
「銀座ミッドナイトストーリー ゆーとぴあ 白い蕾」
「銀座ミッドナイトストーリー ゆーとぴあ」
製作:2000年
●熱海の旅館で芸子をしていた桜庭あつこは、あるとき資産家の男から無理矢理手込めにされそうになったところを、旅行に来ていた銀座のクラブ・ゆーとぴあの面々に救われる。彼女はこれを機に芸子を辞め、ホステスとしてゆーとぴあで働く決意を固めるのだった。
空手の道場に通う先輩のホステス、本郷直樹と良い感じのチーママ、そしてママの児玉美ゆきに囲まれながら、桜庭はホステスの道を歩み始めていく。青年ヤクザ・本宮泰風との出会いと別れ、末期ガンに蝕まれた不動産屋社長との関係…彼女は短い期間で様々な経験を積み、他の仲間たちも多くのドラマを紡いでいった。
そんな中、高級クラブのオーナーである松田ケイジが、「潰し屋」を雇ってゆーとぴあを潰そうと企んでいた。潰し屋とはSM嬢のような女を頭目とする武闘派集団で、目を付けた店を潰すためならどんな手段も辞さないという、なんとも過激な連中だ。
潰し屋は児玉の家に押し入ると強引に彼女へと襲い掛かったが、そこへ危機を察知したゆーとぴあの面々が到着!空手道場の師範も加勢し、雌雄を決する闘いが始まる!
本作は真樹日佐夫プロデュースのVシネ作品で、ホステスを主役にした群像劇となっています。それぞれのキャラクターと顧客たちとの関係、それに関連して起こるトラブルや恋愛模様などを描いていて、他のアクションありきな真樹作品とは一線を画しているのです。
こんな題材なので濡れ場も多々ありますが、あくまでメインはホステスたちの生き方そのもの。新人ホステスが業界のイロハを学びながら成長していく…という作品ではなく、フィーチャーされているのは各々の公私に限られています(元芸子なので桜庭の成長はかなり早いです)。
しかし、本作にはマキ印作品に不可欠なエキセントリックさが無く、ただ淡々とホステスたちの日常を描いているだけなので、物足りなさを感じてしまいました。潰し屋との対決という一貫した要素もあるのですが、敵勢が登場する頻度も少ないので、あまり印象には残らない結果となってしまいました。
そんなわけでマキ印としては味気ないような本作ですが、やはり注目すべきは倉田保昭の存在でしょう。倉田さんは功夫映画のみならず、日本のVシネ作品にも手広く出演しているのですが、これまで真樹センセイとは(映像作品においては)接点がありませんでした。本作では、そんな倉田さんと真樹作品の出演経験者たちが一堂に会しているのです。
今回、倉田さんはゆーとぴあのポーターという役柄で、店を影から支える頼れる存在として描かれています。もちろん格闘シーンもあり、ラストで潰し屋を相手にビシバシと鉄拳を振るっていました。残念ながら倉田さんが闘うのはそこだけで、他の格闘俳優とは絡んでいません。本宮はヤクザ3人と戦い、岡崎礼も最終決戦に参加しているのですが…(ちなみに村上竜司は単なるチョイ役)。
それ以外の見どころでは、空手道場の先生に扮した真樹センセイがラストバトルにも出ているという点が挙げられます。真樹センセイは自身の作品に重要な役で出演することが多いのですが、ストーリーに関わるような戦いに加わるのは稀でした。
本作では潰し屋で一番強そうな黒人空手家と立ち合い、敵の回し蹴りを軽々とガード。すぐに次の動作で軸足を蹴り飛ばし、貫録のある動作を披露しています。…ところで、あの黒人空手家は一体何者なんでしょうか??(真樹道場の関係者?)

「殺しのアーティスト」
原題:A Grande Arte/High Art
製作:1991年
▼今回紹介するのは、ナイフを題材とした異色のサスペンス映画です。
香港映画では1つの武器を取り扱った作品がよく作られていますが、それ以外の格闘映画などではあまり見かけません。そんな中で本作はナイフに着目しているので実に貴重な作品…なんですが、純粋なアクション活劇ではないため、いつも当ブログで紹介しているような作品とは若干毛色が違います。
■リオに滞在するカメラマンのピーター・コヨーテは、友人の娼婦から「変な男からディスクを渡せって脅されているの…」と相談を持ちかけられた。ところが、翌日になって娼婦は自室から遺体となって発見された。ピーターは役立たずの警察を尻目に捜査を行うが、ディスクを狙う刺客たちによって重傷を負ってしまう。
幸いにも一命は取り留めたが、この一件でピーターは本格的な復讐を決意。ナイフの名手であるチェッキー・カリョとコンタクトを取り、過酷な訓練に身を投じていく。恋人のアマンダ・ペイズに去られるも、次第に事件の核心へと近付いていくピーター。やがて敵の組織で内部分裂が起こり、事件の元凶となった存在が姿を現すのだが…?
