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続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「水滸伝 決戦!白龍城」
「水滸伝 激戦!白龍城」
原題:李逵傅奇/黒旋風李逵
英題:Shui Hwu Legend/Black Whirlwind Li Kui
製作:2000年(1999年説あり)

●時は中国北宋時代の末期。黒旋風の異名で鳴らした豪傑・徐錦江(チョイ・カムコン)は、盗賊退治で賜った報奨金を哀れな未亡人・張[ロ含]に渡した。病弱な母親のため、彼は残った金で人参を買おうとするが、薬屋に安物の野草を掴まされてしまう。
その後、悶着を起こした徐錦江は出奔。江州で張[ロ含]と再会し、彼女の店に身を寄せる事となる。また、牢番の王建軍に気に入られて仕事を工面してもらったり、役人の林威(デビッド・ラム)と友情を築くなど、先行きは順風満帆に見えた。
 そんな中、江州の牢獄に梁山泊の中心人物・馬冠英が連行されてきた。徐錦江は王建軍を通じて彼と知り合うが、一方で純真さゆえに張[ロ含]の女心を理解できず、彼女を深く傷つけてしまう。
この状況に内心ほくそ笑んだのは、最初から張[ロ含]に目を付けていた林威だった。彼は2人の間を巧妙に立ち回り、徐錦江を言いくるめて自分と彼女の結婚を了承させた。だが、張[ロ含]は未だに徐錦江を慕っており、激怒した林威は何度となく暴力を振るった。
 さらに林威は、馬冠英が酔いに任せて書いた詩を謀反の証拠とし、梁山泊に助力を仰いだ王建軍ともども逮捕してしまう。徐錦江も捕縛され、刑場に引きずり出された馬冠英と王建軍の命運もこれまでか…と思われたその時、梁山泊の仲間たちが駆けつけた!
なんとか間に合った徐錦江の加勢もあり、江州からの脱出に成功した梁山泊一同。だが、張[ロ含]を助けに舞い戻った徐錦江の前に、卑劣な林威が立ちはだかる。果たして、決戦の結末は…!?

 本作は歴史小説「水滸伝」をベースにした中国映画ですが、監督を『酔拳』の助監督だった蕭龍が担当し、徐錦江や林威など香港映画系のキャストが名を連ねています。
徐錦江といえば、香港映画ではアクの強いキャラクターに扮することが多く、そのインパクトは唯一無二。憎々しい看守や驚愕のポコチン頭など、ファンキーな役柄を数多く演じてきました。
そんな彼が、本作では粗野だけど義に厚い熱血漢・李逵を好演。ヒロインとのロマンスや斧を使ったアクションなど、いつもの徐錦江らしからぬ堂々としたヒーローっぷりを見せています(李逵の性格設定はややマイルドに改変されているようですが)。
 これだけでも香港映画迷は一見の価値あり!…と言えなくもありませんが、一方でストーリーは華やかさに欠けていました。確かに起承転結こそしっかりしているものの、作りが大人しすぎて面白味が薄まっているのです。
これが香港映画なら勇壮なBGMをバンバン流し、豪快な殺陣が展開され、素っ頓狂なギャグで彩られたでしょう。しかし本作にはそうしたエンタメ成分が不足しており、話が進んでも一向に盛り上がりません。
また、ドラマ面では宋江(馬冠英)や戴宗(王建軍)が単純なミスでピンチに陥るため、梁山泊がとても頼りなさげに見えてしまいます。ただし、こちらは原典に準じた展開のようなので、ここは割り切って受け入れるのが正解なのかもしれません。

