
「ダニー・ザ・ドッグ」
原題:Unleashed/Danny The Dog
中文題:不死狗/鬥犬
製作:2005年
●皆さんお久し振りです。5月の半ばから休止状態となっていた当ブログですが、このほど再開の目処が立ちました。以前のような更新ペースに戻すのは難しいものの、出来る限り頑張っていきたいと思います。
さて、今回はリュック・ベッソンのプロデュースによる、李連杰(ジェット・リー)主演の現代アクションを紹介してみましょう。この2人は『キス・オブ・ザ・ドラゴン』でも組んだ間柄であり、こちらは世界中から高評価を得ました。
そうした中で本作はオーソドックスな構成に立ち返り、「裏社会のはぐれ者が優しい人々と過ごす事で人間性を取り戻す」という、実にありふれた内容となっているのです(林青霞の『火雲伝奇』もこれに近いタイプ)。
ストーリーは、悪党のボブ・ホスキンスに「犬」として飼われていた李連杰が、ひょんなことから盲目の調律師(モーガン・フリーマン)と遭遇。彼や養子のケリー・コンドンと交流する中で、失われた感情を取り戻すまでを描いています。
ただ、「犬」を演じる李連杰はどこか滑稽に見えてしまい、こちらが慣れるまでに時間を要してしまいました。彼の演技そのものは悪くないし、あと10年若ければ違和感が少なかったのでしょうが…う~ん。
しかしそこで際立ってくるのがモーガンとボブの存在です。言葉の1つ1つに温かみを感じさせるモーガンと、三流ながらも徹底した外道として振る舞うボブは作品に深みを与え、李連杰の危うい人物像を補完するまでに至っています。
とはいえ、最初から李連杰を信頼しまくりのケリーや、強引な決着の付け方に疑問符が浮かぶのも事実。このへんのイビツさが解消されていれば、本作は『キス・オブ・ザ・ドラゴン』の域に近付けていたかもしれません。
一方、アクションは我らが袁和平(ユエン・ウーピン)による指導で、作風に合わせた荒々しいファイトが展開されています。ラストの李連杰VSマイク・ランバート(この2人は『ブラック・マスク』でも対戦)も躍動感に富み、上々の出来でした。
残念なのは李連杰と張り合える敵がマイク以外にいないのと、あのスコット・アドキンスをザコとして処理してしまった点(3人組の一角)でしょうか。後者は有名になる前だったので仕方ありませんが、私としては李連杰とのガチンコが見たかったなぁ…。
傑作になりえる要素を揃えていながら、上手くそれを昇華できなかった惜しい作品。現在、李連杰はヨーロッパから離れた位置にいますが、またベッソンとコラボを果たしてくれる事を望みたいですね。

「カンフー仁義 ~復讐の刃~」
原題:空手入白刃/虎胆殲仇
英題:Daggers 8
製作:1980年
●孟元文(メン・ユンマン)は功夫が好きなお坊ちゃま。しかし祖父の張森はそれを許さず、彼の兄(孟元文の二役)が功夫勝負で死んだと知ると、「お前もこうなりたいのか!」と孟元文を軟禁してしまった。
祖父に功夫で身を立てられると認めてもらうため、そして何よりも自分自身が功夫を習うため、孟元文は出奔を決意をする。まず最初に彼が出会ったのは、露店を経営している武術の達人・陳龍(チェン・ロン)だった。
さっそく弟子入りを志願し、腕や足腰のトレーニングに入る孟元文…であったが、突然現れた殺し屋・唐偉成(ウィルソン・タン)によって師匠を殺されてしまう。
その後も軽功の使い手・徐忠信(アラン・ツィ)、綿拳の名手・李麗麗(リリー・リー)に教えを乞うも、相次いで唐偉成に抹殺されていく。…実は一連の殺しを依頼したのは、なんと張森その人だったのだ。
彼は孫に功夫修行を諦めさせようと思っていたが、過去に買った恨みによって自らも唐偉成の手にかかった。因果応報と言えばそれまでだが、このまま黙っている孟元文ではない。全ての決着を付けるべく、彼は冷酷非道な唐偉成に挑むが…?
