続・功夫電影専科 -59ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「バウンティハンター」
製作:2011年

▼本作は肉体派Vシネ俳優・松田優が挑んだハードなアクション作品です。現代の賞金稼ぎ=バウンティハンターの活躍を描いたもので、同じく賞金稼ぎが主役だった格闘映画『バウンティ・ハンター/死の報酬』とは趣を異にしています。

■凶悪犯罪が多発し、治安の悪化が続く現代日本。法務省は多発する犯罪に対し、西部開拓時代に存在した賞金稼ぎを現代に復活させ、生死を問わず賞金首を捕まえるバウンティハンター制度を導入する。そんなバウンティハンターの1人である松田は、保釈金専門の金融機関に居座る傍ら、賞金首を追う日々を送っていた。
そんな中、特殊な麻薬を横流ししていた悪徳刑事・倉見誠が売人を射殺し、その容疑を三下ヤクザの石橋保に擦り付けるという事件が発生する。倉見の手によって賞金首の殺人犯となった石橋は、自分を捕まえた松田に無実を主張した。だが、そこに彼と同じバウンティハンターの的場浩司が現れ…。

▲…というようなストーリーなんですが、本作は一貫してハードボイルドな(時にフランクな)タッチで描かれていて、西部劇を思わせる内容になっています。バウンティハンターという仕事は完全にビジネスとして割り切られ、正義の味方などではない事が徹底して描写されているのです。
登場人物は癖のある人間が多く、中でも松田の面倒を見ている加納竜のキャラは印象的です。単なる守銭奴と思いきや、実は誰よりも賞金稼ぎという仕事を理解しており、松田との複雑な関係を熱演していました(特にラストの応酬が見もの)。そして、賞金首を殺してもOKというルールの中、不殺を貫く松田の姿も実にカッコ良かったと思います。
 しかし、出演者の誰よりも圧倒的なインパクトを持っていたのが、第2の賞金稼ぎを演じた的場です。彼は不殺の松田とは真逆のジェノサイダーで、罪人の処刑を楽しむ危険な男。武装は機関銃と刀、そして防弾性の電磁グローブ(『ラスト・キョンシー』で常山が使った物にそっくり!)を所有し、完全に1人だけ出るジャンルが違っています(笑
本作はガンアクションが多く、格闘戦は中盤で行われる松田VS的場のみですが、思ったよりも激しい戦いを見せていました。勝負は銃撃戦から棍棒VS日本刀→格闘戦へと移行し、松田の見事な棒術アクションを見ることが出来ます。さらに2人はラストバトルでも対面する……のですが、松田は倉見を確保しただけで撤退するため、再戦はお預けになってしまいます。
残った的場はバズーカ砲の攻撃を手で受け止めたりと暴れ回るものの、主役が不在なのでいまいち盛り上がりません。このあと松田の見せ場は出てくるものの、やはり最後までラストバトルに参加して欲しかったですね。作品の雰囲気は良かっただけに、ここだけが残念です。


雙輩
英題:Jackie and Bruce to the Rescue/Fist of Death
製作:1982年

●世界を相手に闘った李小龍(ブルース・リー)、そしてコメディ功夫で一世を風靡した成龍(ジャッキー・チェン)。どちらも香港を代表する偉大なドラゴンですが、ファンならずとも一度はこう思ったことがあるはずです…「この2人、戦ったらどっちが強いのか?」
もちろん今となっては叶わぬ夢。李小龍は既に亡く、ジャッキーも随分と年を取りました。この疑問の答えは恐らく永遠に出ることは無いでしょう。しかし、絶対に叶わぬ夢だからこそ、今も多くの人々が思いを馳せているのです。
 ところが、あろうことかその疑問を映画にするという無謀な企画が韓国(と台湾の合作)で立ち上がりました。韓国では、以前にも巨龍(ドラゴン・リー)が主演した『一笑一拳』という同じ題材の大怪作が撮られていますが、本作はあちらほどハジケてはいません。
気になる李小龍役は『死亡遊戯』で李小龍の影武者を演じた唐龍(タン・ロン)が、ジャッキー役は李小明という人が演じています。李小明は別名を程龍といい、羅鋭(アレクサンダー・ルー)の『激突!魔拳塾』でもニセジャッキーに扮した経験を持っているのですが…。