 アクションについても先述の通り、規模としてはボチボチ止まり。最後の徐錦江VS林威は落下スタントを交えて頑張っていますが、際立って凄いようなバトルではありません。
中国武術チャンプの王建軍、孫二娘役の高原圭子(現在は染野行雄氏の秘書として活動している模様)は健闘しているものの、それぞれの担当するファイトシーンが短く、やや消化不良な結果に終わっています。
 私としては徐錦江が王建軍と組み、林威と知事役の杜玉明(末期の張徹作品に出演。現在も活躍中の武打星)を相手に2VS2のバトルを挑むかと思っていたので、これにはちょっと肩透かしを食らってしまいました。
作品としては薄味ですが、徐錦江によるヒーロー映画という意外性が大きな一品。ちなみに余談ですが、日本版ビデオは監督の欄にプロデューサーの名前を誤記したり、パッケージを飾っているのが王建軍だったりと、かなりアバウトな作りになっています(苦笑


「ドーベルマン・コップ」
原題:東方巨龍
英題:Ninjas, Condors 13/Knight Revenger/Ninja Condors
製作:1987年(1988年説あり)

●改めまして、新年明けましておめでとうございます! 去年は連続特集に追われて大忙しでしたが、今年はのんびりマイペース(でも更新はコンスタントに)に戻っていこうと思っています。
さて今年最初の更新は、戌年にちなんで犬にまつわる作品を紹介…したかったのですが、目ぼしい犬関連のタイトルはとっくの昔に紹介済み。なんとかコレクションを漁って出てきたのは本作だけでした(苦笑
 この作品は、台湾ニンジャ映画の代表格・羅鋭(アレクサンダー・ルー)の主演作で、こんな邦題ですが正真正銘のニンジャ映画です。キャストやスタッフも、そのほとんどが過去の羅鋭作品に関わった面々で構成されています。
ストーリーは父親を殺された主人公が暗殺組織に拾われ、足抜けを図って壮絶な死闘を展開するというもの。いわゆる“抜け忍”的な話ですが、よくよく考えると荒唐無稽な台湾ニンジャ映画の中では、最も本来の忍者に近いスタイルの作品なのかもしれません。
 しかし全体的に演出が粗く、人物関係の描き方はとても大雑把です。特に中盤でユージン・トーマスと羅鋭が初めて出会うシーンでは、適当な台詞回しのせいで2人がまったく初対面に見えないという珍事が起きていました。
とはいえ、羅鋭とユージンによるロードムービー的な要素は悪くないし、ストーリーも停滞せずテンポよく進みます。相変わらず血がドバドバ出てくる作風ではありますが、お色気シーンは控え目なのでクドさは感じませんでした。

 そして本作の売りとなるニンジャ・アクションですが、こちらもワイヤーワークや爆破スタントなどで彩られており、ハイテンションな立ち回りが堪能できます(武術指導は暗殺組織のナンバー2にも扮している李海興(アラン・リー)が担当)。
キビキビとした羅鋭の拳技、豪快な蹴りで迫るユージンに加え、組織のボスを演じたジョージ・ニコラスや師匠役の龍世家(ジャック・ロン)も大暴れ! ニンジャ的な立ち回りだけでなく、素面での格闘アクションも充実しています。
 一方、遊園地やスケートリンクでのニンジャ対決は実にシュールでしたが(笑)、クライマックスでは組織のアジトを舞台に銃撃戦が繰り広げられ、銃弾と手裏剣が飛び交う賑やかなアクションが炸裂していました。
最後は羅鋭VSジョージ、ユージンVS李海興の濃い肉弾戦がこれでもかと続き、アクション的にはとても満足のいく内容だったと思います(ただし、このラストバトルではニンジャ的なギミックが一切出てこないので、人によっては物足りなさを感じるかも)。
 全体に漂う安っぽさは払拭できないものの、最後まで一気に見られる勢いに満ちた作品。いまだに羅鋭作品には未開拓の部分がありますが、2018年はそうした未踏の作品にも着目しつつ、円滑なブログ運営を心掛けたいと考えています。
…ところで、主人公の羅鋭はニンジャの殺し者という役どころなんですが、邦題のドーベルマン・コップって誰のことなんでしょうか?(爆


