
「ファイヤー・ドラゴン/火雲伝奇」
「ファイヤー・ドラゴン」
原題:火雲傳奇
英題:Fire Dragon/The Fiery Dragon Kid
製作:1994年
▼かの『スウォーズマン/女神伝説の章』で、性を超越した唯我独尊なキャラクター・東方不敗を演じた林青霞(ブリジット・リン)。そのインパクトは非常に強く、多くのプロダクションから似たような役柄のオファーが相次ぎました。
本作もそうした作品の1つであり、古装片ブームに大きく貢献した名武術指導家・袁和平(ユアン・ウーピン)が監督を務めています。しかし便乗作は便乗作…先に言ってしまいますが、本作もそれほど凄い作品ではありません(苦笑
■さすらいの剣士・莫少聰(マックス・モク)は、暴君である單立文の謀反を知った兄から密書を託され、刺客の林青霞と死闘を展開していた。その際に彼は芸人一座に命を救われるが、肝心の密書を座長の呉君如(サンドラ・ン)にくすねられてしまう。
呉君如は莫少聰に一目惚れしており、仕方なく彼は一座に住み込んで機会を待つことに…。そんな中、林青霞が祝宴の席で名君を暗殺せんと動き出すも、すんでのところで莫少聰と呉君如の兄・巫剛に阻止された。
そこで彼女は町娘になりすまし、一座に潜入して密書を奪おうと企んだ。莫少聰はこれを怪しむが、人々との交流によって林青霞は感情を取り戻していく。しかし、彼女の妹にして單立文の刺客・葉全真が襲撃に現れ、一座の中に犠牲者が出てしまった。
やがて2人の刺客は対立しはじめ、巫剛は好いていた林青霞の正体を知る事となる。果たして剣士たちの運命は? そして戦いの行方は…?
▲本作はストーリーの大半を大味なラブコメが占めており、『スウォーズマン』を期待して見た人は必ずやズッコケるであろう内容となっています(爆
このラブコメを許容できるか否かが本作を楽しむ判断基準となるわけですが、林青霞は善悪の間で揺れる刺客を見事に演じ切っているし、作品の質に関しても問題は無かったといえるでしょう。
一方、アクションシーンは当時の古装片にありがちな、クルクル回ってキンキン斬りあうだけのパターンで構築されています(立ち回りの大半も役者自身ではなくスタントマンが担当)。
しかし特殊効果や武器を工夫することでマンネリ化を回避していて、ラストバトルでは可燃性の油がある場所(製油所?)でダイナマイトが飛び交い、大爆発が巻き起こるコマンド映画のような光景が繰り広げられていました(笑
ただ、1つだけ気になるのが主人公を演じた莫少聰の扱われ方です。当初は主人公らしく活躍していた莫少聰ですが、ストーリーが進むにつれて林青霞と巫剛の恋愛がメインとなり、出番が激減していきます。
これだけなら「いつもの香港映画らしい無軌道な展開」で片付けられますが、最終決戦では林青霞らと一緒に参加しているはずなのに、彼自身が画面に一切映らなくなるという異常事態へと発展するのです。
不可解な出来事はこのあとも続き、ラストシーンでは誰も林青霞を気にする素振りを見せず(一部始終を見ていたはずの巫剛もノーリアクション)、再び莫少聰が主人公らしく格好をつけたところで終幕となります。
役者のスケジュール調整が上手くいかなかったのか、それとも撮影途中にトラブルが起きたのか…。いきなり巫剛が林青霞の正体を察する強引な展開もふくめて、非常に気になるところです。

「愛しのOYAJI 激突編」
製作:2008年
●京都府警の元警察官である小沢仁志は、ストリップ小屋の照明係をしながら浅草の平和を守っていた。彼は今日もイケメン歌手の恋人を狙った毒殺未遂、運送業者を隠れ蓑にした武器密輸など、様々な難事件を解決していく。
だが一連の事件には、かつて初代会長を小沢の友人である元侠客・真樹日佐夫に斬られ、煮え湯を飲まされた関東同憂会が関与していた。連中は傘下の暴力団・台東組を立ち上げ、前作で壊滅した雷組の跡地に事務所を設立する。
関東同憂会の二代目会長は、先代の頃から仕えていた若頭・永倉大輔に真樹への復讐を指示。一方で裏カジノの支配人を脅迫し、彼の娘に肉体関係を迫ったりと無法の限りを尽くしていたが、会長には別の思惑があった。
そのころ台東組の嫌がらせに耐えかねた真樹は、組の傘下施設に襲撃を繰り返していた。これに小沢も加勢するが、今度は真樹の妻がバイクにはねられて負傷してしまう。
この一件は台東組の仕業と思われたが、よくよく考えれば真樹の怒りを買うだけの無駄な行為でしかなく、台東組に利益はない。一方の永倉は「私は知らない」と主張し、組に殴りこんだ真樹はこれを信じて引き下がった。
上からの命令と真樹への思いに板挟みとなった永倉は、苦悩の末に自害する道を選んだ。果たしてひき逃げ未遂と事件の真相は?そして真樹の運命は…?
