ほたるいかの書きつけ -72ページ目

「水からの伝言」はどうやって作られているのか(5)補足

 PSJ渋谷研究所X さんに言及していただいたら、アクセスが急に増えてビビッております。(^^;;

 「水伝」の「実験」なるものについては、実はあれ以上書くことはない。前回も書いたけれども、「水伝」というのは実際何をやっているのかそれほどまでにわからない(著者たちが明かしていない)のである。
 今回、「水伝」に書かれていることを引用しながら批判したのは、一つには彼ら自身の「言葉」でもって、彼らがどのようなことを言っているかを改めて多くの人に知って欲しかった、ということがある。ブログという形がふさわしいかどうかは置いておくとして、ある程度まとまった形でネット上に置いてあれば、なんらかの形で役に立つと期待したい。

 念のためここで指摘しておきたいのは、きくちさんをはじめとする、早い時期から「水伝」を批判してきた人々は、原典に当たって批判してきたということだ。その痕跡は、たとえば3年ほど昔の kikulog の
   水からの伝言(5): 結晶についての簡単なまとめ
あたりを見てもらうとわかりやすい(他のエントリも)。特にコメント欄での議論。こういう膨大な議論の積み重ねが、「水伝」の本質が誰でもわかる形で広められていることにつながっているのだ(とはいえ、まだまだ信奉者も多いわけですが…)。私が書いてきたことは、基本的にはすべて kikulog のコメント欄に出ていることがお分かりいただけると思う(ちなみに私はずっとROMしてました^^;;)。

 さて、上記エントリのコメント欄を読み直して気づいたのだが、IHMのウェブページに「水伝」ビデオ版のサンプルがあった。これ である。どうやって水に言葉を見せているのか、どうやって結晶をつくっているのか、どうやって撮影しているのかがわかると思う。結晶が成長していくところもあって、なかなか面白い。
 これを見ると、きちんと懐疑的に見れば、50個のサンプルの写真のうちからどれを選ぶかだけでなく、成長する結晶の、どの時点で撮影するか、など、不確定要素があまりにも大きいということも見えてくる。
[追記2010.1.21: ビデオサンプルのページが消去されていたが webarchive に残っていたのでそちらにリンク を張っておく。サンプルも見られる。]

 もし、この文章をお読みになられた方で、以下のウェブサイトをまだ見ておられないなら、是非一読されることをおすすめする。「水伝」とは要するになんなのか、とてもよく理解できると思う。
   「水からの伝言」を信じないでください (学習院大学・田崎晴明氏)
   『水からの伝言』の基礎知識 (PSJ渋谷研究所X)

 彼らの言うところの「実験」についての紹介はこれでひとまず終わりにするが、折角なので、今後も折に触れて「水伝」等に載っている彼らの言葉を用いながら、そのニセ科学性を明らかにしていきたいと思う。


「水からの伝言」はどうやって作られているのか(4)

 「水伝」の結晶写真の撮影方法は、大体今まで述べてきたことぐらいしか書かれていない。無論、私もすべての江本らの出版物に目を通したわけではないので、まだ読んでいないものになにがしかのことは書かれているのかもしれない。しかし、そうであればもう少しぐらいは話題になっていると思われるので、おそらくこの程度なのだろう。

 そういうわけだから、彼らの「実験」及びその解釈が如何にずさんであるか、ということは、おわかりいただけたと思う。また、反証実験をやろうにも、この程度のことしか明らかにされていない状況では追試のしようがなく、むしろ彼らのやり方が科学的議論の俎上にあるかのような誤解をふりまくだけである、ということもご理解いただけると思う。もし何らかの実験をやってみて、彼らの結論を否定しようものなら、「実験者の悪い波動が影響を与えたのだ」などと言い出すのも目に見えている。超能力の「山羊・羊効果」 (「超能力を信じない人の前では超能力は発現しない」という、超能力を肯定するための屁理屈)と同じだ。

 今回紹介するのは、IHM総合研究所の木津孝誠氏が、「水伝2」の巻末に書いているエッセイ風の文章である。結晶写真の撮影風景をスケッチしたもので、雰囲気が伝わってくる。さすがに全文は無理なので、気づいたところだけを引用する。なお「水伝2」のpp.137-138に載っている。
寒い冷蔵庫の中での楽しみ!
IHM総合研究所 主任研究員 木津孝誠

