インテリア ウディ・アレン | Let's talk about...

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あくまでも個人的な映画論です。ネタバレにご注意ください。







1978年アメリカ




殆どホラー映画だと思う。

この映画より恐ろしい家族映画を見たことがない・・。



あらすじはいたってシンプル。


ロング・アイランドの海辺に豪奢な家を持つ裕福な家庭、初老の両親と3人姉妹。何不自由なく育ったそれぞれの個性を持つ3姉妹たちも成長し独立している。
しかし、ある日の何気ない食卓、父は母と別居をしたいと宣言する。予想もしない父の宣言に戸惑う妻と娘たち。しかし、父は生半可な思いで決心したようではない様子。

著名なインテリア・デザイナーとして、よき妻、よき母として完璧な生活をおくってきた妻の精神はこの日を境に一気に崩れはじめる。


3人の姉妹たちも、両親、そして自分たちのパートナーや仕事について考え始める。


と、ありふれた話ではある・・が、この映画はキング・オブ・トラッシュ、実は私も大好きなジョン・ウォーターズ監督が大推薦している映画であるくらいだから只者ではないのだ。

以下、彼のエッセイ集、Crackpotでこの映画について語られている箇所があるので抜粋してみたいと思う。



以下Crackpotから抜粋。


You name it, Interiors has it - anguish, divorce, suicide attemps, religion, sibling rivalty、 inability to communicate-all my favorite topics for "serious " film,


The performances are brilliant. Especially Geraldine Page. Just watching her facial expression as she's internally torn apart is alone worth the price of admission.

怒り、離婚、自殺未遂、宗教、兄弟姉妹間のライバル心、コミュニケート不全・・君も挙げてみてくれ。インテリアは僕がシリアスな映画に大事だと思う要素をすべて兼ね備えているんだ。

出演者の演技はすばらしいが、特に母親役のジェラルディン・ペイジは特にすばらしい。彼女の内面を引き裂かれてしまった表情を一見するだけでも、映画のチケット代を払った価値はある。



Two favorite scenes : E.G. Marshall telling Geraldine Page in church that he wants to remarry as she loses control, knocks over religious candles, and storms out of the church in a tracking shot that really rips you apart; and the suicide atemps scene that begins with close-ups of black masking tape angrily being ripped off the roll with ear splitting sound to seal up every window and door before turning on the gas. even Bergman would be jealous.


僕が特に好きなのはこの2つのシーンだ。
父親役のE.G.マーシャルが教会でジェラルディン・ペイジに、別な女性との再婚を告白するシーン。彼女はまるで正気を失い、そばにある赤々と燃えているろうそくの山をなぎ倒してその場を立ち去るシーンは、君たちの心をずたずたに引き裂いてしまうだろう。

そして彼女が自殺を企てるシーン。ガスが隙間から漏れてしまわないように、黒いマスキングテープを、テープを貼るときに出るあの独特な耳をつんざくような音をたてながら、怒りに任せて窓やドアの隙間に貼っていくシーンのクローズ・アップだ。
イングマル・ベルイマン監督ですらも嫉妬をしてしまうようなシーンである。



イングマル・ベルイマン監督は、ウディ・アレンも大ファンであり、このインテリアはベルイマン監督へのオマージュでもある。

ジョン・ウォーターズ監督もベルイマン監督の大ファンで、彼はベルイマン監督のことを、king of puke,ゲロの王様、と呼んでいる・・


この二人がここまで賛辞を寄せるベルイマン監督なので、私もものすごい興味があるのだが、まだベルイマン作品は未見で残念だ。今溜まっているDVDや見たい映画を見終えたらベルイマン作品を見てみたいと思う。


上記のジョン・ウォーターズ監督の文からも察せられたと思うが、ジェラルディン・ペイジ演じる母親の存在がホラーなのである。


一糸の乱れもないひっつめ髪にグレーや黒、ベージュの服。職業は著名なインテリア・コーディネーター。自宅も自分のコーディネートでシンプルで無機質な質感のインテリアでまとめている。対して、父親が再婚相手に選んだ女性は、真っ赤なドレスに赤い口紅、少し下品で笑い上戸、とまるで正反対のタイプなのだ。この父の選択にも娘たちは戸惑う。

そして母親は家族のこともインテリアを飾るように自分の思うように支配してきたのだ。彼女の静かな狂気は恐ろしい。彼女のように一見まともで理知的で社会的地位を持った人間が一番やっかいなのかもしれない・・。
神田うのより伊藤まさこの方が怖いのである。(あくまでも例えです・・ファンの方々、失礼します)





上記のウォーターズ監督の好きなシーンも見ていて恐ろしいのだけれど、最後、暗闇の中からぬっと顔を出すシーンは本当に怖かった。そして、暗闇を飛び出し、砂浜を突進し、海の中へと入水するシーン・・・。



3人の姉妹たちの葛藤、姉妹間のライバル心や、両親に対する葛藤、それぞれのパートナーとのいざこざ、なども同時にたった一時間半の間に纏め上げられているのがすごい。













ガスが漏れないようにテープを貼る。