
「ブルース・リーを探せ!」
天皇巨星
Exit The Dragon Enter The Tiger/Bruce Lee The Star Of Stars
Bruce Lee, the Star of All Stars
1976
●スーパースターである李小龍(何宗道の二役)と武術家の何宗道は友人だったが、李小龍が謎の死を遂げた。不審に思った何宗道は探りを入れるうちに、龍飛(ロン・フェイ)、山茅(サン・マオ)、金剛(カム・カン)、張翼(チャン・イー)らが死の真相を知っているとして近づく。そのうち、ヒロインが誘拐されて仲間が殺され、怒りの鉄拳アチョーな展開になっていくのだった…。
日本公開もされている作品だが、とにかくのらくりとストーリーが続き、正直あまり見られたものではない。アクションももっさりとしていて面白いものはそんなに無く、せいぜい見られるのは最後の何宗道VS張翼ぐらいだ。気になって武術指導が誰かと思ってみてみたら、なんと龍飛と山茅!なるほど…もっさりしているワケだ(爆
しかし、ここで1つの疑問が浮かんだ。この作品の監督は李作楠(リー・ツォナム)だ。李作楠といえば当ブログで『鷹爪螳螂』『勾魂針奪命拳』などの手堅い秀作をレビューしたが、その一方で『クノイチ部隊・地獄のニンジャ軍団』『レディ・ニンジャ/セクシー武芸帳』などの珍作を作ったりしている。
例えどんな名監督でも必ず失敗作はあるものだ。しかし、これらの作品は前者と後者(本作は後者に値する)とで作品の毛色が全く違い、本当に同じ人が監督したのだろうかと首をひねってしまうほどだった。本作については少なくともやっつけ仕事だとは感じられるが、李作楠の作品はまだ未見のものが多く、彼の作品についての評価はこれからなのでまだ何とも言えないところ(龍飛や山茅など、誰かさんゆかりの面々が出演している所を見ると、まさか…)。
個人的には、劇中『ドラゴン怒りの鉄拳』を参考に新聞売りの老人や電話修理工に扮して敵の目をごまかす場面がお気に入りだ。ここだけ完全にパロディになっていて笑えたけど、敵も『怒りの鉄拳』見てるかもって考えなかったのか?

「少林寺VS忍者」
中華丈夫
Heroes of the East
Shaolin Challenges Ninja
1978
▼かつてキングレコードのDVDが発売されるまで、日本で唯一リリースされていた純正なショウブラの功夫片である。主演は劉家輝(リュウ・チャーフィ)、対する相手には倉田保昭が扮しており、そのタイトルから功夫映画関連ではないサイトでもよく取り上げられている。しかしこの作品、見方を変えれば功夫映画史上非常に希な作品であると言えるのだ(後述)。
■ストーリーは様々なサイトで紹介されているので詳しい言及はしないが、内容はあっさりとしたコメディ仕立ての話だ。御曹司の劉家輝は日本人の妻・水野結花と結婚する。思ったより美人だった水野にすっかりお熱な劉家輝だが、実は水野は日本武術の達人だった。中国武術の達人である劉家輝とはことごとく対立を繰り返し、遂に水野は日本へ帰ってしまう。
なんだかんだで水野の事が好きだった劉家輝は、書生の入れ知恵で水野に挑戦状を送って帰ってこさせようとするが、これを水野の幼なじみである倉田さんら日本武術家が読んでしまったからさあ大変!劉家輝と倉田さんらの7番勝負が始まってしまうのだった…。
さて、ここで倉田さんが引き連れてきた日本人武術家軍団だが、実はほとんどのメンバーが倉田さんと共演及び対戦経歴のある面子なのだ。
