
「龍王 獣たちの掟」
製作:2002年
●日本ではもはや絶滅危惧種となった格闘アクションスターの1人・松田優が、『カタナーマン』以前に原案を手掛けたVシネ作品です。本作で松田は香港帰りの拳法家に扮していて、重厚な格闘アクションを惜しげもなく披露しています。
そんな彼と行動を共にするのは四方堂旦と塚本耕司で、かつて『新書ワル』で松田と拳を交えた白竜も渋い役柄でゲスト出演。また、松田の前に立ちはだかるラスボスを須藤正裕(現:須藤雅宏)が演じており、奇しくも『ファイナルファイター』のリターンマッチ再び!という構図になっています。
物語は、香港から来た謎の男・松田が北京マフィアに殴り込みをかけるというもので、それと平行しながら北京マフィアと上海マフィアの抗争、大金を手にしたいと願う塚本の苦悩、マフィアを追い求めるはぐれ刑事・白竜、そして松田の秘密&仇敵との対決を描いています。
少々物語はまどろっこしい部分があり、あまり洗練されていないようなイメージを感じますが、大まかな流れは「主人公が悪党を叩きのめして友と父親の仇を討つ」という至極シンプルなもの。昔の功夫映画に通じるような勧善懲悪の物語になっていて、このへんは松田の意向を反映したものと思われます。
さて、そろそろ格闘アクションについて振れていきますが、本作には1つだけ致命的な欠点があります。それは…本作は『無比人』と同じくらい「画が暗い」ということです!
松田たちの本拠地も真っ暗(廃船の中に住んでいる)だし、マフィアのアジトやクラブなどでも暗い場面ばかり。あまりに暗いせいで役者の表情がほとんど解らないシーンもあり、当然のごとく格闘アクションにも影響が及んでいました。
本作は『男組』にも参加した廣瀬義龍が中国武術の監修を行っているので、凡百のVシネ作品とは一線を画す殺陣を作り上げています。が、暗闇でのアクションが多いので演者たちの姿が確認しづらく、十分に格闘シーンを楽しむことが出来なくなっているのです(涙
劇中では全編に渡って格闘アクションが見られるものの、明るい開けた場所で行われたバトルは2つだけ(塚本と松田が初めて出会うシーンと、ナイフを持った2人組に襲われるシーン)。ラストの松田VS須藤でようやくライトで照らされるようになりますが、どうして普通に撮らずにこんなことになったのでしょうか?
ただ、見づらいとはいえ松田VS須藤のソードバトルは目を見張るものがあるし、『無比人』では見せなかった四方堂旦のアクションも見られます。ザコ敵にもちゃんと動ける人が起用されていて(松田のファイトについていけてない人も若干いるけど)、全体的なアクションレベルはなかなかの物だったと思います。
ちなみに、ザコ敵の中に倉田プロ出身で『柔術』等にも参加した中村浩二が混じっているんですが、本作では完全にザコ集団の中に埋没していました。う~ん……この扱いは勿体ない!作中でも松田と中村の絡みはほんの少しだったので、次に共演する時はガチンコで松田優VS中村浩二を実現して欲しいですね。

College Kickboxers
製作:1992年
▼事の起こりは、『ベストキッド』が大ヒットを記録した1984年から始まる。
この作品は気弱な少年が老師から武術を教わり、やがて心身ともに成長を遂げていくスポ根ドラマであったが、その筋立ては香港の功夫映画そのまんまだった。これに着目したのが香港の敏腕映画プロデューサーである呉思遠(ウン・シーユェン)で、「その手の映画なら我々に一日の長あり」として『シンデレラ・ボーイ』を製作。ストーリーこそ突飛だったものの、見事な功夫アクションを魅せている。
それから数年後、アメリカでマーシャルアーツ映画が盛んに作られるようになると、呉思遠は香港産の格闘映画を次々と発表していった。ところが、その一方で香港資本の格闘映画を作ろうと追従する者はおらず、ゴールデンハーベストが『チャイナ・オブライエン』シリーズを作り、アメリカに渡った何誌強(ゴッドフリー・ホー)がシンシア・ラスロックの主演作を撮った程度に留まっている。
