Let's talk about...

Let's talk about...

あくまでも個人的な映画論です。ネタバレにご注意ください。

Amebaでブログを始めよう!

これから映画館へと見に行きたい映画が多くなってきたのでまとめてみたいです。

(なお、筆者は在英ですのでイギリスの映画館公開に合わせておりますのでご了承ください。)


The Theory of everything、こちらはイギリスでは来月に公開です。

難病を持った科学者、スティーブン・ホーキング博士の半生を描いた作品です。
予告編を見ただけでも、涙ぐんでしまいました。




Big Eyes、イギリスでは12月26日に公開です。
ティム・バートン監督の最新作です。
主演はエイミー・アダムスとクリストフ・ボルツ。





Dumb and Dumber to

あの二人が帰ってきました!なんと20年ぶりです。こちらは今週末公開なので楽しみです!





Men,Women and Children

この作品は現在公開中です。
アダム・サンドラーやジェニファー・ガーナー主演です。
現在のインターネット社会での、ティーンエイジャーの恋愛とそれをみつめる親達を題材にしたストーリーのようです











1978年アメリカ




殆どホラー映画だと思う。

この映画より恐ろしい家族映画を見たことがない・・。



あらすじはいたってシンプル。


ロング・アイランドの海辺に豪奢な家を持つ裕福な家庭、初老の両親と3人姉妹。何不自由なく育ったそれぞれの個性を持つ3姉妹たちも成長し独立している。
しかし、ある日の何気ない食卓、父は母と別居をしたいと宣言する。予想もしない父の宣言に戸惑う妻と娘たち。しかし、父は生半可な思いで決心したようではない様子。

著名なインテリア・デザイナーとして、よき妻、よき母として完璧な生活をおくってきた妻の精神はこの日を境に一気に崩れはじめる。


3人の姉妹たちも、両親、そして自分たちのパートナーや仕事について考え始める。


と、ありふれた話ではある・・が、この映画はキング・オブ・トラッシュ、実は私も大好きなジョン・ウォーターズ監督が大推薦している映画であるくらいだから只者ではないのだ。

以下、彼のエッセイ集、Crackpotでこの映画について語られている箇所があるので抜粋してみたいと思う。



以下Crackpotから抜粋。


You name it, Interiors has it - anguish, divorce, suicide attemps, religion, sibling rivalty、 inability to communicate-all my favorite topics for "serious " film,


The performances are brilliant. Especially Geraldine Page. Just watching her facial expression as she's internally torn apart is alone worth the price of admission.

怒り、離婚、自殺未遂、宗教、兄弟姉妹間のライバル心、コミュニケート不全・・君も挙げてみてくれ。インテリアは僕がシリアスな映画に大事だと思う要素をすべて兼ね備えているんだ。

出演者の演技はすばらしいが、特に母親役のジェラルディン・ペイジは特にすばらしい。彼女の内面を引き裂かれてしまった表情を一見するだけでも、映画のチケット代を払った価値はある。



Two favorite scenes : E.G. Marshall telling Geraldine Page in church that he wants to remarry as she loses control, knocks over religious candles, and storms out of the church in a tracking shot that really rips you apart; and the suicide atemps scene that begins with close-ups of black masking tape angrily being ripped off the roll with ear splitting sound to seal up every window and door before turning on the gas. even Bergman would be jealous.


僕が特に好きなのはこの2つのシーンだ。
父親役のE.G.マーシャルが教会でジェラルディン・ペイジに、別な女性との再婚を告白するシーン。彼女はまるで正気を失い、そばにある赤々と燃えているろうそくの山をなぎ倒してその場を立ち去るシーンは、君たちの心をずたずたに引き裂いてしまうだろう。

そして彼女が自殺を企てるシーン。ガスが隙間から漏れてしまわないように、黒いマスキングテープを、テープを貼るときに出るあの独特な耳をつんざくような音をたてながら、怒りに任せて窓やドアの隙間に貼っていくシーンのクローズ・アップだ。
イングマル・ベルイマン監督ですらも嫉妬をしてしまうようなシーンである。



イングマル・ベルイマン監督は、ウディ・アレンも大ファンであり、このインテリアはベルイマン監督へのオマージュでもある。

ジョン・ウォーターズ監督もベルイマン監督の大ファンで、彼はベルイマン監督のことを、king of puke,ゲロの王様、と呼んでいる・・


この二人がここまで賛辞を寄せるベルイマン監督なので、私もものすごい興味があるのだが、まだベルイマン作品は未見で残念だ。今溜まっているDVDや見たい映画を見終えたらベルイマン作品を見てみたいと思う。


