続・功夫電影専科 -62ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「ゲーム・オブ・デス」
原題:GAME OF DEATH
製作:2010年

▼セガールやヴァンダムといった格闘スターが大量に現れた90年代において、新世代のブラック・ドラゴンと言うべきスターが誕生しました。詠春拳や空手を習得した黒人格闘俳優の新たな旗手…それがウェズリー・スナイプスでした。
彼は単なるアクション映画にとどまらず、演技派俳優として様々な作品に出演しています。しかし、スナイプスが主演した作品で直球の格闘映画というものは少なく、その並外れた技量をフルに活用する機会は限られていました(このへんはドルフ・ラングレンも同じ問題を抱えていたと思います)。
そんな彼も今や檻の向こうに行ってしまいましたが、本作は収監する前に製作された最後の主演作です。スナイプスは本作の前後に『エクスペンダブルズ』の出演を断っていますが、やはり本人も出演できなかったことを悔やんでいたらしく、本家からゲイリー・ダニエルズが招集されています。

■貧しい町の一角に建つ教会に1人の男が現れた。彼、指名手配犯のスナイプスは大金がぎっしり入ったバッグを下げており、この教会へ寄付したいと言う。どういった経緯があったのか説明を求めた牧師に対し、彼は前日に起きた出来事を語りだした。
CIAエージェントとして活動していたスナイプスは、上司から「武器商人のロバート・ダヴィとその支援者である投資会社のボスを暗殺せよ」との命令を受けた。半年間の潜入工作でロバート専属のボディガードとなったスナイプス。しかし、いよいよ投資会社のボスに会えるというその時、想定外の事態が発生する。
 なんと、土壇場でゲイリーらCIAの仲間たちが反旗を翻したのだ。いつまでも報われない生活に嫌気がさしていた彼らは、投資会社でロバートが受け取る予定の大金を強奪し、そのまま海外に高飛びしようと企んでいたのである。
さらに間の悪いことに、ロバートが取引の直前に心臓発作を起こしたため、病院へ寄り道する羽目に…。スナイプスは任務を優先するが、ゲイリーたちは問答無用で襲い掛かってくる。舞台は病院から投資会社へと移り、ゲイリーの率いていたグループも彼を残すのみとなった。ビルの屋上を舞台に、正義なき決戦が始まるが…?

▲物語は組織に翻弄された挙句、相反する道を選んだ2人の男が闘うというもので、なかなか渋い作風になっています。登場人物も癖のあるキャラばかりで、単なる勧善懲悪ではない本作には良くマッチングしていました。
しかし、本作は最終的に何を言いたかったのかが解らず、スナイプス自身も善悪について大っぴらに悩んだりしません。そのため、面白くなりそうな話題が宙に浮いたまま終わっているのです。カメラワークに関しても、やたらエフェクトに凝っていて見づらいことこの上なしでした。
 アクションシーンは『ザ・格闘王』のサイモン・リー(劇中にもゲイリーの仲間として出演)が指導しているため、見栄えに関しては文句なし。スナイプスとホー・スン・パク(『酔拳2』でジャッキーに顔を焼かれた人)との対決が一瞬で終わり、サイモン本人は一発で射殺されてしまうものの、各所で繰り広げられるファイトはどれも迫力満点です。
注目のスナイプスVSゲイリーもハードな内容で、蹴り技で勝るゲイリーに対してスナイプスが一瞬の隙を突き、怒涛の鉄拳ラッシュを打ち込むシーンには鬼気迫るものがありました。ハッキリ言って見どころはラストバトルのみですが、一定のクオリティは保っていたと思います。ところで……DVDの予告編、悪ノリしすぎ!(笑


「飛竜カンフー」
原題:身形拳法與歩法
英題:Ways of Kung Fu
製作:1978年

▼香港最大の映画会社ショウ・ブラザーズには、優秀な功夫の使い手である戚冠軍(チー・クワンチュン)という俳優がいました。彼は巨匠・張徹(チャン・ツェー)監督の目に止まり、数々の功夫映画で主演を重ね、今も海外で高い評価を得ています。
そんな彼が自ら設立した冠軍影業公司というプロダクションがあるのですが、そこで作られたのが本作です。そこで作られた…と言っても、冠軍影業公司が自社で製作した映画はたった2本しか無く(爆)、もう1つの『大惡客/上海灘』は散々な代物でした。
 しかし、本作は大傑作である『必殺のダブルドラゴン(識英雄重英雄)』の李超が監督を務め、武術指導にはアクロバティックな動作に定評のある徐忠信も参加。出演者についても、梁家仁(レオン・カーヤン)を筆頭に著名なスターが多数出演しています。
そんなわけで、まかり間違ってもそんなに悪くない作品にはならないだろうと思って視聴してみたのですが……。