「ドラゴン修行房」
原題:虎鶴雙形/少林虎鶴震天下
英題:Tiger & Crane Fists/Savage Killers
製作:1976年

●今日は12月26日。世間では華やかなクリスマスが終わり、大晦日と元旦が間近に迫りつつありますが、当ブログでは相変わらず王羽(ジミー・ウォング)作品一色のまま。季節感ゼロの記事を黙々と更新しています(爆
…なんだか色々と間違っている気がしますが、ここまで来たからには最後まで完走するしかない! というワケで、ついに本日をもってジミー先生特集は最終回となりました。そこで今回はラストに相応しく、彼の代表作のひとつをご紹介いたします。
 時は70年代中盤、李小龍(ブルース・リー)の死去によって功夫片は下火となりました。しかし功夫片そのものは定期的に作られ、『少林虎鶴拳』や『少林寺/怒りの鉄拳』が当時の年間興収ベストテンに食い込んでいます。
中でも劉家良(ラウ・カーリョン)の躍進は著しく、かつてのパートナーだった大導演・張徹(チャン・ツェ)を尻目にヒット作を連発。確かな知識と技量に裏打ちされた名作の数々は、功夫片の在り方を大きく変えていきました。

 特に注目されたのが練功(修行シーン)の描写で、従来の功夫片とは異なった明快な表現、そして有無を言わさぬ説得力に満ちています。劉家良は練功を突き詰め、のちに修行がメインとなる傑作『少林寺三十六房』を作り上げました。
かくして練功は功夫片にとって重要なファクターとなり、張徹も『少林寺列伝』等で対抗。その後、こうした真面目な修行シーンへのアンチテーゼとして『蛇拳』『酔拳』が誕生するのですが、この流行はジミー先生の耳にも当然入っていました。
とはいえ、張徹や劉家良にカンフーの知識で勝てるはずもありません。しかし彼は武術指導と共演に劉家榮(リュー・チャーヨン)、脚本に『少林虎鶴拳』も手掛けた倪匡(ニー・クァン)を迎え入れ、本格的(?)な功夫片を監督するのです。

 さて本作は、仲違いした鶴拳と虎拳の拳士が反目しあいつつ、武術界の制覇を目論む強敵に立ち向かうという王道路線のストーリーとなっています。が、王道を王道で終わらせないのがジミー流。相変わらず今回もツッコミどころ満載の作風となっていました(笑
まず問題となるのがジミー先生のアクションで、今まで勢いだけで立ち回りをこなしていた彼も、本作の複雑な殺陣には相当苦戦したものと思われます(あと武術指導の劉家榮も)
 おかげで劇中のアクションシーンはシリアスなのに和める出来となっていますが、そこはジミー先生のライバル役である劉家榮や、いぶし銀の魅力を見せる陳慧樓(チェン・ウェイロー)が見事にフォローしています。
ただし王道路線のストーリーといっても、主役以外のキャストは引き立て役が基本。劉家榮は最後まで反目したまま死亡し、その恋人だった謝玲玲(ツェ・リンリン)も即効でジミー先生に乗り換えていました(苦笑

