・・・・・・・っということで、超話題作です。
間違いなく日本でもヒットするはずです。
ぼくは、先に英語版を観てしまったので、セリフがほとんど分からず、間違った解釈になっている可能性は高いです。
それでもぼくなりに感じたことを書きます。
以下はネタバレ満載ですので、回れ右した方がいいでしょう。<(_ _)>
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予告編から、単なる戦争映画だと勘違いする人は多いでしょう。
実際は、フォトジャーナリストとは何かにかなりの重点が置かれています。
目を覆いたくなるようなハラハラ場面は随所にあるのですが、大半がジャーナリストたち4人のロードムービーです。
膨大な制作費が投じられたそうですが、それは最後の戦闘のシーンに集中していて、それまではずいぶん制作費を抑えたなという印象の方が強いです。
前のブログでは、「分断の行き着く先」がテーマと書きましたが、ジャーナリストの目を通して描いたため、ジャーナリストは何か?というテーマにもなっています。
なぜ内戦(CIVIL WAR)になったのか、わざと説明を避けています。
同じアメリカ人同士がなぜ殺し合うのか、その理由を考えるために、ジャーナリストの目を借りるという、巧妙な仕掛けになっています。
映画の中で、ジャーナリスト、特にフォトジャーナリストは善悪の判断を下さないもの。
理由を問い詰めたりせずに、あくまで映像という客観的な視点を提供することに徹するのが基本だと主人公に言わせます。
登場人物は主役の女性カメラマン(ベテラン)とその同僚(男性)、経験豊かな年老いた先輩、そしてプロに憧れる若い女性のアマチュアカメラマンの4人で構成されています。
それぞれ年齢を変えて、それぞれが世代の代表であることがミソです。
女性カメラマンは百戦錬磨で、業界では有名な存在です。
しかし、多くの悲惨な場面を目撃し、職業に対しての疑問と疲れが出て来ています。
キルスティン・ダンストという女優(42)が演じていますが、彼女の演技で映画が引き締まっています。
同僚男性は、野心家です。
ニューヨークからワシントンDCに行って、大統領を直接取材しようとしています。
それを引き止めようとするのが経験豊かな先輩です。
死の危険を察知し、それより前線を取材するよう勧めます。
女性カメラマンに憧れるのがアマチュアの女の子。
彼女の成長の物語ともいえ、第二の主役です。
彼女の表情がいい。
「PRESS」と大きく書かれた4WDに4人が乗り込み、ニューヨークからワシントンDCに向かうのですが、彼らが道中でいくつかの象徴的場面に出くわすうちに、この戦争が何かを観客と一緒に考えさせます。
なかなか巧妙な脚本でしょう?
監督はアレックス・ガーランドというイギリス人で、脚本家が本業だそうです。
このイギリス人テーストが加わって、アメリカ人にありがちな自画自賛映画にならずに済んでいます。
ここから先は、場面ごとのネタバレが続きます。
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(第1のシーン)
初っ端に警官隊とデモ隊の激しい衝突場面から始まります。
そこに若い女の子のアマチュアカメラマンが混じっていて、ベテランの主人公は危なっかしいなと思います。
そこに星条旗を持った女が駆け込んできて自爆します。
主人公は察知して、女の子を車の後ろに引き込んで危うく難を逃れます。
彼女に自分の「PRESS」と書かれた黄色いジャケットを渡します。
この点が面白いところで、身を守るためには防弾チョッキでしょう。
しかし、PRESSと書かれた薄っぺらいジャケットが身を守る役割をするのです。
そう、ジャーナリストは真実を伝えるのだから、身の安全は保障されなければならないという暗黙の了解があるのです。
呆然としている女の子を残して、主人公は修羅場になった現場を撮影します。
女の子は撮影し続ける主人公に向けてシャッターを切ります。
(第2のシーン)
しばらく走った後、ガソリンスタンドに立ち寄ります。
そこには武装した民間人の男たちがいて、なにやら険悪な雰囲気です。
主人公が300ドルでガソリンを買うからと言うと、それじゃサンドウィッチくらいしか買えないと笑われます。
そこで、カナダドルならどうだと言うとあっさり売ってくれます。
アメリカドルの価値がカナダドルより下がったという皮肉です。
アメリカがカナダを見下しているのが現状で、この辺は笑うポイントです。
女の子はガソリンスタンド裏の洗車場に二人の男が吊るされているのを発見します。
二人とも拷問を受けて瀕死の状態です。
あとから来た主人公が若い男に、二人の前でポーズを取ってくれと頼むと、男は嬉々として応じます。
女の子が、自分はシャッターを切れなかったこと、なぜこんな酷いことをするのか質問できなかったことを後悔します。
