
驚天動地/秋瑾/大漢英豪
英題:Dragon Fist/Chow Ken/Fury of King boxer
製作:1972年
●清朝末期、中国で革命の父と呼ばれた孫文に賛同し、動乱の時代に散った1人の女傑が存在します。その名は秋瑾――血気盛んな女性革命家で、明治時代の日本に留学して中国同盟会に参加。のちに浙江省での蜂起が失敗し、31歳の若さで処断されました。
彼女の壮絶な生涯は何度も映画化されており、2011年には黄奕(クリスタル・ホアン)主演の歴史アクション『秋瑾 ~競雄女侠~』が公開され、新たな秋瑾像が作られました。
しかし、それより39年前に秋瑾を題材にした功夫片が、台湾のファースト・フィルム(香港第一影業)で製作されていたのです。本作は主人公の秋瑾を郭小荘が演じ、王羽(ジミー・ウォング)ことジミー先生とダブル主演を飾っています。
監督は台湾映画界の名匠として数々の作品に関わった丁善璽が担当。彼はジミー先生と何度もタッグを組んでおり、後年の主演作である『ジョイ・ウォンの妖女伝説』も監督していますが、今回は冗談抜きのシリアスな作風を徹底していました。
ストーリーは義和団事件で揺れる中国からスタート。既に革命家として一目置かれていた彼女が日本に留学し、現地の革命勢力と手を結び、上海に渡って中国女報を創刊…といった具合に、おおむね史実通りの物語が進みます。
劇中では当時の世情が反映され、実在の烈士や大臣たちも登場しています。ジミー先生は革命家の徐錫麟を演じていて、本作では郭小荘をバックアップするために捨て身で戦う、相棒のようなキャラクターとなっていました。
他にも、同じく革命家で闘死する陳伯平に謝興(武術指導も兼任)が、革命を阻む謎の男・劉光漢(劉師培)に安平が、徐錫麟に討たれた政府高官の恩銘に易原が扮しています。
後半からは史実と同じく、一斉蜂起の機を誤った(劇中では易原の思わぬ行動により計画を急きょ変更した?という設定)ジミー先生が、決死の覚悟で政府軍へ挑む展開に。このあたりは完全に彼の独壇場と化しており、獅子奮迅の闘いが見られました。
革命家たちが辿る最期も事実に即しており、この徹底した忠実さからは丁善璽による気合の入れようが見て取れます。しかし事実と異なる部分もあり、映画的な脚色をされているパートもあります。
例えば、wikiによると秋瑾とは不仲だった夫・王廷鈞(演者は江明)とのロマンスが用意されており、立場や意思の違いで想いがすれ違うという切ないシーンがあります。
また、史実では抵抗する間もなく政府に捕まった秋瑾が、本作のラストでは大立ち回りを披露。逆にカットされた箇所もあり、かの魯迅も目撃したという留学生相手に激情し短刀を机に突き立てたエピソードは割愛されていました(これは見たかったなぁ)。
さてアクションについてですが、こちらは郭小荘とジミー先生の両方に万遍なく用意されており、テンションの高い殺陣が随所で見られます。動員されたキャストやセットの規模も、従来のファースト・フィルム作品に比べて破格のスケールとなっていました。
憲兵隊との乱戦、連合国軍の用心棒たちとの戦い(ここだけ若干ジミー作品っぽい)も悪くありませんが、注目すべきは主役2人による最終決戦です。どちらの戦いも壮絶極まりないものとなっていますが、特にジミー先生のラストバトルは見応えがあります。
ジミー先生は学堂の式典で仲間たちと決起し、大勢の護衛に守られた易原を討つべく奮戦! 謝興に加え、実在の革命家・馬宗漢も加勢するんですが、なんとそれを演じているのが山茅(サン・マオ)なのです。
山茅といえば、ジミー先生の舎弟にして彼の主演作の常連俳優。同じ舎弟の龍飛(ロン・フェイ)に比べると、中ボスや噛ませ役を宛がわれることが多い傾向にあります。
そんな彼が、本作では主人公の味方を演じたばかりか、この一戦では肩を並べて共闘! ともに蜂起の計画を練り、仲間たちが死にゆく中でも必死に戦い、重傷を負ってもなお立ち上がろうとするなど、かなりの熱演を見せているのだから堪りません。
ジミー先生も上へ下へと駆け回り、政府高官なのにやたらと強い易原を倒し、さらに大勢の兵士を相手に戦い続けます。郭小荘が短刀を手に戦うラストバトルも見事なんですが、個人的には12分以上に及ぶジミー先生の大激闘の方が好みでした。
重厚なストーリーに圧倒され、入魂のアクションに見入ってしまう骨太な傑作。のちに数々の戦争大作を任され、『プロジェクトA』へ参加したのも納得できる丁善璽の代表作…といっても過言ではないでしょう。
とはいえ、ここ数日はジミー先生特集なのに真面目な作品ばかりが続き、ちょっとダレてきてしまいました(爆)。この特集も終わりが近づいてきたので、次回はいつもの彼らしいバラエティに富んだ作品をピックアップいたします!