【感想と考察】Sound Horizon「絵馬に願ひを!」 | 徒然なるままに

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日々思うことをつらつら書いております。だいたい長文傾向です。

Sound Horizonの6年ぶりの新譜がなんとBlu-ray!物語を自ら選択できる仕様ということで、サブスクで安く手軽に聞けるこのご時世ですが、サンホラなら納得の、むしろそれを待ってましたの新譜だと思いました。




ということで、「絵馬に願ひを!」の感想やら考察やらを書いていこうと思います。感想考察入り混じっていますがご容赦ください。



「星空へと続く坂道」
星空 と 続く坂道のスペースは、背景と合わせる形か。

白い壁→救急車のSEが鳴ることから病院のことか。物理的に麓に病院があるのか、病院という現実世界から遠ざかるという表現なのかは不明。
 
咲く花や…   散りぬるを…   →咲く花は歌っている佐久夜姫子(=コノハナノサクヤヒメか)、散りぬるをはいろは歌か。
ここは、桜の花などが毎年毎年咲いては散っていく様を、彼女は厭世的に捉えているのだろうか。

久方の…   春の陽を…   →紀友則の「ひさかたの光のどけき春の日に静心なく花の散るらむ」か。
直後の仮初めの影がよく分からないが、私の生まれた《地平線》を鑑みると、人間関係に嫌気が差している様を表しているのか。

諦めながら…   生きてた…
出ました!今回の主旋律!
サンホラといえば、アルバム全体を通じて流れるメインの旋律が楽曲を楽しむ上での肝ですよね。今回の主旋律は、階段を徐々に速度を上げて駆け上がっている力強い様子が表現されていて、疾走感があって良いですね。


「狼欒神社」
今アルバムの導入曲というか、メイン曲というか。
悪くなゐだらう→ぺこぱが元ネタ。インタビュー記事参照。


この神社関係者、声に出して言った「変質者」が聞こえていないので、耳が聞こえないのでは?ということは、ノエルの双子の……

肝心なところをー縦糸で紡がれたので、よく分からない笑

捌拝捌拍手→ これは第8の地平線とかけているのであろうが、似たようなのが実際にはある。八度拝八開手といって、伊勢神宮で神事の時に行うもので、基本的に一般の人は行わない。他にも出雲大社では二拝四拍手だったりする。出雲大社は日本神話の舞台であり、このアルバムの登場人物の住んでいる場所にも関係してそう。
ちなみに、拝は90°のおじぎ。かなり深い。一揖は軽くおじきする感じ。

姫子が驚いている台詞から、彼女はこの陽葦火山神社の娘だと思われるが、このあと赤の光の介入で狼欒神社の子と思ってしまっている。中々にきな臭い、この光。

ナレーションは大塚明夫さんと深見梨加さんの2種類、加えて間奏がギターorピアノ&ストリングスの2種類あって、2×2の計4種類ある。
ずっと大塚さんナレしか聞けていなかったので、深見さんの声を聴いてびっくりしてしまった。
Neinではバージョンごとに違いがあったが、Blu-rayなら1枚で表現できる。ちょっとお得な気分。

祝詞や雅楽を、ここまでロックに落とし込めるとはヤバイ。

動き回る歌詞もBlu-rayならでは。Neinでも「食物の連なる世界」のあの歌詞もこういう風な表現だったな。間奏は、ギターもピアノ&ストリングスもどちらもカッコ良かった。ライヴで聴きたい!

誰も損しなゐ幸福な関係=Win-WinでHappy
ここら辺も神社関係者の胡散臭さを感じ取れてしまう。それとも、摂理を捻じ曲げ無理矢理ハッピーエンドにしてしまうのか。

絵馬に願ひを!はライヴだと絶対レスポンスするところよね。


「夜の因業が見せた夢」
登場人物は伊坂那美。名前からイザナミが元でしょう。
葦の小舟に乗せた我が子、灯留子→イザナミの最初の子はヒルコ。障害を持っていたので葦の小舟に乗せて流す、つまり遺棄しています。

泡の表現→イザナミの2番目の子はアワシマで、その名の通り泡となって消えてしまっています。

朝と夜や、幸0304はRomanを彷彿とさせて良いですよね。

主旋律とともに駆け上がり辿り着いたのは、陽葦火山神社。この時はまだ狼欒神社ではないみたいです。
時系列に関しては、全体の考察で詳しく語るつもりですが、忘れられた一枚の絵馬という表現や、絵馬が1つしかないことから、那美が始まりではないかと。

さて、選択肢。本当に選べるw
もはやノベルゲームみたいな感覚です。


「贖罪と《焔》の息吹」
出産ルート

私にとっては幸運の、しかし周りにとっては不幸の子(さいしょのこ)》
→直後の「青い春」から学生時に妊娠し、堕胎しているのでは?