最初に対決する剣士・原田力は『直撃!地獄拳』で倉田さんを不意打ちで倒し(笑)、のちに『女必殺拳・危機一発』ではリマッチを果たしている。特に前者では前もって紹介されていた強豪たちを差し置き、ラストバトルでは千葉ちゃんと一進一退のアホアホなバトルを繰り広げていた。
続いて登場する空手家・角友司郎は、倉田さん主演のTVドラマ『闘え!ドラゴン』にて拳を交えており、千葉真一とも『激突!殺人拳』で闘っている。竜咲隼人は『Gメン75』の香港ロケ編の常連で、当然師匠の倉田さんとは対戦済み。青汁で有名な八名信夫も前述の『闘え!ドラゴン』で倉田さんと、『影の軍団4』で千葉真一と手合わせをしている。
顔芸で一際異彩を放っているサイの使い手・中崎康貴もまた『Gメン75』の香港ロケ絡みで共演があるし、更に言えば水野も『Gメン75』の倉田さん降板回に出演している。唯一、柔道家・大前釣との共演が確認できなかったが、彼等の出演が倉田さん絡みという事実は興味深い。
恐らくは倉田さんが彼等を連れてきたのだろうと思われるが、倉田さんがいかに香港映画界で信頼を得ているか、そしてどれだけの影響力があるかが窺い知れて面白い。ちなみにストーリーの方は劉家輝VS倉田さんの濃いバトルの末に誤解が解けて和解するという〆になる。
▲…と、ここで本作を見てきて面白い事に気付いた。この映画には悪役が存在しないのだ。功夫映画は主人公と仇討ち相手がいればすぐに出来上がる。特にこういった日本人を扱った映画なら尚更だ。
しかし、本作は単に誤解が生じただけで、最後に手を取り合って和解を果たしている。考えてみて欲しい。決定的な悪役のいない功夫片が本作以外にあるだろうか?武侠片にはなんとなくありそうな感じがするが、それでいて本作では熱い激闘が幾度と無く繰り広げられている。
不用意な血も流れず、1人として死人も出ず、それでいて悪党がおらず、加えてアクションバリバリの功夫片なんて、まさに本作だけなのだ!これこそ実に画期的な試みであったと言えよう。個人的にも劉家良(ラウ・カーリョン)監督作の入門編として是非見て頂きたい一片。これは必見です!

「ファイヤー・ドラゴン」
龍在江湖
Legacy of Rage
1986
●李小龍の息子、李國豪(ブランドン・リー)主演のサスペンスアクション。
李國豪は当時、自分が李小龍の息子であるという事に非常に大きなコンプレックスを抱いており、のちに吹っ切れたのか『クロウ~飛翔伝説~』で本格アクションにチャレンジするが、その撮影中の事故で天の星となってしまった。そんな彼が出演した唯一の純正な香港映画が本作だ。
ちなみに、李國豪の妹の李香凝(シャノン・リー)もアクションスターとして『エンター・ザ・イーグル』などで頑張ってはいるものの、実際は出演作がそんなに多くないのが現実である。そういえば『ツインズ・エフェクト2』でデビューしたジャッキーの息子、房祖明(ジェイシー・チェン)は、この先どういった活躍をしていくのだろうか?親のジャッキーは彼が俳優になるのは反対だったみたいだが…。
友人の王敏徳(マイケル・ウォン)に殺しの罪を擦り付けられた李國豪は、獄中で知り合った孟海(マン・ホイ…本作の武術指導も兼任)の協力を得て、捕らわれたガールフレンドの簡慧珍(レジーナ・ケント)と息子を助けるために立ち上がる。しかし相手はマフィアの陳恵敏(チャーリー・チャン)の跡取りである強敵。次々に親しい人物を殺されて、李國豪の怒りが爆発する!