本作は真樹センセイ&影丸穣也コンビによる漫画作品の実写版で、柔道使いのオヤジが戦う人情アクションの第2弾です。前作はそれなりに格闘シーンがあり、ユーモアのある描写がいい味を出していました。
今回も作風はそのままですが、小沢のアニキが長髪にジャケットを羽織ったワイルドな風貌にチェンジ。これがまた格好良く、楽しそうにボケをかます姿はなかなか笑わせてくれます。
しかし本作は個々の描写が足りず、全体的にイビツさを感じる出来となっているのです。毒殺未遂事件が発生した経緯をセリフだけで処理、踊り子の1人が武器密輸に関わった顛末が明かされないなど、釈然としない箇所が随所に存在します。
裏カジノのエピソードにいたっては小沢がまったく絡まないため、完全に余分なパートと化していました。苦みを残す結末や永倉のキャラクターは悪くないし、原作を見ていれば納得できる展開なのかもしれませんが…。
アクションも激減していて、前作には存在していたタイマン勝負とラストバトルが消滅。集団戦はいくつかありますが、前作からのボリュームダウンは否めません(エンドクレジットには技斗やアクション指導などの表記はなし)。
ちなみに本作は真樹センセイの出番が増え、実質的なもう1人の主役となっていました。立ち回りも何度か披露しており、晩年のゲスト出演としては登場頻度が高かったといえます。極端に酷くはないものの、痛快さでは前作に劣っている本作。格闘シーン目当てなら他のマキ印作品を見た方がいいかもしれませんね。

「輝 Gold」
製作:2013年
▼倉田保昭がレギュラー出演した特撮ドラマ『牙狼-GARO- ~闇を照らす者~』。その中から先日は前半のエピソードを取り上げましたが、今回は最終回一歩手前の第23話「輝 Gold」に着目してみましょう(本作品の詳細については前回をご覧下さい)。
独立国家ボルシティを牛耳る金城一族とホラーの関連を疑う魔戒騎士たち…しかし真の黒幕は協力者と思われた津田寛治であり、倉田は彼の手によって魔導ホラーと化した元・魔戒騎士だと判明。栗山航たち魔戒騎士は必死に戦うものの、惨敗を喫します。
そんな中、封印されていた伝説のホラー・ゼドム(演者は秘密・笑)が復活の兆しを見せ、戦いの中で栗山はゼドムに捕えられていた母・横山めぐみと再会。そして彼らを支えていた魔戒法師・大友康平が、たった1人でゼドムの封印に向かう場面から本作は始まるのです。
■決死の思いでゼドムと対峙した大友は、自らの命と引き換えに鎮まるよう訴えた。しかし敵は彼を一瞬で消滅させ、完全復活のために魔戒騎士の肉体を手に入れようと画策。津田に使役されていた倉田を操り、栗山たちに襲いかかった。
死闘の末に彼らは倉田を撃破し、黄金騎士・ガロは本来の姿を取り戻すことに成功する。その美しい輝きに喜ぶ横山であったが、彼女の体はゼドムの影響でホラー化が進行していた…。
栗山は苦悩しながらも母親を斬るが、その直後にゼドムが倉田の遺体を利用して復活してしまう。大友と横山…2人の死を乗り越えて、栗山・池田純矢・青木玄徳ら3人の魔戒騎士と、魔戒法師の南里美希は最後の戦いに挑む!