▲前述したように、本作はアクション映画ではありません。後半に銃撃を受ける場面があるぐらいで、カーチェイスや爆破シーンといった派手なギミックは無し。格闘シーンも序盤と終盤の2つしか用意されていなかったりします。
監督のウォルター・サレス・Jrはドキュメンタリー出身の方で、本来はロードムービーやドラマを得意とする人物だそうです。本作でもドキュメンタリー調の演出が随所に見られ、普通のサスペンス映画とは一線を画す雰囲気を作り上げています。…とはいえ、恐怖感や緊迫感という点においては物足りない部分があり、冗長と思えるような箇所もいくつかありました。
しかし、ナイフで修行する一連のシークエンスはとてもリアルに描かれています。鏡を使った捌き方の練習、物差しや線香を使用しての対人特訓など、実戦的な描写の数々には思わず見入ってしまいました(ピーターとカリョの動きもバッチリ!)。
ラストのピーターVS真犯人もこれまた見事で、ナイフの使い手同士によるスリリングなファイトが堪能できます。勝負自体はすぐに終わってしまうものの、かえってそれが本作の現実性をより強調させていました(唯一残念なのは、カリョとピーターの師弟対決が実現しなかったこと)。サスペンス映画としては微妙ですが、ナイフの扱いには光るものがある逸品です(ナイフだけに)

「霊幻少女 帰ってきたテンテン」
原題:靈幻少女
製作:1992年
●今年はこれまでに「TVじゃない作品」「監獄アクション」「国内未公開の格闘映画」「黄家達」などの特集をお送りしてきましたが、9月は「マイナーな作品」というテーマでいきたいと思います。いわゆる未公開映画の類ではなく、国内で正式リリースされていて知名度に難アリという作品を取り上げます。
というわけで、まず最初は『来来!キョンシーズ』系列の最終章となる本作の紹介です。『来来~』はキョンシーブームが巻き起こっていた80年代後半にて、『霊幻道士』と人気を二分した大人気シリーズでした。『霊幻道士』がキョンシーそのものに重点を置いていたのに対し、『来来~』は劉致(シャドウ・リュウ)ら子供たちをメインにすることで人気を獲得したのです。
シリーズは映画5本とTVドラマが作られましたが、本作は90年代に入ってから作られた最後の作品です。主要な人物はテンテン・トンボ(鄭同村)・金おじいさん(金塗)の3人となり、新たにまるちゃん(賀艾[女尼])という新キャラが加入。ストーリーは様々なトラブルに妖術で立ち向かうという話ですが、クライマックスで異様な展開が待ち構えています(詳細は後述)。
実を言うと私は『来来~』シリーズの直撃世代ではないため、個々のキャラクターにあまり感情移入が出来なかったのですが、それを差し引いてもキツいものがありました。自業自得なトラブルばかり引き起こすトンボ、何かと問題の種になるまるちゃん、弁解を聞こうとしない金おじいさん…特にトンボがお盆の幽霊に爆竹を投げつけるくだりは、正直言ってやりすぎです。
(以下、ネタバレ注意)
物語は中盤に悲しき女幽霊(描写が『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』まんま)のエピソードを挟みますが、結末がウヤムヤになったあたりから作品の空気が変わり始めます。突然テンテンたちは異世界に飛ばされ、金おじいさんの宿敵であるクマラ(一切の伏線なしに登場)が大量の手下を連れて攻め入ってくるのです。
戦いは徐々にクマラ側が優勢となり、まるちゃんは背中を貫かれて死亡。トンボは洗脳された挙句に撲殺され、金おじいさんに至っては全身から血を噴き出して燃えながら息絶えます。テンテンは金おじいさんによって逃がされますが、こちらも重傷を負ったまま。最後は住んでいた屋敷も燃やされ、問答無用のバッドエンドで終幕となります。