アクションはそれほど多くは無いが、孟海の武術指導はいつもどおり見ごたえがあり、冒頭の楊斯らとのバトルや刑務所内での立ち振る舞いは偉大な父親の面影が隠れ見えた。しかし、同時に彼が存命していたらアクション映画の歴史はどう書き換えられていたかと考えるだけで、ちょっと残念にも思えた。
作品のイメージとしては決して悪くは無いものの、全体的に暗い雰囲気がする。ラストは普通に国外逃亡していたように見えたのだが、日本版ビデオではこのあと「結局自首しちゃいました」みたいなこじつけ気味の字幕が挿入されており、どうにも後味が悪いままで締められている(D&Bなのでここらへんの暗いイメージは仕方ないと言えなくも無いが)。
個人的な疑問としては、どうして李國豪は父のいたGHじゃなくてB&Dで主演作を撮ったのかが気になる所であるが、これもまた父の後追いを避ける為に取った行動なのかも知れない…。

威震四方
英題:The Hero/Rage of the Masters/The Destroyer/Rage of the tiger
製作:1972年
▼これはジミー先生が切磋琢磨していた台湾時代の作品です。作品としては『片腕カンフーVS空とぶギロチン』のような正統派なもので、ジミー先生の作品にしてはいつもの奇抜な面はあまり見られません(敵の手駒として出てくるムエタイファイター四天王が笑えるくらいでしょうか)。
内容は『吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー』のような道場破りに関する話で、恐らく本作はそっちを意識して作られたのではないかと思われます。作品のテイストもなんとなく似通っていますが、いちおう『吼えろ!ドラゴン』よりはドラマ性が(ほんの少しだけ)強くなっているようです。
■龍飛や山茅らムエタイ四天王を率いる薛漢(シェ・ハン)は、焦[女交](『片腕必殺拳』でもヒロインを演じる)のいる道場を襲撃した。道場生や師範はことごとく皆殺しにされ、唯一脱出した焦[女交]は身内である李藝民(サイモン・リー)の元に身を寄せる事となる。
薛漢らにリベンジしたい焦[女交]であったが、彼女や李藝民の腕ではとても歯が立たない。そこで焦[女交]のおじさんは「伝説の拳士であるジミー先生に強力を仰いだらどうだろう?」と提案した。しかし当のジミー先生は母親と共に隠遁生活を送っており、他人の争いごとに加担する気はさらさら無かった。
そこで焦[女交]たちは「承諾してくれるまでここを動かない!」と、ジミー先生の玄関先に居座った。あくまで闘いたくないジミー先生もであったが、焦[女交]が毒蛇に噛まれたため仕方なく家の中へと通した。闘うことは拒むくせに、なんだかんだで焦[女交]と良い感じになっているところは流石ジミー先生だ!(笑
一方、薛漢によって奪われた道場は賭場に成り果てていた。そして回復した焦[女交]を送り届けようとしたジミー先生の元にも追っ手が迫る。なんとかこれを撃退したものの、焦[女交]が隠れ住んでいた家がバレてしまい、襲撃を受けておじさんの息子が殺されてしまう。
それを聞いて怒りに震えるジミー先生は、遂に不戦の誓いを破って敵の本拠へと飛び込んだ。だが、さすがのジミー先生も物量の差には敵わず返り討ちに…。さらには彼の不在を狙った薛漢一味によって、焦[女交]を始めとした身内全員が皆殺しにされるという悲劇に発展する。
再び怒りに震えるジミー先生は賭場へ正面から突入!ザコを蹴散らして薛漢を倒し、残るはムエタイ四天王と田野のみ!改めて海岸へ彼らを呼び出したジミー先生は、最後の対決に挑む…!