 さて内容についてですが、それほど大したものではありません。精武館の館長がYMCA武館の刺客らしき者たちに殺された。門弟の唐龍は師匠殺しの犯人を探すために動き出し、第三者による巨大な陰謀が動いている事に気付く!……という話ですが、これといって演出にメリハリが無く、非常にユルい出来になっています。
この本筋に李小明が絡むのは開始40分を過ぎてから。それまで深刻なストーリーが続く唐龍サイドに対し、彼の出演パートはコメディ調で描かれていきます。後半にシリアス展開へ突入するものの、かえって作風を統一できておらず、全体的にちぐはぐな印象を残しているのです(ジャッキー作品では絶対にありえない濡れ場を李小明サイドに持ってきているのも×)。
 また、唐龍と李小明のなりきり度はそこそこ高いんですが、アクションシーンは精細を欠いていました。黒幕の腹心を張奔、その手下を白黄基、YMCA武館の門弟を常山、唐龍の兄弟子を韓鷹(イーグル・ハン)が演じてますが、韓鷹以外はみんなロクな見せ場が無いまま退場してしまいます(涙
これら動ける役者を差し置いて行われる最終決戦も実にヒドいもので、バカ映画として突き抜けていた『一笑一拳』の方が遥かに面白いという結果に終わっています。安直に思い付いたネタの安直な映画化…本作はそんな軽はずみな行為を戒める意味を持った作品、だと思いたいです(爆


「キングダム・オブ・ドラゴン 伝説の魂を受け継ぐ者」
原題:WUSHU WARRIOR
中文題:龍武士/武術戰士(←正字は簡体字表記)
製作:2010年

●時は清朝末期。中国でアヘンを売りさばき、知事と結託して武器を密輸していていた大富豪マット・フルーワーは、これらの悪事を告発しようとした牧師を暗殺する。魔の手は牧師の息子にも及ぼうとしたが、アヘン密売を阻止する中国人の人々が彼を無事に救い出した。
父を殺され、不慣れな土地へ避難した牧師の息子は、悲しみの真っ只中にいた。そんな中、彼は避難先の村で武術を習っている子供たちを見て、自分も習おうと決意する。密売阻止団の長老ツァオ・ガンに師事した彼は、凛々しい青年トッド・フェンネルへと成長。その腕前は高いレベルに達していた…が、まだまだメンタル面は未熟であった。
 ある日、敵の本拠地に潜入するという任務に志願したトッドは、見事に重要な書類をゲットして帰還した。だが、逃げ出すのに使った馬車には、マットの娘アンバー・ゴールドファーブがいた。魅力的な彼女に惹かれるトッドだったが、実はこの女はとんでもない性悪娘。トッドを利用して脱走した挙句、毒を使ってツァオに重傷を負わせてしまったのだ。
この一件はトッドと仲間たちの奔走で解決するが、敵に居場所を知られた以上はアジトを引き払うしかない。しかし、復讐に燃えるトッドがマット率いる軍勢に突っ込んだため、彼を助けようとしたツァオが犠牲になった。密売阻止団のリーダーも捕まり、処刑の時が迫る…。内に秘めるドラゴンの力に目覚めたトッドは、仲間と共に決戦へ向かう!

