続・功夫電影専科 -72ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「少林寺VS霊幻道士」
「激突!キョンシー小僧VS史上最強のカンフー悪魔軍団」
英題:Shaolin Vs Vampire
製作:1988年(何故か1980年説有り)

▼またしてもTVスペシャルからのピックアップですが、今回はようやく功夫関連の話題になります。本作はキョンシー映画ブームが巻き起こっていた頃、日本&香港の合作により作られた和製キョンシー作品です。
日本が製作に関わっていたキョンシー作品といえば、ファンなら誰もが『来来!キョンシーズ』を連想してしまうところですが、今回はかの元祖少林寺スターこと劉家輝(リュウ・チャーフィ)が監督主演を務めているところがポイント。海外サイトの情報によると武術指導に劉家班が関与しているそうですが、作品自体の評判はかなり悪いようです。私は今回の視聴が初めてなので、その辺も含めて気になっていたのですが…??

■あるとき、小さな田舎町でキョンシーの目撃騒動が持ち上がった。劉家輝はこれを信じず、胡散臭い道士・王志強(ウォン・チーキョン:ショウブラ出身で劉家輝とも度々共演)の言う事も素知らぬ顔だ。その劉家輝は映画のスタントマンで、仲間の孟龍(マン・ロン:こちらも劉家輝と何度か共演)と替身の仕事をこなしている。ところが撮影現場に劉家輝の娘が遊びに来た際、ひょんな事からベビーキョンシーの封印が解かれてしまった。
この事実には劉家輝の娘だけが気付いていたのだが、一方で村のキョンシー騒動が仕組まれたものであった事が発覚する。実は一連の事件は村長と王志強が企んだもので、村の地上げを画策して村民を追い出そうとしていたのだ。その頃、劉家輝の娘はベビーキョンシーと交流を深め、楽しい時間を一緒に過ごしていた。ところが、計画を邪魔された村長と道士は茅山の師を呼び寄せ、報復によって劉家輝の妻が殺されてしまう…。
 キョンシーの祟りを恐れた人々が町を出ていく中、あくまで留まろうとする劉家輝一家だが…。そんな中、功夫の論文を書くために日本から来た留学生・工藤夕貴が町にやって来た。工藤は劉家輝から功夫を学ぼうとするが、当の劉家輝は妻を亡くしたショックで乗り気ではないようだ(物語はこの辺から工藤がメインになり、キョンシーらしい話から逸脱していきます)。
結局、何だかんだで工藤も劉家輝もベビーキョンシーの存在を知り、最終的に両者は意気投合。めでたく功夫の修行を受けさせてもらえたが、平穏な生活も長くは続かなかった。ベビーキョンシーを危険視した茅山の師が現れ、彼に呪いをかけてしまったのだ。封印されようとするベビーキョンシーを救うべく、劉家輝と使役されたキョンシーの闘いが始まった!

▲ダメダメだとは聞いていましたが、確かにこれはつまらない作品でした。まずストーリーについてですが、本作は視聴者である幼年層が一番見たがっているキョンシー的な見所がことごとく削がれています。まともなキョンシーはベビーキョンシーと敵のキョンシー(計3体)しか登場しないし、メインのベビーキョンシーも人間っぽさが強調され過ぎているため、全然キョンシーらしくありません。
キョンシー作品に必要不可欠な道士も、本作では敵として登場するため妖術合戦のようなバトルは殆どナシ。ラストバトルに至ってはキョンシーが一切絡んでこないので、キョンシー見たさに本作を視聴したチビッコたちの落胆ぶりは容易に想像できました。
 ただ功夫アクションに関しては割りと頑張っていて、殺陣は劉家班タッチなものに仕上がっています。中でも序盤の劉家輝VS王志強、ラストの劉家輝VS茅山の師はよく出来ていました(打撃音などがショウブラ作品と同じ!)。
真偽の程はともかく、劉家輝と縁のある孟龍・王志強らが出演していた点を見る限り、劉家班が本作に関わっていた可能性は高いと思われます。まぁ、いずれにしても冗長な失敗作であることに変わりは無いのですが…(爆


