続・功夫電影専科 -43ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


佛都有火/佛家小子
英題:The Boxer from the Temple
製作:1979年

●ある日、少林寺の前に1人の赤ん坊が捨てられていた。不憫に思った館長は、この子を寺で育てる事を決める。それから十数年が経ち、赤ん坊はやんちゃ坊主の呉元俊へと成長した。
功夫が習いたくて仕方ない呉元俊は、館長の計らいで十八羅漢拳の修行を受ける。しかし兄弟弟子とトラブルを起こしたため、彼は一時的に寺から追い出されてしまう。
 その後、呉元俊はとある小さな町に流れ着き、悪事を働く關鋒の一派を追い払った。町の人々に賞賛された彼は食道の店主となり、關鋒の経営する娼館から逃げてきた黄薇薇を保護。關鋒一派の反撃をいなしつつ、程なくして呉元俊は彼女と結ばれた。
だが、關鋒一派が殺し屋の劉鶴年を呼び寄せたことで、事態は急変する。劉鶴年によって黄薇薇とその弟、さらには呉元俊の部下だった劉晃世までもが殺されたのだ。激怒する呉元俊は、下山する際に館長から言われた戒めを破り、復讐に燃えるが…。

 本作はショウ・ブラザーズがコメディ功夫片ブームにぶつけた便乗作の1つですが、終盤で思いっきり失速してしまった作品です。
ストーリーは典型的なコメディ作品のパターンで、途中から主人公がヒロインと結婚するという、ほんわか幸せなシークエンスへと突入します。このへんの和やかな雰囲気は悪くありませんが、劉鶴年が登場した途端に陰惨な方向へとシフトしてしまいます。
 「積み重ねた雰囲気を壊して血生臭い展開に走る」…これと同様の作風を持った作品に『癲螳螂』(伝説の大怪作)がありますが、本作はそこまで鮮烈な印象は残せておらず、単に後味が悪いだけの作品と化しています。普通にコメディに徹していれば亜流なりに面白くなっていたはずなのに…。
ショウブラ作品なのでセットやエキストラは豪勢ですが、作品自体がこんな出来なので援護には至らず。これまで取り上げてきたショウブラ産コメディ功夫片の中でも、本作は特にマズい出来だったと思います。
 一方の功夫アクションについても、袁和平(ユエン・ウーピン)を意識した…というかマネた立ち回りを見せていて、やや個性に欠けていました。しかし、クライマックスでコメディ色が無くなると同時に、作中のアクションは一段と激しさを増していきます。
 ザコの棍棒をかわし、蹴り技を放つ劉鶴年を跳ね除け、最後は扇子を振るう關鋒と激突!この一連のファイトシーンでは、七小福出身である呉元俊の伸びやかな動きが生かされ、華麗な激闘が繰り広げられていました。
この他にも、本来は武術指導家である劉晃世や黄薇薇も活躍するのですが、コメディ演出をやめた途端にアクションレベルが上がるとは、なんとも皮肉な話です(ちなみに武術指導は本家『酔拳』の徐蝦と、ショウブラ系の元&徐發)。
とはいえ、本作が失敗作であることに変わりはありません。同じ羅馬(ロー・マ)の監督作なら、私は『唐山五虎』のほうが好きですね。


「ガーディアン・エンジェル」
原題:GUARDIAN ANGEL
製作:1994年(93年説あり)

●刑事のシンシア・ラスロックは、同僚で恋人のマーシャル・ティーグと共に偽札事件を追っていた。しかし、偽札製造の主要メンバーだったリディ・デニアを逮捕するものの、彼女によってマーシャルが殺されてしまう。
それから半年後、恋人の死をきっかけに警察を辞めたシンシアは、1人でボディガードの仕事をしていた。ある日、実業家のダニエル・マクヴィカーから警護の依頼が舞い込んできた。実は彼はリディの元恋人であり、刑務所を脱獄した彼女に狙われているというのだ。
 シンシアは依頼を拒もうとするが、成り行きからダニエルのガードを担当する事となる。そのころ、リディは逮捕された際に消えた偽札の原版を血眼で探していた。どうやら原版はダニエルの元にあるらしいが…。
果たして原版の行方は?そしてダニエルに惹かれつつあるシンシアの想いは?予期せぬ敵が姿を現す中、最後の戦いの幕が切って落とされる!