 本作はカナダと中国の合作で作られた作品です。カナダと中国…といっても、舞台は動乱期の中国(アヘン戦争の直前?)であり、中国側からも大勢のスタッフが参加。実際に中国でロケーションも行われており、どこからどう見ても功夫片にしか見えないのです(笑
そのおかげで、間違った中国描写などはほとんど無く、実にまっとうなカンフー映画に仕上がっていました。主人公が、安易に復讐を果たさず精神的な成長を遂げていくという点も大いに評価できます(ヒロインを演じた『ジェイ・チョウを探して』の浦蒲(ポー・ポー)もレベル高し!)。
 しかし本作は、「あまりにもカンフー映画に近付きすぎたせいで、よくあるベタな香港映画にしか見えない」という欠点を抱えているのです。トッドを始めとした外人キャストの動きは悪くないし、格闘映画としては非常に凝ってるんですが……このへんのジレンマは、以前紹介した『Bodyguard: A New Beginning』と非常に似通っていました。
全体的に丁寧な作りですが、その丁寧さがアダになってしまった稀有な作品。…とはいえ、特に出来が悪いわけではないし、それなりのクオリティは維持しています。また、浦蒲の他にも敵の用心棒役で丁小龍(『カンフーハッスル』で陳國坤の手下役だった人)が出ているので、香港映画ファンならチェックしてみるのも一興かもしれません。


「ドラゴンファイト」
原題:龍在天涯
英題:Dragon Fight
製作:1989年

▼新年あけましておめでとうございます!お久しぶりです、ようやく帰ってまいりました。今日から当ブログも再始動いたしますので、今年もどうぞ宜しくお願いいたします。
さて、2012年は辰年…いわゆるドラゴン・イヤーです。そこで今回は、龍の名前を冠している本作を紹介したいと思います。この作品は、李連杰(ジェット・リー)が少林寺映画でデビューした後、ワイヤー功夫片で再ブレイクする前の不遇時代に撮られた作品です。
当時、李連杰は慣れない現代劇に挑戦していましたが、ことごとく失敗が続いていました。初の監督作『ファイナルファイター/鉄拳英雄』も玉砕し、本作も残念な結果に終わっています。しかし、この作品は李連杰に様々な出会いをもたらしているのです。

■中国雑技団の団員・李連杰は、兄弟子の狄威(ディック・ウェイ)らと共にアメリカで公演を行っていた。ところが帰国の日に狄威が亡命騒ぎを起こしたため、とばっちりを受けた李連杰も警察に逮捕されてしまう。
その後、李連杰は在米中国人の周星馳(チャウ・シンチー)に助けられ、彼の家に居候することになった。一方、狄威は麻薬組織の一員となって頭角を現していた。のちに李連杰と再会した彼は、帰国の手配すると言ってくれた…のだが、組織の親分は狄威の台頭を快く思ってはいなかった。
 親分は狄威による麻薬取引の情報を警察へ漏らし、彼を失脚させようと企んだ。そして取引現場を警官隊が襲撃し、肝心の麻薬は偶然居合わせた周星馳の手に渡ってしまう。彼は麻薬を売って借金を返済しようとするが、狄威はこれを李連杰による妨害工作と判断。例の親分は粛清され、狄威は組織のボスからヤクを取り戻せと命令されるのだが…。
ところがアクシデントで麻薬が消え、周星馳は窮地に陥ってしまう。異変に気付く李連杰だが、全てが手遅れだった。周星馳とその叔父は狄威に殺され、李連杰は危ないところを知り合いの利智(ニナ・リー)に助けられた。もはや和解の道はない。復讐に燃える李連杰と、破滅に向かう狄威…2人の戦いが、今始まる。

▲常に暗いイメージが付きまとう作品で、正直言ってあまり面白いものではありません。周星馳は最終的に血まみれになって殺されるし、利智の扱いも小さめ。人死にもやたら多く、同じアメリカロケで明るい作風に徹していた『ハード・ブラッド』とは完全に真逆の内容となっていました。
とはいえ、本作で李連杰は有名悪役スターである狄威と対戦し、ブレイク前だった周星馳と絡み、そして後に自分の妻となる利智とも共演しています。作品自体はいまいちな出来ではあるものの、李連杰本人にとっては充実した出会いの場となったはずです(特に李連杰と周星馳のツーショットは実に貴重です)。
また、本作では珍しく狄威が武術指導を担当していて、所々でハードな肉弾戦が演じられています。終盤での李連杰VS狄威のタイマン勝負、そしてマフィアが介入する三つ巴の死闘は、本作最大の盛り上がりを見せていました。これで陰惨すぎる展開でなければ良かったのですが……。