▲今回の話は第2回ジャパンアクションアワードにおいて、ベストアクションシーン賞の優秀賞を受賞しているんですが(監督の横山誠もアクションコーディネーター部門で最優秀賞を獲得)、その栄誉にふさわしい激闘が繰り広げられていました。
戦いはストーリーの初っ端から始まり、最初の激突で倉田さんは南里の運転する車の上に落下。栗山も一緒に飛び乗ると車は走りだし、池田と青木も別のワゴンでこれを追いかけます。
かくして倉田さんと栗山&池田による、走行する車の屋根でのファイトが展開されるのです。さすがに替え身やワイヤーを活用していますが、ここでのアクションはほとんどCGを使っていません。
2台の車には倒壊した足場のパイプが突き刺さり、やがて3人はコンテナの上へと移動します。剣を手にした倉田さんは2人を圧倒するも、加勢した青木と一緒にコンテナごと転落。ここはさすがに2人は別撮りで、落ちるコンテナはCG…ですよね?(汗
戦いはなおも続き、コンテナにいる倉田さん目がけて池田の運転する車が突っ込み、最後は栗山VS倉田さんのタイマン勝負で雌雄を決します。これら一連のアクションは完全にTV番組の枠を超えており、とてもド派手な戦いだったと思います。
無理に難を挙げるとすれば、車のファイトで倉田さんの替え身率が高かった(アップのシーン以外はほとんど別人)ことぐらい。宿敵に対する栗山の思い、劇的な決着も含めて私は非常に楽しめました。
物語の方も悪くなく、横山との別れは見る者の涙を誘います。ただ、直前の話で栗山と感動的な別れを果たした大友が、本作の開始早々に呆気なく倒されたのにはガッカリ。最終回で彼の遺物が鍵になるとはいえ、もう少し善戦してほしかったなぁ…。
…というわけで、今月は倉田保昭のTV出演作を振り返ってみました。昔から映画の中で戦ってきた倉田さんですが、TVの世界においても多くの足跡を残しています。
思えば日本人の功夫スターは何人か存在しましたが、今も現役の役者としてスクリーンのみならず多方面で活躍している方は、恐らく倉田さんが唯一無二のはずです。彼はこれからも国境とメディアを問わず、なおも戦い続けることでしょう。
映画、Vシネマ、そしてブラウン管―――次に和製ドラゴンがどの世界に現るのか、秘かに待ち望みながら本稿を終えたいと思います。(特集、終)

「乱 Sonshi」
製作:2013年
▼ここまで倉田保昭が出演したTVドラマの中から、単発ゲストとして登場した作品をいくつか紹介してきました。しかし今回ピックアップするのは、レギュラー出演していた『牙狼-GARO- ~闇を照らす者~』のエピソードです。
この作品は特撮ドラマ『牙狼-GARO-』シリーズの第3作で、実を言うと今回の特集はCSで本作を視聴した際、その激しいアクションに衝撃を受けて企画したものだったりします(笑
『牙狼-GARO-』シリーズは、鬼才・雨宮慶太監督による作品ですが、深夜番組だけあって内容は完全に大人向け。グロテスクな描写や性的なシーンが随所に存在し、独特なキャラクター設定も持ち味のひとつです。
そして私が驚いたアクションシーンでは、高クオリティの肉弾戦がこれでもかと炸裂しており、ACC STUNTSを率いる横山誠の手腕が遺憾なく発揮されていました(彼は本作の総監督も兼任)。
基本的な粗筋は、人知れずホラー(本作における怪人の名称)を狩る魔戒騎士たちが、ボルシティと呼ばれる独立国家で巨大な陰謀に立ち向かう…というもの。倉田さんはホラーより上位の存在、魔導ホラーに扮して大暴れを繰り広げます。
この第9話「乱 Sonshi」は前後編の後編で、前編は主人公・道外流牙(栗山航)が元記者の古山憲太郎と接触。恋人をホラーに殺された彼は真相究明を訴え、栗山に協力を申し出るのですが…。
■何度も「関わるな」と言いつつも、次第に古山を仲間として意識し始める栗山。そんな中、古山は自分なりにホラーと戦う手段として、知人であるボルシティのTVアナウンサー・井村空美とコンタクトを取り、ホラーのことを報じて欲しいと頼んだ。
ホラーはボルシティの支配者・金城一族と繋がりがあるらしく、TV局も彼らの支配下となっているが、井村はホラーについてニュースで伝えると約束する。…が、実際に放送されたのは「栗山は殺人犯である」という捏造報道だった。
そう、実は井村もホラー側の存在であり、古山の恋人を殺害した張本人だったのだ。栗山は街の治安維持部隊・SG1に追われ、井村に迫った古山も食い殺されてしまう。
追い詰められた栗山は、もう1人の人間の協力者であり金城一族の端くれ・津田寛治に助けられた。しかしそこに倉田が襲いかかり、古山の死を知らされた彼は仲間と共に立ち向かう。果たして戦いの行方は…?