 前回に引き続き、今回もリチャード・W・マンチキンがPMエンターテイメントで監督した作品の登場です。本作は格闘シーンに偏重しすぎた『カジノファイター/地獄の拳闘』とは違い、まっとうなアクション映画に仕上がっていました。
物語は前半の30分が刑事アクション、後半の1時間が恋愛を絡めた活劇という2部構成になっています。主演のシンシアは格闘シーンだけではなく、珍しく恋に思い悩む姿を披露しており、いつも戦ってばかりの彼女とは違う一面を見ることができます。
 格闘シーンについては、ファイトコレオグラファーがあのリチャード・ノートンなので、序盤からスピーディーな技の応酬が見られます。中盤は息切れしてスロー気味になるものの、最後のシンシアVSケン・マクレオド(『ショウダウン』)は上々の出来でした。
本作はこの他にもカースタントやボートチェイス、馬に引き回される危険なスタントなど、PMエンターテイメントらしい見栄えのするアクションを盛り込んでいます。傑作というわけではありませんが、安定した面白さを持っている作品だと私は思います。
 ちなみにリチャード監督は、『キング・オブ・キックボクサー3』『リング・オブ・ファイア/炎の鉄拳』、そしてアクション以外は難ありの『カジノファイター』といった微妙な格闘映画を多数撮っています(苦笑
今のところ、氏が監督した格闘映画(国内発売作品)で未見なのは『キング・オブ・キックボクサー2』だけですが、少なくとも現時点では本作がベスト。『キング・オブ~2』はあまりいい評判を聞きませんが、いつかは目を通してみたいですね。


「カジノファイター/地獄の拳闘」
原題:DEADLY BET
製作:1992年(91年・93年説あり)

▼以前、B級映画プロダクションのPMエンターテイメントと、格闘俳優のジェフ・ウィンコットが組んだ『刑事ベルモア 共謀者』を紹介しました。内容は凡庸な刑事アクションですが、同じタッグによる格闘映画がもう1本あったことをすっかり忘れていました(苦笑
本作は格闘試合に生きる男たちを描いたもので、全編に渡って大量の格闘シーンが挿入されています。反対にPMエンターテイメント名物のカーチェイスや爆破スタントが一切無く、どれほど本作が格闘シーンを重視していたか(予算がなかったか)が解ります。
さらには、出演者が『ハードブロー』のスティーヴン・ヴィンセント・リーといった猛者揃いなのもポイント。彼らの見せるアクションを見ているだけでも面白い――と言いたいところなのですが…。

■ラスベガスで暮らすジェフは、恋人であるチャーリー・ティルトンとの結婚を目前に控えていた。しかし、ギャンブル好きの彼は無謀にも賭け格闘試合に挑み、スティーヴに大金とチャーリーを奪われてしまう。
身を持ち崩したジェフは、その後もギャンブルから足を洗うことが出来ず、借金は膨れていくばかり。遂には借金取りの片棒まで担ぐはめになるが、一念発起してトレーニングを開始。色々と吹っ切れた彼は、ラスベガスから去ろうとした。
そんな時、スティーヴが主催する格闘トーナメントの話が持ち上がり、いまだ借金のあるジェフはこれに挑戦することになる。全てはスティーヴへのリベンジと、チャーリーを取り戻すため…。今、戦いのゴングは鳴った!

