続・功夫電影専科 -73ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「ブラッド&ボーン 真拳闘魂」
原題:BLOOD AND BONE
製作:2009年

●謎に包まれた男(マイケル・ジェイ・ホワイト)が孤児を預かっている黒人女性の元を訪れ、居候する場面から物語は始まる。ストリートファイトの試合に現れた彼は、突然チンピラのダンテ・バスコ(この人が実写版『北斗の拳』のバット)に「俺も参加させろ」と強要。その強気な宣言どおり、マイケルは一瞬で相手のファイターを叩きのめしてしまった。
 そこから彼はバスコを相方に破竹の快進撃を続け、いよいよ王者ボブ・サップとの対決を向かえる。ドラッグによって凄まじいパワーを振るうボブであったが、マイケルの前には王者といえど敵ではなかった。この結果を受け、ボブを擁していたマフィアのイーモン・ウォーカーは2人を自宅に招待し、国際的な闇の格闘大会へ出場しないかと持ちかけてきた。
イーモンは自分の女であるノーナ・ゲイにマイケルを楽しませるよう指示するが、ここでマイケルの真の目的が明かされる。実はマイケル、刑務所でイーモンの差し金によって殺された親友の妻=ノーナを救い出そうとしており、仇敵イーモンを倒すためにここまで潜り込んだのだ。
 言葉巧みにイーモンの元から彼女を連れ出したマイケルは、麻薬依存に陥っていた彼女を専門の医療機関へと案内し、引き離されてしまった息子との再会を約束した。一方、イーモンはマイケルを格闘大会のチャンピオンと闘わせるべく、武器商人のジュリアン・サンズに協力を依頼。大金をはたいてマイケルVSチャンプの対戦をセッティングするが、当のマイケルはイーモン潰しのために「やっぱり試合に出るのは止めた」とドタキャン宣言をしてしまう。
当然、怒り心頭のイーモンは人質を使って従わせようとするが、先手を打っていたマイケルにその手は効かない。窮地に追い込まれたイーモンは苦肉の策として、自分をオトリに無理矢理マイケルを格闘賭博に誘い出そうと企んだ。こうして彼はチャンプのマット・マリンズと死闘を演ずる事になるのだが、その対決には思わぬ結末が待ち受けていた…。

 黒人格闘スターとしてトップレベルの実力を持つ男、マイケル・ジェイ・ホワイトが自ら企画した入魂の作品だ。ストーリーは至極シンプルで、刑務所帰りの男がストリートファイトに参戦し、親友の女房を悪の手から救い出すまでを描いている。粗筋だけだと凡庸な格闘映画を想像してしまうところだが、本作はそのストーリーに対して一切の妥協が無い。きちんと各キャラクターの個性が発揮されており、結末に至るまでキッチリと描写されているのだ。
脚本を担当したマイケル・アンドリュースは「現代の西部劇を目指した」と語っており、本作の"謎めいた男が無法の町で悪党を倒して去っていく"という構図に反映されている。また、アクションで物語を引っ張った『デッドロックII』とは違い、本作では物語がアクションを引っ張っている。質の高い格闘シーンを構築するだけで精一杯なマーシャルアーツ映画にあって、ドラマと格闘アクションの両立に成功している本作は大いに評価されるべき存在と言えるのだ。
 もちろん、格闘シーンにおいても本作は素晴らしい物を残している。主人公のマイケルは本作でも高い身体能力を見せており、ボブ・サップとの対決やザコ戦では足技に依存せず、テクニカルな手技と両立させた立ち回りを披露。殺陣のテンポも実に軽快だが、それでいて技が軽く見えないところは流石と言うしかない(それどころか重厚さすら感じるから凄い)。
ラストではマイケルVSマット・マリンズという達人同士の対戦になり、こちらのバトルも俊敏な技の応酬で魅せてくれている。その後、この一戦は中途半端なところで中断され、強引にイーモンとのバトルへ突入してしまう。個人的にはマイケルVSマット(こう書くと『ジャングルの王者ターちゃん』みたい)で一貫して欲しかったが、マイケルVSイーモンのウェポンバトルも思ったより悪くないのでひと安心。この戦いは、途中で武器を貸してくれる特別ゲストに注目しながら見た方が面白いかもしれない(笑
 近年のマーシャルアーツ映画の中でも飛び抜けたクオリティを誇る逸品。…それにしても、90年代から活躍し続けてなお一級品の格闘アクションを演じられるとは、マイケル・ジェイ・ホワイト恐るべし。ウェズリー・スナイプスもいいけど、『Expendables 2』には是非マイケルも出して欲しいところであります。