上記のジョン・ウォーターズ監督の文からも察せられたと思うが、ジェラルディン・ペイジ演じる母親の存在がホラーなのである。


一糸の乱れもないひっつめ髪にグレーや黒、ベージュの服。職業は著名なインテリア・コーディネーター。自宅も自分のコーディネートでシンプルで無機質な質感のインテリアでまとめている。対して、父親が再婚相手に選んだ女性は、真っ赤なドレスに赤い口紅、少し下品で笑い上戸、とまるで正反対のタイプなのだ。この父の選択にも娘たちは戸惑う。

そして母親は家族のこともインテリアを飾るように自分の思うように支配してきたのだ。彼女の静かな狂気は恐ろしい。彼女のように一見まともで理知的で社会的地位を持った人間が一番やっかいなのかもしれない・・。
神田うのより伊藤まさこの方が怖いのである。(あくまでも例えです・・ファンの方々、失礼します)





上記のウォーターズ監督の好きなシーンも見ていて恐ろしいのだけれど、最後、暗闇の中からぬっと顔を出すシーンは本当に怖かった。そして、暗闇を飛び出し、砂浜を突進し、海の中へと入水するシーン・・・。



3人の姉妹たちの葛藤、姉妹間のライバル心や、両親に対する葛藤、それぞれのパートナーとのいざこざ、なども同時にたった一時間半の間に纏め上げられているのがすごい。













ガスが漏れないようにテープを貼る。














































何回覚えようとしても本当にどうしても覚えられないものがある・・


それは、この映画、アデル、ブルーは熱い色、の主役を熱演したアデル(彼女の本名と役名が同じである)の苗字、エグザルコプロスだ。

ギリシャ系の苗字なのだそうで、英語ではどう発音してよいやらわからなかったので、日本のグーグルなどで検索して見てやっと読み方がわかったのはいいものの、何回見返しても、すぐに忘れてしまう。

イギリスでは昨年10月に公開だったのに、劇場でひっそりと短期間公開されたのみで、気づけば公開は終了、でDVDが3月に出ていたのにもかかわらず、ずっと見る時間がとれず、やっと本日鑑賞した。


3時間弱の映画だが、長さは全然気にならず、(もともと時間の長い淡々とした会話劇が一番好きな映画の種類だったりするので)もっと長く感じるかな、、と思ってたのだが細部がとても凝っている映画だったので、気にならなかったのかもしれない。

ラジオ番組、たまむすびでの映画コーナーで町山智弘さんもおっしゃっていたのだが、全編を通してブルーの色が必ず使われている。それは、アデルが恋するエマの髪の毛だったり、アデルやエマの部屋の壁だったり、青い服だったり、青いアクセサリーや青いネイルだったり・・・本当にこと細かくブルーがあしらわれているのである。

食事のシーンも多く、食べ方や食べる物で育ちや性格の違いを表現していたのもよかった。

アデルの家庭は庶民的で、食事もミートソース・スパゲッティ(中盤、アデルがエマと暮し始めて開いたパーティで、アデルがこしらえた大皿にたっぷりと盛られたミートソース・スパゲティは本当においしそうだった!が)や、チキンの焼いたものに茹で野菜などで、庶民的な食べ物を食べているし、エマを我が家に招待し、両親に紹介したときもミートソース・スパゲティを振舞い、エマはシンプルな味でおいしい、と述べていた。

余談だが、食にフランスほど関心のない人が多いイギリスだったら、お金持ちだろうが貧乏だろうが、ミートソース・スパゲティもチキン&茹で野菜もたべるだろうけど。そこがイギリスとフランスの違いなのかしらん・・・と思ってしまったが。

対して、エマの好物は生牡蠣で、裕福であろうエマの母と義理の父の家に招待されたアデルは生牡蠣を振舞われ、はじめは尻込みしていたが、恐る恐る食べて見ておいしさがわかったようだった。

アデルとエマの恋愛だけでなく、アデルの進路などにも焦点を当てているのもおもしろかった。

アデルは幼稚園や小学校の先生になりたいと夢を持ち、実現させるが、彼女が子供たちを教えるシーンが多かったのも、個人的に我が娘が幼稚園に行っていたときの先生方などを思い出してしまった。