 とはいえ、劉家榮は準主役としてしっかり目立っていたし、その他のキャストも個々で熱演を見せています。ラスボスとして立ちはだかる龍飛(ロン・フェイ)についても、その仰々しい存在感はかなりのものでした。
さて、ここで気になってくるのは練功系の功夫片に対し、ジミー先生がどのようなアプローチを試みたのかという点です。本作を監督するにあたり、彼が手本としたのは劉家良の『少林虎鶴拳』だったのではないでしょうか。
 虎鶴雙形という名称、敵の弱点をピンポイントに突く展開などは、同作に関わった劉家榮や倪匡から着想を得たと考えられます。「だが自分は練功について劉家良ほど熟知していない」…そのことを痛感していたジミー先生は、ここで思い切った決断を下しました。
まず修行シーンでは凝った演出を無理に描かず、敵の弱点を突くだけのシンプルな案を採用。敵の弱点も固定された鋲にするなど、徹底的な簡略化を図ります。そして武術の技巧ではなく、いつものアイデア勝負でバトルを征してしまうのです。
 一見すると扱いきれないテーマから目をそらし、自分の得意を押し付けただけに見えるかもしれません。ですが、中途半端に迎合して失敗するよりも、自身のホームグラウンドに引き込んで納得のいく仕事を貫くことにジミー先生は賭けたのでしょう。
これまで練功をメインにした功夫片は数多く作られています。が、練功という要素を自分の色で染め上げ、強引に上書きすることで自らのアプローチとした作品は、他に例がありません。まさに本作はジミー先生だからこそ作れた逸品と言えます。

 天皇巨星・王羽。彼の出演した作品はいかがわしさに満ち、アイデアにあふれ、唯一無二の魅力を誇っています。そのスタイルはバラエティに富み、世界からカルト的な支持を得ていましたが、現在は病床に伏せっているとの事です。
もしジミー先生が退院したとしても、かつてのようにアクションが出来るのか、そもそも日常生活を無事に送れるのかは解りません。しかし、近年も『捜査官X』や『失魂』などで高い評価を得ており、彼のバイタリティーが未だに尽きていないことは明白です。
だからこそ私は信じています。いつの日か銀幕に再臨し、かつてと変わらぬ眼光で後輩たちに睨みをきかせるジミー先生――もとい、天皇巨星・王羽(ジミー・ウォング)の勇姿を!
…2017年を通して始まった10の特集、および王羽十選は今回で終わりますが、きっと彼の伝説は終わらないはずです。ジミー先生の一日も早い回復を祈りつつ、これにて今年最後となる作品紹介の締めにしたいと思います。(特集、終わり)


獨臂侠大戰獨臂侠/獨臂刀大戰獨臂刀
英題:One Arm Chivalry Fights Against One Arm Chivalry/Point the Finger of Death
製作:1977年

●天皇巨星と呼ばれ、良くも悪くも香港の映画界を賑わせてきた王羽(ジミー・ウォング)。彼の役者人生は50年以上に及びますが、“あの傑作”と出会っていなければ今のジミー先生は存在しなかったかもしれません。
その作品こそ、彼を一躍スターダムへと押し上げ、張徹(チャン・ツェ)監督の名を知らしめた『片腕必殺剣(獨臂刀)』です。ジミー先生のスター性と張徹の演出、そして華麗な立ち回りによって『片腕必殺剣』は記録的なヒットを記録しました。
 同作はジミー先生の原点ともいえる作品となり、台湾に渡ってからは功夫片としてリメイクした『片腕ドラゴン』を製作。勝手にシリーズを展開し、2代目獨臂刀の姜大衛(デビッド・チャン)を引っ張り出した珍作『獨臂雙雄』にも出ています。
この当時、ジミー先生は『片腕ドラゴン』の続編となる『片腕カンフー対空とぶギロチン』を監督し、ちょっとした片腕ラッシュ状態となっていました。そしてこの『片腕カンフー~』において、彼はある人物と出会います。

 『片腕カンフー~』は武術指導を香港で活躍していた劉家良(ラウ・カーリョン)に依頼し、無理を押して登板してもらったという事情があります。その見返りなのか定かではありませんが、ジミー先生は劉家班の劉家榮(ラウ・カーウィン)を擁立するのです。
劉家榮は劉家良の実弟で、劉家班の主要メンバーであると同時に監督としての才覚も持ち合わせた、実に器用な人物でした。とはいえ、所属するショウ・ブラザースでは活躍の機会が巡ってこず、必然的に外部の会社で経験を積まざるを得なくなります。
 ジミー先生に劉家榮が預けられたのは、少しでも活躍の場を与えたかった劉家良の采配(或いは劉家榮自身の判断)だったのでしょう。かくして劉家榮はジミー先生と肩を並べ、主演スターとして本格的なキャリアをスタートさせました。
本作はそんな2人が組んでいた時期の作品で、劉家榮はジミー先生と並び立つ“もう1人の獨臂刀”という大抜擢を受けています。ただし作品自体は『片腕必殺剣』と無関係で、『獨臂侠大戰獨臂侠』という微妙なタイトルがそれを暗に示しています。

