続・功夫電影専科 -24ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「無問題2」
中文題:無問題2
英題:No Problem 2
製作:2002年

●中華料理屋で働く岡村隆史は、ひょんなことから香港旅行の切符を手に入れた。一方、香港に居を構える太田グループでは、急死した会長の跡継ぎに娘の酒井若菜が指名されるが、叔父の菅田俊はまったくもって面白くない。
自らがトップに躍り出るため、彼が協力を依頼したのは香港マフィアの倪星(コリン・チョウ)だった。連中は酒井暗殺のために殺し屋の元振(キム・ウォンジン)を雇うも、人違いで岡村が駆り出されてしまう。
 酒井に一目惚れした彼は、一転して彼女を守るボディガードになることを決意。恋敵のダメ警官・李燦森(サム・リー)と張り合ったりするが、マフィアの魔手は確実に迫っていた。
奮闘むなしく酒井を誘拐され、警察に捕まってしまった岡村。そんな彼を助けたのは、裏切り者の元振を追い続ける元彪(ユン・ピョウ)と盧巧音(キャンディ・ロー)の兄妹だった。
 元彪は彼をエサに元振をおびき出そうとするが、酒井を助けたい岡村は盧巧音とともに行動を開始する。だが、ようやく再会した彼女は催眠術にかけられ、完全に倪星の操り人形と化していた。
心身ともに打ちのめされた岡村は自暴自棄に陥るも、元彪たちとの交流によって見事に復活。その過程で功夫の修行にも専念していく。やがて彼は菅田を切り捨て、全てを手に入れようとする倪星一味と対峙するのだが…?

 気が付けば6回目というハイペースで進んでいる「よろしくユン・ピョウ」ですが、今回は『落陽』『孔雀王』に続いて3度目となる日本絡みの作品の登場です。
前2作はそれなりに見どころがあったものの、全体としてはかなり微妙な出来でした。本作もクオリティには疑問があり、テキトーで釈然としない描写が方々で見受けられますが、この“ユルさ”こそが本作の妙味なのです。
 その一端を担っているのが出演者たちの(いい意味での)肩の力が抜けた演技で、みんなイキイキと楽しそうに演じています。特に菅田俊の砕けっぷりは特筆もので、Vシネで見せる姿とのギャップに驚かされました(笑
好青年を演じ続けてきた元彪が師匠役に扮するという感慨深さ、思ったよりも体を張りまくっている岡村の勇姿など、他にも評価点の多い本作。序盤は少々モタついていますが、個人的にはなかなか楽しめた作品だったと思います。
 アクションシーンも意外と多く、中でも変幻自在の蹴りが素晴らしい元振(前半では『スコーピオン・ファイター』の殺陣をチラッと再演)と、まだまだ足の上がる元彪による新旧キッカー対決は見逃せません。
また、重複しますが岡村も体当たりのアクションに挑み、七転八倒の活躍で見る者の笑いを誘います。残念なのは元彪と倪星が絡まなかったことぐらいですが、こちらは『レッド・リベンジ』で戦っているので別にいいかな?
 あまり真面目に見ていると粗ばかりが目に付くので、本作を視聴する際は“ユルさ”に身を委ねるのがベスト。そういう意味では『風雲!格闘王』と似ている…と言えるかもしれませんね。
ちなみに本作には吉本興業も関わっており、のちに同社は『大阪プロレス飯店』で再び香港映画とコラボしています。ただし、こちらの“ユルさ”は色んな意味でレベルが違うため、視聴する際は注意した方が良いでしょう(苦笑
――次回は、長々と続けてきた本特集もついにフィナーレ! 最後を飾るのは久方ぶりに顔を合わせたジャッキーとの共演作です!


「香港魔界大戦」
原題:西蔵小子
英題:A Kid from Tibet
製作:1991年

●チベットの奥地に存在するラマ教の総本山・ポタラ宮。そこで修行に励んでいた青年僧の元彪(ユン・ピョウ)は、ダライ・ラマ(演じるは午馬!)から密命を託された。
午馬によると、500年前に邪悪な黒教を倒した伝説の秘宝・黄金の壺が、香港で見つかったというのだ。元彪の目的はその壺を持ち帰ることなのだが、すでに黒教の末裔・元華(ユン・ワー)と利智(ニナ・リー)が動き出していた。
 黄金の壺を所有する富豪の使者・李嘉欣(ミシェール・リー)と合流し、高層ビルが立ち並ぶ香港へと上陸する元彪。しかし俗世間に疎い彼は、行く先々で珍騒動を巻き起こしていく。
一時は李嘉欣とも険悪になるも、胸の内を明かしたことで無事に和解。意気揚々と富豪の元へ向かうが、そこには元華一味が待ち受けていた。2人は捕えられ、黄金の壺の魔力が解き放たれるのだが…?