「戦国水滸伝/嵐を呼ぶ必殺剣」
原題:追命槍
英題:The Desperate Chase/Blood of the Dragon
製作:1971年

▼今回は久々となるジミー先生の主演作を紹介します。どれだけ久々かと言いますと、前回(『不死身の四天王』)の紹介から実に1年近くも経過していました(爆)。ここ1~2年は格闘映画ばかりに執着していたので、来年からはちゃんと大スターの主演作も取り上げていきたいと思っています。
さて本作は、ジミー先生がショウブラからゴールデンハーベストへ移籍した頃の作品で、日本では劇場公開もされています。監督は元女優の高寶樹で、ジミー作品の常連である龍飛(ロン・フェイ)も出演。ジミー先生は槍を得物とする凄腕の武芸者を堂々と演じています。

■名うての侠客・ジミー先生は、天下無敵の追命槍の使い手。今日も田野からの挑戦を退け、「命までは取らんさ!」と高らかに笑いながら引き上げていた。同じ頃、ある重要書類を携えた男女が龍飛の一団に襲撃を受けていた。女は殺され、男も重症を追ったまま逃走。彼は乞食の少年・游龍にそれを託して絶命する。
游龍は姉の焦[女交]にそのことを話すが、龍飛が現れて「書類を渡せ」と迫った。そこへ居合わせたジミー先生が介入し、どうにか2人は事なきを得た。だが、書類はしかるべき場所に届けないといけない…そこで焦[女交]は、ジミー先生に「游龍と一緒に書類を届けてくれないかしら」と依頼。かくして、少年と侠客の2人旅が始まるのだった。
 すぐに書類はあるべき場所へ届けられたが、そこには田野の息子・楊洋が待っていた。彼は「父はお前に殺された」と言う(どうやら田野は自害したらしい)。命まで奪っていないジミー先生は困惑するが、その隙を狙った一撃が彼の背中を裂いた。重傷を負ったジミー先生はなんとか逃げ出し、書類が反政府組織?の物であると知るのだった。
龍飛のボスである苗天、その仲間で政府高官?の易原が動き出す中、ジミー先生らは焦[女交]の元へと向かう。しかし、彼女のいる茶店には苗天の魔手が伸びていた。一行は茶店に立てこもるが、このままでは全滅も時間の問題だ。
のちに楊洋と和解したことでジミー先生の傷は癒えたが、敵は圧倒的な物量で攻めてきた。1人残ったジミー先生は、最後の戦いに全てを賭ける!

▲武侠として生き、武侠として殉じていく男を描いた逸品です。とにかく本作の魅力は女性や子供に優しく、どんな時も頼りになるジミー先生のキャラクターそのものにあります。どのカットでも非常に格好よく撮れているので、ショウブラ時代の頃と比べても遜色はありません。
物語は後半から茶屋へ篭城する展開となり、限定的なシチュエーションの中で様々なイベントが発生します。なんとなく西部劇を思わせる流れですが、最後まで一気に見られる勢いに満ちており、今回も高寶樹の演出力には唸らされてしまいました。
 また、アクション面でも本作は高い完成度を保っていて、クライマックスの15分以上にわたる決戦は壮絶の一言に尽きます。大勢の敵に対し、まだまだ体調は万全ではないジミー先生…しかも茶屋の中には焦[女交]たちがいるため、敵の侵入も許せないという逆境だらけの状況で彼は戦います。
しかも敵の総大将・易原は九節鞭に変形する蛇腹剣(ガリアンソードの元ネタ!?)を駆使する強敵です。果たしてジミー先生はどう戦い抜くのか?衝撃的なラストシーンを含め、見る者に強烈な印象を与える作品。文句なしの傑作です!