本作は、そんな香港系スタッフの手によって作られた数少ない格闘映画の1つで、こちらは『天使行動』3部作を生み出した阮立全(ウィリアム・ユエン)と胡珊(テレサ・ウー)の2人が製作に携わっている。主演は『ショウダウン』のケン・マクラウドで、師匠役には武術指導家の榮を召集するなど、「呉思遠に負けてたまるか!」と言わんばかりの陣営で勝負に出ている。
ちなみに製作者の胡珊は実は女性なのだが、脚本を書いた『天使行動』では壮絶な女闘美アクションを見せ、監督作の『天使行動2』では人命軽視の爆破スタントを用意するなど、とても女性とは思えないような仕事ぶりを発揮している。彼女は他にも米国で『カミリオンズ』というSF映画を手掛けており、ひそかにアメリカ進出を目論んでいたのではないかと思われるが、実際のところは不明である。
■ケン・マクラウドは都内の大学にやってきた好青年で、様々な格闘技を身に付けた実力者でもあった。ルームメイトのマーク・ウィリアムズ(『ドラゴンファイト』で最後に李連杰と闘った黒人)とは拳と拳で語る仲となり、同期生のケンドラ・タッカーともお近づきになれた。公私共に充実したスクールライフを送るケンだったが、タイガースと名乗る不良グループに目を付けられ、遂にはボコボコにされてしまう。
そんな絶体絶命のケンを救ったのは、彼のバイト先で料理長をやっていた榮であった。榮は功夫の名手であり、圧倒的な強さでたちまち不良どもを叩きのめした。その強さに驚いたケンは、近々開催される格闘トーナメント(たんまり優勝賞金が出る)で優勝するため、榮に師事しようとする。
しかし、「功夫は金儲けの道具ではない」と榮は一蹴。それでもケンは「俺は強くなりたいんだ!」と彼の自宅の前で粘り続け、"ケンカをしないこと"を条件に弟子入りを認められた。戦闘スタイルの改善・スケートリンク上でのバランス特訓・砂浜に掘られた穴を使った足腰強化・反射神経の鍛錬…様々な修行を経たことで、賞金目当てに頑張っていたケンは純粋に強くなりたいと思うようになっていた(推測)。
一方、ケンは特訓と平行してケンドラとの恋路も楽しんでいたのだが、タイガースの嫌がらせは相変わらず続いていた。しかし、榮は私闘を硬く禁じている…連中との禍根を断つにはただ1つ、格闘トーナメントで決着を付けるだけだ!
タイガースによって負傷欠場を余儀なくされたマークに代わり、ケンは破門を覚悟で大会に出場する。試合は順調に進み、着実に勝ち上がっていくケン。そして大会は決勝戦を向かえ、タイガース最強の男が彼の前に立ちはだかった。ところが、そこへ榮が姿を見せ…?
▲香港映画のスタッフが関わっているので当たり前なのだが、格闘アクションはかなり良い。本作ではキック系の動きに功夫の要素がミックスされており、動けるキャストも揃っているおかげでファイトシーンにモタつきは見られない。メインとなる格闘大会の尺が若干短く、ケンの殺陣にあまり功夫的な要素が取り入れられていなかったりと不満もあるが、全体的な出来は良好だ(さすがに『シンデレラ・ボーイ』には負けるが)。
中でも凄かったのが榮で、見た目はムッツリした単なるおっさんにしか見えないのだが、いざ戦いとなるとバリバリ動いて香港仕込みの功夫アクションを炸裂させている。さすがは本職の武術指導家というだけあるが、ここまで見事すぎるとケンが完全に喰われちゃってるような気がするのだが…。ま、演技面では何の見せ場も無かったので、これで両者イーブンといったところでしょうか(爆
一方でストーリー面は月並みな展開が多く、功夫の修行と主人公が最初から強いという設定こそ独自性があったものの、それ以外に関してはてんでサッパリ。ラストのオチも役者の演技がしっかり出来ていれば、もっと感動的なラストシーンになったと思うのだが…つくづく残念である。
とはいえ、呉思遠以外に香港映画とマーシャルアーツ映画の合体に挑戦した者がいた証といえる作品だし、アクション的な見どころも多い。ただ、『天使行動』のようなド派手な作品ではないので、ご覧になる方は注意されたし。

「ジョイ・ウォンの紅い愛の伝説」
原題:浪漫殺手自由人
英題:Killer's Romance