こういった救いの無い展開は、功夫片やキョンシー映画などでも稀にあります。ラストで主人公が狂う『癲螳螂』、最後に脇役が思わぬ行動を起こす『霊幻童子』のような作品も存在しますが…多くのファンに愛された人気シリーズの久々の続編にもかかわらず、ここまでゴアな展開にしてしまう製作者サイドには疑問を感じざるを得ません。
キョンシー映画ファンにとっては成長したテンテンたちの姿が、功夫映画ファンにとってはトンボの見せるアクロバティックなアクションが見どころとなるはずだったのに、ドラクエの強制敗北イベントみたいなオチに唖然としてしまう怪作。監督の王知政はスイカ頭を爆殺した前科があり、こうなってしまったのは彼に原因がありそうです。
ちなみに、クマラを演じたのは武術指導も兼任している李海興。『霊幻童子』でも彼がラスボスでしたが、本作で彼の吹替えを演じたのは人気声優の子安武人だったりします。声が合成されているので判別しづらいですが、個人的にはここが唯一にして最大のサプライズでした(爆

「沈黙の復讐」
原題:BORN TO RAISE HELL
製作:2010年
●シルベスター・スタローンや李連杰(ジェット・リー)など、名だたる筋肉スターが勢揃いした『エクスペンダブルズ』。この超大作を製作するに当たり、多くの格闘俳優たちに出演のオファーが飛び交ったのですが、スティーブン・セガールとジャン・クロード=ヴァン・ダムの2人はそれを蹴ってしまいました。
ヴァンダムは都合により出演をキャンセルしましたが、彼はこの一件を境に他の格闘俳優と共演する機会を増やしていきます。『Assassination Games』でスコット・アドキンスと再会し、『Dragon Eyes』でカン・リーと遭遇。『Universal Soldier: A New Dimension』ではドルフ・ラングレン&アドキンスの2人と顔を合わせ、アニメ映画の『カンフーパンダ2』では声優としてジャッキーと共演していました。
一方、セガールはプロデューサーであるアヴィ・ラーナーとの確執により出演依頼を断りました。彼は他者との共演に対してオープンになったヴァンダムと違い、ひたすら我が道を突き進んでいます。本作はそんなセガールが『エクスペンダブルズ』以降、唯一ともいえる夢の対決をメインに添えた作品なのです。
本作で彼と闘うのは、なんと『太極神拳』のダレン・シャラヴィ!近年は『イップ・マン』で甄子丹(ドニー・イェン)と闘い、某スパイ大作戦の最新作にも出演が予定されているという名ファイターです。果たして、彼がどこまでセガールに迫れるのか気になるところなのですが……。
ストーリーはセガールと麻薬の売人グループ(リーダーはダレン)とロシアンマフィアによる、三つ巴の抗争を淡々と描いています。山場らしい山場は無く、テンプレートな死亡フラグで死んでいく部下がいたりと、物語に関しては実に平々凡々。後半では売人グループに妻を殺されたマフィアのボスが、利害の一致したセガールと手を組むという燃える展開があったりします。
さて注目のセガールVSダレンですが、両者の直接対決はラストの一戦のみ。闘いはセガールのペースで進み、開始10秒足らずでダレンが血まみれになってしまうものの、自慢の足技で何とか凌いでいました。残念ながらダレンの実力が発揮されたとは言い難いファイトでしたが、内容は『グリマーマン』のラストバトル、『イン トゥ・ザ・ザン』のVS慮恵光(ケン・ロー)を彷彿とさせる激突だったと思います。
現在『エクスペンダブルズ』の続編『The Expendables 2』が製作中ですが、待望のチャック・ノリスとジョン・トラボルタ、そしてヴァンダムの参戦が確定しているそうです。しかし、一方で何故か李連杰が離脱し、代わりに甄子丹の加入が検討されています(以前予定されていた楊斯の出演は流れてしまった模様)。今後も出演キャストは変動しそうですが、個人的には今度こそセガールの出演が実現して欲しいと願って止みません!

