先日、帰宅してリビングのドアを開けると、この光景が飛び込んできた。
分かりますか?
これ、床に散らばっているお線香です。

↓犯人です

新しく買ってきたお線香の箱をテーブルに上ってイタズラしたのだ。
そこには2種類のお線香があったのだが、まだ一度も使っていない1種類のお線香がなくなっている。ビリビリにされた箱だけで中身がない。
全部食べられてしまった。
仏壇屋さんに行った時に、店主に奨められ、珍しいと思い妻が買ってきた、ブルーベリーの香りがするお線香。
甘いニオイで、お菓子と勘違いしたのだろうか、1本残らず食べてしまった。床はベトベト、背中は灰をかぶったように白くなっているモモ。
呆れると同時に、このバカげた行動に怒りすら込み上げてきた。
思わず僕は舌打ちと溜息をついて、モモを睨みつけた。ソファーに横たわり僕とは決して目を合わせずに固まっているモモ。
自分が何をしたのかも、僕に怒られることも分かっているのだ。いつものことだ。
留守中に部屋の中をイタズラされることは、たまにあるのだが、いつもこのリアクションだ。絶対に僕を見ない。そっぽを向いてずっと固まっている。
『お前なぁ・・・』
ドスを聞かせた低い声を出しながら、モモの方へと歩いていく。
そして目の前で膝を付き、僕の顔を見させる。これは厳しく叱らなくてはいけないのではないだろうか。またこんなことをされたらたまったもんじゃない。それより線香を大量に食って平気なのか?
そんな事を考えながらモモを見ていると、いつもと違うリアクションに気づく。
ブルブルと震えている。首のあたりから、ソファーにめり込んだ前足にかけて、断続的にビクビクっと震えている。まるで電気ショックでもかけられたかのように。
いつも部屋をイタズラして、僕に怒られては、また同じ事を繰り返しているくせに、こんなのは初めてだ。
自分が何をして、僕が帰ってきたら、とんでもなく怒られることを知っていたかのようだ。
いや、犬には分かる。犬を飼っている人は知っていると思うが、犬は人の感情を理解する。何をすれば飼い主がどんなリアクションをするかも。犬は分かっている。
怯えるように震えるモモを見ながら僕は考えた。というより、今になって思えば、これは考えさせられたと言った方が正しい。
僕がどんなリアクションをするか分かっていて、それでもあえて、震えるほど怯えてまで、なぜこんなことをしたのだろうか?
しかしすぐに見当はついた。
思い当たる節がある。散歩に連れていってもらえないストレスだろう。
実は、その日の前日は散歩無し。その前の日の朝に行ったきりだった。
家の中にずっと閉じ込められていたストレスだ。たまにイタズラする時も何度か思ったことがある。『もしかして散歩行ってなかったから、ストレスでこんなことするのかな』
自分では自由に行動出来ないモモを散歩に連れて行ってあげることは飼い主の大切な役割だ。僕はそれを怠った。
『お前を主人として認めないぞ!』
そんなモモの必死の反抗だったのかも知れない。
僕は何も言葉を発せずに1つ深呼吸をして、部屋を掃除しはじめながら考えた。
犬のしつけ本を何冊か読んだが、そこには叱り方について食い違う意見があある。
ある本では、悪いことをいた時は、徹底して無視し、言うことを聞いた時は名前を読んで褒める。褒める時だけ名前を呼ぶようにする。
別な本では、犬の頭と口を押さえて自分と目を合わさせて、目を見ながら自分が本当に怒っているということを犬に分からせるように叱るという方法。
その他にもしつけに関しては実に様々だ。何が正解なのか分からない。
だが、どの本にも共通して書かれていたある言葉を僕は思い出した。
『飼い主が犬をダメにする』
という内容の言葉だ。
お線香を1箱食ったことに対して僕が叱ることは間違っていないだろうが、相手に向けた指をグルリと回し自分に向けてみる。
必要な時には、もちろん叱らなくてはいけない。だが、線香を食べたモモを叱りつける寸前だった僕は、ただ怒りと不満の感情を発散させようとしていただけだった。
それはしつけでない。
簡単に感情を態度にだして相手を疲弊させる、ただの自己中な人間だ。モモがあんな行動を起こしたのは僕の責任に他ならないのだから。
これは親が子供しつけることや、会社で人材育成を行う際にも同じようなことがいえるのではないだろうか。
リーダーが『あいつはいつまでたっても成長してくれない、困った奴だ』と嘆き、メンバーは『あんな上司だからうちの部署は雰囲気も悪く、そのうちダメになる』と居酒屋で愚痴をこぼし。
その相手に向けた指をぐるりと自分に向けて一瞬だけでも考えてみるくらいはしてもいいと思う。
ただ感情に任せてそんなことを言葉や態度に出していないだろうか?
教えているつもりで、育てているつもりで、実はただ相手に嫌な思いをさせているだけになっていないだろうか?
それが然るべき言動だったとしても、それが相手に伝わっていなく、ただの一人よがりになっていないだろうか?
規律違反や、不正に関してなどは当然問答無用だが、成長のスイッチとなるか、別に頑張らなくてもいいと思わせるスイッチとなるか、それは受け取る相手が決めてしまうことだけは確かだ。
掃除の手を止め、しばらくそんなことを考えながらノートに書き込んでみた。僕はどうだろうか?家族に対してや職場での最近の自分の言動をしばらく考えてみた。
僕が動きを止めたあとも、固まったままその場をじっと動かないモモの姿が目に入る。
僕は慌ててモモにおやつのビスケットを差し出し、謝った。
『ごめんよ、そんなに怖くて震える思いまでさせてしまって。怒ってないよ。教えてくれてありがとな。』
ついつい自分の主観だけで、考え、判断してしまう悪いクセが僕にはまだまだあるんだ。それをモモに教えられた気がした。
そうだ、ビスケットじゃないな。散歩だ!
僕が散歩に出かける時のウェストポーチに手を伸ばすと、突然モモが部屋の中を走りだし、僕にタックルをしてくる。息を荒くして嬉しそうに横ベロを出しながら。
多分史上初!?
お線香を1箱完食した犬です。ちなみにその後も体調に変化はなく元気に過ごしているので、線香は食べても害はないらしい・・・(笑)
お前はいい犬だ!

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