・・・・・・・っということで、久しぶりに妻と散歩した。
とくに行き先は考えていなかった。
昼の蕎麦屋を出てから、散歩行かないかと誘った。
「多摩川台公園にする?それとも代々木公園にする?」
「いいけど、一度家に帰って着替えたいと」と妻は言った。
本心は散歩したくないのは分かっていた。
別に街に行くわけじゃないから、そのままでいいだろうと私。
ジーンズにスニーカー、丈の長い薄いカーディガン。
多摩川台公園なら、渋谷経由ではないのでそんな格好のほうが逆に適している。
・・・・・・
公園の階段を登って広場に着くと、花がすっかり散り、ほとんど葉ばかりの桜の木の下で、
花見の集団がまだ何組かシートを広げていた。
彼等にとっては、花があろうがなかろうが本質的な問題ではないのだろう。
それにしても風もなく、暖かでいい天気だ。
散歩にはうってつけの日和だ。
私は手を後ろに組んでゆっくり丘陵の道を歩いていたが、
なぜか妻は早足でどんどん先に進もうとする。
肩を並べてゆっくり話をしようともくろんでいたのに、
会話するタイミングさえ見つけることが出来ない。
私は、多摩川の川面を見下ろす木陰のベンチに腰を下ろし、いい景色だねと言った。
当然、妻は私の隣に座るものだと思ったが、いつまでも突っ立ったままだ。
手を取って無理やり座らせる。
だが、二人とも話のきっかけが掴めない。
だいいち、何を話していいか分からない。
川向こうの運動場の建物を見ながら、「サッカー場だね」と私があごをしゃくった。
「等々力陸上競技場だわね。」
「昔、子供を連れて行ったことがあるけど、こんなに近いのに駅からバスで結構かかるんだよね。」
だが、そのまま話は途切れ、先が続かない。
ようやく、妻は近くで酒を酌み交わしている団体が気に食わないらしいことに気付いた。
せっかくいい眺めなのに、すぐにベンチを離れ、また歩き出した。
相変わらず妻はどんどん先を進む。
これじゃ散歩ではなく、山登りのペースだ。
あっという間に、公園の行き止まりに着いてしまった。
このまま引返すのも何か物足りないので、
「二子玉川まで歩いてみる?」と提案した。
「私は別にいいけれど」と案外あっさり同意した。
イヤだという返事を予想していたのに。
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そのまま、多摩川と並行に流れる丸子川沿いに歩道を歩く。
時々歩道が途切れ、車道を歩かなければならないので、夫婦で肩を並べて歩くことが出来ない。
歩いているうちに暑くなってきた。
妻は着ていたカーディガンを脱いだ。
それでも体が温まるにつれ、会話する回数が増えてきた。
立派な家構えをみて、何億円すると思うかと聞いたり、
偶然すれ違った犬が続けてトイプードルだったので、
最近流行っているのかしらといった他愛のない話だ。
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二子玉川は思いがけず遠かった。
遠くに見えるのが二子橋かと思ったら、第三京浜が通る橋だった。
大田区田園調布五丁目から世田谷区玉堤に入った途端、
心なしか建物が安普請になり、密集しているように感じた。
途中からバスに乗っても行けるので、
「ぼくはこのまま歩いても別に何でもないんだけれど」と言うと、
「私もこのまま歩いても問題ないわよ」との返事。
だが、
「でも、アナタと違って私の場合、帰ってから夕食の支度をしなきゃならないのよね。」
と付け加えた。
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結局そのまま歩き続け、新しく出来た「Rise」というショッピングビルの地下で夕飯の魚を買い、
反対側の高島屋の地下にある「Paul」というパン屋でフランスパンを買った。
妻は私がいなければ、もう少しショッピングを楽しみたいのは明らかだったが、
そのまま電車に乗った。
途中、「これ冷蔵庫に入れておいて」と買い物袋を私に渡すと、
妻だけ一人自由が丘で降りてしまった。
私はそのまま家に帰り、一人でTVを見ながらビールを飲み始めた。
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