・・・・・・・っということで、セバスチャン・サルガドという写真家をご存じですか?
彼の作品を追って製作されたドキュメント【地球へのラブレター】(原題The Salt of the Earth)を見ました。
彼が写真家として目覚めたのは26歳と比較的遅く、一気に才能を開花させます。
何事も遅すぎるってないですね。
彼の写真は白黒がほとんどです。
何故?
彼はテーマを絞って、数年かけて世界中を旅します。
テーマが極めて明確なのです。
南アメリカ、アフリカを中心に「貧困」を撮ります。
世界中の「難民」を撮ります。
ルワンダの虐殺には目を覆います。
文明国であるはずの旧ユーゴの内戦を撮ります。
世界で一番多くの死体を目撃したカメラマンではないかと思うくらいです。
まるで彼のテーマに沿った被写体のほうから、撮ってくれと彼に近付いてくるようです。
そうなのです、彼にとって重要なのはテーマなのです。
カラー写真を否定するものではありません。
しかし、色が本質をボヤけさせてしまうと言ったら批判されるでしょうか?
白黒は色のない世界です。
だからこそ対象の「造形」を露にします。
造形が露になった分、対象から訴えかけて来るものがストレートに伝わってきます。
とくに、悲しみ、苦しみ、絶望の感情は白黒写真の独壇場ではないでしょうか?
ぼくは、そう思います。
・・・・・・・
彼が言っているように、精神が病みます。
最後に彼が辿り着いたのは「自然の造形」です。
その中には当然動物も含まれます。
社会派カメラマンが、そういう被写体に転向するのには批判があったと言います。
しかし、彼の方向性として必然だったと思われます。
人間は愚かで、残虐で、罪深い生き物です。
それを表現するだけで終わらせたら救いはありません。
彼は故郷に帰って、森林の再生プロジェクトに取り組みます。
その写真集の題名は「Genesis」です。
再生にこそ救いがあるのです。
その力を持っているのが自然なのです。
彼もぼくも死期がだんだん迫ってきています。
彼の生き方にグッと来るものがあります。
・・・・・・・
以上が感想ですが、カメラマンとして優れているなぁ~と感心したシーンをひとつ。
北極熊がすぐ近くまでやって来ます。
普通なら、絶好のシャッターチャンスと思うでしょう。
だけれど、彼はカメラさえ手にしようとしません。
そんな写真は、単なる「生態」を撮ったに過ぎないといい放つのです。
彼にとってテーマが全てなのです。