製作:1990年
▼この作品は、当時人気絶頂だった任達華(サイモン・ヤム)と王祖賢(ジョイ・ウォン)が引っ張り出された黒社会アクションの1本で、全編に渡ってロンドンでのロケーションが行われている。物語は黒社会の抗争に巻き込まれた男女を主軸としたラブストーリーなのだが、監督が高飛(コー・フェイ)なので功夫アクションも充実しているのが特徴。まぁ、動作片とか功夫片ばっかり撮ってる高飛が平凡なラブストーリーを描くはずがないよねぇ(爆
■任達華はロンドンを拠点に活動するヤクザのドンの息子(正確には中国人の養子)。その父親がチャイナタウンの中国人マフィアに殺されたと聞き、彼はすぐさま報復行為に転じていった。
まずは聖堂で礼拝していた白彪(ジェイソン・パイ)を撃ち、続けざまに第2の標的も殺害する…が、その様子を女子大生の王祖賢に撮影されてしまう。そんなこととは露知らず、任達華は中国人マフィアのボスも難なく射殺するのだが、そのとき現場で王祖賢と再びブッキング。王祖賢は目撃者として警察の取り調べを受けるが、どうも任達華のことが気になり始めたようで、黙秘を貫いたまま家路へと急いだ。
だが、彼女の家には先回りをした任達華が待ち受けており、両者の間に緊迫した空気が流れる…。と、そこへ任達華が狙う最後の標的だった男・高飛が現れ、銃撃戦によって彼女が負傷してしまった。任達華は王祖賢を病院へ担ぎ込むと、自分の居場所を告げて身を隠すのだった。
一方、銃撃戦で傷を負った高飛の前に思わぬ人物が姿を見せる。任達華を二代目の組長に推していた日本人ヤクザ・鹿村泰祥(!)が、麻薬を売買しないかと持ちかけてきたのだ。実は親分殺しの犯人は中国人マフィアではなく、高飛と鹿村による謀殺だったのである(ついでに任達華を利用したいだけ利用して殺害する算段だった)。
そして、連中は邪魔者である任達華たちを始末せんと、秘密裏に動き出していた。怪我が癒えた王祖賢と任達華は一緒に静かな時間を共有していたのだが、当然のごとく平穏はブチ壊された。怒りに燃える任達華は高飛の根城へ攻め込み、銃撃戦の末に高飛を射殺!続いて現れたのは、最後まで任達華に味方していた女性組員の弟・石田憲一だった。これを退けた任達華は、かつての仲間である鹿村との決戦へと歩を進めていく。今、全てを取り戻すための闘いが始まった!
▲ああ、高飛らしいなぁ…と思えてしまう作品である。基本的に高飛は動作片や功夫アクションが大好きな人で、自身の監督作のほとんどにそういう要素を詰め込んでいた。本作ではラブストーリーをメインに描いているが、2人の馴れ初めが不明瞭だったりとぎこちない部分が見られる反面、アクションシーンだけは妙に気合が入っているのだ。
クライマックスになるとアクションの比率が一気に高まり、高飛との銃撃戦を皮切りに激しいバトルが連続していく。主な対戦カードは任達華VS石田憲一・任達華VSヤクザ軍団・任達華VS鹿村泰祥の3つで、どの闘いも色濃いものばかり。まず任達華VS石田憲一の一戦だが、この人は大島由加里と同じく元JACの斉藤一之に師事した方で、他にも高飛の監督作に参加しているらしい。本作では序盤こそ弱々しい姿を見せたものの、任達華との対決では切れ味抜群の蹴りを連発!日本人でまだこんな強豪がいたとはビックリだ!石田さんスゲェ!
ある事情から手が出せない任達華はピンチに陥るが、最終的に石田さんは死亡。王祖賢を助けるために鹿村のアジトへ向かい、任達華VSヤクザ軍団の対決となる。石田さんとの戦いで左腕を負傷している任達華は、刀を両手で握ることが出来ないので不利な戦闘を強いられてしまう。ここでハンデを背負った任達華が見せる奮闘ぶりが面白く、続く任達華VS鹿村さんの日本刀対決では、相変わらずキレキレの動きで迫る鹿村さんにも注目して欲しい(役柄的には『仁義なき抗争』の時と被っているけど)。
そんなわけで、個人的にはラストの連戦には燃えたけどストーリーは評価するほどのものでは…な感じでした。王祖賢の活躍がほとんど無かったので、女幽霊ではない王祖賢に期待している人には少々不満が残るかも?