娘が行っていた幼稚園ではアデルのような若くてかわいらしい先生が多かったので、余計思い出してしまったのかもしれない。
ふと、そうだよな・・・親からして見たら、幼稚園の先生は先生でしかなかったけど彼女たちにも私生活があるんだよなぁ・・としみじみ思ってしまった。


確かに、浮気をしてしまったアデルが悪いが、エマもアデルのやりたいこと&やっている仕事に無関心かつ、もっとなにか才能を生かす仕事をやってみなさい、といつも言っていて、アデルもいくらエマをものすごく愛していても、寂しさやコンプレックスを感じるのは必然だ・・、ましてやアデルはまだとても若いし・・・。

エマももう少しアデルの仕事にも、ねぎらってあげることが大事だったのではないか・・世の中の人からしたら自分のやっていることだけが大事なことではないのだから・・。幼稚園や学校の先生だって大事で立派な仕事だぞ~~!!と思ってしまった。

でも、エマのアデルに対する愛や優しさも充分伝わってきたし、とてもよい映画だった。

それにしても、エマ役の、レア・セドゥのかっこいいこと!下手な男性よりも彼女のほうが全然かっこいいな~と思ってしまったのは私だけでしょうか・・。

そして、アデル役のアデル・(また読み方忘れた・・)エクザルコプロスの口の形はとてもエロティックだ。


Miu Miuのリゾートラインのモデルにも起用された二人。
このポスター欲しいです。




























最近見たい映画がたくさんあります。


アデル、ブルーは熱い色

イギリスでは数ヶ月前に公開されたのですが、残念ながら逃してしまったのですが、DVDが今月発売されました。最近DVDの買いすぎで見るものが溜まっているので、溜まっているDVDを見終えたら買って見ようと思います。

イギリス版ポスターです。英語の題名は、Blue is the warmest colorです。





ブルー・ジャスミン

ウディ・アレンの最新作ですね、これはもう本当に見たい!これも時間がとれず、公開時を逃しました。アカデミー賞直後もケイト・ブランシェットのオスカー受賞を記念して、いつも行く映画館で再上映されたりしてたのですが、それも逃しました。イギリスでの、DVDはリリース済みなので早く見たいです。









キャプテン・フィリップス

こういう極限の状態に置かれたときどのようにそこから逃げ出すのか・・みたいな映画が実は好きです。
こちらは公開時には関心がもてなかったのですが、町山智弘さんの解説を聞いて見たくなりました。DVDはリリース済みです、こちらも次回DVDショッピングのときに。









アメリカン・ハッスル

しかし、最近の映画、逃しまくっています・・。かと思えば、ダラス・バイヤーズ・クラブは2回見に行ったり・・・。偏ってます。こちらは、イギリスでは来月DVDでます。











The Double


こちらは数日前にイギリスで公開されたばかりの作品です。
イギリスでは、IT Crowdというコメディー番組で人気の俳優ですが、サブマリンで注目を浴びたリチャード・アヨエイドの作品です。
この作品の予告編を映画館で見ましたが、見てて気が狂いそうになりました。めまぐるしく変化するする映像が・・。
ジェシー・アイゼンバーグ(グランド・イリュージョンでのマジシャン役、かっこよかったです。若いころのポランスキーにちょっと似てますね、)とミア・ワシコウスカ主演です。近いうちに見に行きたいです。






















リチャード・リンクレイター監督のビフォア・サンライズ(邦題は恋人までの距離-ディスタンス)、約10年後の続編、ビフォア・サンセット、から9年を経ての今回のビフォア・ミッドナイト。
まさか、3作目が作られるなんて予想もしていなかったので、嬉しいサプライズだった。

今回も、見事に書き上げられたダイアローグが魅力で、(前作のビフォア・サンセットに続き、リンクレイター監督、ジュリー・デルピー&イーサン・ホークの共同執筆。今作の脚本では、今年の第86回のアカデミー賞の脚本賞にもノミネートされた。)素晴らしい構成の会話劇だ。


今回は陽光降り注ぐギリシャでのサマーホリデイが舞台。アメリカから遊びに来たジェシーの息子を加えてギリシャで夏休みを過ごしている。




それにしても、このシリーズはヨーロッパの夏が美しく描かれているのがとてもいい。
ビフォア・サンライズでは、ウィーンの夏だったが、ウィーンに行ったことはないが、雰囲気がロンドンに似ていて、ロンドンの夏の乾いた空気と少しべとついている石畳を思った。ビフォア・サンセットでも、パリの美しい夏が描かれていて、冒頭の小さなカフェや、こじんまりした美しい公園を歩きながら・・などのシーンもとても美しかった。そして今回はまばゆいばかりの太陽が素晴らしいギリシャ。
二人がヨーロッパのさっぱりとした夏に軽快に歩き回りながら会話するのは何年たっても変わらないのだ。