「十七人の忍者」
製作:1990年

▼(※…画像は本作の元になった作品のものです)
今月は「映画じゃない作品」をテーマにお送りしていますが、今回はフジテレビの時代劇スペシャルにて放送された本作の登場です。この作品は1963年に製作された同名時代劇のリメイク作で、千葉真一らJACによる忍者活劇となっています。ただし、本作に出てくる忍者はかなり現実的に描かれていて、かつてJACが手掛けた『影の軍団』『忍者武芸帖 百地三太夫』のような派手さは抑えられています(ちなみに私は時代劇専門チャンネルにて視聴)。

■時は徳川三代将軍家光の時代。駿河藩の国家老・神山繁は、家光から将軍の座を奪おうと秘密裏に計画を進めていた。
それに気付いた老中の西村晃は、伊賀忍者の千葉真一を召還。駿河の城に謀反の証拠となる連番状があり、これを奪取せよとの命令を下した。かくして千葉ら17人の忍者は駿河城攻略に挑む事となるのだが、敵も夏八木勲を首領とする根来忍者を有しており、任務の前に千葉が捕縛されてしまう。
 リーダー不在にどよめく忍者たちだが、既に千葉は自分の後任として青年忍者・真矢武を指名していた。長門勇ら忍者たちは彼を支持し、同行できないくノ一・伊藤かずえを残留させると、危険な潜入工作へと向かった。ある者は城壁からの侵入を試み、またある者は変装して正面から乗り込んだ。しかし強固な防備に阻まれ、彼らは仲間のために自ら犠牲となっていく。途中、追ってきた伊藤も参加するが彼女も捕まり、気付けば真矢だけが残された。
ところが、夏八木は「もう16人捕まった!お前らの負けだ!」と千葉に告げる。そう、彼らは事前に17人の忍者が潜入してくることまでは察知していたが、伊藤を数に入れたため潜伏している真矢の存在に気付いていなかったのだ。誤解したままの夏八木を前に、内心ニヤニヤが止まらない千葉(笑)。一方、真矢は敵の中枢までなんとか潜り込めたが、果たして任務を全うする事が出来るのだろうか?

▲…という話なのですが、先述したとおり本作の忍者アクションはリアル志向となっていて、それこそ1人の忍者が一騎当千に敵を切り捨てるような展開はありません(チャンバラはありますが多勢に無勢で大抵死にます)。
ですが、城壁を実際に登りながらの危険なシーンや(ロケ地は彦根城)、根来忍者の槍さばきなどはJACアクションの近隣が垣間見えますし、ラストにはもちろん千葉VS夏八木によるタイマン勝負もあったりします。主演の真矢はJACメンバーの1人で、『将軍家光の乱心/激突』では僅かながら激しい殺陣を披露。本作ではスタントなどに奮闘していますが、どちらかというと牢屋に篭りっぱなしの千葉に迫力で食われているような気がチラホラ…(汗
 ちなみに本作はその『激突』の直後に製作されたせいか、少なからず『激突』から役者や装備が流用されています。特に根来忍者は戦闘スタイルが『激突』に登場した敵兵そのまんまで、現実的な演出の伊賀忍者とは対照的に荒唐無稽さが際立っていました。このへんは作品の雰囲気を徹底し、根来忍者も地味めにして欲しかったのですが…。
一応、リアルに忍者を描いた作品としてはイイ線をいってますが、従来のJAC作品を期待していると肩透かしを食らうので御注意を。ところで、千葉と夏八木は『影の軍団Ⅳ』でも共演していて、こちらでは敵対しつつも好敵手のような関係を熱演。終盤には千葉VS夏八木の最終決戦があり、単純な悪役だった本作よりも印象深い演技を見せているので、こちらも本作と合わせて必見です!


「西部警察PARTIII/燃える勇者たち」
製作:1984年

▼(※…画像は本作を特典として収録したDVDのものです)
 皆さんあけましておめでとうございます!正月はとっくに過ぎていますが(汗)、本日より「功夫電影専科」は新たに再始動しますので、また今年も宜しくお願い致します。さて、今年から当ブログの奇数月は"お題"に添った更新をしていく事になりましたが、今月のテーマは「映画じゃない作品」。映画ではない媒体のタイトルをお送りするということで、まずは大門軍団と犯罪者たちとの果てしない闘いを描いた本作からの紹介です。
『西部警察』は渡哲也ら西部署の面々が毎回大暴れを演じ、TVの枠を超えた凄まじいアクションシーンで一世を風靡した刑事ドラマの金字塔的作品である…というのは皆さんもご存知の通り。本作はその『西部警察』がノリノリだった時期の1本で、年明けに放送された2時間枠のスペシャル版である。名古屋・四日市・横須賀・長島温泉で大々的なロケーションを敢行し、物語のスケールやゲストの豪華さも普段の倍にグレードアップ!もちろん当ブログで取り上げるからには功夫映画的な見どころもあるんだけど…詳しくは後述にて。