(略)

 まず、防寒着に身を包み、マイナス5度に設定された大型冷蔵庫のドアを開けます。そこには水を氷結させる冷凍庫と、台に置かれた光学顕微鏡。その中間に撮影者が座る椅子があります。撮影環境はそこに「もぐり込む」という表現がぴったりです。バタンと冷蔵庫のドアを閉め、椅子に座ると聞こえてくるのは冷蔵庫のモーター音だけ。さあ、冷凍庫から出番を待っているシャーレを取り出します。
結晶撮影にかける意気込みと、臨場感とが伝わってくる。本当に楽しみながら撮影をしているんだろう。
 蓋を取ったシャーレ上の氷塊を、横から見るとツンと立った突起があるのがわかります。結晶はその突起の頂上にあるのです。まるで植物が成長して先端に花をつけるように、隆起した氷の頂点に水の華が開いています。まったく不思議ですね。
 顕微鏡の光は上から落射されています。すばやく光の下に突起の頂点をもっていきます。ここはなるべくスピーディにしましょう。冷凍庫と冷蔵庫の温度差によって、氷が溶けはじめます。溶けはじめると固定していたものが、急に動き始め、結晶が成長することになります。すでに結晶の成長は始まっています。
 マイナス5度でも突起の尖り具合によっては溶けるだろう。平面状の氷ならば、熱を伝え暖めに来る空気の分子は正面からしか来ないが、尖っていれば正面からだけではなく四方から空気分子がやってくるので、同じ気温でも溶けやすくなる(過飽和状態であれば水蒸気分子もやって来やすくなるので、樹枝状に結晶が成長するが)。もっともこの場合は光を当てているので、輻射を受けて氷が暖まり、溶けているのだとは思う。光も、尖った部分では表面積が大きく、水(氷)の分子数当たりに受け取る輻射のエネルギーが大きくなると考えられるからである。

 1パラグラフ飛ばして、次にすすもう。
 結晶の一生は数十秒です。核の周辺にある飾りがその間にどんどん成長し、光の乱反射によって、まばゆいばかりに輝き出します。六方向に広がる枝葉は、そう、まさに葉っぱや花弁のように成長していきます。まるで成長するダイヤモンドです。
 それは溜息の出る美しさ……! (中略)
 そしてたとえばここでピントをわずかに動かしてみると、結晶は核を中心にして立体的に成長していくのがわかります。花にたとえると、コスモスのように核と花弁が平面に近い結晶もあれば、薔薇や菊の花のように核が奥まった、立体感のある結晶もあります。
 200倍の倍率の世界ですから、微妙な高さの違いは、結晶の核と枝葉、両者にピントを均一に合わせられないほどです。写真にある様々な結晶を見て、その立体感を創造していただけるでしょうか。
おそらく冷蔵庫内の水蒸気量はコントロールされていないだろうし、撮影者の吐く息も氷周辺に漂うと思われるので、ようするに氷周辺の水蒸気量がコントロールされておらず、その時その時で違う結晶形になるのだと思われる。また核(突起の先端部分だろう)の形状が対称かどうか、どれだけ尖っているかによっても結晶形は変わると思われる。
 また「水伝」写真で周辺部がピンボケに見えるものがあるのも、高倍率にしているからであることもここからわかる。省略した部分には「フレームに収まりきれないくらい」と書いてあるので、少し倍率を落とせばいいのにとも思うのだが。
 そして冷凍庫から取り出して数10秒後。誕生から休むことなく成長を続けた結晶が、ピタリと止まって見えるときがあります。結晶の成長が終わって、水へと変わる瞬間です。結晶はまったく静止することなく今度は水になろうとするのです。それは水の分子が絶えず動き回っているという事実を思い出させてくれます。
(以下略)
「数10秒」という表現をしているので、おそらく1分以下なのだろうが、突起先端部で先端を凝結核にし、周囲の水蒸気を材料に成長を始めた結晶が、おそらくは撮影のために当てている光によって溶けていく様が描かれている。それは、木津氏にとっては、はかなく美しい結晶の一生を描くドラマのように見えるのだろう。