 物語は、反清復明を掲げる光華會に所属するジミー先生が片腕を失い、仲間殺しの濡れ衣を着せられるというシリアスなもの。この殺害された仲間というのが清朝の内通者で、連中に家族を殺された劉家榮(こちらも片腕剣士)が方々で辻斬りを繰り返します。
同じく内通者の光華會幹部・梁家仁(リャン・カーヤン)が暗躍する中、劉家榮は知らぬ間に生き別れた弟(喜翔)と再会するのですが、光華會を混乱させた遠因となったため、ジミー先生と刃を交えることに……。
 ここに華山派で心強い味方となる王冠雄、全ての黒幕である皇帝・龍飛(ロン・フェイ)も加わり、最後の戦いが幕を開けます。ただし演出にキレがなく、せっかく面白くなりそうな要素が幾つもあるのに、それらが全て消化不良に終わっているのです(爆
ジミー先生はただ強いだけで特徴に乏しく、それ以外のキャラクターも月並みな人物設定に留まっているので、あまり奥行きが感じられません。ロケ地も閑散とした野原や山道ばかりとなっており、それが本作の粗末さをさらに助長させていました。
 しかし、アクションは劉家榮自身が受け持っているため、それなりに趣向を凝らしたファイトが楽しめます。2人の片腕剣士は刀に限らず、素手での戦いも得意なので殺陣のバリエーションもなかなか豊富です。
ラストは武器同士によるジミー先生VS龍飛、素手同士による劉家榮VS梁家仁という異なる特色のバトルが堪能できますが、そこへ至る展開も実に淡泊。本当に素材だけは良いのに、つくづくストーリーの煮え切らなさが惜しまれます。

 ジミー作品らしいツッコミどころはあるものの、彼の魅力が出し切れたとは言い難い作品。やはりここはジミー先生直々にメガホンを取って欲しかったところですが、実は劉家榮とのコラボでその条件を満たした映画が1本だけ存在します。
果たして、彼が手掛けた真骨頂ともいえる作品の実態とは? 次回、長いようであっという間だったこの特集もこれでラスト…今年最後の作品紹介にして、我らが天皇巨星の本領を発揮した快作に迫ります!


驚天動地/秋瑾/大漢英豪
英題:Dragon Fist/Chow Ken/Fury of King boxer
製作:1972年

●清朝末期、中国で革命の父と呼ばれた孫文に賛同し、動乱の時代に散った1人の女傑が存在します。その名は秋瑾――血気盛んな女性革命家で、明治時代の日本に留学して中国同盟会に参加。のちに浙江省での蜂起が失敗し、31歳の若さで処断されました。
彼女の壮絶な生涯は何度も映画化されており、2011年には黄奕(クリスタル・ホアン)主演の歴史アクション『秋瑾 ~競雄女侠~』が公開され、新たな秋瑾像が作られました。
 しかし、それより39年前に秋瑾を題材にした功夫片が、台湾のファースト・フィルム(香港第一影業)で製作されていたのです。本作は主人公の秋瑾を郭小荘が演じ、王羽(ジミー・ウォング)ことジミー先生とダブル主演を飾っています。
監督は台湾映画界の名匠として数々の作品に関わった丁善璽が担当。彼はジミー先生と何度もタッグを組んでおり、後年の主演作である『ジョイ・ウォンの妖女伝説』も監督していますが、今回は冗談抜きのシリアスな作風を徹底していました。