▲まず最初に目玉の格闘アクションですが、これがなかなか良い感じでした。アクション指導はドン・ウィルソン作品でおなじみのエリック・リー&アート・カマチョですが、様々な格闘技と動ける役者を揃えたおかげで、とても充実しています。
また、主軸となるジェフVSスティーヴのバトルも熱いのですが、いきなり序盤に登場するゲイリー・ダニエルズ、珍しくアクションを見せるジェラルド・オカムラなど、多彩な格闘俳優たちの競演も見どころの1つといえるでしょう。
 しかし、ストーリーについては散々な出来栄えで、正直言って全然面白くないのです。作り手としては挫折と栄光のドラマを描きたかったのでしょうが、肝心の主人公がギャンブル狂のダメ男では感情移入のしようがありません。
どれくらいダメダメかというと、酒とギャンブルから抜け出せない描写が一時間も続く(!)ほどのダメっぷり。終盤以降もギャンブル癖が抜けておらず、彼女とよりを戻した後も同じ失敗を繰り返すんだろうなぁ…と思ってしまいました(苦笑
 対するスティーヴに関しても、悪役らしい行為はほとんど見せておらず(終盤に強盗を使って悪巧みするくらい)、相対的にジェフのダメっぷりが強調される結果を招いています。
そんなわけで、アクションは良好ですがストーリーに難ありという、困った内容の本作。ちなみに監督のリチャード・W・マンチキンは他にも幾つか作品を撮っており、こちらは次回紹介したいと思います。


「レディーファイター/詠春拳伝説」
「ミシェール・ヨーの詠春拳伝説」
「詠春拳」
原題:詠春/紅粉金剛
英題:Wing Chun/The Beautiful Secret Agent
製作:1994年(93年説あり)

●厳詠春こと楊紫瓊(ミシェール・ヨー)は、若くして武術を習得した女傑であった。しかし、拳の道を志すために女としての幸せを捨てており、いつも男のような格好で暮らしていた。
そんなある日、彼女と口うるさい叔母・苑瓊丹の経営する豆腐屋に、薄幸の未亡人・洪欣が転がり込んできた。町の人々はその美しさに目を奪われ、楊紫瓊にアプローチしていた李子雄(レイ・チーホン)も、いつの間にか彼女へと乗り換えてしまう(笑
 さらには楊紫瓊の幼馴染だった甄子丹(ドニー・イェン)が現れ、洪欣を厳詠春と勘違いしたことからトラブルが発生。一方で、前々から楊紫瓊に何度も煮え湯を飲まされてきた山賊たちが、ここにきて大きな行動を起こそうとしていた。
山賊の首領である徐少強(ノーマン・ツイ)は、洪欣を誘拐して楊紫瓊との一騎打ちを迫る。この戦いは楊紫瓊が征し、なんとか洪欣の奪還に成功したものの、拳の腕前では徐少強が一枚も二枚も上手であった。
数日後に改めて再戦することになった楊紫瓊は、師である鄭佩佩(チャン・ペイペイ)のもとへと向かう。果たして彼女は、戦いと己の恋路に決着をつけることができるのだろうか?

 80~90年代に日本でリリースされた香港映画の中には、何故か中古市場に出回りにくい作品が幾つかあります。本作もその1つで、DVD化もされているのになかなか見つからず、個人的に幻の逸品と化していました。
そして昨年、幸運にも発見に至ったわけですが、同じような入手経路を辿った『無敵のゴッドファーザー』が微妙だったこともあり、身構えながらの視聴となりました。その結果はというと…とても素晴らしかったです!
 まず本作がユニークなのは、詠春拳の成り立ちを描く!みたいな小難しい話ではなく、明るいラブコメに徹している点でしょう。話の主軸は楊紫瓊たち女性陣による恋愛模様で、その雰囲気はとってもほのぼの。人死にも最低限に抑えられています。
監督の袁和平(ユエン・ウーピン)はコメディ系の映画を何本も手掛けていますが、本作のようなラブコメを撮るのは稀です。功夫片では恋愛要素があっても蔑ろにされがちですが、本作はきちんと結末まで描いており、最後まで楽しく見られました。
 また、功夫アクションもワイヤーとリアルファイトを適度に織り交ぜ、迫力の立ち回りを構築しています。この手の作品によくある「○○を取られたら負け」ルールのバトル、槍と短刀による武器戦など、どの戦いも実にバラエティ豊かでした。
ラストバトルも圧巻で、しがらみを捨てて女性に戻った楊紫瓊が、大ベテランの徐少強を相手に一進一退の攻防を展開!もちろん甄子丹の見せ場も存在し、この頃から既にマッハ・カンフーの片鱗を見せています。
製作に大陸資本の銀都機構有限公司が噛んでいることもあって、スケール感も抜群の快作。こういう作品こそ廉価版でリリースして欲しいんだけどなぁ…。ちなみに本作のDVDパッケージによると、袁信義の英名はイーグルなのだそうです(爆