「バトルハッスル」
製作:2010年

▼前回はインドネシアの新作だったので、今回は日本の新作格闘アクションの紹介です。
本作は『マスター・オブ・サンダー』『柔術』に次ぐ、和製ドラゴン・倉田保昭プロデュースによるアクション映画だ。これまで氏の手掛けてきた作品は、夢の対決を用意したり柔術をメインにしたりと、必ず新しいものにチャレンジしてきた。今回もその例に漏れず、ギャグ満載のハチャメチャ格闘アクションという新境地に挑戦している。
 新境地…といっても、作品自体はタイトルにあるとおり『カンフーハッスル』をかなり意識している。舞台がボロボロの集合住宅・怖い鬼嫁と頼りない旦那・CGを多用したアクション・イカレまくった最後の敵など、デジャブを感じるカットが幾つも散見される。しかし、こういったコメディ・アクション映画は近年の日本では珍しいし、香港映画チックなドタバタ劇は見ていて楽しいものがある。結果はどうあれ、個人的に作品そのものは割と好きだったりします(笑

■ストーリーは、床に伏せる大富豪・倉田の頼みにより、ハウス・カリフォルニアというボロアパートへ孫の川井隆介がやって来る所から始まる。
倉田曰く「死ぬ前に渡す物があるから昔ワシが住んでたアパートに行け」との事だったが、そこに住む人々は揃いも揃って曲者ばかり。ブチ切れホステスの船津未帆、売れない演歌歌手の中谷隆信を筆頭に、みんな妙に腕っ節が強いのである。なお、『カンフーハッスル』では住人が強いことに理由付けがされていたが、本作では何の説明も無かったぞ?(爆
 川井はアパートで管理人をやっている姉と出会い、自分の両親がある男に殺されていたことを知る。大富豪であるが故に倉田一族は命を狙われる運命にあり、そのために川井の親は殺されてしまったのだ。倉田がかつて住んでいた部屋で、川井は己を鍛える修行を始める…のだが、ある日突然アパートは道路建設による立ち退きを迫られてしまう(実は裏切り者である倉田の側近による陰謀)。
これに対し住人たちは徹底抗戦の構えを取り、立ち退きを迫る"立ち退き屋"との闘いが始まった。"立ち退き屋"はそこそこ強かったが、鍛えた川井と住人たちの敵ではない。だが、連中を追い詰めたところで最強の敵・中村浩二が姿を現した。実は彼こそが川井の両親を殺した張本人であり、様々な超能力を操るとんでもない男だったのだ!これには誰も歯が立たず、万事休すかと思われたが…?

▲ギャグ描写については勢いに任せているだけに見えるが、それでも十分面白い作品だ。さすがに『カンフーハッスル』までとはいかないが、個性豊かな住人たちの掛け合いは賑やかだし、それぞれのキャラクターもきちんと立っている。そのぶん、主演である川井の個性はあまり感じられないが、『カンフーハッスル』でも住人を魅力的に描きすぎて主人公が置いてけぼりを喰らってたので、これはまぁ仕方がないのかも。
 ただ、格闘アクションについてはやはりクオリティが高く、全編に渡ってコメディ仕立てのアクションが炸裂している。オープニングはいきなり船津VS中谷による熱戦から始まり、中盤のいざこざを経て"立ち退き屋"襲撃シーンへと移る。ここで出てくる"立ち退き屋"軍団は倉田プロの裏方アクターたちのようで、与えられた見せ場の中で最大限の頑張りを見せている(特に緑のニッカポッカを穿いた兄ちゃんの動きと、鉄骨にぶつかりながら落ちるスタントは必見)。
そして終盤、演じている本人から「次はもうちょっと普通の役で…」とまで言われた中村が登場し(笑)、アクションレベルは最高潮を迎える。住民たちが倒される中、川井に死んだ倉田が乗り移ってパワーアップ!ラストバトルは川井VS中村の勝負となるが、乗り移っている倉田がちょくちょく出てくるので、実際は川井&倉田VS中村と言った方が正しいか。中村のパワーに対し、派手な回し蹴りを連発して対抗する川井!倉田を交えてのこの一戦は、ウヤムヤになった『柔術』よりも完成度が高く、ここだけでも本作は見る価値があります。
 人によってはギャグ描写でノーサンキューになってしまうかもしれないが、倉田プロ作品の中では上位に位置する本作。ところですっかり倉田プロ作品の常連悪役になってしまった中村浩二だけど、彼がラスボスを演じるのはこれで2度目(外部の作品も加えると3度目)。そろそろ倉田プロから新しい悪役スターが出てこないと、画的にちょっと辛いのでは?


