続・功夫電影専科 -61ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


亡命徒
英題:The Fugitive
製作:1972年

●強盗コンビの羅烈(ロー・リェ)谷峰(クー・フェン)は、今日も銀行を襲撃して大金をせしめていた。だが2人は警官隊に追い詰められ、谷峰を逃がそうとした羅烈が捕まってしまう。警察は金を持って逃げた谷峰の居場所を吐かせようとするが、義に厚い彼は決して口を割ろうとしなかった。
ところが、面会に現れた丁茜から「谷峰は奪った金で悠々自適の生活をしているわ」と聞かされ、羅烈は脱獄を決意。道中で丁茜を失ったが、自分を裏切った谷峰への復讐を固く誓うのだった。一方、当の谷峰は名家の親分に収まっていた。昔から欲望の塊だったこの男は、とっくの昔に情など捨て去っていたのだ。
 谷峰を探していた羅烈は、盗賊に襲われていた李菁石天(ディーン・セキ)を助けた。彼らは師匠の元に向かう途中だったのだが、その師匠というのが谷峰であった。羅烈の接近を察知した谷峰は、大量の手下と共に彼を襲撃。羅烈は撃たれてボロボロになるも、李菁に助けられて一命を取り留めた。
後日、羅烈から師匠の本性を知らされた石天は、果敢にも本人へ直談判を試みていた。しかし激昂した谷峰は彼を撲殺…李菁は仲間の死に深く悲んだ。羅烈は彼女の心を慰め、かつて丁茜に送った腕輪を李菁にプレゼントした。が、腕輪の由来を知る谷峰がそれを発見し、彼女もまた石天と同じ運命を辿ってしまう。
奴をこれ以上放っておくわけにはいかない!潰された腕のリハビリを済ませた羅烈は、ピストルを片手に谷峰一味へ勝負を挑んだ。銃撃戦の末、遂に始まる羅烈と谷峰のタイマンバトル。しかし……?

 今月のショウブラ特集で何度も登場している谷峰ですが、若い頃の彼は大悪党を演じることが多々ありました。本作もその1つで、血も涙も無いド外道を憎々しげに演じています。「苦楽を共にした2人の男が敵対して殺し合う」というありがちな話ですが、本作は主演の2人が羅烈と谷峰なので、異様に暑苦しい空気になっていました(苦笑
改めてストーリーを振り返ると、谷峰は裏切りや人殺しを平気でする男として描かれていますが、よくよく考えれば主要人物の死はみんな羅烈が遠因となっています。これは意図して演出されたものなのか気になりますが、死闘の果てに迎える無情な結末はとても印象的でした。
 劇中のアクションは銃撃戦が多く、素手の戦いも功夫ではなくラフなファイトが中心となっています。とはいえ、『キングボクサー大逆転』から間もない作品なので、羅烈の動きは機敏そのもの。大人数の敵と撃ちあう銃撃戦など、殺陣以外の部分でも見応えのあるカットが幾つもありました。
さて、この手の古い作品には脇役の中に後のスターがいたりするんですが、本作にも色んな人が出ています。可哀想な役柄を演じた石天、最後の銃撃戦でやたら目立っている小麒麟、そして李菁を襲う盗賊のリーダーに洪金寶(サモ・ハン・キンポー)が扮しています。石天や小麒麟はともかく、この時期にサモハンがショウブラ作品に出るとは驚きです。

 もともとサモハンはショウブラで武術指導を行っていた経験を持っていますが、それはゴールデンハーベスト設立前の話。当時、彼はハーベストに移って同社の仕事に専念し、旗揚げ直後の黎明期を必死に支えていました。そんなサモが余所の(しかもライバル会社の)作品に出ているとなると一大事です。
自らの映画監督としての師である黄楓の『大内高手』、狄龍(ティ・ロン)が監督を務めた『後生』など、彼は方々でこっそり顔を出しています。それにしても、非常に忙しかったはずなのに何故サモはショウブラへ通っていたのでしょうか?………ま、まさか、ハーベストの特命で敵情視察を!?(違


通天小子紅槍客
英題:The Kid with a Tattoo/Claw of the Eagle
製作:1980年

▼前回前々回と監督の名前でセレクトしてきたので、今日も著名な監督の作品を取り上げていきます。本作は武侠片を撮らせたら天下一品の職人監督・孫仲(スン・チュン)の監督作です。日本でも『冷血十三鷹』『カンフー風林火山』等の傑作がリリースされていますが、どちらの作品もシリアスなタッチで描かれていました。
しかし、本作では当時のコメディ功夫片ブームのあおりを受け、明るいタッチで仕上がっています。主演は元祖コメディ功夫スターの汪禹(ワン・ユー)で、このほかにも王龍威元華(ユン・ワー)といった孫仲作品おなじみの俳優が顔を連ねています。果たして、孫仲はどのようなコメディを描いているのでしょうか?

