・・・・・・・っということで、3時間20分の長尺です。
正直、もう少し短くならないかなぁ〜です。
途中15分の休憩が挟まれますが、【アラビアのロレンス】と同じくらいの上映時間です。
全体的に「とっ散らかった」印象です。
ぼくにはテンポが悪すぎるし、無駄なシーンが多いと感じられました。(無駄だと切り捨てられたたまるかという監督の拘りでしょうが。)
ブルータリストというのは建築スタイルのことで、主人公はその流れを汲む建築家です。
主人公とその妻、姪はハンガリー系ユダヤ人で夫婦は引き裂かれ、それぞれがナチスの収容所で壮絶な体験をします。
しかし、映画ではその悲惨な場面は一切映像では出てきません。
想像させるだけです。
主人公はアメリカに移民として大西洋を渡ります。(船底から上がると目に飛びこむ自由の女神像が印象的です。)
物語は、主人公がアメリカで経験する不条理な体験が描かれます。
才能のある建築家(戦前は評価されていた)ですが、底辺の肉体労働までしなければ生きることさえできません。
同胞には裏切られ、黒人と同じレベルの差別を受けます。
そこに現れたのが、大富豪。
とんとん拍子に大規模なコミュニティーセンターの設計を任されます。
ところが、この大富豪がとんでもない偽善者で、建築を理解しないどころか、単に自分の優位性を見せつけることだけに関心を持っています。
才能ある建築家を自分の飼っている犬程度にしか見ていません。
建設は何度も設計変更や事故で中断を余儀なくされますが、建築家は自腹を切ってでも完成に拘ります。
その拘りは異常で、現場や友人との人間関係を壊すまでになってしまいます。
なぜそんなに拘るのかが大きなテーマで、実は自分や妻がいた収容所を象徴していることが最後の方でわかります。(まあ、途中でわかりますがね。)
狭い部屋のサイズに相応しくない高い天井を持っています。
その天井には明かり取り。
メインの祈祷部屋にはさらに天井から十字架の光が射すように設計されているのです。
絶望的な収容所でも見上げれば希望の光があることを暗示しています。
(宗教に関係ない。)
そして、十字架の光はイタリア産の大理石に降り注ぐ仕組みです。
どんな不遇な時代にあっても、普遍の真理は消え去らないことを建築で示したかったのです。
それこそが主人公が求める建築の価値なのです。
最後は、重要なのは目的であって、途中の経過ではないみたいなセリフで終わります。
宗教が深く物語に絡んでいます。
敬虔なユダヤ教信者である主人公がなぜカソリックの教会を建てたのか。
セックスも大きな役割を果たします。
夫婦の愛も。
さらに麻薬問題も。
ユダヤの放浪の歴史を下敷きに主人公の苦悩を描いていますので、これはシオニズムの宣伝映画かとも思えます。(正直そう感じられる。)
アカデミー賞の作品賞と主演男優賞を勝ち取ったのですから、もっと普遍的なテーマであると信じたいです。
本当の苦労は本人にしかわからないから、あえてホロコーストを描かなかった。
わかったと口にしても、本当のことは第三者にはわからないからです。
この映画評も「とっ散らかって」しまいましたが、アメリカを思いっきり醜く描いています。
大富豪の偽善はアメリカの偽善そのものです。
人間の弱い部分、醜い部分を知った上で、大理石のように白く輝く理想に向かっていくしかない。
これが普遍的なテーマでしょうね。
★★★★★
とっ散らかっていたけど、★ひとつオマケ。
オマケついでに、車椅子の妻が(歩行器を使っていますが)突然歩いたり。
喋らない姪がいつのまにか饒舌になっていたり。
大富豪が姿を眩ましたり。
新築のはずのコミュニティーセンターがやたら古ぼけていたり。
もう少し、映画としてまとめて欲しい。