 さて、このように撮影している人々は、おそらくは本心から喜びを感じながら仕事をしていると思われる。
 しかし、である。既に述べたように、残念ながら、これは科学的実験からは程遠いと言わざるを得ないのである。彼らがどんなに楽しみ、喜び、苦労し感動しながら「実験」をしていても、それは科学的な正しさを保障しない。科学は我々の前に厳然とそびえ立つ自然を理解し、その理解を地道に積み重ねていく営みである。我々がどんなに苦労し、心をこめて「研究」したとしても、自然はそんなことは考慮してくれないのだ。自然は非情であり、そして奥深い。だからこそ、科学は厳しくも楽しいのだ。
 もし、木津氏をはじめとするIHMの人々が真摯に真理を追究したいと思っているのなら、例えば中谷宇吉郎の本(岩波文庫の「雪」など)を是非読んでもらいたい。得るものが多いはずである。

 それにしても、江本が妙な理屈をつけたり妙な道徳を主張したりしなかったなら。こんな批判などされず、「水伝」はアートの写真集としてそれなりの支持を得たかもしれない。無論、結晶写真集としては、たとえば「スノーフレーク」のほうが整然としているし、それこそ「美しい」だろう。しかしアートとして捉えるならば。HOLGAなどのトイカメラで撮影した、ちょっとピンボケの写真がもてはやされるぐらいだから、「水伝」の不完全な結晶写真だって十分アートになり得たかもしれない。その意味で、かえすがえすも残念である。

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「水からの伝言」はどうやって作られているのか(3)

 「水伝2」に戻る前に、「水は答えを知っている」(江本勝、サンマーク出版)から、「実験」の方法について述べている部分を引用しよう。「プロローグ」のp.21より。
 水の結晶写真を撮るために私が行っている具体的方法はこうです。
 水を一種類ずつ五十個のシャーレに落とします(最初の数年間は百のシャーレでした)。これをマイナス二〇℃以下の冷凍庫で三時間ほど凍らせます。そうすると、表面張力によって丸く盛り上がった氷の粒がシャーレの上にできあがります。直径が一ミリほどの小さな粒です。これを一つずつ、氷の盛り上がった突起の部分に光をあてて顕微鏡でのぞくと、結晶があらわれるのです。
ということで、最初の数年間をのぞけば、「水伝2」「水伝3」に書いてあることと基本的には同じである。「水を一種類ずつ五十個のシャーレに」というのは曖昧な言い方だが、「一種類につき」というつもりで書いたのだろう。
 なお、この文章の前段には、江本が結晶写真を撮ることを思いつき、会社の研究員にそれをやらせてみたこと、当初は普通の冷凍庫で凍らせ、顕微鏡はリースだったこと、結晶写真が取れるようになるまで二ヶ月かかったこと、などが述べられている。
 続いて一般的な結果についてこう述べる:
 もちろん、五十個全部に同じような結晶があらわれるわけではありません。まったく結晶をつくらないものもあります。これらの結晶の形を統計にとり、グラフにしてみると、明らかに似た結晶があらわれる水と、まったく結晶ができない水、あるいは、くずれた結晶しかできない水など、それぞれの水がもつ性質がわかるのです。
統計を取ってグラフにした、ということと、似た結晶があらわれる、ということは、直接にはリンクしない。つまり、統計を取るということは個別の特徴を捨象して、なんらかの共通項でくくる(この場合なら「美結晶」「美傾斜」など)ということだから、文字通りに意味を取れば、意味の通じない文章、ということになる。こちらで解釈すると、おそらく統計のパターンが似ている、ということなのだろう。つまり、美結晶が多めにでる水、とか、少なめに出る水、とか。
 さて前回も指摘したとおり、「良い水」とされたスカトー寺の甕の水でさえ、美結晶は50個中高々3個であった。ポアソンエラーをつければ、3±√3個、ということだから、1σで1個程度、2σだと3±2√3個で0個になる可能性も十分にある。だから、実際のデータを見れば、とても性質がわかるなどと言えるような統計的に意味のあるデータではない。
 無論、表に出てきているのは前回までに示した4例だけなので、他の多くの例では違うのかもしれない。しかし、そうであるならば、きちんと主張する側がデータを出してくれないことには議論のしようがない。そして、表に出てきているデータは、普通は代表的な、あるいは江本らの主張の特徴を良く表すものであろうという推測は自然だと思われるので、そう考えると、「水伝」の主張というのは意味があるとは言えない、と言っても良いのではないかと思われる。