1000人殺すなら1500人産めば良いさ!
→イザナギとイザナミの会話として有名ですが、場面はイザナミの死後、彼女に会いに黄泉の国へ行ったイザナギが、変わり果てたイザナミから逃げ、黄泉比良坂の道を大岩で塞ぎ、決定的な別れを告げるところです。全然違う!のは何か意図があるのか。

下腹部が燃えるように熱い→イザナミは火の神カグツチを産んだ際に、下半身に大火傷負ったことで死んでしまいます。
直接的描写はないですが、那美も焔を産んだことで命を落としているのでは?


「暗闇を照らすヒカリ」
死産ルート
結構現実的な歌詞であり、最後の怨嗟の声とも思える叫びは、かなり心に来るものがあります。でも特に最後の曲調が良くて、ついリピートしてしまう。

二度目、三度目→あれ?一度目は?と思いきや、それは出産ルートで描写あり。
堕胎と流産との関係性はよく分からないが、那美は一度目の子を堕ろした事が、不妊症に繋がっていると思っている節がありそう。

100人いるなら その中の38人が
→直接の資料が見つからなかったが、名古屋市立大学の研究チームによる2007年の調査によると、愛知県岡崎市で健康診断を受診した35~79歳の女性2733人を対象にアンケートをとったところ、流産したことがあったのが953 人(38%)という結果だったとのこと。
なお、2回以上流産の経験があったのが105人(4%)、3回以上流産経験があったのが22人(1%)とのことで、那美場合はこの1%に該当するといえます。
追記)名古屋市立大学の参考ページを見つけたので添付します。
選別検査(スクリーニング)→スクリーニング検査とは病気である可能性を探る検査、要するに健診みたいなものですが、この場合不妊治療の一環で原因を探っているということでしょう。
そして原因が見つからないと。

Fiction Junction→唐突な梶浦由記さんにびっくりした笑
Revoを始め、サンホラゆかりのアーティストが多数参加されてますよね。

この後の力強い決意とも取れる歌詞から一転、

それなのに×4→変拍子好きとしては堪らない箇所。たぶん5拍子かな。もしくは11拍子かもしれない。
歌詞の配置が、失意の中階段をふらついて上っているイメージ。

宵の坂→黄泉比良坂のことか。

神を呪う→段数が一段減って四段に。死のイメージなのか、それとも神社に辿り着けていないことを意味するのか。直後の選択肢から御礼参りは拒否しますという意味?

こんな《地⛩線》、滅んでしまえばいい・・・・・・!
→迫真の演技に思わず震え上がりました。ライヴで観たい箇所ですが、観たいがためにこのルートを選択するのは中々に無慈悲だなと。


「私の生まれた《地⛩線》」
冒頭のナレーションは、悠木碧さん2パターン、沢城みゆきさん2パターンの計4パターンか。

姫子の歌として考察するが、そもそもこの人物は姫子なのか。というのも、この人物と1〜2曲目の姫子が、どうも同一人物には思えなくて、この人物の方があまりにも厭世的すぎて雰囲気も暗い。この子はエレクトリカル神社とは言わなそう。

鏡に映る面影が罪を突きつける→母親似なのだろう。そして、その母親はもういない。

年に一度だけ→母親の命日か。

荒れ果てた庭園→庭園とあるので立派な広さなのだろう。神社の敷地なのだろうか。

妃巫女→卑弥呼自体は、魏が勝手に付けた漢字なので、本当の読み方や漢字は分からないところ。確か「逆説の日本史」にこのことに対する記述があったのだが、本が実家にあるので今度帰ったら確認しておこう。
後ろのセリフがよく聞き取れないが、誰かの家が火事になっているのか?