「ザ・タイガーキッド ~旅立ちの鉄拳~」
原題:Merantau/Merantau Warrior
製作:2009年

▼うむむ…これは凄い映画だ…凄い映画だけど…詳しくは後述にて(謎)。そんなわけで今回は久々に新作の格闘映画の紹介です。本作はいわゆる『マッハ!』の影響によって作られたリアル・ヒッティング系の作品で、なんとインドネシア産の作品です。
インドネシアといえば、かの功夫スターである莊泉利(ビリー・チョン)の出身地で、過去にも色々とアクション映画は作られているのですが、本作は伝統格闘技「シラット」を題材にしているのが特徴であり売りとなっています。

■さる片田舎の集落に住む青年イコ・ウワイスは、「大人になったら出稼ぎするべ」という村の風習に従い、首都・ジャカルタへと向かった。
彼の夢は、自身が得意とする武術・シラットの道場を開くというものだったが、夜行バスの中で出会ったシラット経験者であるナイナイ岡村似のおっちゃんから「今日びシラットなんて流行らねぇって。金稼ぐんなら何だってしなきゃいけないけど…ま、俺みたいにはなるなよ?」と、意味深な忠告を受けた。
 忠告は現実のものとなり、間借りをしようとしていた?家は瓦礫の山と化していた(どうやら不動産屋に騙された模様)。着の身着のままで大都会に放り出され、行き場を失ったイコ。そんな前途多難な彼から鞄を盗もうと、1人の少年が現れた。
すぐさまイコは少年を追いかけたが、行き着いた先には彼の姉でダンサー志望のシスカ・ジェシカがいた。この2人は親に捨てられた身寄りの無い姉弟で、その日の糧を得るために必死で生きていたのだ。
 その後、イコはシスカに殴りかかったチンピラを撃退するが、これが騒動の火種になってしまう。このチンピラ、実は西洋人の人身売買組織の傘下に入っており、組織は「売り飛ばす女の数が足りないぞ」と要求。チンピラはシスカを誘拐して穴埋めをしようとするも、たまたま現場を目撃していたイコによって阻止され、組織のボスも大怪我を負わされた。
激怒したボスはチンピラにイコたちを探すよう指示し、追われる身となった彼らは街から脱出しようと試みる。だが、いったん自宅に戻ったところを組織に襲われ、弟を助けようとしたシスカが捕まってしまう。イコはたった1人で敵のアジトへと向かうのだが…。

▲まず格闘シーンについてですが、こちらはよく出来ています。本作では『マッハ!』のようなアクロバティックな動きは少なく、どちらかというと手技中心の動作が多め。私はシラットという格闘技をよく知らないんですが、イコの見せるファイトはとても迫力があり、その動きは過去に登場したどのアクション超人にも見劣りしていません。
中でも圧巻なのがイコVSナイナイ岡村似の一戦で、狭いエレベータ内を転げ回りながら展開する壮絶な闘いが実に凄まじい。ここまでイコの相手がザコばかりだったので、シラット同士によるこの接戦はとても印象的でした。
続くラスボス戦では、手技&足技コンビが敵という『Who am I?』チックな闘いとなり、こちらも充実した内容の好勝負。どっちも面白い対戦だったけど、ここはシラットをフル活用したVS岡村戦の方が良かった…かな?
 ということで、格闘アクション的には概ね良好と言える本作ですが、ストーリーの方はちょっと好き嫌いが分かれるかもしれないですね。というのも、本作は一貫して全体の雰囲気が暗く、所々に生々しい描写を挟んでいるからです。
これは現実にインドネシアが抱える問題を映画に反映したものと思われますが、それ故に本作は物語が進むに連れてどんどん陰惨な方向へと加速していきます。シスカがボスに手込めにされる(!)のを皮切りに、ナイナイ岡村似が銃弾の雨を浴びて惨殺されるに至り、最後に物語は衝撃的な結末を迎えてしまうのです。
 そのため、スカッとする活劇を期待していた私はラストで呆気に取られてしまいましたが、、本作は決して悪い作品ではありません(最後のカットが泣かせます)。個人的にはハッピーエンドでいて欲しかったですが、これはこれで強烈な印象を残していました。
皆さんも本作を見る際は、単純なアクション映画ではないということを念頭に置いて視聴することをオススメします。