■汪禹は紡績工場の社長である谷峰の一人息子。彼は謎の乞食・元彬に師事し、勉強そっちのけで功夫修行に明け暮れる日々を送っていた。一方、こちらは刺客集団の長・元華。彼は運送会社を隠れ蓑にしている麻薬組織の王龍威と兄弟分なのだが、秘密捜査官が近くを嗅ぎまわっているとの情報を聞き、目を光らせていた。
一見すると無関係に見える両者だったが、その秘密捜査官というのが元彬であった。元華は手下を率いて彼を襲い、自慢の槍で刺殺。今わの際に元彬は「麻薬組織を率いているのは誰だ?」と聞き、元華は首領の名を告げた。その様子を隠れて見ていた汪禹は、名前の似ている谷峰が関与していると勘違いしてしまう(笑
 邪魔者を始末した元華は、殺害現場を目撃していた汪禹を次のターゲットに定めた。そんな中、元彬の盟友だった捜査官・狄威(ディック・ウェイ)が町に現れ、元彬殺しの下手人を探そうとしていた。この捜査の過程で王龍威側の人間が死んだため、王龍威と元華の関係に亀裂が生じていくのだが…。
そのころ、汪禹もまた王龍威に近付こうとしていたが、元華の登場によって窮地に陥ってしまう。敵は彼の自宅にまで攻め込み、遂には汪禹VS元華の対決に発展。狄威が介入したことで事なきを得たが、度重なる失敗に業を煮やした王龍威の手により、元華は粛清されるのだった。…後日、敵陣に侵入した汪禹は、そこで意外な事実を知る!

▲本作はコメディ描写が多く、功夫アクションも豊富にあるのですが、どちらもいまいち決め手に欠けていました。コメディシーンはやたら尺が長く、それでいてインパクトは薄め。ギャグを入れるタイミングもおかしく、元彬が殺されるという悲劇的なシークエンスでさえ軽く処理されています。
作中、汪禹は目の前で元彬が殺される場面に遭遇するのですが、汪禹のリアクションはとても控え目。元彬が死んでもあまり悲しまず、それどころか何事もなかったかのように淡々とギャグパートが進行していくので、さすがに見ていて違和感がありすぎました(爆
 アクションでは躍動感のあるカメラワークが印象的だったのですが(撮影は『孔雀王』の藍乃才)、殺陣自体はこれといって特色が無く、いささかボリューム不足な気がします。武術指導を担当したのは、武侠片で幾多の名勝負を演出したベテラン指導家・唐佳ですが、やはり彼は武侠片でこそ真価を発揮する人なのだと再認識しました。
失敗作であることは確かですが、『酔拳』の黄正利を意識した姿の元華、珍しく大きな役を貰っている狄威など、悪役スターたちの初々しい姿は一見の価値があるかもしれません。なお、後に孫仲は本作のキャストとスタッフを動員し、よりコメデイ描写を徹底させた『小子有種』で本作の雪辱を見事に晴らしています。


鬼畫符/鬼画符
英題:The Fake Ghost Catchers
製作:1982年

▼この作品は、前回の『五大漢』で武術指導として参加していた劉家榮(リュー・チャーヨン)が、自ら監督としてメガホンをとった一本です。劉家榮といえば、功夫映画にその人ありとされた武術指導家・劉氏兄弟の1人であり、映画監督としては功夫以外のジャンルを追求し続けた方でした。
彼はホラーコメディ『魔界天使』で一躍有名になるのですが、本作はその同年に製作されたオカルト功夫片です。当時、劉家榮は他にも『カンフートレジャー龍虎少林拳(龍虎少爺)』という傑作を手掛けていて、スタッフやキャストがそのまま本作でも登板しています。要するに本作は、『龍虎少爺』の姉妹作とも言うべき作品なのです。