「片腕拳王2005」
原題:獨臂拳王
英題:Fight To Win/One Arm Hero
製作:2005年
●武術学校に籍を置くバクスター・ハンビーは、生まれつき片腕が無いというハンデを抱えながらも、黄家達(カーター・ウォン)の指導を受けて達人に成長していた。ところがある日、ハンビーは母親から「貴方のお父さんはもう亡くなっているけど、実は腕に刺青を入れた男に殺されたのよ」と、衝撃的な事実を告げられる。彼は必ずや父の仇を討つことを心に誓うのだが…。
その頃、国宝強奪を企むマフィアの一団が、ヨーロッパから仲間の王文成(サモハン作品などに携わったベテラン)を呼び寄せていた。王文成はハンビーと同門の兄弟子で、その実力も並ではない。彼はマフィアの命令で国宝を奪うと、海外から格闘家のモーリス・トラビス(K-1にも出場した本物のプロ選手)を召集。この男を利用し、国宝を国外に持ち出そうと企んだのだ。
モーリス本人は格闘大会に参加するため来訪したのだが、その大会にはハンビーも出場していた。王文成は国宝流出計画と平行してハンビーたちの元へと接近。そこで彼は、ハンビーがかつて殺した男の息子であった事を知り、真実を知る彼の母親を暗殺してしまう。自分を支えてくれた母の死に嘆き悲しむハンビー…。しかし、彼はその苦難を乗り越えて決勝まで進み、見事に優勝を果たすのだった。
大会が終り、勝利を祝うささやかなパーティが行われた。ところが、そこでハンビーは王文成の腕に母親から聞かされた刺青を発見する。「お前が父さんを殺したんだな!」「そうだ…そして母親を殺したのも俺さ!」 かくして、ハンビーと王文成の最終対決が始まった!
今月は黄家達のフィルモグラフィーを大まかに辿ってきましたが、ラストに紹介するのは日本製の作品です。正確には日本と香港の合作映画ですが、舞台が中国なので香港っぽさはあまり感じられない作りとなっています。製作には中国電影合作製片公司も関わっているので、どちらかというと日本・中国・香港合作の映画といった方がいいかもしれません。
なお、本作は同年に製作された『武生情未了』という作品と出演者が被っており、何らかの関係があったものと思われます。『武生情未了』はフィルマークを率いた黎幸麟(ジョセフ・ライ)が製作した作品で、主演はあの石天龍。本作に黎幸麟の名はありませんが、プロデューサーの中にフィルマークの主要スタッフだった黎慶麟(ジョージ・ライ)の名前が確認できました。まさかこんなところで彼らと出会うとは!(爆
さて、本作は仇討ち&格闘大会だけのシンプルな物語ですが、それ故にボリューム不足な内容になっています。その代わり殺陣のレベルは高く、腕の無い方でもビシバシと攻撃を叩き込むハンビーには圧倒されてしまいました。それに負けじと親友役の松田優も奮闘しています。彼はVシネで活躍する肉体派スターですが、本作で見せる動きは明らかに他作品と違います!見せ場は最初と最後だけですが、ファンならここだけでも見る価値はあると思います。
そして黄家達も激しい立ち回りを演じており、ほとんどスタント無しで全てのアクションを演じています。終盤では王建軍(李連杰と同じ武術学院出身の猛者)と夢の対決が実現し、素早い連続攻撃で迫る相手に対し、ドッシリと腰の入った拳打で立ち向かっていました。…と、このように功夫アクションは見どころが沢山あるのですが、ストーリーがそれを相殺しています。せめてサブエピソードなどがもっと充実していればなぁ…(涙
黄家達……彼が歩んだ道のりは起伏に富み、生半可な行程ではなかったことが察せられます。地域の枠を越え、数え切れないプロダクションを渡り歩いた背景には、我々の想像もつかないような経緯が秘められていた事でしょう。
しかし、道を進むたびに彼は様々な"顔"を手にしてきました。大衆から親しまれた功夫スターとしての顔、ワールドワイドに活躍する国際派俳優としての顔、そして大勢の門下生を有する武術家としての顔…。30余年に渡る行脚の末、黄家達は単なる功夫職人に留まらない、幾つもの"顔"を持つスターとなったのです。
黄家達特集は今回で終了となりますが、黄家達自身の歩みはまだまだ止まりません。恐らく、彼はこれからも映画と関わりを持ち続け、また新たな"顔"を私たちに見せてくれるはずです。果たしてそれはどのような物なのか?膨らむ期待と希望を胸に仕舞いつつ、これにて本項の締めとしたいと思います。(特集、完)