今月は協利電影からもう1本、ご覧になった方も多いと思われる本作を視聴してみました。この作品の特色は、なんといっても“主人公の師匠が複数いる”というユニークな点でしょう。
演じるのは実力派の功夫俳優たちで、それぞれ異なった持ち味を発揮。監督&武術指導を兼任する唐偉成との戦いでも、手数の多いテクニカルな殺陣を見せています(オススメはメチャクチャ身軽な徐忠信VS唐偉成!)。
主役の孟元文も負けておらず、ひたむきに功夫修行に打ち込む好青年を熱演。ラストバトルでは今まで習ってきた技を駆使し、七小福で鍛えたポテンシャルの高さを披露していました。
修行の描写も解りやすく、一見するとバラバラの拳法を学んでいるようでいながら、ちゃんと段階を踏んでいる(最初に腕力や脚を鍛える→次に身軽な動作を身に付ける→最後にやっと本格的な功夫の練習)のも実に見事です。
ちなみに“主人公の師匠が複数いる”というアイデアは、劉忠良(ジョン・リュウ)の『好小子的下一招』でも使用されており、内容も本作と非常に似通っています。
最後に習得したすべての技を使用するところも同じですが、劉忠良の節操の無さは孟元文を完全に上回っているので(笑)、私はどちらかというと本作の方が好みですね。
タイトルにもなっている空手入白刃がどんな技か解りづらいのと、ヒロインの扱いが雑すぎる点を除けば至高の作品。質の高いアクションが目白押しなので、功夫映画ファンなら是非とも見ておきたい良作といえるでしょう。

「沈黙の鉄拳」
原題:A DANGEROUS MAN
製作:2009年
●かつて特殊部隊に所属していたスティーヴン・セガールは、無実の罪で6年間も刑務所にブチ込まれた挙句、愛した妻にも逃げられてしまった。
出所後、すべてを失った彼は自暴自棄に陥るが、運悪く銃撃事件の現場に遭遇する。とりあえず警官を殺した男たちを叩きのめし、連中が乗っていた車を調べてみると、そこには大量の金と1人の美女(マーライナ・マー)が…?
セガールは金とマーライナを回収し、一緒に居合わせたジェシー・ハッチの車で逃走。事情を聞いたところ、彼女の叔父は中国人民軍の麻薬密売に関わっており、仕事からの足抜けを望んでいたという。
マーライナは彼の国外逃亡に協力していたが、もちろん軍がそんな事を許すはずがない。そこで文峰(バイロン・マン)を刺客として放ち、麻薬組織と結託して彼女を狙ったのだ(大金は麻薬組織に協力報酬として支払うものだった模様)。
対するセガールは、ジェシーの父親であるロシアンマフィアの親分と出会い、共同戦線を張ることとなった。やがて戦いは2大勢力の抗争に発展するのだが、果たして生き残るのはどっちだ!?
当たり障りのないアクション映画を量産し、セガール作品の常連監督としても有名なキオニ・ワックスマン。本作はそんな彼とセガールが組んだ初期の作品ですが、その出来はというと……やっぱり当たり障りのない内容となっていました(笑
ストーリーはセガールが大暴れするだけで、特色らしい特色といえば「主人公が自暴自棄」という設定しかありません。そのせいか本作のセガールは妙にイラついており、各所で残虐ファイトを見せています。
敵に容赦しないのはいつもの事ですが、本作では相手の顔を分解した銃でメッタ刺しにし、首筋に鉄の棒をドスドスと突き立て、材木用の破砕機に投げ込んだりと殺りたい放題! もはやどっちが悪役なのか解らなくなるレベルです(爆
今回はこのクレイジーさが程よいアクセントになっており、殺陣のクオリティはそれほど高くないものの(今回はカット割りがやや多め)、最後まで楽しんで見ることが出来ました。
ただ、俊敏な動きをしていた文峰がセガールに反撃できず、一方的にボコられて終わったのは実に残念です。敵の大半が中国系なのにカンフー的なアクションをしてこなかったりと、この辺の描写はちょっと不満でした。
なんにせよ「いつものセガール作品」としか言いようのない本作。キオニ監督の作風は今も昔も変わりませんが、ひょっとするとこの不変的な安定感をセガールは求めていた…のかもしれませんね。

出錯綽頭發錯財
英題:The Kung Fu Warrior
製作:1980年
▼(※画像は本作を収録したDVDセットの物です)
70年代の香港映画界は、李小龍(ブルース・リー)作品に代表されるシリアスな功夫片が主流でした。しかし、許冠文(マイケル・ホイ)と『Mr.Boo!』シリーズの登場によって、流れは一気にコメディ映画へ傾くことになります。