 ストーリーは義和団事件で揺れる中国からスタート。既に革命家として一目置かれていた彼女が日本に留学し、現地の革命勢力と手を結び、上海に渡って中国女報を創刊…といった具合に、おおむね史実通りの物語が進みます。
劇中では当時の世情が反映され、実在の烈士や大臣たちも登場しています。ジミー先生は革命家の徐錫麟を演じていて、本作では郭小荘をバックアップするために捨て身で戦う、相棒のようなキャラクターとなっていました。
 他にも、同じく革命家で闘死する陳伯平に謝興(武術指導も兼任)が、革命を阻む謎の男・劉光漢(劉師培)に安平が、徐錫麟に討たれた政府高官の恩銘に易原が扮しています。
後半からは史実と同じく、一斉蜂起の機を誤った(劇中では易原の思わぬ行動により計画を急きょ変更した?という設定)ジミー先生が、決死の覚悟で政府軍へ挑む展開に。このあたりは完全に彼の独壇場と化しており、獅子奮迅の闘いが見られました。
 革命家たちが辿る最期も事実に即しており、この徹底した忠実さからは丁善璽による気合の入れようが見て取れます。しかし事実と異なる部分もあり、映画的な脚色をされているパートもあります。
例えば、wikiによると秋瑾とは不仲だった夫・王廷鈞(演者は江明)とのロマンスが用意されており、立場や意思の違いで想いがすれ違うという切ないシーンがあります。
また、史実では抵抗する間もなく政府に捕まった秋瑾が、本作のラストでは大立ち回りを披露。逆にカットされた箇所もあり、かの魯迅も目撃したという留学生相手に激情し短刀を机に突き立てたエピソードは割愛されていました(これは見たかったなぁ)。

 さてアクションについてですが、こちらは郭小荘とジミー先生の両方に万遍なく用意されており、テンションの高い殺陣が随所で見られます。動員されたキャストやセットの規模も、従来のファースト・フィルム作品に比べて破格のスケールとなっていました。
憲兵隊との乱戦、連合国軍の用心棒たちとの戦い(ここだけ若干ジミー作品っぽい)も悪くありませんが、注目すべきは主役2人による最終決戦です。どちらの戦いも壮絶極まりないものとなっていますが、特にジミー先生のラストバトルは見応えがあります。
 ジミー先生は学堂の式典で仲間たちと決起し、大勢の護衛に守られた易原を討つべく奮戦! 謝興に加え、実在の革命家・馬宗漢も加勢するんですが、なんとそれを演じているのが山茅(サン・マオ)なのです。
山茅といえば、ジミー先生の舎弟にして彼の主演作の常連俳優。同じ舎弟の龍飛(ロン・フェイ)に比べると、中ボスや噛ませ役を宛がわれることが多い傾向にあります。
 そんな彼が、本作では主人公の味方を演じたばかりか、この一戦では肩を並べて共闘! ともに蜂起の計画を練り、仲間たちが死にゆく中でも必死に戦い、重傷を負ってもなお立ち上がろうとするなど、かなりの熱演を見せているのだから堪りません。
ジミー先生も上へ下へと駆け回り、政府高官なのにやたらと強い易原を倒し、さらに大勢の兵士を相手に戦い続けます。郭小荘が短刀を手に戦うラストバトルも見事なんですが、個人的には12分以上に及ぶジミー先生の大激闘の方が好みでした。

 重厚なストーリーに圧倒され、入魂のアクションに見入ってしまう骨太な傑作。のちに数々の戦争大作を任され、『プロジェクトA』へ参加したのも納得できる丁善璽の代表作…といっても過言ではないでしょう。
とはいえ、ここ数日はジミー先生特集なのに真面目な作品ばかりが続き、ちょっとダレてきてしまいました(爆)。この特集も終わりが近づいてきたので、次回はいつもの彼らしいバラエティに富んだ作品をピックアップいたします!