■戚冠軍は小さな寺で下っ端働きをしている気弱な男。いつも仲間から馬鹿にされてばかりだったが、そこに修行僧と名乗る大男・程清が現れる。程清は暴力で寺を支配し、戚冠軍の災難はますます増えるばかりだ。
四面楚歌な状況を案じた館長は、戚冠軍を友人に預けて程清から遠ざけることを提案。寺から出奔した彼は、館長の友人である梁家仁の元に身を寄せた。非力な戚冠軍は功夫の修行を強要されて断るが、その代わりに一切の雑用仕事を請け負うことになってしまう。
 実はこの雑用も修行の一環であり、戚冠軍は知らぬ間に体力を身に付けていた。ようやく功夫を習うことを決心した彼は、梁家仁と共に本格的な修行を開始。2年の期間を経て立派な功夫使いに成長し、いったん寺に戻る事になった。
寺では館長が病気を患っており、程清が全ての実権を握っていた。戚冠軍は梁家仁の協力で程清を追い詰めるが、館長がこれを見逃してしまう。…これが全ての悲劇の始まりだった。報復によって梁家仁が犠牲となり、館長も戚冠軍をかばって死亡する。この程清という男、その正体は各地の寺院を拠点にして強盗や殺人を働く極悪人だったのだ。
戚冠軍は、かつて追いはぎから助けてくれた孟飛(メン・フェイ)を頼り、修行の練り直しを決行。襲撃に現れた程清一味を相手取り、最後の闘いが始まる!

▲やはり方々で言われている通り、本作は良作とは言い難いものに成り果てていました。
ストーリーは伏線や意外な展開というものが一切無く、ただ適当にその場の流れに任せているという感じで、全体的にテンションが低い作りになっています。また、本作は当時流行していたコメディ功夫片を意識していますが、ご覧のようにシリアスな要素が中途半端に混じっているため、どう見てもコメディには見えないのです。
 功夫アクションは(無名の独立プロ作品にしては)それなりに健闘していますが、前述の充実したキャスト・スタッフが結集してこの出来では、正直言って期待はずれ。ラストバトルは戚冠軍&孟飛&宗華VS程清というナイスな顔合わせなのに、殺陣が荒いせいで盛り上がりに欠けています。
「たとえどんなに優れたスターや裏方がいたとしても、必ず良い作品が作れるとは限らない」…本作はそのことを改めて確認させてくれる作品でした。


「仮面ライダーW RETUNS 仮面ライダーアクセル」
製作:2011年

▼海外で戦隊ヒーローのアクション指導を務め、現在も数々の特撮番組を手掛けている坂本浩一監督。本作はそんな坂本監督が作り上げたVシネ作品なのですが…これが実に面白い作品でした!
本作は探偵コンビの主人公が変身する『仮面ライダーW』のスピンオフ作品で、もう1人の主役として活躍した刑事・照井竜=仮面ライダーアクセル(木ノ本嶺浩)がメインとなっています。私は平成ライダーは『仮面ライダー555』までしか見ていないんですが、本作は予備知識が無くても十分楽しめる作品でした。