▲本作はなんといっても若々しい李藝民の存在に目を惹かれます。張徹作品に出演し、台湾で主演作を連発する以前にこんなところに顔を出していたとは驚きです。残念なのは彼がジミー先生と本格的に絡むシーンが無かったこと。まぁ、さすがにこの頃は駆け出しだったから仕方ないのですが…。
さて肝心のストーリーについてですが、ご覧のように至極悲惨なものとなっています。ジミー作品らしい痛快さはどこにも無く、そこにあるのは陰惨な戦いだけ。仲間は次々と死ぬし、ストーリーのテンポも悪く、不戦の誓いが足を引っ張っているせいでジミー先生も全然活躍してくれません(涙
ジミー先生によるアクションシーンも、クライマックスを除くと都合3回しか存在しないという有様。賭場へ乗り込む場面は『吼えろ!ドラゴン』っぽい派手な立ち回りを披露するんですが、反対にラストバトルが異様にあっさり終わるので、まったくと言っていいほど盛り上がれませんでした。
おふざけ無しの正統派な作品ではあるけど、ジミー先生特有のカタルシスは皆無な作品。どうせなら、もうちょっとはっちゃけて欲しかったなぁ…。

狼狽爲奸/狼狽為奸/鬼馬小子
Wits to Wits/From China with Death
Dirty Partners/Duel of the Dragons
1974
▼以前紹介した『石破天驚』と同じ于洋(ユー・ヤン)主演作である。武術指導が袁和平(ユエン・ウーピン)で、絡み役にも同じ様な面子が出ており、もしかすると『石破天驚』と同じプロダクションの製作かもしれない。ちなみに本作は午馬(ウー・マ)の監督作品でもあるが、製作年度を考えると午馬作品でも初期に位置するものと思われる。
■于洋は詐欺師で風来坊で大泥棒な無頼漢。今日も賭場でひと暴れした後、汽車で切符をごまかし無銭乗車を働いた。その時、于洋と彼に時計をスられた午馬の間に因縁が残った。
一転、舞台は上海へと移る。そこでマフィアの頭目である石堅(シー・キェン)が仕切っている賭場に立ち寄った午馬は、再び1人勝ちしている于洋と出会う。だが石堅が現れ、勝負を迫られた于洋は勝ち目の無い勝負と解ると、潔く手を引いた。
于洋はこの町で金庫破りを計画していた。しかし午馬もまた同じ事を考えており、2人は以前の一件もあって互いに足を引っ張り合うが、目的が同じなので意気投合。石堅に銀行を襲撃させ、その隙に午馬がそっくり金塊を盗み出した。
もちろん于洋はハナっから石堅を利用するつもりだったのですぐにトンズラし、ついでに午馬も始末しようとする。が、したたかな午馬はその企みを見抜き、于洋と激突を繰り広げる。ところがどっこい、金塊は真っ赤なニセモノ!実は銀行と石堅は裏で繋がっており、銀行はニセの金塊で不当な利益を貪っていて…要するに、于洋たちは石堅の手のひらで踊らされていたに過ぎなかったのだ。
金塊が偽物であると知った于洋たちを始末すべく、石堅は大勢の追っ手を動員して2人を捕まえた。処刑の直前に于洋は「待ってくれ…タバコが吸いたいんだ」と最後の願いをする…。だが、これこそが于洋の隠し玉・タバコ爆弾だった!
爆発に乗じて形勢逆転した2人は最後に残った石堅と戦う。だが、その背後には警察の追及が迫りつつあった…。
▲本作は『石破天驚』同様、絡み役が馮克安・太保・袁信義・任世官・黄蝦・李超・元奎・袁祥仁・そしてユンピョウと、かなり豪華な連中が揃っている(袁祥仁だけどこにいたかは解らなかったが…)。『石破天驚』ではラスボスが田豊だったのでイマイチ締りが無い感じだったが、本作では石堅が貫禄を見せており、クライマックスのバトルでは激しい立ち回りを演じていた。
それだけでも見どころに足り得るが、本作で1番の特色はなんといっても午馬が強い(!)ということにある。午馬は『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』でも強い役を演じたが、そんな彼がバリバリの功夫アクションで戦う姿は結構新鮮に見える。本作では于洋と対等に戦い、午馬VS袁信義や午馬VS馮克安という奇天烈なバトルを展開しているのだ(しかも勝ちます)!
それ以外にはこっそりと于洋VS任世官なんてレア対決もあり、ストーリーもオチが小気味良くスッキリしている(もっとも、于洋の独特な髪の解き方を見るに、洋画か何かに元ネタとなったストーリーがありそう)。
なお、ジャッキーは私の見る限り出ていないようです。