「群狼大戦」
原題:獵魔群英
英題:Devil Hunters
製作:1990年
▼数ある香港映画の中に於いて、ある意味もっとも恐ろしい作品の登場だ。本作は李賽鳳(ムーン・リー)と胡慧中(シベール・フー)の女ドラゴン2人が主演した作品で、ハードなアクションと派手な爆破シーンが売りの現代動作片である。ストーリーはタイトルにある通り、李賽鳳&胡慧中&そして呂良偉の3人が群れた狼の如く闘い、非道な組織に立ち向かっていく様子を描いている…のだが、皆さんもご存知のようにラストシーンで「ある大事件」が発生してしまう。
最終決戦で大爆発から主役3人が脱出するシークエンスの撮影中、爆発のタイミングを誤ったのか李賽鳳&胡慧中が炎に包まれるというアクシデントが発生。先に脱出した呂良偉は無傷で済んだが、2人の女優が全身火傷を負う大惨事に至ってしまったのだ。
普通なら映画はオクラになりそうだが、信じられないことに本作はその大爆発のシーンをそのまま作中で使用したばかりか、事件の記事が載った新聞をエンドロールに流すという暴挙に出ている。おおよそ普通の神経では考えられない不謹慎な行為だが、監督の王振仰(トミー・ウォン)は干される事もなく映画界に留まり、李賽鳳と胡慧中もしばらくして女優業に復帰。本作以降も果敢にアクション映画へ挑戦し続けており、良くも悪くも香港映画の持つパワフルさを感じさせる事件となった。
■さて、そんな裏事情ばかりが有名な本作であるが、実際の作品はそれほど悪くない。
黒社会の親分・王偉(『プロジェクトA』のチョウ)が持つ財宝を狙い、彼の腹心である呉鎮宇(フランシス・ン)が暗躍を開始する。時を同じくして、黒社会の壊滅を目指す刑事・胡慧中、王偉の腹違いの娘・李賽鳳、呉鎮宇によって父親を謀殺された男・呂良偉らが、黒社会に対して戦いを挑んでいた。お互い牽制しあってのバトルの末、助け出された王偉は昔の仲間である陳惠敏(チャーリー・チャン)の元に辿り着いていた。
陳惠敏は王偉を国外に脱出させようとするも、呉鎮宇によって家族を人質に取られたことで計画は破綻。王偉とその娘は呉鎮宇に捕まり、激しい拷問の末にとうとう財宝の在処を白状してしまう。そこへ汚名返上とばかりに完全武装した陳惠敏が突入し、凄まじい銃撃戦の果てに「親分…すまねぇ…」と言い残して命を散らすのだった。
その頃、陳惠敏が警察へ贈ったテープから呉鎮宇の動向を知った胡慧中一行は、一致団結して黒社会との最終決戦に挑んだ。王偉を殺され、怒り心頭の李賽鳳たちは死闘を繰り広げるのだが…。
▲本作は要所々々に大きなイベントを配しており、3人の主役が異なる思惑から対立する前半、陳惠敏と親分の絆と末路を描いた中盤、そして全ての決着が付く終盤と、様々な見せ場が用意されている。各キャラクターはとても生き生きとしているし、当然功夫アクションにも一切妥協は無し。物語のテンポも良いし、王振仰の作品の中では良作と言っても良いかもしれない(もちろん例のラストシーンを除いて…ですが)。
また、前述のとおり功夫アクションは密度が高く、至近距離で炸裂する爆破シーンとも相まって異様な殺気を生んでいる。ラストでは胡慧中&李賽鳳VS呉鎮宇と呂良偉VS慮恵光(ロー・ワイコン)のダブルバトルが行われ、時間こそ短いがなかなかの名勝負を展開している。ちなみに陳惠敏は本作で功夫アクションを見せないものの、哀愁に満ちた黒社会崩れの男を堂々と熱演。この人はどんな役柄でも演じられる上に、功夫アクションもバリバリこなせるし本当にスゴいよなぁ…。
様々な点で不名誉な作品ではあるものの、本作からは当時の動作片が持つ熱気と狂気、そして大惨事を経てもなお活躍を続ける映画人たちの"恐るべきバイタリティー"を生々しく感じ取る事が出来る。決してお薦めできるような作品ではないが、強烈なインパクトのある異色作…といったところだろうか。

「メダリオン」
原題:飛龍再生
英題:Medallion
製作:2003年
●『レッド・ブロンクス』でハリウッド進出に成功してから、ジャッキーはハリウッド向けのエンタメ色が強い作品に出演するようになっていた。従来の激しいアクションを期待するファンにとって、少々物足りなさを感じてしまう内容ではあったものの、それでもジャッキーは精力的な活動を惜しむことはなかった。