■全ての闘いが終わり、自分を慕ってくれた山本ひかると結婚した木ノ本は、平和な生活を送っていた。ある日、彼の住む町でスリを狙った連続殺人事件が発生する。この事件はドーパント(本作における怪人の名称。ガイアメモリという道具を使って人間が変身する)による犯行で、木ノ本は同僚のなだぎ武と捜査を開始する。
そんな中、孤独なスリの少女・滝裕可里と出会った木ノ本は、彼女を襲おうとするコマンダードーパントと遭遇。滝がこっそり変身用のメモリをスったせいで、木ノ本は仮面ライダーアクセルになれないまま闘う羽目になってしまう。
 コマンダードーパントは「数日前にある男からスった物を出せ」と滝に詰め寄るが、既にスリの元締めに渡してしまったという。そこでドーパントは彼女に時限爆弾を装着させ、ブツを持ってくるようにと脅迫。さらには木ノ本の拳銃を奪ってなだぎを撃ち、彼に殺人犯の濡れ衣まで着せてしまったのだ。
仮面ライダーWは警察に監視されて動けず、木ノ本と滝はたった2人で奔走することとなった。彼らを捕まえようとする捜査官(俊藤光利・田中実)の追及を避けつつ、事件の核心へと向かう男と女。だが、ドーパントの意外な正体と目的、そしてお転婆な山本の介入により、事態は思わぬ展開を見せていく。果たして、追い詰められた木ノ本の運命は…?

▲『仮面ライダーW』という作品は探偵モノのテイストを取り入れた作品だったそうですが、本作では刑事ドラマのテイストを取り入れており、香港映画でもお馴染みの「陥れられて孤軍奮闘」という流れで進んでいきます。
しかし本作では、滝の抱える悲しき過去・コマンダードーパントと木ノ本の共通点・木ノ本の決意・山本との新婚生活崩壊の危機・仮面ライダーWの活躍といったエピソードが重なり合い、本筋のシンプルさが気にならない構成となっています。ただ、本作を見ただけでは解りにくい描写もあったので、やはり『W』本編を視聴した上で見たほうが良いかもしれません。
 さて格闘アクションですが、今回も坂本監督は激しすぎる肉弾戦をたっぷり用意していました。氏はジャッキー映画の大ファンで、アクションシーンにオマージュ的な描写(ジャッキースタントの再現など)を盛り込んだりすることがあります。本作でも一回転して階段に叩き付けられる『十福星』風のスタントを始め、どこかで見たようなアクションが幾つも登場します。
また、手錠に繋がれたままの戦い、クラブでのスリ集団との乱戦、クライマックスの採石場など、かつて坂本監督が関わった『DLIVE/破壊王』を彷彿とさせるシチュエーションが随所に見られました。もしかすると意識して作った…のかな?
この他にも、なだぎ武が見せるジャッキー風アクション(なだぎの動きの良さにビックリ!)など、アクション・ストーリー共に見どころ満載な快作。坂本監督は本作の後に、劇場版『W』のスピンオフ作品である『仮面ライダーエターナル』も製作していますが、こっちは須藤元気に中村浩二まで出ているとのことなので、近いうちに視聴してみたいと思っています。


「ギャンブリング・ゴースト」
原題:洪福齊天/鬼賭鬼
英題;Gambling Ghost
製作:1991年

●サモハンはギャンブルに目がないダメ人間で、いつも仕事仲間の孟海(マン・ホイ)といっしょに賭場へ入り浸っていた。彼の父親であるサモハン(以下、父サモと表記)は、息子が非業の死を遂げたギャンブル狂の祖父・サモハン(以下、爺サモと表記)の二の舞にならないように、いつも神経を尖らせていた…のだが、当の本人はまったく聞く耳を持たなかった。
そんなある日、サモハンは女詐欺師の利智(ニナ・リー)と遭遇する。利智は自動車ドロを生業としており、犯行の一部始終を見ていたサモハンと孟海は、彼女を出し抜いて大金をせしめようと企んだ。しかし、彼らは黒社会のいざこざに巻き込まれ、孟海が香港マフィアに捕まってしまった。
 「孟海を助けたかったら1千万ドル用意しろ!」と脅迫され、失意のどん底に突き落とされたサモハン。偶然見つけた爺サモの墓に当たり散らしたが、そんな彼の元に爺サモが化けて現れた。彼は「お前の力になってやるから、ワシを殺した相手に仇討ちしてくれ」と告げ、これを了承したサモハンは身代金を工面するべく、様々なギャンブルに挑戦していく。
その後、人質交換の際に爺サモが加勢したお蔭で、彼らの手元には1千万ドルがそのまま残った。さっそくサモハンたちは豪遊を始めるが、仇討ちの件も忘れてはならない。爺サモを陥れ、黒社会の顔役となった葉榮祖に彼らは接近を試みるが、ここで問題が発生する。敵の用心棒である僧侶・田俊(ジェームス・ティエン)によって爺サモのパワーが封じられてしまったのだ。
結局、サモハンたちは圧倒的に不利な状態で対決の時を迎えてしまう。たまたま一緒になった利智も巻き込み、最後の戦いは激しさを増していくのだが…?