■物語は、いきなり西部署の面々が軍隊さながらの訓練をしている場面から始まる。
なぜ彼らがこんな事をしているのかというと、事は日本銀行から百億円の金塊が強奪された事件から端を発していた。この金塊を奪った強盗団の背後には、裏で糸を引いている首謀者がいると内閣調査局室の丹波哲郎は言う。こうして「敵の黒幕を探れ」と特命を受けた大門軍団は、先の強盗事件で唯一逮捕されたヘリのパイロット・亀石征一郎を脱獄させ、口を割らせるという危険な任務に挑むこととなったのだ(彼らはその為に訓練していた)。
パイロット奪取というミッションの後、大門軍団はまんまと亀石から「矢野大サーカスのマジシャン・勝新太郎という男が関わっている」との情報を聞き出した。サーカス会場へ向かった彼らは勝をマークするが、相手はなかなか尻尾を出さない。そうこうしているうちに勝が行方をくらまし、強盗団が遊園地で接触するとの情報が入った。しかしこれは大門軍団を潰そうとする敵の罠。この反撃で団員の小林昭二が被弾し、渡が子供を救おうと人質になってしまう。
 敵の手に落ちた渡の命は風前の灯か?そう思われた矢先、強盗団の一味であるはずの勝がいきなり反旗を翻した。何も語ろうとしない勝は、渡にマイクロフィルムを渡すと有無を言わさず海に叩き込み、彼を脱出させることに成功した。実はこの男、強盗団の黒幕を暴こうと潜入していたCIAエージェントだったのである。
強盗団は金塊をサーカス会場に隠していたが、勝は爆弾をセットして取り出せないよう細工していた。遂に姿を現した強盗団の黒幕・財津一郎(その正体は東側のスパイ)は、サーカスの団員を人質にして彼を脅迫。一方、大門軍団も託されたマイクロフィルムを見てサーカス会場に急行したが、既にそこには強盗団たちが待ち構えていた。かくして、大門軍団VS強盗団との死闘が幕を開ける!

▲スタントアクションはカーチェイス程度で、家屋倒壊のような爆破シーンは無いが、なかなかゴージャスな作りの作品だ。後半にかけて頻発しまくるタイアップにはちょっと苦笑してしまったが(特にマクドナルドのプッシュが凄い・笑)、通常どおりのテンポで進むので冗長さはほとんど感じられない。丹波哲郎や勝新太郎といった豪華キャストの出演も作品に花を添えており、随所で裕次郎とのツーショットが実現しているのも非常に興味深いところである。
 ところで本作に登場する強盗団だが、メンバーの中にあの倉田保昭が参加している。倉田は勝と共にサーカスに潜入し、ピエロ姿で身を潜めつつ大門軍団を監視。後半からは敵のリーダー格として頻繁に登場していて、ラストでは華麗なナイフ捌きを披露している。そんな倉田と闘うのが大門軍団団長・渡哲也なのだから堪らない。素早い蹴りで迫る倉田に対し、拳闘スタイルで立ち向かう渡!本作の技斗は『闘え!ドラゴン』も担当した高倉英二なので、この2人の対戦はなかなか面白いです(ちなみに、一瞬だが倉田保昭VS勝新太郎も実現している)。
バラエティに富んだ内容に加え、渡VS倉田という異色のマッチも見られる本作。まさに家族揃ってコタツに入り、ミカンを食べながら見るには最適の娯楽作と言えるだろう。なお、石原裕次郎は本作の同年に肝臓ガンを患い、それから僅か3年後にこの世を去っている。当時のTV番組でこのような大物スター同士の共演が実現できたのは、まさにこの時期が最後だったのかもしれない……。


六合千手
英題:Duel of the Seven Tigers/Return of the Scorpion
製作:1979年

●皆さんメリークリスマス!何だかあっという間の12月でしたが、当ブログは今回が今年最後の作品レビューとなります。ラスト更新は今月の更新履歴とベスト&ワーストで〆にするつもりですが、コメントおよびメールについては順次返信していく予定です。そして、前々から勧めていたあるプランを来年以降に実施していきたいと思っていますが、こちらは更新履歴の項で触れたいと思います。

