかく膝が曲がる事が
とても大切です。
多くの方が、無理やり膝に力を入れて曲げたり、指先に
最初から力を入れて立っている為、身体を進める以前に
アキレス腱が縮んでいて、床からの大きな力を得られず、
上半身ばかり力が入ってしまいます。
足の裏は、上半身の体重を受け取り、脊椎でバランスを
取っている時、如何に長く踵が床に着いていられるか、
つまり、長い間、アキレス腱やふくらはぎの周辺の筋肉が
柔軟性を持って伸びていられるかが重要です。
体重が、次のステップに移る時、初めて、アキレス腱が
強く収縮し、反射的に、足の裏のボールの部分で
強く身体を押し出します。
この時、それまでリラックスしていた指が反射的に
床をグリップし、その反応で、太ももの前部の筋肉が
強く収縮して、更に身体を前方に推し進めるのです。
多くの方の問題は、足の裏が床を感じない内に、
ボールから指を使い床を蹴ろうとすることです。
この事は、日本人に多いウォーキングの欠点として
ダンスだけでなく多くのスポーツに於いて知られていて
バランスがすぐに前方に移り、忙し気な、魅力のない
運動表現となりやすいのです。
日本人は、昔から突っ掛けの民族、つまり、下駄の鼻緒を
引っ掛けて歩く様な、前方につんのめって歩行する方が
多く見られ、普段歩いていても、猫背に見える方が多いです。
その為、常に膝に力が加わり続け、上体が前方に傾き
腰痛や肩の凝りの原因とも成っています。
身体が前方に倒れて立っていると、足の指が十分使えず
そのまま、次の足につんのめってしまい、力強い前進が
出来なくなります。
その為、良くテレビで解説される、歩く時、走る時に、
しっかりと指で床や地面を蹴る様にと言う、極めて
短絡的な運動を真に受ける事となります。
足腰の使い方の番組があると、その説明のみに囚われ
翌日の遊歩道で歩く特殊な歩き方をする方が見受けられ
社交ダンスに於ける、多くの方々の間違いを見る様です。
どんな複雑な足形であろうと、片足から片足に体重が
移って行く場合、身体の中の正しいルートを伝わって
滑らかな表現が成立するのです。
外見的に見える部分をどんなに鍛えても、見えた様に
演技しようとしても不自然となる理由がここに有り、
誰もが楽しく踊れる為の秘訣もここに有るのです。
アキレス腱は、床からの力を伝える大切な部分です。
身体を力強く動かす為だけでなく、正しい姿勢を作る
起点ともなる場所です。
常に柔軟性を保つだけでなく、無理な運動をして
機能を失わない様に、正しい繋がりを覚える事が
とても大切です。