 本作は元彪が初めて監督に挑んだ作品ですが、彼がメガホンを握ろうとしたのは今回が最初ではありません。前々から監督業に興味のあった元彪は、製作も兼ねた『検事Mr.ハー/俺が法律だ』で監督デビューを考えていました。
しかし主演俳優として、プロデューサーとしての仕事に集中することを決意し、このときは経験豊富な元奎(コーリー・ユン)にバトンタッチ。それから5年の歳月が流れ、ようやく本作で夢を叶えたのです。
 作品としては典型的なアクション映画で、元彪自身は純朴そうな好青年を熱演。さすがに特殊効果のレベルは『孔雀王』に劣りますが、実際にチベットでロケを敢行したりと、そこかしこに彼の拘りが感じられます。
また、スターの監督作にありがちな“俺様映画”に陥らず、健全な娯楽作に纏め上げた点も見逃せません(利智に迫られるシーンは明らかに監督権限を発動していますが・笑)。ややインパクトに欠けるものの、初監督でこの内容なら上々といえるでしょう。
 アクションシーンでは、ワイヤーワークなどを交えつつ軽快な立ち回りを展開! 元華との最終戦では、途中から巨大な剣を振りかざしてのソードバトルに変わり、息の合ったつばぜり合いを見せています。
しかし「これは!」と思えるようなアクションが無く、元彪VS元華も他作品でのバトルと比べるとイマイチに感じました。セクシーな利智との戦いなど、工夫を凝らしてはいるのですが…う~ん。
…と、そんなわけで今回は90年代の作品を紹介しましたが、いつの間にやら「よろしくユン・ピョウ」も終了間近。ここからは一気に年代を飛び越え、00年代以降の作品からセレクトしていきたいと思います!


「孔雀王」
原題:孔雀王子
英題:Peacock King
製作:1988年

▼成龍(ジャッキー・チェン)を始めとしたBIG3の中でも、元彪(ユン・ピョウ)は日本との関わりが特に深い人物でした。来日やTV番組への出演はもちろん、日本絡みの映画作品に何度も参加。前回の『落陽』もその1つです。
そんな元彪と日本のコラボレーションは、80年代後半に撮られた本作から始まりました。この作品は日本&香港の合作映画で、スタッフやキャストは一流どころが揃っています(原作は荻野真の同名コミック…ちなみに現在も新シリーズが連載中)。
ただし、あの『セブンス・カース』『妖獣大戦』を撮った藍乃才(ラン・ナイチョイ)が監督なので、今回もグロテスクな描写は健在。相変わらず話にもクセがあり、見る人を選ぶ作品となっていました(爆

■チベットの遺跡発掘現場から、魔界の使者・王小鳳(ポーリン・ウォン)によって葉蘊儀(グロリア・イップ)が復活した。彼女は地獄門を開く鍵であり、もし封印が解かれれば究極の魔・皆魔障外神が降臨し、この世は地獄になるという…。
異変を感じ取ったラマ寺院の高僧・高雄(エディ・コー)は、葉蘊儀を封じ込めるべく元彪を派遣。時を同じくして、除霊のために高野山から来た青年僧侶・三上博史は、仕事先で会社員の安田成美と出会っていた。
 2人は来日した元彪と知り合い、香港へ向かった葉蘊儀を追う事となる。…だが、三上と元彪には知られざる宿命が課せられており、彼らを危険視する劉家輝(リュー・チャーフィ)は追撃を開始した。
一方、香港に飛んだ3人は下水道で王小鳳と戦うが、やむをえず葉蘊儀を殺めてしまう。純真な彼女を助けたいと思った元彪は、皆と一緒にラマ寺院を目指した。
その後、葉蘊儀は懸命の治療によって蘇るのだが、それは皆魔障外神との戦いが避けられない事を意味していた。やがて三上たちの出生の秘密が明かされ、師匠の緒方拳や劉家輝たちも到着。解き放たれた地獄門を舞台に、最後の戦いが始まる…!

