
「香港麻薬捜査官」
怒海威龍
Tough Beauty And Sloppy Slop
1995
●80年代後半、それまで最盛を誇っていた日本でのジャッキー人気に陰りが見え始めてきた。90年代以後から現在に至るまで人気は持続しているようにも思えるが、かつて女性ファンに黄色い声援を浴びていた絶頂期と比較するとその差は明らかだ。そればかりか、最近はジャッキーを知らない人が増えているのが悲しき現実なのである。
それに伴ってサモハンやユンピョウらも日本での人気は落ち、以降彼らの主演作が劇場公開されることは少なくなった。ひとえに、日本でのサモハンやユンピョウの人気はジャッキーあってこそのものである。こう言うと語弊があるように思えるが、李小龍のブレイクで王羽や倉田保昭が日本で認知されたように、サモハンたちもジャッキーの影響で日本デビューを果たしたのだ。同じような事は李連杰の『少林寺』がヒットしたときに入ってきた劉家輝や黄家達にも言える。
しかし、だからといって彼等自身がダメになってしまったという訳ではない。現にサモハンやユンピョウらは現在も活躍を続けている。そしてこの作品はユンピョウがフィリピンで主演した潜入アクションだ。
ストーリーは楊麗菁(シンシア・カーン)とユンピョウのコンビが、アジア某国刑務所からターゲットに近い人物と共に脱獄し、目標の対象に接近しながら途中途中で昔の因縁ある相手と遭遇したりしつつ、結局ばれて本拠地決戦という流れだ。言わずもがなだが、これはまんま『ポリスストーリー3』をパクったものである。
これでラスボスが知らない人だったらガックリだが、この手の作品で常連周比利(ビリー・チョウ)なのでひと安心。筋肉ブラザーズも絡めてのラストバトルは作品の質から考えれば及第点だろう。作中には特に目新しいモノが無いので今ひとつ貫目不足といったところで、その上話はパクりとはあまり褒められた作品ではない。だが、今でも果敢にアクションがこなせる事を証明したユンピョウ…年齢的にそろそろキツい年頃かもしれないが、これからも彼等には頑張って欲しいと思います。

「ブルース・リー/恐怖の鉄拳 死の香り」
Fist of Fear, Touch of Death
1980
●山ほどある李小龍関連のドキュメントの1つで、その中でもかなり粗悪な作品である。
この手の李小龍ドキュメントで有名なのは『ブルース・リーの神話』(以下『神話』)と『ブルース・リーの生と死』(以下『生と死』)の2本だろう。『神話』と『生と死』は李小龍の生い立ちと主演作のハイライトや、当時は未公開だった『死亡遊戯』アウトテイク等で李小龍とはどんな人物だったかを綴っている。両方とも李小龍ファンならずとも、功夫映画ファンは必ず一度は見たことのある作品のはずだ。
これ以外にも日本で劇場公開された『ありし日のブルース・リー』などなど、李小龍のドキュメントは枚挙に暇が無い。現在でも世界のどこかで作られ続けている事だろう。そんな中において本作はかなり底辺に位置するヒドい作品だ。
本作ではありがちに李小龍の生い立ちを追う事も無く、初っ端からマディソン・スクエア・ガーデンで行われた得体の知れない空手ショウから幕を開ける。そこからハゲのストーリーテラーがドキュメントの進行役として話を進めていくのだが、その後『ロング・ストリート』の映像を使って作られたデッチ上げインタビューから始まり、訳のわからない格闘家のインタビュー(途中でプロモもどきの寸劇も挿入される)でお茶を泥水のように濁していく。