 次に音楽の聴かせ方についてである。「水は答えを知っている」p.22には、研究員の発案を受けて音楽を聴かせる実験を開始したことについて、以下のように書かれている:
 たしかに、音楽を聴かせることによって振動が伝わり、水の性質を変えてしまうというのはありえる話です。私自身も音楽が好きで、子供のころは本気で声楽家になろうと考えたことがあったぐらいなので、このユニークな実験には大賛成でした。
 ただ一口に音楽を聴かせるといっても、どんな音楽をどのような状態で聴かせたらよいのか見当がつきません。私たちは試行錯誤を続けた結果、二つのスピーカーの間にビンに入れた水を置いて、人が通常聴くぐらいの音量で水に聴かせてみるのがよいのではないか、という結論に落ち着きました。使う水も、いつも同じものでなくてはなりません。私たちは、薬局で売っている精製水をこの実験に使用してみることにしました。
というわけで、ビンに入れて水に音楽を聴かせ、その後にシャーレにとって凍らせるという手続きを踏む、ということがここから明らかになる。つまり、音楽を聴かせながら凍らすのでもなければ、音楽を聴かせながら結晶の写真を撮るというのでもないのだ。
 また音によって水の結合状態が変化したとしても、それはすぐに変化してしまい、状態を長時間保持することはない、ということも、すでにあちこちで指摘されている。

 音楽を聴かせた実験を受けて、江本は
 さらに、私はおどろくべきことを思いつきました。水に言葉を見せてみたのです。ガラスのビンに水を入れ、言葉を書いた紙を水に向けて貼りつけるのです。「ありがとう」という言葉を見せた水と、「ばかやろう」を見せた水では、結晶にいったいどのような違いが出るのでしょうか。
(p.23)と述べている。つまり、音楽を聴かせた実験の「成功」(本当に成功しているかどうかはともかく、彼らは主観的にはそう思った)に気を良くした江本は、水に言葉を見せるということを思いついた、というわけである。「水伝」誕生の瞬間ともいえるだろう。
(次回につづく)

「水からの伝言」はどうやって作られているのか(2)

 前回は「水伝2」の巻末記事を引用して考察したが、今回は「水伝3」の記事から引用する。p.159-160の記事。
結晶撮影の現場から
IHM総合研究所 木津孝誠
この方は実際に結晶写真の撮影を行っている方のようで、「水伝2」でも「撮影の現場から」ということで記事を書いている(「水伝2」p.137-138)。そちらでは、「主任研究員」の肩書きがついている。
 写真集に登場する結晶映像は、以下のような手順で撮影を行っています。ここでは72~75ページにあるスカトー寺での3つのサンプル観察の実験を例に、結晶観察の全体と、それぞれのサンプルから得られる結晶パターンの傾向性の違いについて説明します。
これは「72~75」ではなく、「70~73」の間違いと思われる。p.70には「タイ スカトー寺 3つの甕の雨水」と題し、「村人の甕の雨水」が載っている(おそらく寺の僧侶と子どもたちが水を汲んでいる写真が1枚と、結晶の写真が3枚)。p.71では「森の中の甕の雨水」として、森の中にある甕の写真と、結晶の写真が4枚。p.72では「スカトー寺の甕の雨水」として寺にあると思われる甕の写真が、そしてp.73には結晶の写真が6枚載っている。なおp.74には「『象』の写真を見せた水の結晶」ということで、象の写真の上にビンを置いている写真が、p.75にはその結晶の写真が1枚づつ載っている。
 検体(水)を凍らせる際の手順
   ① 1サンプルあたり50枚のプラスチック製のシャーレに水をスポイトで0.5ccずつ滴下します(写真1)。
   ② シャーレに蓋をしてフリーザーに納めます。
   ③ フリーザーは最低冷却温度がマイナス25℃まで下がるもので、3時間かけてサンプルを氷結させます。