十二潭腿
英題:My Kung Fu 12 Kicks/Incredible Master Beggars
製作:1979年

▼この作品はコメディ功夫片ブームの際(なんか最近この手の作品ばっかり紹介しているような・汗)、かつて『帰ってきたドラゴン』で名を馳せた梁小龍(ブルース・リャン)が、夢よもう一度と挑戦したコメディ功夫片である。
梁小龍といえば、凄まじいジャンプと豪快な蹴りが持ち味のパワフルな功夫スターで、『帰ってきたドラゴン』等で印象的な活躍を見せている。そんな彼も流行のコメディ功夫片へ出演することになったのだが、シリアスはもちろんコミカルな演技も得意としていた梁小龍にとって、コメディ作品に順応するのは難しい事ではなかった。加えて身体能力の高さも幸いし、幾つかの秀作功夫片を残しているのだが…その前に少しぐらい痩せてよ!(爆

■しがないスリの梁小龍は、手癖は悪いがケンカの腕はからっきし。今日もスリで失敗してボコボコにされ、友達の韓國材(ハン・クォツァイ)に介抱されながら「やっぱ功夫使えなきゃダメだよなぁ」と愚痴っていたが、突然の転機が訪れた。邪悪な拳士・李海生(リー・ホイサン)の道場破りに遭遇した梁小龍は、李海生の手により重症を負った3人の師匠を匿ったのだ。
身売りされた可哀想な女の子のエピソードを挟みつつ、梁小龍は3人の師匠から功夫を教わる事になった。その結果、いっちょまえの腕前になった梁小龍は、以前自分をボコった賭場の連中にリベンジを決行!大細眼や山怪を思いっきりタコ殴りにするも、梁小龍の養父?だった谷峰(クー・フェン)には簡単にいなされてしまった。
 この谷峰、今は車夫だが昔は最強と呼ばれた"十二路潭腿"の達人だったのだ。特訓は3人の師匠から谷峰にバトンタッチされ、足をとことん鍛えるトレーニングが始まった。基本的な鍛錬からスタートして、手技も足技も満遍なく特訓!特訓!特訓!あまりに修業が長いので特訓だけで話が終わるかと思われたが(笑)ここに来て李海生サイドが動き出した。
実は、梁小龍にやられた賭場の連中は李海生と繋がっており、李海生は息の根を止めそこねた3人の師匠を探していたのである(←推測です)。遂に梁小龍と李海生の直接対決が始まったが、李海生は鐵布杉(少林寺の防御術)を身に付けているので、まったく技が効かなかった。韓國材と谷峰の助けで窮地を脱した梁小龍は、いったん退却して"十二路潭腿"の修業を完遂させると、いよいよ李海生との最終決戦に挑む!

▲ただひたすら特訓!特訓!特訓!な本作だが、なかなか面白い作品である。「ボンクラ青年がヘンテコ修業を経て悪党と闘う」というありきたりな話ながら、ストーリーはテンポ良く進むので冗長さは感じられない。加えて高度な功夫アクションも堪能できるのだから、功夫映画ファンにとっては堪らない逸品となっているのだ(唯一の不満点はヒロインの扱いで、取って付けたように出てきてアッサリ退場するのは、ちょっとどうにかして欲しかったです)。
功夫アクションは梁小龍自ら振り付けており、強敵も出てくるが全編に渡って梁小龍オンステージと化している。この頃は太めの体形になっているが、俊敏な動きと高い蹴りは全盛期の頃からほとんど変わっておらず、やはり香港映画界最強の名は伊達じゃないと改めて驚きました。また、注目の梁小龍VS李海生によるラストバトルも、重厚な手技に対して力強い蹴りで立ち向かう白熱した展開を見せ、お互いの持ち味を生かした名勝負となっている。……でもやっぱり気になるなぁ、動くたびにボテボテしてる梁小龍の腹回りが(涙
蘇化子よりも庶民的で親しみのある谷峰もイイ感じだし、功夫アクションだけなら至高の域に達している本作。ところで、『Gメン75』の梁小龍VS李海生も「足技の梁小龍VS鐵布杉(のような技)を使う李海生」という図式だったけど、本作と何か関係があるのだろうか?気になります。