ここで先陣を切って登場するのは『ブラック・コブラ』シリーズなどに主演している黒人映画のスター、フレッド・ウィリアムソンである。彼は70年代に日本でカンフー映画ブームが巻き起こった最に公開された『ドラゴンを消せ!』(風間健も出演したトホホ作品…今のところ未見)での姿が功夫映画ファンには馴染み深いと思われる。
続いて雷小虎(ビル・ロウイー…実は呂小龍とも共演経験のある謎の男)、ロン・ヴァン・グリフ(彼については『死闘伝説TURBO!!』を参照のこと)が登場し、更には李小龍の初期出演作である『雷雨』が李小龍の先祖とか適当な解説でどこからか拾ってきた武侠片とごちゃ混ぜに映されるわとやりたい放題(セリフも全然違うものへと変更)。
ヒゲモジャのカトーマスクもどきがヌンチャク両手に舞い踊り、『新死亡遊戯/七人のカンフー』『秘録・ブルース・リー物語』のカットが挿入され、最後は再び冒頭の空手ショウに戻って本作は幕を閉じる。
とにかくヒドい内容だ。捏造インタビューや勝手に祖先にされた武侠片、ヘナヘナな寸劇にまったく関連性の無いシーンの数々…。李小龍のドキュメントを作るなら適当に主演作の場面を挿入したり、生い立ちを解説するなりと方法はあったはずだ。それなのに本作では微妙な再現ドラマや既存の映像をわざわざ編集して作るなど、製作された意図がまったくもって不明だ。
そもそもドキュメントと言い切っていいのかさえ微妙な作品。ハッキリ言ってゴミ同然なので、懸命な功夫映画ファンはこんなもの見ずに別の作品を見ましょう(爆

「ハード・リベンジ」
「地獄のリベンジャーコップ」
Martial Law
1990
●本作にはある有名人が出演している事で、一部でよく知られている作品だ。主演はチャド・マックィーンという人だが、実はあの名優スティーブ・マックィーンの息子。その恋人役でシンシア・ラスロック、悪の親玉にデビッド・キャラダイン、続編の『アンダーカバー』で主演を張るジェフ・ウィンコットなどが出演している。
ストーリーは至ってシンプル。マーシャルアーツの達人である警官・チャドは今日も立てこもり事件を一瞬で解決するなど敏腕ぶりを発揮していたが、弟が非行気味なのが心配の種だった。キャラダイン率いる密売組織に属するチャドの弟は車ドロで何度もしょっぴかれていたが、一向に懲りる気配は無かった。
しかしトール・タカナ(キャラダインと交戦して死亡)の遺体が発見された事によって事態は一転。チャドとラスロックは独自で捜査を進めていくが、その前には幾重にも重なる傷害が待ち受けていた。一方、キャラダインはヘマばかりするチャドの弟を信頼に足るかどうか試していた。何かと「いい情報がある!」とキャラダインにしつこく売り込もうとしていた黒人を消すようにと命じられたチャドの弟。しかし殺しをするまで汚れていなかった彼は黒人を逃がした。
その後、チャドは騒ぎばかり起こす弟に「いい加減にしろ!これ以上かばいきれないぞ!」とクギを刺した。が、その現場を見ていた先の黒人は、恩知らずな事にキャラダインへ彼と警官であるチャドの繋がりを密告。結果的にチャドの弟共々殺されてしまった。
弟の死に怒りを燃やすチャドは、弟の部屋でキャラダインの臣下(フィリップ・タン)が経営する空手道場のトロフィーを見つけ、ここに事件の鍵があるとして潜入する。道場の師範として潜り込んだチャドだが、のちに密輸に利用されて殺されそうになる。ついにその残虐な本性を露わにしたキャラダインらとチャドとの激突が始まる!
