二人の上等兵が伝令役に選ばれ、ドイツ軍占領地帯を抜け、味方に攻撃中止の命令書を届けることになります。
何と、始まりから最後まで一度も途切れずに映像が続きます。(ホントーは何ヵ所か切れますが。)
こういう撮り方は、戦争モノにマッチします。
こうして撮られた映画は、まるで戦場にいるようなリアルさが伝わってきます。
映画【トゥモローワールド】の長回しを見て感心したものです。
パロディ版の【カメラを止めるな】なんか比較になりません。
何せ、一本まるごと長回しですから。
こういう映画を撮らせたら、アングロサクソンには絶対敵いません。
撮り直しが利かないので、周到な準備が必要だからです。
緻密な計画と実行力において、いい加減を旨とするアジア人には向かないのです。
さて、内容ですが、最初と中盤と終盤に大事なキーワードが3つあります。
1)伝令になった一人が将軍に聞きます。「私たち二人だけですか?」と。
将軍は伝令は君たちだけで他にはいないと答えます。
攻撃中止命令が届かないと、1,600人の大隊が全滅してしまうのにです。
2)途中で味方の指揮官に出会います。
「ご苦労さん。無事届けることが出来たら、必ず第三者を証人に立たせるんだよ。戦争したがる司令官ってざらにいるからね。」
3)届けた先の大隊長(ベネディクト・カンバーバッチ)が言います。
「司令部は今は中止しろと命令するが、別の日になったら夜明けに総攻撃を命令するからね。」
それぞれ何気ない台詞ですが、兵士の死などこれっぽっちも気にしていない、上官の本質を見抜いています。
伝令任務を成功させようと命がけの主人公との対比で、戦死の無意味さを際立たせています。
塹壕戦ですから、そこら中に死体が転がり悪臭を放っていますが、何故か映像から受ける印象は明るくて清潔。
夜空に照明弾が多数撃ち上がり、影が揺れる廃墟の何と美しいことか。
いくつかストーリーが散りばめられていますが、視覚と音響が全て。
でっかいスクリーン用です。
コロナがなければ、絶対映画館で見ようと思っていた作品です。
シンプルなストーリーだけに、細かい伏線が散りばめられています。
最後の一本の木に寄り添うシーンは、映画のスタートが二本の木のシーンだったことに気付く人は希でしょう。
★★★★★