こころのネタ帳 -75ページ目

握りしめて離さない

優先席に酔っ払ったおじさんがぐたって座っていた。
少し太った60前後のおじさんで顔を上にあげてグーグー寝ていた。
突如フガッてなったと思ったらゴトッて入れ歯が床に落っこちた。
ちょうど向かいの席との中間くらいまで転がった。
入れ歯はまさに入れ歯で昔見たおじいちゃんのそれと変わらなかった。
入れ歯はいつの時代も入れ歯のままなのだろうか。
おじさんはグデングデンの状態だが懸命に床へ向かって手を伸ばし入れ歯をキャッチした。
入れ歯を右手につかんだままもとの席に戻るのだが、またそのまま眠ってしまった。
入れ歯を離さずに眠るその姿は、憧れのアイドルのコンサートチケットを手に入れ、前日の夜に大事に握りしめたまま布団で眠る女子中学生と通ずるものがある。
僕はこのおじさんが目的地で降りられるか気になって仕方なかった。
最後まで見届けるべきではないかと悩みはじめた矢先、右手に入れ歯を握りしめたまま平然とおじさんは降りてしまった。
入れ歯がカタカタと音をたてた気がした。
僕にはさようならと聞こえた。


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ゴールデンウィーク

巨大なあれが僕の目の前に近づいてきた。

回覧されてきた紙に記入するだけで契約は完了する。

いくつもの目玉が僕をジロジロ見ているような気もするがあと少しで巨大なあれに突入できる。

240時間のあれは巨大ではあるが「青春」と同じようにあっという間に過ぎ去ってしまうだろう。



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亀の散歩

おばさんが公園のベンチで亀をなでていた。
木のテーブルの上に大きな亀2匹をのせ1匹の亀の甲羅をなでていた。
おばさんの顔は真顔でそれがまた不気味な雰囲気に拍車をかけている。
亀の散歩なのだろうか。
そんなのあまり聞いたことがない。
気持ちの悪い光景に私はすっかりビビッてしまい通り過ぎようとしたのだが若いカップルがおばさんに近づいていく光景が見えた。
ランニングのスピードを落としやり取りを見届けることにした。
あれ亀じゃね的なことを口に出しながら二人はおばさんに近づいたのだがおばさんの反応はなかった。
すごいですねと近づいて話しかけているのだがおばさんは聞こえないふりをしていた。
亀って何歳まで生きるんですかという若い女の質問にようやく重い口を開いた。
15年は生きるわね。
おばさんは亀の甲羅をなでながらテーブルの上の亀達と同じように遠くを見ていた。

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