■インチキ道士の弟子・小候と、オバケの苦手な剣士・張展鵬は親友同士。ある日、彼らは李麗麗(リリー・リー)に憑りついた悪霊の除霊を引き受け、彼女の邸宅へ訪れた。ところが悪霊は恐ろしく強力で、未熟な小候たちはおろか、高名な僧侶の集団でさえも太刀打ちできなかった。
ほうほうの体で逃げ帰った小候たちだが、そこへ悪霊によって死んでしまった?李麗麗の霊が現れた。彼女は「悪霊は私の双子の妹も狙っている…私自身をお札にした鬼畫符を渡すから、どうか助けてほしいの」と小候たちにに告げるのだった(若干推測入ってます)。
 小候たちは李麗麗の妹(李麗麗の一人二役)を救うべく、ダメダメギャンブラーの傅聲(アレクサンダー・フーシェン)と共に旅立つことを決意。道中、彼らは何度となく振りかかってくるピンチを鬼畫符のパワーで凌ぎつつ、なんとか目的地へ到着した。
大道士・楊志卿に助力を仰ぎ、3人は悪霊との決戦に向けて準備を始めていく。だが、張展鵬と敵対している王龍威との闘いによって、対悪霊用に用意していた神像や魔鏡がメチャメチャになってしまった。穴だらけの装備で悪霊に臨む3人だが、果たして無事に退治することはできるのだろうか…?

▲『ガッツフィスト魔宮拳』『少林寺破戒大師伝説』と同じく、本作も主役3人による珍道中を描いたストーリーとなっています。ただ、傅聲だけは途中からの登場となるため、実質的には小候と張展鵬のダブル主演と言ったほうがいいかもしれません。
先述したように本作は『龍龍虎少爺』の姉妹作ですが、同時に『魔界天使』と『龍虎少爺』の中間に位置する作品でもあります。功夫片としての見せ場、ホラーコメディとしての見せ場は両方とも充実。特にホラー描写は気合が入っていて、光学合成やグロテスクな特殊メイクの数々は見応え十分でした。
 ですが、本作は功夫アクションに特化したものではなく、かと言ってホラーコメディに徹し切れた作品でもありません。良く言えば器用貧乏、悪く言えばどっちつかずの作風によって、『魔界天使』『龍虎少爺』のどちらにもなれていないのです。しかし、本作は失敗作ではありません。作品自体は普通に面白く、実にバラエティに富んでいました。
アクションを封印した傅聲の七転八倒、鬼畫符を手に入れようとする杜少明のバカっぷり(笑)など、どの役者も各々の役柄をノリノリで演じています。功夫アクションは終盤の張展鵬VS王龍威が熱く、鬼畫符を使ってパワーアップした張展鵬と、パワフルな拳で迫る王龍威の一戦は迫力満点のバトルとなっていました。
『魔界天使』と『龍虎少爺』を両方見た人は、本作と比較してみるのも一興かもしれませんね。


五大漢
英題:Five Tough Guys/Kung Fu Hellcats
製作:1974年

●今月は最後の特集月間ということで、ちょっと奮発してショウ・ブラザーズの諸作品を取り上げていきます。第1弾となる今回は、かの大導演・張徹(チャン・ツェー)の教え子である鮑學禮の監督作の登場です。
『片腕必殺剣』『報仇』『嵐を呼ぶドラゴン』『五毒』などの傑作を続々と生み出した巨匠・張徹。彼の元には呉宇森(ジョン・ウー)を始めとした優秀な弟子たちがおり、張徹の死後も香港映画界の発展に貢献していきます。のちに名作『カンフーエンペラー』を手掛けることになる鮑學禮もその1人でした。

 この映画は、実在の人物である蔡鍔(蔡松坡)と小鳳仙が重要なキャラとして登場します(本作で扮するのは凌雲と何莉莉)。蔡鍔は中国の軍人で、1915年に帝政復活を目論む袁世凱の元から離脱。北京から脱出し、討伐軍を決起させて激しい戦いを繰り広げ、最終的に帝政を撤廃させたといいます。
これが護国戦争と呼ばれる戦いですが、北京から脱出する際に蔡鍔と関わりを持ったとされているのが小鳳仙という女性でした。2人は短い間に親密な関係を築いたらしく、のちに2人の関係を扱った創作物が多数作られています。近年では『建国大業』の続編『建党偉業』で劉華(アンディ・ラウ)とアンジェラベイビーが2人を演じるそうです。