この人達は何を演じているのだろう→他人の優しさや悪意がまるで伝わっていない。直後の強きモノが弱きモノを虐げ、という歌詞から人間に対して、ホッブスの「万人の万人に対する闘争」のような価値観が窺える。
そういえばホッブスは「人間は互いに対して狼である」とも言ってましたね。狼たちが親しく集まる……狼、団欒……狼欒神社、は!まさか!
……流石にこじつけが過ぎる。

この箱庭→おそらく学校のことか。学内カーストなんてものがあると聞きますし。

根を伸ばせば→ここの歌詞の意味や表現の仕方が素晴らしいなと思いました。中々強烈な歌詞ですが。


「生きているのはボクだけなんだろ?」
低確率で再生される、ある少年の記憶。こちらも冒頭ナレは4パターン。
正直言って最初聞いた時は引いた。歌詞がえぐい。猫好きにはキツイ。

この少年は何者なのだろうか。ジャケットにはバットを持った少年がいるので、この人物だと思うが、那美が産んだ焔なのだろうか。

0.XXX%の不純物→少女ルートと対になっていると考えると、酒のことでは。
ちなみに、厚生労働省が発表している健康日本21(第二次)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html
では、「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」は1日当たりの純アルコール摂取量が「男性で40g以上、女性で20g以上の人」と定義しています。
仮に60kgの男性の場合、その60%は36,000g。40gは約0.1%に当たりますね。コンマ3桁%だと少なくとも3.6g未満、350mlの缶ビールで約14gなので、微量のアルコールですね。

消し飛ぶような愛→酒に酔ってということでしょうか。ということはこの少年は父親に乱暴されている?
それにしても、コンマ3桁でということは、この父親はめちゃくちゃお酒に弱いということでしょうか。

以降、問題の歌詞が続くのであまり考察したくないのですが、一つ気になる歌詞が。
殴られたら痛い生き物はボクだけなんだろ?
→酒の件も合わせると、つまりこの少年は虐待を受けているということか?
イザナミの死の原因であるカグツチは、イザナギに殺されているので、那美の子の焔が父親にという考えに符合する。

演じるだけの《操り人形》→若干違うかもしれないが、哲学的ゾンビを想起させた。長くなるので説明は省略するが、この少年は自身の虐待の影響で、猫を虐待しているが、それを正当化するために、周りの生き物は感情を持たないと考えているのでは?

そもそもこの曲は、ずっと少年と男性の2人で歌っているんですよね。男性のほうはRevoっぽいが、どういう意図だろうか。
《追記》男性はジョジョのアニメOPを歌ったことがある、ハセガワダイスケさんでした。姫子死亡ルートで言及されているスーツの男みたいですね。少年との関係性は親子なのか、同一人物なのか、詳細はフルエディションを待つしかないですね。

最後の狂笑と、耳をつんざくようなアウトロの悍ましさに、身が震えた。ここは何回聴いても身構えてしまう。


「恋は果てまで止まらない」
天野宮比→アメノウズメ、宮比神とも呼ばれる。
天岩戸に引きこもったアマテラスを魅惑的な踊りで、外に連れ出すのに一翼を担った神。なので歌詞中でも踊ってますね。
芸能の神ともいわれているので、アイドルの握手会もその点から来ているか。

LEAN MALL→元ネタは言うまでもないが、レオンティウスといえば雷。雷神といえばタケミカヅチである。タケミカヅチは、イザナミの死の原因であるカグツチの子。何かあると思うのは考えすぎか。

《馬鹿だけど約8ヶ月妹の可愛い幼馴染》
→アリカと言っているように聞こえるが、当てはまる神は不明。

《馬鹿だけどピンチの時には結局頼れるもう一人の幼馴染(アイツ)》
→後述する猿田犬彦のことか。
猿田犬彦のモデルであるサルタビコは、天孫降臨時に案内役をかっており、アメノウズメも案内している。

最後の選択肢が異性愛か同性愛。
サンホラ文脈では3は不安定な数字だが、日本神話では、中国大陸の奇数を好む思想から結構3という数字が出てくる。
犬彦を選んでも、モデルのサルタビコは貝に手を挟まれ溺れ死ぬので、結末は如何に。
同性愛ルートも、アリカ?の正体について分かるのかな。


「西風のように駆け抜けろッ!」
猿田犬彦→サルタビコ
あと、雉と桃があれば桃太郎だが、日本神話でもどちらも登場します。どちらも縁起が良いものですね。

ラップ!サンホラでラップは面白い。非常に軽快で好きな曲。

《先輩から安く譲ってもらった外国産?の愛車よ》
→ZEPHYR750(ゼファーナナハン)
カワサキの有名なバイク。ゼファーは西風のこと。川崎重工の二輪車製造拠点工場である、兵庫県明石市から吹く業界への新風となる様にとの願いを込めて名付けられたとのこと。
私もバイクにはあまり詳しくないが、それにしたってカワサキのバイクを外国産と間違えるだろうか。と、思っていたら、ゼファーナナハンはカワサキのロゴが入っていないバージョンがあるとのこと。もしかしてそこまで考えてのこの歌詞!?
ちなみに、このバイクに乗るためには大型二輪の免許が必要なので、犬彦は少なくとも18歳以上である。

