『沈黙の鉄拳』 | 続・功夫電影専科

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「沈黙の鉄拳」
原題:A DANGEROUS MAN
製作:2009年

●かつて特殊部隊に所属していたスティーヴン・セガールは、無実の罪で6年間も刑務所にブチ込まれた挙句、愛した妻にも逃げられてしまった。
出所後、すべてを失った彼は自暴自棄に陥るが、運悪く銃撃事件の現場に遭遇する。とりあえず警官を殺した男たちを叩きのめし、連中が乗っていた車を調べてみると、そこには大量の金と1人の美女(マーライナ・マー)が…?
 セガールは金とマーライナを回収し、一緒に居合わせたジェシー・ハッチの車で逃走。事情を聞いたところ、彼女の叔父は中国人民軍の麻薬密売に関わっており、仕事からの足抜けを望んでいたという。
マーライナは彼の国外逃亡に協力していたが、もちろん軍がそんな事を許すはずがない。そこで文峰(バイロン・マン)を刺客として放ち、麻薬組織と結託して彼女を狙ったのだ(大金は麻薬組織に協力報酬として支払うものだった模様)。
対するセガールは、ジェシーの父親であるロシアンマフィアの親分と出会い、共同戦線を張ることとなった。やがて戦いは2大勢力の抗争に発展するのだが、果たして生き残るのはどっちだ!?

 当たり障りのないアクション映画を量産し、セガール作品の常連監督としても有名なキオニ・ワックスマン。本作はそんな彼とセガールが組んだ初期の作品ですが、その出来はというと……やっぱり当たり障りのない内容となっていました(笑
ストーリーはセガールが大暴れするだけで、特色らしい特色といえば「主人公が自暴自棄」という設定しかありません。そのせいか本作のセガールは妙にイラついており、各所で残虐ファイトを見せています。
 敵に容赦しないのはいつもの事ですが、本作では相手の顔を分解した銃でメッタ刺しにし、首筋に鉄の棒をドスドスと突き立て、材木用の破砕機に投げ込んだりと殺りたい放題! もはやどっちが悪役なのか解らなくなるレベルです(爆
今回はこのクレイジーさが程よいアクセントになっており、殺陣のクオリティはそれほど高くないものの(今回はカット割りがやや多め)、最後まで楽しんで見ることが出来ました。
 ただ、俊敏な動きをしていた文峰がセガールに反撃できず、一方的にボコられて終わったのは実に残念です。敵の大半が中国系なのにカンフー的なアクションをしてこなかったりと、この辺の描写はちょっと不満でした。
なんにせよ「いつものセガール作品」としか言いようのない本作。キオニ監督の作風は今も昔も変わりませんが、ひょっとするとこの不変的な安定感をセガールは求めていた…のかもしれませんね。