本作のアクションを指導したのは、出演も兼ねているジェフ・プルート(本作ではラスロックと対戦)とフィリップ・タン。彼らのアクションは凡百のマーシャルアーツ映画にありがちな間延びしたものにあらず、ちゃんと一定のリズムを保った殺陣を構築している。特にジェフ・プルートは『アンダーカバー/炎の復讐』『マーシャルコップ』でも良質のアクションを構築しており、格闘映画ファンからの信頼も厚い。
また、前述したように本作で注目すべきポイントは、あのベニー・ユキーデがカメオ出演しているという点にある。しかもラスロックとのレアなバトルを展開!階段上でのアクションは『少林寺列伝』の狄龍VS王龍威に通じるものがあり、この組み合わせが見られただけでも本作は価値がある。また、その他のバトルに関しても安定したクオリティで、最後の『燃えよカンフー』なキャラダインVSチャド、多くのマーシャルアーツ映画でスタントを演じるフィリップ・タンVSラスロックのアクションもなかなかだ。
チャドの弟が生意気で腹が立つ存在だったり、その彼が助けた黒人がとんでもないろくでなしだったりと細部にアラはあるものの、間違いなく日本公開されたマーシャルアーツ作品では傑作に入る部類かと思われます。

砲[イ馬]俥
Return of the Kung Fu Dragon
1978
●上官靈鳳(シャン・カン・リンホー)…台湾で各個たる地位を誇る大女優で、功夫・武侠映画ファンには巨匠・胡金銓(キン・フー)監督の『残酷ドラゴン/血斗竜門の宿』や、あのジミー先生と"色々な意味で"渡り合った『ドラゴン武芸帖』などの活躍が思い浮かぶだろう。この映画はその大女優・上官靈鳳が主演した武侠片?だ。
亡国の姫を助けるべく、かりそめの姫として育てられた上官靈鳳が仲間の張力らと蔡弘の軍団に立ち向かう一代活劇である。出演は上官靈鳳の他に張力・李中堅・陳星・蔡弘とそれなりに豪華。加えて全編に渡って城塞都市という大掛かりなシチュエーションのセットで物語が展開し、ある程度力を入れて製作された様子が窺い知ることができる。
キャラクターの格好がかなり奇抜なので原作付きかもしれないが、調べてみてもそれらしいものは解らなかった。最初と最後にナレーションでとある島が紹介されるのだが、恐らくはその島を題材にした歴史アクション(或いはその島を舞台とした武侠片)と思われる。
理解するのに難しいポイントが多い本作だが、姫を捕まえたり助けたりの展開はスリリングで、なおかつ功夫アクションの水準も結構なものだ。武術指導は陳木川と陳少龍で、最後は将棋馬拳?を駆使する上官靈鳳VSおヒゲの道人・蔡弘とのバトルになり、蔡弘はリンチにあって死亡する(酷
正直中盤からの展開がカットのせいで解りにくく、しかも後半からはかなり強引な編集もあったりしたのが残念だった(いきなり田野や仲間が死ぬなど唐突な場面がある)。もっとも、『Martial Arts 50 Movie Pack』の中ではマシなカットのされ方だったようだけど…。
正統派っぽい英語タイトルとは裏腹に複雑怪奇な作品。もう少し内容が解れば評価は違っていたかもしれないが…。

「燃えよデブゴン7」
林世榮/仁者無敵
The Magnificent Butcher
1978
▼実在した伝説の武道家・黄飛鴻の弟子、林世榮のお話である。
林世榮は黄飛鴻映画でもよく登場し、鄭則士や呉民才といったおデブ俳優が演じている事が多いが、実際はデブじゃなかったらしい(肉屋だったことも怪しいとか)。ちなみに林世榮の弟子の息子、すなわち孫弟子はあの劉家良だったりする。
無論、香港映画界で最も功夫に秀でて、最も脂肪が秀でている(笑)サモハンにその役が回ってきてもおかしくない…ということで彼が主演している本作。しかし袁和平率いる袁家班と洪家班のコラボという夢の組み合わせ!これだけでも本作は見る価値があります。というか、これ"だけ"しか見る価値が無いというか…(後述