西風→そもそもなぜ西風なのか。日本神話では、神武東征のように、西から東へ勢力を拡大しているので、その点が関係あるのでは。ただ単に、宵闇の唄のオマージュかもしれないが。

愛猫→すず
サルタビコは伊勢神宮にほど近い五十鈴川が故郷のため、そこから引用か。

《お前が家に迷いこんで来た日》
→人間で米寿だと凡そ18歳ということなので、犬彦が物心つく前からの家族なのだろう。

須久奈キャットクリニック→スクナビコナのことか。多種多彩な神だが医薬の神でもある。

延命か安楽死か→私は迷わず延命ルートを選択。どんな展開か楽しみ。

この曲だけ神話要素が薄いような気がする。


全体にかかる感想と考察
歌詞のフォント→登場人物ごとにフォントが違っていて、力の入れようが窺える。またフォントの色も凝っていて、死(紫)と生(青)の使い分けは徹底しているように感じられた。


赤の光→では、赤の光はどうだろうか。赤い歌詞と関係あるのだろうか。歌詞が赤いものは、罪、嘘、復讐など。どれも第七の地平線で見かけるが、この光の正体については残念ながら考えが及ばない。


住所→上記のインタビュー記事では、登場人物の住んでいるところも決めている旨の発言がある。
那美:八雲県杉浦市
八雲杉といえば千葉だが、日本神話では関東はメインではないので、おそらく八雲立つの枕詞から出雲=島根県ではないか。となると杉浦市は松江市。松江市の東出雲には黄泉比良坂とされる場所があるため、かなり濃厚な線である。

宮比、犬彦:凪丘県凪丘市純泉区
政令指定都市で名前が近そうなのは、静岡県。ということは清水区か。静岡市清水区にはヤマトタケルが祀られている草薙神社があるので、今後の展開の重要な要素になるかも。


陽葦火山神社→この神社、どこにあるのだろうか。バイク持ちの犬彦はまだしも、高校生であろう宮比はそこまで行動範囲が広くはないと思われるので、凪丘(静岡)県近辺ではなかろうか。
また、那美の絵馬では、母も安産祈願に訪れており、「贖罪と《焔》の息吹」では那美が語尾に浜松の方言である"だに"を付けていることから、地元まで参拝に行ったのではなかろうか。
以上より、凪丘(静岡)県近辺にあると推測。

由来についても考えてみたが、どうにも神社の名前にしては違和感が。たぬき言葉みたいに「ひ」が余計に思えてしまう。葦山神社ならスッキリだがこれだと味気ない。
ここからはかなりのこじつけだが、「ひ」を「否」と考えると、葦=葦原の中つ国 の反対は、高天(原)、山→海または谷、もしくは平地ということで原、つまり高天原で、この神社は天にある神社? 静岡県なので、富士山があるからなくはないかな。
富士山の神社といえば浅間大社だが、主祭神がコノハナノサクヤヒメ。果たして……といっても、浅間神社は全国めちゃくちゃあるので関連性は薄いかな。


死亡演出→超低確率(一説には1000分の1)で各登場人物が死んでしまう演出が入るらしいが、私は1回もお目に書かれていない。
では、なぜそのような演出があるのだろうか。

何度も選択するということは、予期せぬイレギュラーも発生するということか、もしくは登場人物は既に死んでいて、狼欒神社はあの世の神社ということなのか。そうなると「星空へと続く坂道」の歌詞が別の意味に聞こえてくる。

ただ一つ言えるのは、この演出を見ようと何回も何回も再生する自分が、まるで登場人物の不幸を喜ぶとんでもない神に思えるということ。

気長に見られる日を待つか。


物語の順序→絵馬や神社の描写から那美が最初かと思われる。
少年/少女の記憶の後、「物語は結末はより……」とあるので、これが最後なのか。それとも今後の選択肢で変わることもあるのか。



色々と考察していたらかなりの長文になってしまった。
まだアマテラス、スサノオ、オオクニヌシ、ヤマトタケルなど、日本神話のメインどころが出ていないので、フルエディションでこれらの神話をモチーフにした話が出たら面白いな。

ちなみに、御神籤は末凶でした。微妙やなと思ったら、めっさ残念だったねぇで笑ったわ。



追記:アプリ版及びフルエディションのジャケット絵の感想と考察も書きましたので、是非ご覧くださいませ。