「無敵のゴッドファーザー ドラゴン世界を征く」
原題:香港小教父
英題:Little Godfather From Hong Kong/The Godfather Squad
製作:1974年

▼本作は梁小龍(ブルース・リャン)と倉田保昭が対決した2度目の作品として知られていますが、私としてはレンタルビデオ店の悲喜こもごもを初めて味わった、思い出深い映画だったりします。
最初に私が本作と出会ったのは、今から9年ほど前の話。近所のレンタル店で発見し、すぐに会員登録して借りに行ったのですが、次に来た時は店舗整理によって消滅…(号泣)。再会できたのは4年後のことで、県外の店でようやく発掘しました。
ちなみに現在、近所にあった店はまだ営業していますが、ビデオソフトは軒並み撤去。県外の店はクリーニングショップに変わり、当時の面影は完全に無くなってます。あそこは『カンフー風林火山』とかレア作品が置いてあったのになぁ…(遠い目)。

■ある麻薬組織の依頼により、暗殺者集団のカルロ・ファミリーは麻薬捜査官を次々と殺害していた。しかし香港で映画スターの梁小龍に阻止されてしまい、顔に泥を塗られたファミリーは大激怒!標的を梁小龍に定め、映画撮影と称して彼をローマに呼び寄せた。
現地に在住していた梁小龍の兄は「すぐに帰れ」と警告するが、翌朝になって死体となって発見された。怒りに燃える梁小龍は、お供の孟海(マン・ホイ)とともにファミリーへの仇討ちを誓うのだった。
戦いは日に日に激しさを増し、ローマの街は血と銃弾に染まっていく。保険会社社員のシャーリー・コリガンをも巻き込んだ死闘は、最後の刺客・倉田の登場によって最終局面へと移るのだが…。

▲さて、四苦八苦の末にめでたくゲットできた本作ですが、内容に関しては少々イマイチでした。なにしろストーリーは梁小龍が延々と敵の刺客を叩きのめしていくのみで、他に目立ったイベントが起きないからです。
梁小龍&シャーリー&共演女優との三角関係、ファミリーのボスと溺愛する実子の関係など、膨らませば面白くなりそうな要素もあるのですが、どれも顧みられることなく物語の中に埋没しています。
 また、空港で取材が殺到するような大スターが命を狙われ、街中で殺し合いを演じているのに平然と映画撮影が続行されるなど、核となるストーリーもあやふやな印象を受けました。そもそも、兄が死んだその日に普通に観光してる場合じゃないだろっ!(笑
アクションも不発で、倉田以外に梁小龍に太刀打ちできる人間が1人もおらず、迫力に欠けています。その倉田とのラストバトルも、ロケーション効果こそ絶大ですが、殺陣は『帰って来たドラゴン』より乱雑に感じます。
 『帰って来た~』は魅力的なキャラクターや明るい作風、そして出演者たちの体当たりアクションが見事でした。しかし本作はそういった点を受け継ごうとせず、ただただ単調で陰惨な物語に終始してしまったのです。
スケジュールや無許可のロケなど、いくつか障害があったのは解りますが、残念ながら失敗作と言わざるを得ません。呉思遠(ウー・セイエン)作品としてもワーストに近いけど、梁小龍VS倉田の対決だけは一見の価値アリ…かな?