 結晶撮影の手順
   ① 氷結したサンプルを観察する場所は大型冷蔵庫(1坪程度)で、室内はマイナス5℃に設定してあります。
   ② 観察用顕微鏡は「金属光学顕微鏡(カメラ装置付き)」(写真2)です。
      冷蔵庫から1つずつシャーレに載った氷結サンプルを取り出し、顕微鏡の上にセットします。
   ③ 氷結したサンプルは隆起しており(写真3)、その頂点に顕微鏡から落射される光を当てます(写真4)。
   ④ 接眼レンズを覗いて結晶を観察し、顕微鏡に設置されたカメラで撮影します。

写真1は並んだシャーレにスポイトで滴下している写真、写真2は顕微鏡の写真、写真3はシャーレ中央で凍って中心部が盛り上がった滴下された水の写真(凍らせると、しずくの中心部が尖るように盛り上がる)、写真4はそれを顕微鏡にセットしている写真である。

 というわけで、読めばわかるように、
  • サンプルは文字や写真を見せた水それぞれに対して50個
  • スポイトで0.5ccずつ小分けにして-25℃で凍らせる(決して音楽を聞かせながら、とか、文字を見せながら、ではない)
  • 凍らせたサンプルは、-5℃の部屋で観察、その際サンプルに光を当てる
ということになっている。
 なお、中谷ダイアグラムによれば、水蒸気量が豊富であれば、-15℃当たりで樹枝状の結晶ができる。つまり、-25℃の氷を-5℃の部屋にもってくれば、氷周辺ではわずかな時間の間だけだろうけれどもちょうど-15℃付近にいる時間があり、その間に樹枝状の結晶が成長するということなのだろう。気相成長と思われるので空気中の水蒸気が材料として必要であるが、おそらく撮影者の息が水蒸気の供給源ではないかと思われる。よって、結晶になっているのは、文字や写真を見せた水分子ではなくて、まったく無関係な、撮影部屋に漂う水分子、さらに言えばおそらくは撮影者の息に含まれる水分子であろう(このあたりはきくちさんやkikulog周辺で、だいぶ以前に相当議論されているので、詳細はそちらを参照されたい)。

 いちおう機材についても書かれてあるので、引用しておく。とくに妙なものはない。
結晶写真撮影使用機材
  • OLYMPUS製 システム金属光学顕微鏡 BX60
  • OLYMPUS製 全自動顕微鏡写真撮影装置 PM10SP
フィルム
  • FUJICOLOR 業務用カラーフィルム ISO400
だそうである。
観察基準
 結晶はその形状によっていくつかのタイプ(美結晶、美傾斜、6角形、放射状、格子状、不定形、陥没、無し)に分類しています。

 結晶形状のタイプによって0点から100点までの点数をつけます。形状分類ごとにその点数と観察された氷結サンプル数の積数を算出します。その総合点数の50氷結検体平均が結晶評価点数となります。
 点数の基準となるのは、結晶形状が6角形であるかどうかに加えて、美しいかどうかであり、その判断は観察者が行います(例:6角形で美しい結晶=100点、結晶無し=0点)。
 この算出方法は、観察者による評価点数のばらつきはあるものの、サンプル水の結晶状態の傾向は得ることが出来ます。
ということだが、前回も書いたように、どういうものが美結晶で、どういうものが美傾斜なのか、それがさっぱりわからない。また美結晶と結晶無しは100点と0点ということであるが、その中間のカテゴリーが何点なのかもわからない。さらに、「水伝2」では「江本会長が」選んだということになっていたが、こちらでは「観察者」ということになっている。ただし、木津氏が観察者なのかどうかはわからない。おそらく、木津氏は「撮影者」という立場であり、出来た写真を江本が「観察」するのではないかと予想される。が、正確なところはこの文章だけからはわからない。

 次に、「タイ スカトー寺の水の結晶」の観察結果を引用する。
試料 美結晶 美傾斜 6角形 放射状 格子 不定形 陥没 無し 評価点数
A 村人の家の甕の雨水 1 3 1 0 3 41 1 0 28.8
B 森の中の甕の雨水 1 7 1 0 1 38 2 0 38.2
C 寺の甕の雨水 3 6 3 0 2 36 0 0 41.8