▲本作は撮影中に色々とトラブルが起こり、元彪が足を骨折するというアクシデントにも見舞われたとのこと。その影響は映画全体に及んでおり、どこかイビツな印象を感じる作品に仕上がっていました。
特に顕著なのが主役2人の扱いで、明らかに見せ場が元彪だけに偏っているのです。アクション未経験の三上が立ち回りで後れを取るのは仕方ありませんが、ドラマパートでも主だった見せ場はすべて元彪が担当。この三上を蔑ろにした構成を見るに、現場で大きな問題が起きていたことは明々白々と言えます。
本筋と関係ないタクシー運転手とのいざこざに尺を割いたりと、他にも多くのアラが目に付く本作。しかし元彪VS劉家輝というドリームマッチを実現したことで、功夫映画史にその名を刻んだといっても過言ではありません。
 当時の元彪はゴールデンハーベストに在籍し、それ以前はサモハン率いる洪家班で仕事をしていました。一方、劉家輝はショウブラザーズで劉家班のスターとして活躍していたため、所属が異なる彼らの本格共演は見送られていたのです。
この大物スター同士のバトルは後にも先にも1度だけで、功夫映画ファンなら必見の勝負だと思います。ちなみに最終決戦は皆魔障外神(ただのデカいおっさん)とのサイキックバトルなので、こっちは別に見なくてもいいかな?(苦笑
さて、本作でチベット密教という存在に出会った元彪は、これを自らの監督作のモチーフにしようと考案。より香港映画らしさを強調した作品の製作に取り掛かるのですが…続きは次回にて!


「落陽」
中文題:上海大亨杜月笙
英題:Setting Sun
製作:1992年

▼今月は元彪(ユン・ピョウ)の主演作を集中紹介していますが、その中でも最大の問題作といえるがこの『落陽』です。本作はにっかつ80周年記念作品で、50億円もの巨費を投じて製作されました。
しかし興行的に大失敗し、にっかつ倒産の原因を作った…というのは皆さんもご存じの通り。おまけに尺が非常に長く、同じ失敗作の『北京原人』みたいな笑える要素もなさそうなので、今まで視聴をスルーしてきたのです。
個人的には「もし元彪のアクションが無かったらどうしよう」という心配もありましたが、このたび目を通してそれが杞憂であったことを知りました。でも映画そのものの出来はというと……(後述)

■舞台は昭和初期の中国・奉天。関東軍の仕官だった加藤雅也は、恋人のダイアン・レインに言い寄っていた陸軍省顧問に切りかかり、その際に青幇の首領・元彪に手傷を負わせてしまう。
それから3年後、軍を辞めた加藤は関東軍参謀・嵐圭史の頼みで満州に戻り、満州国建設のための資金作りを任された。加藤は王道楽土を目指し、満州浪人・にしきのあきらと行動を開始する。
 その年に満州事変が勃発し、関東軍は満州を占領。より多くの資金を稼ごうとする加藤は、馬賊の女首領だったダイアンと再会を果たした。やがて満州国が建国されるが、嵐の後任である将官は「阿片の商売でもっと稼げ」と命じていく。
にしきのに裏切られたりと雲行きが怪しくなる中、新たにダイアンが仲間として加わった。時代は支那事変を迎え、帰ってきた嵐の指令で加藤たちは上海へと向かうも、そこには彼らを敵視する元彪の姿が…。
 どうにか元彪を出し抜いて満州に帰郷する加藤であったが、とうとう日本は太平洋戦争に突入する。徐々に戦局が苦しくなる中で、彼は青幇と取引を行うハイラルの商人(宍戸錠!)から、阿片を横取りする作戦を提案した。
だがこの動きは元彪に見抜かれ、死闘の果てに馬賊はダイアンを残して壊滅。青幇も元彪もろとも全滅し、この一件で彼女は加藤を見限ってしまう。日本が敗戦への道を突き進む中、果たして彼はどこへ行くのだろうか…?

▲まずアクションシーンについてですが、全体的にそれほど多くはありません。銃撃戦と肉弾戦が半々の割合で、元彪は中盤の倉庫襲撃から戦い始めます(ここは暗くてちょっと見づらい)。
そして2時間ほど経ったあたりで日本のスパイと戦いますが、それを演じるのがなんと女性武術指導家の楊菁菁! 『レッド・リベンジ』に続き、こんなところで対戦していたとは驚きました。
後半の最終決戦では加藤VS元彪のバトルとなり、それなりのファイトを見せています。まぁ、飛んだり跳ねたりの派手な動きは皆無なので、これまで紹介した作品と比べると大したことは無いといえるでしょう。

 ただし作品としては物凄く淡泊で、ストーリーに抑揚といえるものがありません。満州事変の発生・青幇との最終決戦など、盛り上がりそうな場面でもテンションはずっと低空飛行のまま…これが150分も続くのです(爆
カメラワークも単に人物の動きを追うだけで、スケール感や躍動感はまるで感じないという有様(たぶんフィルマーク映画の方がマシ)。壮大な音楽や空撮映像による援護射撃も、しつこく繰り返すので効果はどんどん薄れていました。
 登場人物もツッコミどころ満載で、歌姫で馬賊の首領で中国人役というムチャな役柄のダイアン、最初のほうに名前が出てるわりに役も出番も小さいドナルド・サザーランドはその筆頭と言えます。
大物キャストの大半は言われないと気付かないレベルの扱いだし、キラーカンや特別出演の高品格にいたっては本編中に出番がなく、エンドロールで映像だけ(恐らくカットされた未使用部分)が流されていました。
 監督が原作小説の作者ということで覚悟していましたが、ここまで見せ場も山場もない作品だったとは…。少なくとも元彪目当てで見るにはかなり難易度が高いので、それでも視聴したいという方は十分ご注意下さい。
ちなみに次回は古き良き80年代へとUターンし、再び日本にまつわる作品をピックアップする予定です。


