バーゼルⅢ対応証券について(4) | 金融・経済の仕組を解きほぐすブログ

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AT1の(2)永久性(3)利息・配当の任意性も、債券を株式に近づけるための特質を備えている必要がある。(2)についての大きな検討事項としては2つ。1つ目は非常に簡単な話で、AT1では期限付きのものは認められない(満期が永久であることが必要)。


2つ目はコール条項とステップアップ金利に関する制約だ。コール条項とステップアップ金利の関係性については以前書いた。http://ameblo.jp/financialmarkets/entry-12038813123.html

AT1ではコールの禁止期間は最低5年で、ステップアップの付与は不可だ。投資家からするとステップアップが不可であることでコールの蓋然性が明確ではなくなるため、条件としては厳しいものになっている。


(3)利息・配当の任意性については、利息の支払を任意に停止できることを求めており、停止した利払については非累積であることが必要である。つまり、停止した分の利息は将来支払われることがないという意味だ。発行体が利息を停止したとすれば、その停止した利息金額は全て発行体が利用できることをバーゼルⅢでは求めている。そのほか、AT1の利息は配当に近い性格があるため、配当と同様に分配可能制限が存在する。


また、資本バッファーとの関係では、最低資本バッファー比率を割り込むと社外流出が一定程度制約されるが、その中にはAT1の利払も含まれている。つまり、資本バッファー比率を割る水準で自己資本比率が低下すれば、AT1の利払いを止める必要が出てくるということだ。


以上がバーゼルⅢ対応証券の概略だ。通常の債券よりは圧倒的にリスクが高いものだが、その分スプレッドも厚いため、良い投資対象となるのではないだろうか。今後のメガバンクによるAT1の追加発行に注目していきたい。