 そんなわけで今年最後の作品紹介は、質の高い功夫片を撮る事で知られる協利電影作品でフィニッシュです。同社は、ワンパターンに陥りがちな功夫片というジャンルにおいて、ひと捻りを加えることによって新しい方向性を模索し続けた"野心家"ともいうべき存在であった。
大手プロダクションと違い、後ろ盾も予算も無い独立プロであった彼らは、出来る限りの範囲で最大限の努力を尽くした。その成果は既に日本発売されている作品群からも見て取れるが、国内未発売の作品にもレベルの高い物が多々ある。本作もそんなタイトルのうちの1つで、協利電影の花形スターだった金童(クリフ・ロク)と高飛(コー・フェイ)が、善悪分かれての真っ向勝負を繰り広げている。
 物語は実に潔い内容で、中国拳法と日本空手の総力戦をジックリと描いている。かつて少林寺での戦いに負けた師の仇討ちを目論み、日本から最強の空手家・高飛がやって来た。高飛は恐ろしく強く、中国武術界は短期間で甚大な被害を受けてしまう。武術界のお偉方から「高飛をなんとかしてくれ」と頼まれた[ン先]林は、各地で仲間を募って闘いを挑むこととなった。
集められたメンバーは韓英傑・楊[目分][目分]・林文偉・趙志凌・李冠雄・陳耀林の6人。更に[上下]薩伐(カサノヴァ・ウォン)に負けて隠遁していた金童も加え、一行は高飛に挑戦状を叩き付けた。数の暴力に訴えた中国拳法連合であったが(笑)、高飛は予想以上に強かった。メンバーはもれなく重症を負い、最後まで踏ん張った韓英傑も命を落としてしまう。
分散して闘っては勝ち目が無いと悟った彼らは、軽症だった金童に全員の奥義を伝授。特訓を終えた金童は高飛とのリベンジマッチに挑むのだが…。

 特にドラマチックな物語があるわけでもないが、高度な功夫アクションに彩られた満貫全席のような作品である。いつも協利作品は高水準の功夫アクションを提供しているが、本作はその功夫アクションを重視した内容となっており、これまでの同社作品と比較しても功夫シーンの密度は非常に高い。
オープニングと呼ぶには余りにも長い演舞で幕を開け、いきなり本作武術指導家の陳少鵬VS大聖劈掛門の陳秀中という本格派同士の対決でスタート。続いて高飛が登場し、突き刺さるような蹴りと堂々たる悪役っぷりで作品の全てをかっさらう。『七人の侍』チックな連合結成の流れを経て、中盤のクライマックスとなる連合VS高飛では各々のポテンシャルが最大限に発揮されており、とりわけ韓英傑VS高飛の対決は印象深い。
 ラストでは全員の拳法を叩き込まれた金童が、海沿いの岩場で高飛との最終対決に挑んでいく。真新しいシチュエーションでの一戦だが、地の利を生かしたバトルにもなっているところが上手い。金童は『天才カンフー』に続き、再び複数の拳法を操るという難しい役柄にチャレンジしていて、先の乱戦で他メンバーが使用した技で高飛に肉迫。都合9分にも及ぶこの死闘は、金童にとって『龍形摩橋』のVS黄正利に並ぶベストバウトと言えるだろう。
…さて、重複しますが今年の功夫映画レビューはこれにて終了。来年はどんな功夫片や動作片、或いはマーシャルアーツや邦画作品に出会えるのか、今から実に楽しみです。ところで先頃、行きつけのレンタルビデオ屋が閉店し、とうとう近所でVHSソフトがレンタルできるショップが全滅してしまいました(涙)。これからはショップ通いからネット巡りにチェンジしていくので、更新模様もかなり様変わりするかもしれません。それでは皆さん、また来年!(※更新はまだ続きます)


「香港レディ・レポーター」
原題:師姐大晒
英題:The Blonde Fury/Righting Wrongs 2/Lady Reporter
製作:1989年

