【目からウロコの近現代史】 | so what(だから何なんだ)

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河合敦 著
PHP文庫
2000年06月15日

こういった歴史ダイジェスト書は数多く出版されており、過去にも何回か買ったことがあるが、つい今回も手が出てしまった。
著者もこの手の本を何度も出版しており、かなり手馴れた書きっぷりだ。
だが、本書には非常に好印象を持った。
著者が現役の高校教師であることと、日本史に対する若さ溢れる情熱を感じるからである。
こういったダイジェスト版はどこかの偉い先生が監修とか称して名義貸しをして、その他複数の書き手が分担しがちだから、一冊の著書としては、何か食い足らないものが残るものだ。
歴史の流れを大きく外さないようにしながら、今まで知られていない興味あるエピソードを上手く織り込んでいて、若い人を飽きさせない構成はなかなか上手だ。
こういう先生の授業は面白いだろうな、受けてみたいなという気になる。

先ず驚いたのは、今の授業では日本史が必須でないことだ。世界史の方が優先順位が高いのだと。
ありふれた思考展開だが、自分の国のことを知らずに外国人と渡り合えるか.......ってなことを言いたくなる。
例えば、アメリカ人など自国の歴史は徹底的に教育されているだろう。
アメリカなんぞは231年の歴史しか持っていないから、日本の生徒に比べ、覚えるのが楽だろうナ。
何たって、縄文時代から始まれば、戦国時代前後まで授業が行き着いたところで時間切れだ。
著者の重要視する近現代は、日本の学生の頭の中では空白だ。逆に、アメリカの学生はその空白の期間をみっちり教育されていることになる。ヤツラは、外国と丁々発止の外交史を基本常識として持っていることになる。どうも日本人が彼らとやり合って分が悪いのは、ここにも原因があるような気がする。

例の単位捏造事件のこともあり、世界史だってロクに教育していない。どうも日本の教育は変だ。
ちょっと外れるが、教育の時間が足りないのなら、英語の時間を削れ......というのが私の持論だが、このことは別の機会に回そう。
簡単に言えば、英語はスキルであって、英文学を志す人以外には学問として扱っていいものか。そんな暇があるなら、国語や歴史の方に時間を割け。
英会話に憧れる日本人は大変多いが、いったい何人の人が本当に英語を必要とするのか疑問だ。そんなものは、英語の得意な人や、必要不可欠な人の自主性に任せておけばよい。
大体、英会話翻訳機が出てくれば、英語教育なんぞは不要になるのだから。(早くできないかな?)
.........おっとイケネー、外れすぎだ。

......っで、たまにはこういう俯瞰的な歴史解説も必要だと思う。
明治といえば「坂の上の雲」を思い出すが、日本海会戦などは非常に細かいところまでも書いてある。
ところが、このような本では数ページしか割けない。バルチック艦隊の敗因はイロイロいわれているが、日本艦隊の合計トン数はかなり劣るものの、砲門数や駆逐艦や小型艦船の数が多かったことが指摘されている。これらの要因は客観的に見て、勝利に大きく貢献することは間違いないと納得できる。単に精神論だけではないのだ。
さらに、有名なT型戦法も疑問だとの意見を紹介している。火砲数が多ければ、併走して撃ち合うほうが理にかなっている。さらに、たった30分でケリが付いたということもまさに目からウロコだ。
私なんぞは、バルチック艦隊の船底に長い航海で付いたカキが船速を鈍らせたのが主原因だと信じていたもんだ。
まあこれは一つの例だが、他の歴史書をイロイロ読みながら、このような本をたまに読むことは全体を把握する上で非常に役に立つと思った次第だ。

あと、著者の個人的見解も控えめにちりばめている。
個人の見解を述べるのは大いに結構。客観的な歴史なんざありえないのだから。ねえコキントーさん、ノムヒョンさん。歴史認識なんていうエラソーな言い方やめてね。

若い人に限らず、日本の堂々とした歴史を勉強して、薄れがちな日本人のIdentityとは何かを考えて欲しいものだ。

思いがけずイロイロ考えさせられる好書に出会った。