「オールドマスター 師父出馬」
原題:師父出馬
英題:The Old Master
製作:1979年

▼色んな意味で珍しい于占元の主演作だ。于占元とは、ご存知ジャッキーやサモハンら七小福を鍛え上げた京劇の師匠で、その道の大家だった方である。
本作が作られた当時、『少林寺への道』を作り出した台湾の巨匠・郭南宏(ジョセフ・クオ)は、コメディ功夫片の流行に乗ろうとジャッキー風の作品を何本か手掛けていた。だが、郭南宏の元には七小福出身の専属スターがおらず、主演に宛がわれたのは李藝民や劉家勇などの非・七小福系スターばかりであった。そこで郭南宏はジャッキーの師である于占元のネームバリューに目を付け、ついでに当時の七小福を引っ張り出すことで、自作に七小福の風を吹き込んだのだ。
 本作が一風変わっているのは、当時としては珍しい海外ロケの現代劇という点である。普通なら流行りのコメディ功夫片を撮ればいいのに、どうして本作はわざわざ現代劇にしたのか?その答えは、同時期に郭南宏が製作していた他のジャッキー風作品の中にあった。
袁小田を担ぎ出した『ドランクマスター・酔仙拳』、黄正利を出演させた『迷拳三十六招』『五爪十八翻』、オードソックスな作風の『雙馬連環』等々…郭南宏がこれまで作ってきたジャッキースタイルの映画は、古典的なコメディ功夫片ばかりだった。そこで「今回も同じ様な作品にすれば印象が重複してしまう」と危惧した郭南宏は、思い切って本作を現代劇にしたのだと思われる。加えて、京劇界の大物である于占元の主演作を撮る以上、中途半端な作品にしてしまったら失礼千万だ。故に、郭南宏は並々ならぬ意気込みで本作を作り上げたものと思われるが、ではその肝心な内容はというと…?

■チャイナタウンの功夫道場を建て直すため、大師匠の于占元がニューヨークに降り立つ場面から物語は幕を開ける。于占元は弟子の指導に務める傍ら、次々と現れる武術家たちと熾烈な闘いを繰り広げていた。だが、実はこの戦いは現地の師父がゴロツキと共謀して仕組んだもので、于占元は格闘賭博の賭け対象にされていたのだ。この事実は、賭けに負け続けていた相手側がブチギレたことですぐに発覚。激怒した于占元は道場を出て行ってしまうが、門下生の1人・雷小虎が彼を呼び止めた。
雷小虎は真剣に功夫を習いたいと思っていた青年で、先の道場では下働きばかりさせられていたらしい。彼は于占元を自宅に招待すると、「オレっちに功夫を教えてくれ!」と強引に弟子入りを志願。彼の情熱に根負けした于占元は、マンツーマンで雷小虎に修行を施していくのだった。
 働き口も見つかり、オフの日は遊びに出かけたりと異国での生活をエンジョイする于占元。実に楽しげな日々が続いたが、例のチンピラ連中は未だに彼らを付け狙っていた。「そろそろ香港に帰る時が来たようじゃのう…」これ以上のトラブルを避けるため、于占元は帰国する決意を固めつつあった。ところが、帰国の当日に雷小龍のいた道場がゴロツキどもにケンカを売られたとの一報が舞い込んできた。
こうなってしまったのは自業自得。そう一刀両断する于占元に対し、雷小虎はそれでも助けに行くべきだと主張。彼の言葉に突き動かされ、于占元と雷小虎は決戦に挑む!

▲展開される物語は特筆されるような内容ではないが、ほんわかと楽しい作品である。本作の目玉はやはり于占元先生にあり、本作では厳しくも茶目っ気のあるお師匠様に扮し、厳格すぎない親しみを感じるキャラクターを好演している。劇中ではコメディ功夫片っぽい修行を雷小虎に課し、彼と一緒に観光やジョギングに興じたりと、その姿はまるで「元気な親戚のおじいちゃん」といった感じで実に微笑ましい(笑
ただ、さすがにお年なのでアクションシーンではスタントダブルが多用され、于占元本人による功夫ファイトはあまり見ることができない(一応、ラストバトルでは本人が見事な棒術アクションを見せてます)。そこで師匠に代わり、後半のアクション不足を補うのが愛弟子・雷小虎だ!雷小虎は李小龍チックな動きとロボットダンス拳を駆使し、並み居る外人格闘家たちと熱戦を繰り広げている。これで、最後に強敵との一騎打ちならもっと盛り上がったんだけどなぁ……。
作品としては小粒ながら、于占元の暖かいキャラと雷小虎のインチキ李小龍アクションが楽しい佳作。やっぱり功夫映画はアクションが1番だけど、キャラクターの魅力も大切なのだと改めて実感しました。