S&Pの日本国債格下げについて | 金融・経済の仕組を解きほぐすブログ

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S&Pが日本国債を格下げした。


http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NURMSS6S972N01.html


しかし毎度思うのだが、対外純資産国で自国通貨の発行権があるソブリンの格付とは一体何なのだろうか。例によって財政の脆弱さを一番の理由としている。


S&Pは国の財政を判断する基準として政府債務の対GDP比率を定量的に評価しているが、国の財政を判断する際には、それ以外に重要な要素があることを以前指摘した。


http://ameblo.jp/financialmarkets/entry-11967022580.html


当然、S&Pも対外純資産の要素はソブリンの格付を評価する要素の一つとして入れている。今回の格下げはそれを踏まえた上での判断なのだろうが、やはり腑に落ちない点が多い。


レポートの中には日本の一人当たり所得水準が2011年に比較して低下している旨の記載があったが、それは米ドル建てで見たものだった。なぜ日本国内の所得水準を判断するのに、米ドル建てで見る必要があるのだろうか。この間に円安が1.5倍も進行しているなかで米ドル建てで見た所得水準が下がるのは当然であるし、日本人で自分の所得を米ドル建てで考える人がどこにいるのだろうか。かなり視点がズレていると言わざるを得ない。


対外純資産を多額に有しており、自国の通貨が発行できる国である限りにおいては、財政破綻など起きようがないわけで、それに対して格付を付ける意味というのも実はほとんどない。海外からの借金がなく、自分の通貨を発行して政府債務を返済できるような国にとって破綻のリスクなど無いに等しい。基軸通貨を発行している米国の格付なども同様に意味のないものだ。


今回の格下げ発表後も市場は無反応。国債をほとんど国内で消化している状況にあって、今回の格下げに反応する投資家は限定的だろう。