■林世榮ことサモハンは、ある日誤解から李海生(リー・ハイサン)道場の門下生をボコッたことで關徳興演ずる黄飛鴻から大目玉を喰らい、キツイ罰を味わうことに。
その李海生は凄まじい鉄拳の使い手で、彼の道場には他に扇子捌きが芸術的な林正英やネコのようにすばしっこい鐘發、ワッキーそっくりな棒術使いの元武がいたが、他に修行もろくにしないで遊びほうける放蕩息子の馮克安がいた。
彼は無類の女好きで、兄を尋ねてやってきた蒋金の彼女を奪おうとする始末。そこに居合わせたサモハンは、反撃して馮克安をボコボコにしていた蒋金を悪者と勘違いしてぶっとばしてしまう。
蒋金は彼女がどこを探してもいないので途方に暮れ、首を吊ろうとしていた。その矢先、彼を助けたのは樊梅生だった。彼がまんま『酔拳』の袁小田スタイルなのは、当初この役が袁小田で予定されていたから。実際に撮影もされたらしいが、袁小田が亡くなったために全部カットしたという。そんな代役・樊梅生は蒋金の話を聞いて馮克安を叩きのめした。腹の虫の収まらない馮克安はサモハンと樊梅生を騙して二人を戦わせようと画策する。
果たして計画は成功するが、樊梅生はカンフーの達人でサモハンは手も足も出なかった。しかし二人は和解して蒋金の家に戻り、協力して馮克安を懲らしめた。その時、蒋金の彼女とついでに李海生の養女を助け出した。
その夜、蒋金の探していた兄こそがサモハンであったことも判明して意気揚々の一同。だがサモハンと一緒に彼の家に来たハネッかえりの養女を馮克安が見つけ、乱暴を働こうとしたところ勢い余って彼女を殺害してしまう。
馮克安はこの罪をサモハンに擦り付け、父の李海生と門下の林正英らを引き連れ、何も知らないで戻ったサモハンはたちまち殺人犯扱いに!怒りに燃える李海生は寳芝林に乗り込んだが、兄弟弟子の元彪が林正英を、韋白が元武を撃破する。しかし李海生の拳は手強く、駆けつけたサモハンはまともに喰らって重傷を負ってしまう。
樊梅生の元に預けられたサモハンは一命を取り留め、李海生に対抗すべく樊梅生から拳法を伝授される。奇襲を仕掛けてきた鐘發を返り討ちにするが、その一方で今度は馮克安により蒋金が殺された。復讐に燃えるサモハンは位牌を片手に馮克安を撲殺。そしてあんな放蕩息子でもやはり可愛かったのか、こちらも怒りを燃やす李海生の姿が…。最早、止める事の出来ない闘いが始まろうとしていた。
▲スゴい。そりゃもう洪家班と袁家班の夢のタッグだから、殺陣が既に芸術の域にまで達している。冒頭の關徳興Vs李海生の習字対決から始まり、次々と隠し武器を駆使する林正英Vs足技の元彪、棒術で迫る元武Vs武器で対抗の韋白、おそろしくすばしっこい猫拳の鐘發Vsサモハン、そしてラストのサモハンVs李海生の行き詰る死闘!110分のちょっとロングな映画の尺がそんなに長く感じない、素晴らしいバトルが目白押しなのだ。
しかし、元はといえば馮克安が馬鹿な事を起こさなければ、李海生が真実を見極めていればこんな事態にはならなかったはずだ。李海生側は有能な弟子のほとんどと当事者の息子らが死んで死屍累々。サモハンも弟が殺されてかなり殺伐としている。よくよく考えれば馮克安に殺された李海生の養女も嫌な女だったし、やはり悪いのは教育できていなかった李海生…なのか?
そうして誤解に誤解が重なった末のオチも個人的には面白くない。弟子が死にかけて民間人にも犠牲者が出たというのに、用事があったとはいえ天下の黄飛鴻が最後にのうのうと登場(關徳興はゲスト出演とは解っているけど)し、李海生が重傷を負っている事などに触れずに看板が逆だったことに怒って劇終…黄飛鴻は威厳のある人物っぽく描写されているが、これでは分からず屋の頑固ジジイだ。
關徳興自身もこの作品は好きじゃなかったようですし、物語の陰惨さで言えば『ペディキャブ・ドライバー』とタメを張るヒドさ。アクションは文句なしの傑作だっただけに、このストーリーは色々と辛かったです。