続いて劉家良(ラウ・カーリョン)が『神打』でコメディ功夫片の基礎を築き、『酔拳』がそれを確固たるものにしました。やがて80年代に『悪漢探偵』が大ヒットし、業界全体が現代アクションへの転換を決意しますが、香港コメディの勢いは止まりません。
『悪漢探偵』が公開された1982年には、早くも洪金寶(サモ・ハン・キンポー)によって『ピック・ポケット!(燃えよデブゴン4)』が撮られ、これがあの『福星』シリーズへ繋がっていく事になります。
しかしその2年前、まだジャッキーもサモハンも現代アクション+コメディに本腰を入れていなかった時期に、いち早く注目を示したプロダクションが存在しました。そのプロダクションの名は……。
■張雷は功夫をこよなく愛するクラブのボーイ。しかし腕前はイマイチ止まりで、店に現れたチンピラたちに叩きのめされてしまう。その翌日、彼は先程のチンピラたちを圧倒する謎の老紳士・關海山(クワン・ホイサン)と出会った。
「お師匠、オレに功夫を教えてください!」「わしに会いたかったら香港へ来るのじゃ」 …というわけで、張雷は住んでいたマカオから香港へと渡航。大道芸人との悶着を経て、とある企業の社長だった關海山と再会する。
かくして張雷は彼の自宅に住み込み、厳しくも楽しい修行をマンツーマンで受けていった。ところが、得意のスケボーで恋人(実は關海山の娘)ができた矢先に、關海山の会社で重役による横領?疑惑が発覚する。
相手は金をジャケットに加工し、読んで字のごとく着服しているという(笑)。そこで張雷と關海山は、ニセの爆弾騒ぎを引き起こしてジャケットを取り返すが、結局は全面対決に発展していく。
果たして張雷は修行で磨いた功夫を生かせるのだろうか? そして立ちはだかる刺客たちとの戦いの行方は…?
▲本作は独立プロである協利電影の作品です。協利電影といえば、独創性の高い傑作功夫片をいくつも手掛けており、今も多くのファンから支持を受けています。
同プロダクションは早くから現代アクションに着目し、70年代後半から『ブルース・リィの刑事物語』『怒りのドラゴン』などを製作。そして本作では、現代アクションとナンセンス・コメディの融合を試みたのです。
正直言ってストーリーに解りづらいところがあり(私が所有しているのは英語版)、重役が何を企んで最後にどうなったのか不明瞭なところもありますが、そこそこ笑えるシーンがあるので悪くありません。
主役の張雷と關海山についても、堅苦しさを廃したライトで現代的な師弟関係を構築しているので、なかなかに好感が持てます。コメディとしては爆笑必至ではないものの、作品の持つ雰囲気は良好だったと言えますね。
さて功夫アクションについてですが、こちらはメインの張雷と關海山が本格的な功夫俳優ではないため、いかに協利作品といえどクオリティが気になるところです。
しかし彼らは果敢にも激しいアクションに挑み、吹き替えスタントを使いつつも健闘していました。特に張雷の頑張りが目覚ましく、話が進むにつれて動作がどんどん伸びやかになっていきます(武術指導は監督・脚本も兼任している徐二牛)。
終盤の連戦では李春華・趙志凌・元武、そして李海生(リー・ハイサン)らと真正面から激突! 關海山も負けておらず、最後の張雷との腕試しではスタントの使用を極力控え、意外な好勝負に仕上がっているのです。
バリバリの功夫アクションを期待するとズッコケてしまいますが、先見の明を感じさせる興味深い作品…といったところでしょうか。なお協利にはもう1つ『醉猫師傅』という現代アクション+コメディがあり、こちらもいつか見てみたいと思ってます。

「プロジェクトBB」
原題:寶貝計劃
英題:Rob-B-Hood
製作:2006年
●成龍(ジャッキー・チェン)、古天樂(ルイス・クー)、許冠文(マイケル・ホイ)の3人はコソ泥トリオ。盗みの腕は確かなものであるが、そのプライベートは荒れに荒れていた。
そんなある日、引退を考えていた許冠文の自宅に空き巣が入り、老後の蓄えに残しておいた貯金をごっそり盗まれてしまう。そこに盗みの依頼が舞い込み、切羽詰まった彼はこれを引き受けるのだが…。
多額の報酬に目が眩んだジャッキーと古天樂も加わり、一行は巨大な屋敷へと侵入する。ところが驚いたことに、盗みのターゲットとは金庫でも宝石でもない、大富豪の赤ん坊だったのだ!
