【カインの末裔】
有島武郎著
ニンテンドーDS文学全集
なかなかの意欲作ですね。
北海道で実際に、丹念に取材して書かれたものと思われる。
かなりの時間をかけて書いたフシがある。
この暗さは、例の【蟹工船】と似たところがあるが、こちらのほうがより文学的である。
主人公は、非常に粗野で、道徳観念をあまり持ち合わせていない。
だから、読者はこの人物に感情移入することをためらってしまう。
でも、この人物を注意してみれば、一生懸命生きようとしているのである。
生きるだけではなく、計画的な夢を持っているのである。
そこが、他の小作人と違うところである。
だが、現実は厳しい。
自然も、世の中のシステムも、仲間も、
容赦ない。
彼が犯罪スレスレのことをしてまで、食うことを優先させても、結局は浮かび上がることは出来ない。
寒風を押して、農地に辿り着いたときは馬と赤ん坊を持っていたが、
雪を踏みしめながら、夜逃げするときは、来た時に持っていた二つのものは失ってしまった。
なんとも救いようのない話である。
読者が主人公に感情移入をすることを、あえて避けるような書き方をしているに違いない。
救いのない小作人という身分を書くことによって、巧妙な社会のシステムの不条理を暴いている。