無難な作品ばかりを作るハリウッドにおいて、収穫があったとすれば「夢の共演」が幾つか実現した事だろう。『ラッシュ・アワー』系列では尊龍(ジョン・ローン)や章子怡(チャン・ツィイー)、真田広之と遭遇。『シャンハイ』系列ではロジャー・ユアン&于榮光(ユー・ロングァン)&甄子丹(ドニー・イェン)と闘い、ルーシー・リュウを救い出した。『タキシード』では名優ジェームス・ブラウンと出会い、極めつけは『ドラゴン・キングダム』のVS李連杰(ジェット・リー)!ジャッキー自身はハリウッドの体制に不満を感じているが、彼らとの共演は非常に意義のあるものだったはずである。
そうやってハリウッド映画で活躍する傍ら、ジャッキーはたびたび香港に帰っては映画出演を繰り返していた。この時期に彼が香港で撮った作品に共通するのは、「ハリウッドでは演じさせてもらえないようなキャラクターを積極的に演じた」という点だ。『ゴージャス』あたりからその傾向が見え始め、『香港国際警察』『神話』『新宿事件』などで役者としての新地開拓に挑戦している。この傾向は現在も続いており、今後のジャッキーの躍進ぶりを望まずにはいられないところだ。
そんな頃、ジャッキーは香港・米国合作のアクション映画に出演を打診され、『Highbinders』という作品に参加することとなった。この作品は香港の著名な映画人たちが多数集結しており、武術指導はサモハンが直々に務めた。しかし、撮影途中でハリウッドの資本から脚本修正の指示が入り、大幅な路線変更を強いられてしまう。こうして完成したのが本作『メダリオン』となるのだが、その出来は凄惨を極めていた。
物語は、主人公のジャッキー刑事たちが犯罪組織スネークヘッド(蛇頭?)を追い、やがて伝説のメダリオンを巡る戦いに巻き込まれる…というもの。中盤でジャッキーはメダリオンを持つ少年を助けるために死亡するが、メダリオンの力で不死身の超人として復活。不老不死を目論むスネークヘッドの首領を倒し、仲間のクレア・フォラーニを蘇生させて劇終となる。
ストーリーはかなり適当で、成り行き任せの投げやりな展開は『ナイスガイ』を髣髴とさせるが、コメディアクションとして評価するなら『ナイスガイ』の方が(僅差で)上。また、本作におけるジャッキーのワイヤーアクションも迫力が無く、単にクルクル舞うだけの没個性的な殺陣に徹しているのも頂けない。これが『Highbinders』の時からの仕様だったのか、あるいはハリウッド資本の口出しでこうなったかまでは解らないが、脚本家が5人もいる(うち1人は世界的な功夫映画オタクとして知られるベイ・ローガン氏)という異常性から、現場の混乱ぶりが何となく想像できる。
ハリウッド資本との確執・不可抗力とも言える路線変更・安易なワイヤーアクション…それら外的要因に加え、完成した作品に「ジャッキーの演技による新地開拓や夢の共演が無かった」という内的要因もプラスされ、このような失敗に結びついてしまったのだろう。もし本来の形で完成していたのなら、黄秋生(アンソニーウォン)や鍾麗[糸是](クリスティ・チョン)の立ち位置も違っていたと思われるのだが…。
…さて、ここまでジャッキーの犯してしまった失敗を追ってきたが、原因だけでも実に多種多様だ。李小龍の後追いをやらされた、キャラ違いの役柄を宛がわれた、周囲が解ってくれなかった、思い切りが足りなかった、自分で自分の首を絞めた、サモハン任せにしたらエラい事になった等々…本作の後もジャッキーは『80デイズ』で興行的な失敗を経験するのだが、これだけの失敗を重ねてもジャッキーは立ち止まろうとしかなった。それは何故か?
答えは簡単である、彼が成龍(ジャッキー・チェン)だからだ。突っ走ったらタダでは止まらず、何度死にかけても無茶なスタントへ挑み、失敗を糧に新たな傑作を作り上げた偉大なる映画バカ・ジャッキーだからこそ、失敗で立ち止まるような事は一度たりとも無かったのである(今回の特集で取り上げた作品の次回作や翌年に撮ったタイトルを見てみると、失敗作の後に傑作が来るケースが非常に多い)。
大きな失敗に遭遇すれば、悪くすると映画界の最前線から脱落する危険性があるというのに、未だにジャッキーは前へ前へと進んでいる。その前進を30年以上も前からずっと続けているというのに、だ。凄まじい。尊敬とか凄いとかそういう表現を通り越して、ただただ凄まじい。恐らく、これからもジャッキーは前進を止めようとせず、再び失敗作に激突してしまう事もあるだろう。しかし、失敗なくして成功は無く、成功なくして失敗は無し!ジャッキーの次なる成功と"失敗"に期待しつつ、本稿はここまでとさせて頂きます。(完)