●香港映画界は非常に厳しい世界である。映画界ならどこだって厳しいものだが、香港はご存知の通り功夫アクションの本場で、誰もが常にカンフーと隣り合わせ。売れっ子歌手でもアイドル女優でも、必ずアクションの洗礼を受けるのが香港映画という世界なのだ。
そんな環境において、功夫の腕前だけで成り上がろうとするには実に血の滲むような努力が必要となってくる。激しいファイトシーンを演じ、死に物狂いでスタントに挑み、最後に選ばれた者だけがスターとなれる…そうしてジャッキーやサモハンらは今の地位を得たのだ。だが、これが外国人になってくると更に倍率はドンと増える事となる。現地の人間にとっても狭き門である功夫スターへの道に、外国人が挑むことがどれほど大変かは説明するまでもないだろう。
 ある者は負傷したままアクションを演じさせられ、ある者は違法なニンジャ映画に恥を忍んで出演した。外国人というハンデに耐え、香港のスタッフを納得させられるほどの力を見せ付けて、初めて彼らは一人前として認められた。そんな過酷極まる外国人アクターの中にあって、頂点に登りつめたのがこのシンシア・ラスロックだ。
シンシアは『レディ・ハード/香港大捜査線』で鮮烈なデビューを飾り、荒々しい功夫ファイトで見る者の度肝を抜いた。その動きは力強さと柔らかさを兼ね備え、本場の功夫スターも舌を巻くような迫力に満ち溢れている。『検事Mr.ハー』ではユンピョウと闘い、『上海エクスプレス』ではサモハンからダウンを奪った。実力・技術・出演作の質…どれを取っても高レベルを維持しているシンシアこそ、白人女ドラゴンの代表格であったと言っても過言ではないのだ。
そして、その彼女が唯一単独主演した香港映画が本作である。当時は様々な外国人アクターが居たが、ピンの主演作を撮れたのは彼女だけだった。それでいて本作の製作はサモハン主催の寶禾影業で、スタッフもキャストも一流の人員で固められている。それほどシンシアが周囲から期待され、同時に信頼を得ていたことが解る。

 さてストーリーはというと、これが至極単純明快。香港で暗躍する偽札組織の実態を解明すべく、シンシアが悪党を蹴って蹴って蹴りまくるという話である。ここに三流新聞の記者・孟海(マン・ホイ…本作の監督武術指導兼任)、刑事の錢小豪(チン・シウホウ)も絡んで来ての大活劇になるが、物語としてはそんなに大したものではない。本作のメインはあくまで功夫アクションの数々であり、意外性とは無縁の平々凡々な話が展開されている。
とはいえ、この平々凡々さが気楽に見るには最適であり、殺伐とした雰囲気になっていない(オマケに人死にもほとんど無い)ので、印象としては悪くない。シンシアも本作では明るく元気なキャラを演じていて、いつものシリアスなイメージとは違った顔を見せている。では功夫アクションはどうなのかというと、こちらも平々凡々…になっているワケがありません(笑

 本作の武術指導は、女闘美アクションなら天下無敵の元奎(コリー・ユン)が担当。のちに『レディ・ウェポンZERO』『クローサー』『DOA』を撮り、数々の傑作レディースアクションを生み出す彼の手腕は、本作でも十分に発揮されている。アクションはフリーファイトをベースに、竹の足場やロープで組まれたドームなど、立体的なシチュエーションを活用した物が多い。場合によってはワイヤーも使われていて、奥行きのある殺陣が見事に表現されている。
そして本作一番の見せ場といえば、ラストにおけるシンシアVSジェフ・ファルコン&ヴィンセント・リンの外国人対決だ。ここまで負け無しのシンシアだが、さすがに2人同時に相手をするのは分が悪い。そこで彼女はコンテナの隙間に移動し、敵の動きを封じる戦法に出た。この一連の流れは『キス・オブ・ザ・ドラゴン』でも再演されるが、本作では更に続きがあり、ジェフとの棒術バトルが勃発する。この棒VS棒のバトルはハイテンポで面白いのだが、残念な事に尺が極端に短い。ここはトラックのくだりを省いてでもシンシアVSジェフをやって欲しかったです。
ストーリーに拾いどころは無く、功夫アクションを堪能するためだけの本作。とはいえ、「白人女ドラゴンによる初の単独主演作」という点で香港映画史に残る作品であり、無下にはできない作品といえるだろう。それにしてもシンシア、またスクリーンに帰ってきてくれないかなぁ…。