後に引けなくなった3人は赤ん坊を連れ去るが、検問にぶつかって許冠文が逮捕されてしまう。その結果、仕事の詳細を知っている彼が出所するまでの間、ジャッキーたちは赤ん坊の面倒を見ることとなった。
しかし彼らにとって子育ては至難の業であり、おまけに盗みの依頼主である組織までもが動こうとしていた。いつしか赤ん坊に情が移り始めたジャッキーたちだが、果たして物語の結末は…?
長年にわたって香港映画界で活躍してきた元彪(ユン・ピョウ)ですが、00年代に入ると仕事のペースを徐々に落とし始め、助演や客演としての仕事が目立つようになってきました。
この当時、彼は積極的に電視劇(TVドラマ)へ参加するようになり、役者として新たな可能性を見出そうとしていた事が伺えます。本作はそんな時期の作品で、久し振りにジャッキーとの共演が叶った作品です(今回は彼の幼馴染の警部役!)。
物語は3人のダメ男を中心にした人情ドラマで、赤ん坊との出会いを通して自分自身を見つめなおし、更生に至るまでを描いています。日本では痛快なコメディ・アクションとして宣伝されたため、内容を見て驚いた人も多いことでしょう。
作品としてはストーリーの流れが雑然としており、最後のオチも出来すぎている印象を受けました。しかしコメディ描写は安定しているし、「あざとい」と思いつつつもホロリとくるカットが何ヶ所か存在します(笑
許文冠&元彪のビッグネーム2人についても、それぞれに見せ場となるシーンを配置。持ち味を生かし切れたとは言えないものの、彼らを単なる賑やかしで終わらせてはいません。
アクションや危険なスタントは今回もバッチリで、久々の接触となるジャッキーVS元彪(ここはもう少し尺を割いて欲しかったかも)、強敵を相手にしたラストバトルもしっかり用意されていました。
…と、このように傑作とまではいかないまでも、佳作レベルのクオリティに達している本作。しかし直訳とはいえ誤解を招くような邦題、豪華すぎるキャストが期待値を吊り上げる要因となり、作品の評価を相対的に引き下げている感があります。
個人的には嫌いじゃない映画(むしろ好きな方)なので、もっと評価されてもいいと思うのですが…う~ん。
これまで傑作・珍作・失敗作と、様々な元彪の出演作を追ってきた「よろしくユン・ピョウ」ですが、とうとう本日で最終回と相成りました。しかし彼の戦いは終わっておらず、10年代に突入した現在も続いています。
近年は往年の功夫スターがフィーチャーされる機会が多く、元彪も『マイ・キングダム』『イップ・マン 誕生』などでその雄姿を披露。アクション俳優として健在であることを満天下に示しているのです。
彼が今後どのような動きを見せるのかは解りませんが、私としては“BIG3の勢揃いを再びスクリーンで見てみたい!”と切に願っています(もっとも、ジャッキーとサモハンが多忙なので非常に難しい話なのですが…)。
さて、来月から更新は通常どおりに戻りますが、今のところ次の特集は未定です。5月の末に何らかの発表は出来ると思うので、とりあえず今日の所はこれで終わりたいと思います。 <特集、終わり>