・・・・・・・っということで、ようやく観ました。
監督のヴィム・ヴェンダースって日本の監督みたいに撮るんですね。
小津安二郎の影響を受けているって、何となく分かります。
盛り上がりに欠ける、平坦な物語だけど、細部に神経を行き渡らせています。
無駄なシーンばかりのように見えるけど、セリフと同じように、全部意味がある。
いろいろ書きたいけれど、平山(役所広司演じる主人公ね)が姪と別れるシーンでなぜ泣いたのかを考えます。
職業に貴賤はないとはいえ、トイレ掃除に誇りを持っていると考えるのは単純でしょう。
自分を納得させるのに、彼もずいぶん葛藤があるはずです。
妹は裕福です。
当然、両親も裕福だと推測できます。
妹が父親はボケちゃったので以前の父とは違うよといいます。
平山と父親の間に大きなわだかまりがあることがわかります。
諍いの原因は平山の性格にあることは、観客は気付きます。
口下手で几帳面な上に優し過ぎるのです。
だから姪にも変な女にも、誰からも慕われるのです。
しかも、皆から「先生」と呼ばれるくらいに、人格者だと見られているのです。
そんな人物が便所掃除です。
本当はもっと給料が高い職業に就けるはず。
将来の自分があのホームレスと重なります。
自分という人間と職業がマッチしていないことくらい、百も承知なのです。
だから泣いたのです。
あのエンディングの役所の演技は映画史に残るでしょう。
最初吹っ切れたように爽やかな笑顔だと思ったら、泣き顔になり、それが顔に当たる光と影で繰り返されるのです。
でも、最後に朝日が当たるときは笑顔になるのです。
ヴェンダースと役所のタッグが成し得た最高のシーンでしょう。
あと、書きたい箇所はいくらでもありますが、影の表現が印象的です。
影が重なれば、重なった部分は濃くならなければならないなんてセリフを言わせるくらいです。
あと居酒屋のママの歌が上手いなぁ~と思ったら、石川さゆりだったんですね。
ママの別れた夫役は三浦友和なんですね。(ダイコンだけど)
気が付かなかった。(^_^;)
★★★★★