 本作はそんな大人物が出てくるのですが、主人公は題名にもある5人の男たちです。ニヒルな陳觀泰(チェン・カンタイ)、蔡鍔の部下の韋弘、功夫使いの史仲田、その仲間の樊梅生、途中参戦する王鍾…それぞれ身分も立場も違う5人が、日本軍の魔手から蔡鍔を逃がそうとする姿を描いています。
なんとなく西部劇を彷彿とさせる物語ですが(もしかしたら元ネタがあるのかも)、張徹作品でおなじみの「歴史の影に名も無き男たちの活躍があった」という燃える要素は、本作でもしっかり継承されています。ただ、作品そのものは佳作止まりで、凌雲が単に守られるだけの存在に終始しているなどの不備も多々見られました。
 敵側には日本軍の司令官役で谷峰(クー・フェン)、絡み役で馮克安・徐少強・袁祥仁らが顔を見せ、日本からは東映で活躍していた大前均がゲスト出演しています。彼は『少林寺VS忍者』での柔道家役が有名ですが、本作では日本から来た刺客としてラスボス(!)を担当していました。
大前氏は竹刀と柔道で陳觀泰たちを相手取り、互角以上の戦いを展開!打撃が一切通じないという反則気味なパワーを見せ、投げ技オンリーながら見事なファイトを披露しています。張徹作品ほどの出来ではありませんが、アクションシーンの質は良好なので(武術指導は劉家榮と黄培基)、功夫映画ファンなら見て損は無い作品だと思います。


「ミッドナイト・ランニング」
原題:反斗狂奔
英題:MIDNIGHT RUNNING
製作:2006年

▼この作品は、洪金寶(サモ・ハン)ら香港映画を代表する俳優の息子たちが一堂に会した作品です。サモハンの息子の洪天明(ティミー・ハン)、曾志偉(エリック・ツァン)の息子の曾國祥(デレク・ツァン)、そして呉耀漢(リチャード・ン)の息子の呉嘉龍(カール・ウン)が出演しており、感慨深いスリーショットが実現しています。
日本版のパッケージは『インビジブル・ターゲット』風になっていますが、本編はちょっとしたコメディ仕立てのシナリオになっていて、それほど硬派な内容ではありません。なかなか昇進できないヒラ警官の洪天明、ヘミングウェイが好きなバーテンの曾國祥、日本人でスリの真家留美子らが中心となって物語は進んでいきます。

■舞台はクリスマス・イブの香港。根はいい子だが手癖の悪い留美子は、マフィアの持っていた大事な名簿を(そうとは知らずに)盗んでしまった。マフィアのナンバー2である蔡一智は彼女の捜索を命じ、とばっちりを受けた一般人の曾國祥も協力を強いられる事となった。
マフィアの追及でピンチに陥る留美子…その姿を見かねた曾國祥は、思わず彼女を助けてしまう。とりあえず留美子の自宅に向かい、互いにヘミングウェイが好きだということでイイ感じになっていく2人。しばらくして追いかけてきた洪天明が合流し、名簿の重要性を指摘するのだが、なんと留美子が「名簿を餌にマフィアと取り引きしよう」と言い出したのだ。
 彼女の提案によって、騒動は思わぬ方向へ進展していく。次々と巻き起こるトラブル、こじれそうになる三者三様の人間関係、そして和解と復縁…。だが、洪天明のミスで名簿が紛失し、イヤミな上司の呉嘉龍から救援を断られたため、彼はたった1人でマフィアと対峙する羽目になってしまう。
一方、敵対しているマフィアの組織内でも2つの派閥が対立し、一触即発の空気になりつつあった。文字通りの四面楚歌な状況の中で、果たして3人は無事に困難を乗り切ることが出来るのだろうか?

▲前述の通り、本作はコメディ調の演出がなされていますが、完全な喜劇ではありません。主人公の洪天明が警察官なので、ジャンル的にはポリスアクション…と言いたいところですが、曾國祥と留美子が織りなすラブストーリーの方が大きく扱われています。要するに本作、どういったジャンルにしたいのか定め切れていないのです。
また、マフィアを相手にケンカを売る留美子の行動は、コメディ調の演出を差し引いても常軌を逸していると言わざるを得ません(香港ノワールだったら確実に死んでます)。クライマックスの香港映画らしい騙しあいや、縞模様のビニール袋によって発生する勘違いなど、面白い部分もあるにはあるのですが…。
 功夫アクションは極端に少なく、単なる小競り合い以外はラストバトルに集中しています。主役サイドで活躍するのは洪天明のみですが、蔡一智とのタイマンバトルや集団戦などが展開され、そこそこの盛り上がりは見せていました。
作品そのものは無難な出来ではあるものの、大物俳優のジュニア世代たちが頑張っている本作。もし可能であれば、残りの福星メンバーの息子たち(いるのかな?)も全員呼んじゃって、『新五福星』を製作して欲しいですね(笑