主人公は、自分の意見を挟むのはカメラマンとしては決してやってはならない基本だと嗜めます。
(第3のシーン)
ある施設内で、激しい銃撃戦が展開しています。
相手は軍服を着ているので、政府軍側でしょう。
こちらは民間の武装グループ。
撃ち合う過程で、黒人が撃たれてしまいます。
目の前で死んでいくのを見た女の子はシャッターを切ります。
戦いは民間側が勝利して、手を縛られ目隠しをされた3人の捕虜が連行されます。
主人公はビルの屋上からそれを冷めた目で見つめます。
次に何が起きるか彼女は知っているのです。
捕虜たちは機関銃で撃ち殺されます。
射撃する男は笑っています。
(第4のシーン)
車はある街を通り過ぎます。
街全体が平和で普段通りの生活をしています。
ある店に入って、全米が大戦争をしているのを知っているのかと店員に尋ねます。
もちろん知っているけど、TVで傍観しているのが正しい選択だと答えます。
主人公はドレスを着用して、平和だった頃を懐かしみます。
内戦だとしても、無関心層は存在するのですが、そんな態度を悪いか正しいかとは言いません。
(第5のシーン)
敷地内の建物から狙撃されます。
車の影に身を潜めると、そこに二人のスナイパーがいて建物内の狙撃者を射殺するタイミングを見計らっています。
主人公の同僚が名札を見せ、ぼくらはジャーナリストだと名乗ります。
君たちは誰の命令で、どうして撃ち合っているのか理由を聞きます。
すると、別に理由があって撃ち合っているわけじゃない、相手が撃ってくるから撃ち返しているだけだと答えます。
女の子は撮影にのめり込み、どんどん危険に飛び込むようになり、写真の腕を上げていきます。
(第6のシーン)
これがなかなかの名シーンです。
途中で中国系のジャーナリスト仲間二人と合流します。
女の子と中国系の一人が武装した連中に捕まります。
彼らは、なんとダンプいっぱいに積まれた死体の山を穴に埋めている最中です。
明らかにヤバい状況です。
主人公たちは見捨てられないと、助けに行きます。
ジャーナリストは中立だし、殺されないと信じて。
年老いた先輩は止めますが、一人車に残ります。
何かの勘違いだと思うが、ぼくらはジャーナリストで、捕まっているのは仲間なので返してくれと懇願します。
オレンジのサングラスをかけたサイコパスは、話を聞くふりをしますが、突然中国系を射殺します。
同じアメリカ人じゃないかと言うと、「What kind of American are you?」と聞き返してきます。
一人一人にどこの出身かと質問します。
それぞれの出身地を聞くと、それは中央だとか、南部だとか分類し始めます。
要は理由をつけて、殺したいだけなのです。
このシーンを見て、ルワンダの虐殺を連想してしまいました。
ツチ族とフツ族の殺し合いとされていますが、人種は全く同じで、単に農耕か放牧かの違いだけなのです。
アメリカ人もルワンダ人と同じことをするのです。
救出する過程で、年老いた先輩は命を落としてしまいます。
(第7のシーン)
他にも触れていないシーンがありますが省略。
いよいよワシントンDC、それもホワイトハウスでの攻防のシーンです。
何しろド派手な戦闘で、制作費の大半をここで使ったはずです。
アメリカ人にはよく知られたランドマークが戦場と化し、アメリカ人同士の殺し合いを見るのは辛いものがあるでしょう。
ホワイトハウスは高い塀で取り囲まれていて、トランプが国境に築くと言っていたことを嫌でも思い出します。
主人公が電池切れのように固まってしまうのと反対に、女の子は生き生きと写真を撮りまくります。
彼女は古いフィルム式のNikonを使っていて、写真は全て白黒です。
それがとても臨場感があって、先輩である主人公を超える才能があることが伝わってきます。
そうなんです、この映画は彼女の成長の物語でもあるのです。
世代交代を表すように年老いた先輩は命を落とし、その順番は主人公にも巡ってきます。
女の子にとっては恩人のはずの死体を乗り越えて先に進みます。
ついに大統領は隠れていた机の下から引き摺り出されます。
まさに射殺されんとするところを主人公の同僚が制止します。
そして目的だった大統領に質問をぶつけます。
悲しいことに、ぼくの英語力では聞き取れない。ウゥ〜ン悔しい。(>_<)
それに答えた大統領はあっけなく兵士によって射殺されます。
その場面は女の子によって白黒写真で記録されます。
兵士たちは、まるで狩で仕留めた獲物のように大統領の死体を前に笑顔でポーズをとります。
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この映画は4月12日にアメリカで公開され、日本公開は10月4日まで待たなくてはならないそうです。
いやはや、アメリカ大統領選挙を前に、こんな映画を公開するかね。^m^
(オマケ)音楽の選曲がいいです。