「チャイニーズ・ファイター/天空伝説」
原題:六指琴魔
英題:Deadful Melody
製作:1994年

▼90年代…刻々と変わり続ける香港映画界の中で、成龍(ジャッキー・チェン)らBIG3はそれぞれの道を模索していました。ジャッキーは当時の流行から距離を置き、自らのアクション・スタイルを突き詰めてハリウッドへ進出します。
洪金寶(サモ・ハン)は苦闘の時代を過ごすものの、多くの武侠片で動作設計を担当。00年代にその努力は結実し、見事に香港アクション業界のトップに躍り出るのですが、元彪(ユン・ピョウ)はどうだったのでしょうか?
 当時の元彪はつねに時流を意識し、巧みに流行を取り入れた作品に参加しています。黄飛鴻がブームになれば関連した作品を自ら製作し、キッズ・アクションが人気になれば名子役の釋小龍(シク・シウロン)と共演しました。
もちろん武侠片ブームにも乗っかり、『ユン・ピョウIN 妖刀秘伝』に続いて本作にも出演。原作は脚本家としても知られる倪匡(イ・クオン)の武侠小説で、大物女優の林青霞(ブリジット・リン)と渡り合っています。

■天魔琴――それは恐るべき力を秘めた武具で、手にした者は武林の覇者になれるという伝説のアイテムである。武林を代表する四大流派は、それを狙って管理していた天龍門を襲撃。門徒は全滅し、天魔琴は父母を殺された娘もろとも滝壺へ落下した。
それから16年後、生きていた娘は美しき林青霞に成長を遂げ、四大流派への復讐を開始する。一方こちらは[金票]局(昔の護送業者)の新たな当主として任命された青年・元彪。彼は林青霞から天魔琴の輸送を頼まれ、父と共に出立する事となった。
 彼女は天魔琴をエサに四大流派を誘い出し、策を用いて仲間割れを引き起こそうとしていた。だが、元彪が林青霞の生き別れた弟と判明した矢先に、彼の父(実は義父)が戦いの中で死んでしまう。
これが原因で2人は対立することとなり、各流派も天魔琴の破壊を目論んで行動を開始していく。師匠である陳龍の言葉で吹っ切れた元彪は、和解した林青霞に「復讐を止めよう」と訴えかけるも、彼女は聞く耳を持とうとしなかった。
対する各流派も徹底抗戦の構えを取り、とうとう全面対決の幕が切って落とされた。果たして、戦いの果てに姉弟が迎えた結末とは!?

▲こうした武侠小説を実写化した作品は、壮大なストーリーを1時間半にまとめなければならないため、ダイジェスト状態になるのが常となっています。
本作も後半から物語が急ぎ足となり、四大流派との決着やラストの幕引きも非常に呆気ないのですが、それでも無難に楽しめる内容に仕上がっていました。アクションやドラマのテンポも良く、平均的なクオリティは保っていたと言えるでしょう。
 主演の元彪と林青霞も、年齢的にムチャクチャ無理のある役柄(苦笑)を堂々と演じ切っていて、ベテラン俳優としての貫録を見せつけています。また、元彪に惚れる劉嘉玲(カリーナ・ラウ)やとぼけた陳龍など、脇役陣も実にイイ感じでした。
ただしファンタジー要素の強い武侠片ということで、アクションは特殊効果やワイヤーワークがメイン。登場人物たちは手から光線を放ち、天魔琴の攻撃によって大爆発が巻き起こるため、あまり肉弾戦は望めません。
 肝心の元彪も剣で戦うのですが、ワイヤー武侠片にありがちな飛び回る動作が中心となっており、彼の身軽さが完全に封殺されています。ワイヤーなんて使わなくても、元彪なら十分いい動きが出来るはずなんですが…う~ん。
そんなわけで、元彪の持ち味が発揮されたとは言い難いものの、それ以外については概ね及第点の本作。この手のワイヤー武侠片が好きな方にはオススメできる作品と言えますね。
 ところで本作の悪役には徐錦江(チョイ・カムコン)や午馬(ウー・マ)の他、『プロジェクトA2』の林威(デビッド・ラム)も扮しているんですが、特殊メイクがキツすぎて最初は誰だか解りませんでした(笑
さて次回は、いくつかある日本がらみの作品から一番の超大作をセレクト。詳細な内容については次回にて!