出会い・・ウィーン 95年




再会・・パリ 2004年





家庭、バカンス・・ギリシャ 2013年





セリーヌとジェシーはパリで劇的な再開を果たしてから結ばれ双子の女の子にも恵まれ、パリで暮らしている。ジェシーはそこそこ著名な小説家になっており、どこでも仕事が出来る、というのもパリに住める条件だろう。9年前にセリーヌと再会したときは、既婚者で一人息子にも恵まれていたが前の奥さんと息子はアメリカに住んでいる。

映画の冒頭は、ジェシーが、夏休みを父親と過ごすためにアメリカから来ていたティーンエイジャーの息子と彼らのホリデイ先のギリシャの空港で、彼らより先にホリデイを終えアメリカへの帰途に着く息子を見送るシーンから始まる。


休み中などの一時しか息子に会えないことに自責の念を感じ始めたジェシー。離れて暮らす息子には父親という存在が常に必要なのではないか・・。

このジェシーの息子への思いが今回のビフォア・ミッドナイトの軸になっていうように思う。

子供を持つもの、の立場から見れば、ジェシーへの息子への思いは尊重すべきだと思うし、セリーヌがその思いを尊重してあげられないないのはなぜだろう、と思ってしまった。セリーヌの夢だった仕事が決まってしまった、というのももちろんあるだろうが、旦那さんの気持ちは大切じゃないのだろうか???



彼らの互いの意見をまとめてみると・・・


ジェシー・・・・
アメリカに置いてきてしまった息子がティーンネイジャーになり、彼には、父親の存在というものが以前よりも必要、と感じられるようになり、もっと息子と日常的に時間を過ごしたい、と思いがよぎり始めた・・が、セリーヌは少しの間住んだアメリカにまた戻るのはごめんだ、という。彼女も仕事のチャンスが舞い込み、今はパリを離れるのは無理なのはわかっているが・・・。


セリーヌ・・・・
ジェシーが仕事の宣伝などで忙しく飛び回っている間もしっかり子育てをしたのも私。彼はあまり手伝ってくれなかった。双子たちが9歳になった今、夢だった仕事のチャンスも舞い込みパリを離れるなんて絶対考えられない。シカゴに住むなんて絶対絶対嫌。ジェシーの元嫁もちょっとアル中気味でお互いに好きになれないし。しかもジェシーは本の宣伝中でいろんなところを飛び回ってるときに、浮気もしたかもしれないなんて!もう彼を愛しているかもわからなくなってきた・・。


といった感じ。

まぁ、二人の口論のリアリティが細部にまでリアリティがあるなぁ・・と感心してしまった。
私事で恥ずかしいのだけど、私と主人も、せっかくどこかへ出かけたのに口論で台無しに・・・だがあとで仲直りして・・、ということがあったので、このシチュエーションのリアリティに膝を叩いてしまった。
後で考えると、なぜあんなつまらないことで熱を上げて怒ってしまったのか、冷静に考えればなんでもないことなのに・・・、とよく思うが、今回の二人もまさにそれだ。


それにしても、ジュリー・デルピーも役作りで増量したのか本当に太ったのか、わからないが、(後でグーグル検索で見てみたが、役作りで増量ということではなかったようです 欧米の女性は特にそうだが、太っても顔にでないタイプ、というのは羨ましい)
彼女の見事な産後体型には驚いてしまった。産後の女性の体系の変化は、自然に産後前の元の体型に戻るタイプと、妊娠中の体重増加をきっかけに産後も体重が減りリにくくなっていくタイプに分けられると思うのだが、セリーヌも後のタイプなのかもしれないし、中年太りもあるのかもしれない。(ちなみに私も残念ながら見事に後のタイプです・・)



二人はこの問題を解決していけるのだろうか・・・
観客に疑問を投げかけたままこの映画は二人を見守りながら静かに終わっていく。


あと10年後、また次回も二人の姿が見られることを期待している・・・。




私が最も尊敬する映画評論家の町山智浩さんのビフォア・ミッドナイト論、とても面白いので是非!