 ギャンブル映画ブームに目を付けたサモハンが、自分の好きなオカルト要素をブチ込みつつ、一人三役という暑苦しいサービス(笑)まで提供したコメディ映画です。当時のサモハンは古巣のゴールデンハーベストから離脱し、小規模な作品を撮りながら食い繋いでいました。
本作はそんな過渡期の作品で、いつもなら一緒にいてくれそうなキャスト(林正英とか呉耀漢とか)がゲスト扱いだったりするなど、往年の作品からのスケールダウンが随所で目立ちます(涙)。とはいえ、全体的な作風は80年代の福星シリーズから変わっておらず、良くも悪くもいつものサモハン映画として成り立っているのです。
 ギャグ描写に関しても概ね良好ですし、功夫アクションも高水準のボリュームで魅せてくれます。一番の見どころはラストの3連戦で、黒人のロバート・サミュエルズ、元キックボクサーの周比利(ビリー・チョウ)、そして老骨にムチ打って戦う田俊(!)と立て続けに闘います。ただ、これらタイマンバトルが実に見事だった反面、集団戦はあまり充実していなかった気がしました。
雰囲気としては、全盛期のサモハン映画の縮小コピーといった感じの本作。過度な期待は禁物ですが、小粒でも及第点以上の面白さはギリギリ保っているので、見て損はないはずです。


「銀座ミッドナイトストーリー ゆーとぴあ 赤い蝶」
「銀座ミッドナイトストーリー ゆーとぴあ2」
製作:2000年

●ここは銀座の一角に建つ小さなクラブ・ゆーとぴあ。潰し屋を蹴散らした闘いから8ヵ月後…常連客だった不動産屋社長の死を乗り越え、桜庭あつこは今日もホステスの道を突き進んでいた。チーママと2人の男性を巡る三角関係、そして思わぬ事件に遭遇しながらも、彼女たちは充実した日々を送っている。
そんな時、一年前に桜庭の元から去った本宮泰風が、再び彼女たちの前に現れた。かつて遂げられなかった思いを胸に愛しあう桜庭と本宮…。だが、敵対していた高級クラブのオーナー・松田ケイジがまたもや行動を開始する。パー券を使用した嫌がらせに対し、ゆーとぴあのポーターである倉田保昭は松田に直訴し、彼は自分の間違いに気付いた。
こうして両者の争いにピリオドが打たれる…かと思われたが、潰し屋たちは徹底抗戦を主張。ゆーとぴあの常連客を誘拐するという暴挙に及んだのだ。桜庭たちホステスは、空手道場の先生である真樹日佐夫たちと共に、連中のアジトへと踏み込む!

 この作品は前回紹介した『銀座ミッドナイトストーリー ゆーとぴあ/白い蕾』の続編にあたり、前作で描かれたホステスや顧客たちのその後が描かれています。基本的に群像劇であるという点は変わりなく、今回はチーママの担当するエピソードが増加していました。
しかし、内容としては前作でカバーしきれなかった部分を補完している感が強く、そのせいか混血の先輩ホステスに関する話が減っています。また、本作では潰し屋たちによるSMショーが増加され、前作よりも更にアブノーマルな雰囲気になってしまっているのです。『無比人』ほど酷くはないんですけど、これも人によっては好き嫌いが別れそうです(汗
 格闘シーンの量も、前作では中盤と終盤で繰り広げられましたが、本作ではラストバトルのみ。こちらについても見せ場が減っていました。特に本宮の格闘シーンは1つも無く(あっても一瞬で決着してしまう)、ヒットマンの村上竜司(士道館に属する空手の師範)も呆気なく倒されてしまいます。
ラストバトルでは相変わらず無敵の強さを見せる倉田さんと、再び参戦した真樹センセイによるアクションもあるのですが、面白いのはそこぐらい。桜庭を始めとしたホステスたちも、あまり動けないので派手さは控えめとなっています。ホステス物語で格闘シーンを増やせと言うのは無茶な話ですが、欲を言えば倉田VS本宮倉田VS村上といった対決も見てみたかったなぁ…。