▲かなりダークで救いがなく、前編も一緒に見ておかないと把握が困難なストーリー(というか詳細な設定の把握は必須)ですが、なかなかにインパクトの強い作品でした。
中でも私情に流されたがゆえに犠牲を生み、仲の良かった人々からも恐怖と侮蔑の目で見られ、それでもなお立ち上がろうとするラストの栗山が印象的……と言いたいところですが、後半のアクションで倉田さんが全てをかっさらっています。
最初に剣をふるう栗山を素手で軽くあしらい、舞台はモノレールの駐機場へ。魔戒騎士の蛇崩猛竜(池田純矢)と楠神哀空吏(青木玄徳)が駆けつけるも、倉田さんの放つ電光石火の拳には苦戦を強いられるばかりです。
そうこうしている間にモノレールが走りだし、狭い車内での戦いへと発展!次々と騎士たちは外に叩き出され、変身して挑みかかるも余裕で技を受け止められてしまいます。念のために言っておきますが、この時点で倉田さんは怪人化すらしていません(爆
一部のアクロバティックなカットでは替え身が見られるものの、これらのアクションシーンは横山氏の指導とも相まって、非常に迫力のあるバトルに仕上がっていました(ただし特撮パートはCG主体なので、見る人によっては違和感があるかも)。
もちろん栗山・池田・青木の3人も十分動けており、倉田さんの圧倒的な存在感で見過ごされがちですが、体当たりで受け身・スタントを演じています。個人的には池田さんのアクションをもうちょっと堪能したかったけど、こちらは今後のエピソードに期待したいですね。
悲しき宿命を背負い、孤独な戦いを続ける魔戒騎士たち。次回の特集最終回では、あのジャパンアクションアワードも認めた倉田さんと彼らの最終決戦に迫ります!

「それゆけ孔雀警視」
製作:1987年
▼今回は非常に残念なお知らせがあります。本来なら刑事ドラマの金字塔である『特捜最前線』から、倉田保昭がゲスト出演していた第226話「太鼓を打つ刑事!」を紹介したかったのですが、録画していたDVDを確認するとデータが破損しており、どうやっても視聴することができません(涙
レンタル版も近場には置いておらず、ゆえに今回は緊急措置として志穂美悦子が主演したTVドラマをレビューいたしますので、どうかご了承ください…。
本作は志茂田景樹の同名小説を原作にしたもので、恐らくは同年に引退を決意した彼女にとって、格闘シーンを見せた最後の作品と思われます。
共演は古尾谷雅人に伊東四朗、そのほかにも意外と豪華なキャストが顔を揃えており、志穂美自身もはっちゃけた性格の主人公をのびのびと演じていました。
■型破りな警視庁の女警視・志穂美は、上司である伊藤の反対を押し切って休暇を申請。年下の恋人・古尾谷と旅行に行くのだが、浜名湖でボートが爆発する現場に出くわす。
乗っていた売り出し中の女優・南条玲子と、サラ金会社の社長・小沢象は志穂美に助け出され、どうにか事なきを得た。その後、旅行を再開して京都に来た2人であったが、今度はそこで身代金目当ての誘拐事件に遭遇する。
実は誘拐されたのは小沢の一人息子で、新幹線の車内から姿を消した後に脅迫電話がかかってきたらしい。伊藤の要請で捜査に加わるよう命じられた志穂美だが、その矢先に今度は古尾谷が誘拐されてしまう。
犯人の指示で身代金の受け渡し役となった彼女は、散々振り回された挙句にまんまとカネを奪われ、真犯人を取り逃がす結果となった。雪辱に燃える志穂美は、古尾谷とともに捜査へ乗り出していく。
果たして新幹線から子供を誘拐したトリックとは?ボートの爆破と誘拐事件の関係とは? 南条の隠された過去が暴かれる時、意外な真実が明かされる…!
▲作品としてはよくある2時間サスペンスもので、全体的に80年代末期のバブリーな雰囲気に包まれています。ただ、身代金の受け渡しやカラオケで憂さ晴らしするシーンなど、尺を取りすぎて冗長さを感じてしまう場面がいくつかありました。
しかし登場人物はそれなりにキャラが立っており、特に志穂美はパワフルなアラフォー警視を好演。本作の彼女は行動力に富み、劇中ではちょっとした七変化(ハイレグ姿や入浴シーン)まで披露しているのです。
アクションは京都で数人の男と立ち回る場面だけですが、動きにくそうなドレス姿で優雅に戦っていました。この絡み役にはきくち英一の姿もあり、『帰って来た女必殺拳』で対戦できなかった両者の手合せが見られます。
ちなみにAV監督役でハッスルしまくりの竹中直人、おかまバーの歌手役にコロッケ、温泉客役で原作者の志茂田氏が登場。JACの後輩である森永奈緒美も出ていますが、新幹線の移動販売員役なので出番はごく僅かでした。
ところで新幹線で子供を誘拐したトリックですが、なんとその仕掛けはソープランドのコスプレ衣装(!)を使って販売員に化け、盗んだ弁当用のカートに隠して運び去る…というもの。
確かに警察の目はそらせるかもしれないですが、仮にも公の場で活動している真犯人(正体はバレバレですが一応伏せておきます)がニセ販売員なんてしていたら、他の販売員や乗客に思いっきり怪しまれるのでは?(爆
…と、そんなわけで今回は思わぬ寄り道をしてしまい、誠に申し訳ありません。そこで特集もクライマックスとなる次回からは、特撮の世界に挑む和製ドラゴンと“闇を照らす者”の戦いを、2回に渡って紹介したいと思います!