この結果に対し、
 3つの甕の雨水の結晶観察全体をあらわす表、およびグラフからもわかるように、美しい結晶が多ければ多いほど評価点数は高くなります。また観察された「美結晶」並びに「美傾斜」の結晶パターンの数の違いだけを見ても、村にあった甕の雨水よりも、寺や森にあった甕の水の方が美しい結晶が観察される確率は高いといえます。よってそこから、場が持つエネルギーの違いを結晶観察によって推測することが可能といえます。
としめくくっている。なお、上の表をグラフにしたものも載っていて、それが上記引用文中の「グラフ」である。
 前回書いたように、「水伝2」では一番多く現れたカテゴリー、この場合ならば3つとも「不定形」であるが、から本文に載せた結晶写真を選んでいたはずである。今回の「水伝3」にはそのようなことは書いていないのでわからないが、判断材料としては、ごく少数のサンプルしか得られなかった美結晶や美傾斜の数も考慮されるようである。点数で重みをつければ、これらが効いてくるのはそうなのだろうが。
 ところで上の表および前回示した結果から、誰か美傾斜などのカテゴリ別の配点を推測してみませんか?カテゴリーは8つ、配点のわかっているものが2つ(美結晶100点、無し0点)、サンプルが4つ、で連立方程式をたてると、式4本に未知数8、拘束条件2で8-4-2=2>0なので複数の解が出るだろうけれども、おそらく10点刻みなどのようになっていると思われるので、解が求まるのでは、と思う。
 さて上記の結果から「場が持つエネルギーの違い」を判別できると言っているのだが、統計を知っていれば、そんなことは言えないと言うのはすぐにわかるはず。単純にポアソンエラーをつけてやると、どれも誤差の範囲で区別がつかなくなる。なので、この結果からは、どれが良いなどという結論はでないはずだ。

 というわけで、「水伝3」の検討からも、彼らの結論は統計誤差を考慮しない恣意的なものであると言ってよいのではないか、という結論が導かれる。また結晶になっているもの自体が見せた文字や写真、聞かせた音楽とは無関係のものである可能性が高いと思われる。

 以上が「水伝3」に書かれている結晶写真の撮影方法である。次回、もう一度「水伝2」に戻り、この木津氏が書いている文章について検討したいと思う。



ソルトクリスタルランプ? (5/19追記あり)

 Yahooの某掲示板 で相変わらず頑張っている某SSFS大先生ですが、ちょっとこれはいくらなんでもどうかと。
ヒマラヤの岩塩ランプ(投稿者 ssfs2007)

ヒマラヤの岩塩ランプという商品があります。灯りをつけると自然に発生するマイナスイオンが、リラックス効果やらヒーリング効果やらを発揮するという触れ込みです。だれがそんなことを言い出したのか関心もありませんが、いろんな代理店が販売しています。
http://www.himalaya-lamp.com/
http://www.togosu.com/
http://www.salt-crystal.net/

日本人って騙されやすいな、バカだなと思ったそこのあなた。米国の通販サイトをのぞいてみましょう。amazonがでいいでしょう。先ほどの「negative ionhealth」で検索すると、あら不思議。ヒマラヤの岩塩ランプがたくさん見つかります。なんのことはない。米国でもこんなたわいのない商品が普通に売られているんですね。ヒマがあったら、何カ国で売られているか調べてみるのもよいでしょう。
そんなに売れているってことは評判もいいってことでしょうし、するってえと、マイナスイオンの効果だ!!ってことにSSFS式論理回路ではなっちゃうんじゃないか、と…。(^^;;
ドライヤーの場合と何が違うんでしょうか。ロジックとして。

ランプ自体はインテリアには良さげですけどね。値段を別にすれば。(^^;;

しかしこの掲示板でお相手をされている方々には頭が下がります…。

追記(5/19)
SSFSさんからのコメントが当該掲示板でありました。こちら。
これについて、新たにエントリを書きましたので、ご参照ください。「SSFSさんへ」